フィリップ・J・デイヴィス『ケンブリッジの哲学する猫』

先月のヴィク・ファン・クラブ例会は一人例会になったので、2時間本を読んだあとにジュンク堂へ行った。そのとき買った本の1冊がフィリップ・J・デイヴィス「ケンブリッジの哲学する猫」(ハヤカワNF文庫)。ずいぶん昔に評判になったのを覚えていたが、最後のページに社会思想社から1992年に単行本で出版されたとある。読みたいと思ったのに買うのを忘れていた本だ。
これはギネスを飲みながら読むのにふさわしいと置いておき、今日は本書を持ってシャーロック・ホームズへ。思った通りの一人例会になり、ギネスとサーモンサラダとサンドイッチを食しながら読みふけった。コーヒーを飲んでちょうど2時間、最後はフルスピードで読み終え、帰ってからもう一度開いて楽しんでいる。

トマス・グレイと名付けられた雌猫の物語。
イングランド東部の沼沢地で生まれた彼女は、独り立ちできるようになったので地元の職業カウンセラー猫に会いに行く。老雌猫のメフラウはオランダからあるじ一家とやってきた出稼ぎ労働者である。メフラウは彼女の優秀な知能とはきはきした話し方から判断して、ケンブリッジへ行くことを勧める。
彼女はケム川を遡る船に乗り何度か乗り換え、ケンブリッジに到着するとひらりと船から飛び降りてコレッジの中庭に入っていった。
コレッジでいろいろな学者といろいろな出会いがあって、トマス・グレイという名前をもらい、ケンブリッジ大学の中枢で暮らすことになる。
トマス・グレイはルーカス・ファイスト博士の部屋に入りごろにゃんと呼びかけ、この学者をたちまち魅了した。ひとりの学者と一匹の猫の恋愛ともいえる関係。
このあとの物語がすごくおもしろくてためになる。そしてほんわかする。
たくさん入っているイラストがオシャレ。猫がめちゃくちゃ可愛く描かれている。
(深町真理子訳 ハヤカワNF文庫 700円+税)