ローナ・バレット『本の町の殺人』

友だちにもらったコージーミステリだが、ちょっとしんどいときの気分にぴったり。
主人公トリシアはミステリー専門書店を経営している。ニューヨークで華やかに暮らしていたが離婚してから心機一転してニューハンプシャー州の本の町ストーナムでミステリー専門書店を開いた。
ニューハンプシャー州はニューイングランド地域の一部で、東部がメイン州に北部がカナダに接している。そこに本の町ストーナムがあるという設定。訳者あとがきによると、町のモデルはヘイ・オン・ワイというウェールズの小さな田舎町で戦後に地場産業が衰退してから1960年代に本の町として再生し、いまは〈古書の聖地〉として知られて世界中から観光客が訪れているそうだ。

古書と専門書の店が軒を並べ、それを目当ての観光客たちが訪れる町。
トリシアの店はベーカー街221Bのシャーロック・ホームズの下宿兼探偵事務所の建物にそっくりで、飼い猫の名前はミス・マープル。お客は座り込んでコーヒーを飲みながらのどかに本を読むことができる。という優雅な生活がお隣りの料理本専門店の経営者が殺されて一転する。女性保安官は第一発見者のトリシアをなぜか犯人と決めてかかる。
その上に鬱陶しい姉のアンジェリカが訪ねてきた。トリシアは5歳上の姉がずっと苦手だった。
容疑を晴らそうと必死のトリシアに協力するアンジェリカは危険な目にもあう。二人は深く話し合い、事件を通してだんだん理解しあうようになった。
事件を調べる間に、認知症とされて施設に入れられていた老婦人グレイスを助け出すこともできた。
(大友香奈子訳 創元推理文庫 980円+税)