ドロシー・L・セイヤーズ『学寮祭の夜』をまた読んだ

今週は会報仕事以外はずっと「学寮祭の夜」を読んでいた。今回は最初から最後まできっちり読んだ。この厚い文庫本になってからは何回目かな。ふだんは好きなところだけの拾い読みで全体を通しては読んでない。
昔から持っていた抄訳の「大学祭の夜」(黒沼健訳)こそは何十回何百回と言うほど読んでいる。引っ越しを何度もしているし、門外不出にするまでは友だちに貸していたのに、奇跡的にここにある。亡くなった姉にもよく寄越せと言われたっけ。妹が「なんで姉ちゃんが金盞花が好きかわかったわ」と文庫が出たときに読んで言った。関東にいるので読みたいと言っても貸してやらなかったから(笑)。こどものときから、わたしは金盞花が好きと言って、母親に「仏さんの花のどこがええんや」と言われていたのだ。妹はそれを小耳にはさんでいたみたいね。VFCサイト掲示板(いまはありません)で話題にしたときは何人かにコピーしてあげた。まただいぶ経ってから浅羽莢子さんの訳が創元推理文庫で出た。

そんなもんで分厚い全訳の文庫本を読みながらも、ハリエットとピーターの会話は古い本のその部分を思い出して口ずさむように読んでいる。ものすっごく憧れていた。貴族で金持ちで秀才でスポーツマンで、背がちょっと低めだけど。欲しいものはなんでも手に入っていたのに、ハリエットだけがノーと言った。
この物語を書いたドロシー・L・セイヤーズは、お金に困っていたから小説の主人公はお金持ちにしたとなにかに書いてあった。
ほんまに憧れのピーター卿なんだけど、ハリエットと知り合ってからは女性に対する見方が変わった。「学寮祭の夜」はピーターが変わっていき、ハリエットも意地を張るのをやめて、お互いに愛し合っているのを確認するとても素敵な物語なのだ。
(浅羽莢子訳 創元推理文庫 1320円+税)