柴崎友香「春の庭」

去年の芥川賞を受賞したこともお名前も知らなかった柴崎友香さんの「春の庭」を買って読んだ。先日すでに日にちの過ぎた「週刊現代」9/12号の書評ページをめくっていたら「わが人生最高の10冊」の左側にある「柴崎さんのベスト10」が目についた。3位の「ニューヨーク・ストーリー ルー・リード詩集」である。この本は相方の愛読書であって実はわたしは読んでない。ただ我が家はしょっちゅうルー・リードの歌声が聞こえるしパソコン画面に顔が見えるから全身にしみついている。実はわたしは昔からジョン・ケイルのファンなのです。

そんなわけで、おおいに興味をそそられ本文を読んだ。ちなみに1位はデニス・ジョンソンの「ジーザス・サン」、2位は漱石の「草枕」大賛成。10位まで好みが合う本ばかりと思ったが、特に6位の吉田健一「東京の昔」はわたしの大好きな本である。こういう好みの人が書いた小説を読んでみたい。
というわけでアマゾンで中古本が100円であったので即注文、届いたのをすぐに読んだ。

いつも翻訳本をそれも北欧のミステリを好んで読んでいるし、この数日はピエール・ルメートルの猛スピードで超残酷な3冊を読み終わったところである。はやるルメートル頭を抑えて読み出した。「春の庭」というタイトルが素敵で表紙カバーの写真がいい。
読んでいくうちにおだやかな語り口に引き込まれていった。

離婚して独り暮らしになった太郎は元美容師でいまはサラリーマン生活をしている。借りているアパート「ビューパレス サエキIII」に住む住民との穏やかなやりとりが描かれる。
アパートから見えるおしゃれな一戸建ちの空き家にアパートに住む独り暮らしの西さんは執着する。太郎も西さんとつきあっているうちに興味をそそられるようになる。
静かに静かに物語が進んでいく。

作者は大阪生まれだが作品の舞台は東京である。大阪の人が描いた東京という感じがする。わたしは東京生まれだが、こどものころから大阪にいてちょっと出たことはあるが大阪人である。若いころ東京に住む友人宅によく遊びに行った。そのときの若い3カップルのアパート暮らしの雰囲気が「春の庭」に似ている。東京の人には書けない東京って思った。わたしの独断ですが。
(文藝春秋 1300円+税)