うちの猫の花子が2000年のバレンタインデーに死んでから20年経ちました。古い日記を探したらあったので再録します。
今日は夫と思い出を語りながらベースの琴美さん手作りのチョコレートケーキを食べました。
「猫の死」(2000年2月19日の日記を再録)
バレンタインデーの深夜、19年近くわたしの部屋で生きてきた飼い猫の花子が死んだ。19年前の3月末にアパートの廊下に捨ててあった猫で、生後2ヶ月くらいの小さい子だった。ジャンパーのふところに入れて、もう少し大きくなったときには籐のバスケットに入れて、仕事に通った。仕事場は歩いて10分のところにあり、8ヶ月ほどは毎日連れていったが、だんだんいやがるようになり、部屋に1人で留守番するようになった。16年間、部屋の主をやっていたが、3年前に事務所をたたんだので、毎日昼も夜もいっしょに暮らせるようになった。わたしにとっては生涯最高の3年間であった。
最後の1年間はうるさかった。夜中3時、明け方5時に泣いて起こす。一人で起きていることに耐えられなくて起こしたんだなあと思う。この2ヶ月ほどは、テーブルに上がって人間の食べ物を食べたがった。ホッケやニシンの干物、鯖の煮付け、秋刀魚、イカの塩焼きなんかの、いままで見向きもしなかったものを食べたがった。抱かれるのが嫌いだったのに、なにかといえばにゃーにゃーと甘えて抱かれたがった。みーんなサインだったんだなあ。
健康な子で、風邪もひかず、歯も丈夫で、医者にかかったこともないし、たまに食欲をなくしても、そのうちけろっと治っていたのに、今回は違った。2日間、好きなモンプチのまぐろの缶詰も、にんべんの本枯削り節も、キャットニップ入りの小袋も、またたびの粉も、役に立たなかった。シャワーの水が好きなので飲ませたらかろうじて飲んだ。
最後の日には口を閉じてしまい、水も飲まなくなった。オシッコさせようとしても脚が立たなくなった。午後、陽の当たるところにお気に入りの椅子を持っていき、抱いて「チム・ラビットのぼうけん」を読んでやった。おとなしく聞いていた。深夜、徹夜の覚悟で、台所でお茶を沸かしているわたしをはかない声で呼んだ。しばらくして、夫の見守る前で、わたしに抱かれたまま、あっと口を開け、のけぞった。きれいなオシッコが少しこぼれた。見事に死ぬ という大事をやってのけたすごいやつ…。眠っているような静かな美しい姿だった。