アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム『三秒間の死角 上下』(1)

医師の山田真さんが薦めてくれたスウェーデンのミステリ、アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム / ヘレンハルメ美穂訳「三秒間の死角 上下」(角川文庫)の二度目を読み終えた。
山田さんのおかげでヘニング・マンケルのヴァランダー刑事ものと、グレッグ・ルッカのボディーガード アティカス・コディアック+女性私立探偵ブリジット・ローガンものを知った(その上に翻訳者の飯干京子さんまで知り合えた)のだから、足を向けて寝られない。その他にもいろいろ教えていただいたが、好みが微妙に違っていて、最近はこれは久美子さんの好みではないでしょうと書いてあることが多い。おおまかに分けると山田さんは〈快男児〉で、わたしは〈腐女子〉なのである(笑)。
「三秒間の死角」は満点に近いと褒めつつ久美子さんにはどうかなと言われたのだが、好みではないが読み出したら離せなくて夜中になっても読みふけっていた。

いまのスウェーデンの警察の仕組みと警察官たち、警察官と摩擦を起こしながら仕事する若手検察官、そして潜入捜査員の仕事と人生が描かれている。
上部組織の決定で刑務所への潜入捜査が行われることになり、ホフマンが指名される。捜査員の人生が書類上に勝手に作り上げられ、定められた場所で逮捕され、そのときから極悪人として拘留されることになる。そして刑務所内で秘密任務を果たさねばならない。
ホフマンはソフィアと結婚して二人の男の子がいて幸せな家庭生活を送っている。表向きはホフマン・セキュリティ株式会社の経営者である。妻も働いていて子どもは保育所に預けて夕方どちらかが引き取りに行く。妻は彼が警察の仕事をしているのを知らない。

ホフマンを指名した捜査担当官ウィルソンは9年もホフマンを潜入捜査官として使ってきた。今回の指名はホフマンがいままで一度も失敗したことがないからだ。ウィルソンとホフマンの専用携帯電話がある。二人だけにつながっている電話だ。そして二人の間には微妙な友情がある。
話が決まるとホフマンは動き始める。自分は絶対に生きてソフィアのもとへ帰るという決意。自分を守るのは自分だけだ。
彼は図書館に行って人が借りそうにない詩集を5冊借りる。そしてハードカバーの本に細工して返す。
妻に真実を打ち明けて愛していると言い、考え抜いた自分の頼みを告げて彼は出て行く。果たして妻は頼んだことをやってくれるだろうか。

「きみはだれにも頼れない。絶対にそのことを忘れるな」とウィルソンに言われて踏み出す。
指名手配されたホフマンは4人の制服警官に見つかって暴力をふるわれて捕まり、つばを吐いて悪態をつく。ウィルソンは思う。“犯罪者を演じられるのは犯罪者だけだ”
(ヘレンハルメ美穂訳 角川文庫 上下とも840円+税)