ピーター・トレメイン『翳深き谷 上下』(3)

グレン・ゲイシュに着いた二人は来客棟へ案内される。他に客人がいるようなので係の女性クリーインに聞くと北の方の身分の高い方で、お二人と同じ神様を信じているとの答え。二人が食事を終えたときに客人ソリン修道士がもどってきた。ローマでしか見たことがない華美な法衣を着ている。噛み合ない会話をしているとき族長ラズラに面会にくるように迎えがくる。ここでラズラの妹オーラと夫で継承予定者のコーラ、ラズラの裁判官でもあるドルイドのムルガルを紹介される。
夜の宴の前に外で二人が話していると金髪の兵士ラドガルがやってきて、キリスト教徒であることを告げ、用事があれば手伝うと心強い申し出があった。

角笛による合図で宴会がはじまる。ソリン修道士と書記のディアナッハ修道士の席が隣である。エイダルフにとって気分のよくない会話になる。
音楽が始まると大胆にムルガルはキャシェル批判の歌をうたう。フィデルマは立ち上がってキャシェルの新しい歌を披露し、それはムルガルへの批判となり人々に感銘を与える。フィデルマは歌もうまいのである。

エイダルフは宴会のワインを飲み過ぎて気分が悪くそれがずっと続く。眠くて冴えないエイダルフであるが、フィデルマの危機に際してきりっと立ち上がる。
ソリン修道士が殺されているのを見つけたフィデルマが犯人とされてしまうのだ。法によりこれから9日間を隔離房で過ごしてもらうとムルガルは言う。エイダルフは法律書を読み理論でフィデルマの拘留を解く。そして二人で推理し行動する。驚くべき背景と矛盾が浮かび上がる。

ゆったりとした上巻から下巻はフィデルマの逮捕、そしてエイダルフの弁論と活躍でがぜんおもしろくなる。続く第二第三の殺人、恋あり活劇あり。そしてフィデルマの推理によりすべてが明らかになる。
(甲斐萬里江訳 創元推理文庫 上下とも 980円+税)