アーナルデュル・インドリダソン『緑衣の女』(1)

友だちが「緑衣の女」がよかったと教えてくれたので買って読んだらすごくよくて、読み終ってすぐに前作の「湿地」を買って読んで先日感想を書いた。
「エーレンデュル警部シリーズ」で翻訳があるのがこの2冊である。そしてもう一度「緑衣の女」を読んだ。捜査官エーレンデュルの私生活や性格がよくわかった。部下の二人の警察官のことも、アイスランドの首都レイキャヴィクのこともわかってきた。

新しく開発された住宅地で、こどもの誕生日パーティが開かれている。騒ぎは最高潮に達していて、親が留守で弟の面倒を見ている若者は手持ち無沙汰にソファに座っていた。彼はこの家の赤ん坊が手にしたおもちゃのようなものを見て人間の骨だと気がつく。人間の肋骨の一部だ。そんなはずないと怒る赤ん坊の母親に、自分は医学生だからわかると言った。母親の質問に一人の子どもが自分が拾ったと言い、その場所へとみんなでぞろぞろ行くと、指差されたところからあごの骨と歯が見えた。
その発見の第一報を受けたのは女性警察官のエリンボルグだ。一見年齢不詳、40歳から50歳の間、太ってはいないが美食家で、離婚して4人のこどもを育ててきた。1人は養子ですでに独立しており、3人のこどもと再婚相手と暮らしている。ちょうど食事に人を招いていて帰るところだった。
エリンボルグからのポケベルがシングルデュル=オーリの脱いだズボンのポケットで鳴った。ポケベルはなによりも優先する。彼は恋人のベルクソラの下から這い出した。
エーレンデュルは家庭料理を出すレストランで食事をはじめたところだ。
45分後に3人は骨の発見場所で会う。古い骨なので考古学者が仕切っていて鑑識課の係員たちは手伝ってもいいと言う。
エーレンデュルは新興住宅地を見回した。反対側の湖の方面の草地にスグリの木が4本ある。こんなところに誰が植えたのかとエーレンデュルは不思議に思った。
エーレンデュルは考古学者たちが建てたテントに入って掘ったところに降りてみた。ゆっくりと歩いていると靴先に当ったのは人間の手で指が突き出されている。「生きたまま埋められたのか?」
そのとき、携帯電話に娘のエヴァ=リンドの声で「助けて、お願い」と聞こえ、そこで電話は切れた。
現在の話の中に過去の話がはさまれる。読者はそれで詳細を知ることができるが、警察官たちは調査と頭脳で核心に迫っていく。
(柳沢由実子訳 東京創元社 1800円+税)