リチャード・リンクレイター監督+イーサン・ホークとジュリー・デルピー『ビフォア・サンセット』

昨夜見た『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』の9年後、実際の時間も9年後である。昨夜サンライズを見て、9年はしょってサンセットを今夜見るなんて製作した人たちに申し訳ないけど、なにも知らなかったんで許してほしい。

アメリカ人の青年ジェシー(イーサン・ホーク)は、ウィーン駅で別れたときの約束どおり半年後にお金を工面してウィーンに行った。セリーヌ(ジュリー・デルピー)は祖母の葬式の日に重なり行けなかった。お互いに連絡方法がなかった。

失意のジェシーはその後結婚しきちんとした妻と息子がひとりいて、いま作家として新刊書の宣伝にヨーロッパをまわってパリにきている。新刊書は9年前のウィーンでのセリーヌと交わした愛の物語で、女性ファンから実話かと聞かれたりしているところへ店にそっとセリーヌが入ってきた。
ジェシーはファンとの交流が終わるとすぐに帰国することになっており、飛行機の時間までふたりはお茶でもと街へ出る。

仕事のこと、日常のことなど話しながら美しいパリの街を歩き、カフェでお茶してセーヌ川を往くボートに乗って会話は途絶えることなく続く。
ボートを降りて、セリーヌをアパートまで送ると門のところで猫が迎える。セリーヌは部屋でギターを手に1曲だけねと歌う。
時間が迫って立ち去るジェシー。
この差し迫った時間は映画の時間でもあり、見て聞いているこちらまで飛行機の時間を気にして気が気じゃない。
リチャード・リンクレイター監督、イーサン・ホークとジュリー・デルピーが相談して脚本を書いたのが納得できた。
最後にジェシーがニーナ・シモンのCDをかけて、セリーヌが彼女の舞台のことをひとしゃべり、そのままニーナの歌が聞こえつつ映画は終わる。

リチャード・リンクレイター監督『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』

1995年に公開された映画。なにかで知って見たいと思っていたらアマゾンプライムで無料で見ることができた。ああ、ありがたい!
イーサン・ホークがアメリカの青年、ジュリー・デルピーがパリの学生、ふたりは偶然出会い一夜をウィーンの街をさまよって過ごす。若くてインテリで美男美女(笑)。

ヨーロッパを走る列車で偶然出会った若い男女。列車で喧嘩する中年夫婦の声から逃れた女性は席を動いてアメリカ人の若者のそばに座る。若者は本を読んでいて、座って本を読みだした女性になんの本を読んでるのと聞く。彼女が読んでいたのはバタイユだった。話をし出してお互いにお金はないけど時間は今夜一晩自由になるのがわかった。

ぎこちなくいっしょに歩き出すところから、だんだん好意をもっていく過程が自然で楽しい。なんとなく応援してた(笑)。
美しいウィーンの町並みや公園や墓地や川のほとり、レストランやクラブやバーで、関わった人は街の詩人、占い師、バーテンダーなど。そうそうアングラみたいな芝居に誘われたけど行くのを忘れてた。
美しい公園の中にある映画『第三の男』で有名になった観覧車に乗るシーンがあった。観覧席は椅子でなくて小部屋になっていてドアが閉められる。ふたりは自然に立って会話が続く。

映画の内容も映画の製作も9年後の『ビフォア・サンセット』を明日見る予定。期待で胸いっぱい。

ナンシー・マイヤーズ監督、製作、脚本『ホリデイ』

『恋愛適齢期』のナンシー・マイヤーズ監督によるロマンチティックコメディ。丁寧に作ってあって楽しく見た。あんまり完璧なところがちょっとかなわんかったほど。
ハリウッドの映画予告編製作会社経営者アマンダ(キャメロン・ディアス)、ロンドンの新聞社のコラムニスト、アイリス(ケイト・ウィンスレット)のふたりは不当にも恋人が他の女性のものになるはめになった。
ふたりは休暇をとることにし、インターネットで見つけたお互いどうしで住まいを交換して住むことにする。「ホーム・エクスチェンジ」というんだって。
アマンダもアイリスも環境の違いに戸惑いながら2週間の生活を楽しむことにする。

アマンダがイギリスサリー州の小村のコテージに着くと深夜アイリスの兄グレアム(ジュード・ロウ)が何も知らずにやって来た。話しているうちに気が合ってベッドへ。
アイリスはロスアンゼルスで映画音楽の作曲家マイルズ(ジャック・ブラック)と知り合い、近所に住む引退した脚本家アーサー(イーライ・ウォラック)と出会って手助けする。

キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレットのふたりとも美しくてしっかりしていて涙もろくて正義感にあふれ、いい感じ。ジュード・ロウ、ジャック・ブラックが全然違うタイプで可愛くて、イーライ・ウォラックは貫禄あって、よかった。

見たい映画と読みたい本

先日ツイッターでフォロワーさんのツィートが気になって「いいね」にしておいたのが、「ロビン・ライトが弓を引く姿とかカッコ良すぎでしょ。ワンダーウーマンを育てる女戦士アンティオーペ。」というお言葉。ほんまに颯爽とカッコいいロビン・ライトだ。

わたしは90年代ロビン・ライト・ペンの時代の彼女が大好きだった。『シーズ・ソー・ラヴリー』『メッセージ・イン・ア・ボトル』、もう1本すごくいいのがあったのだがタイトルすら記憶が不鮮明。そのうち思い出すだろう。ショーン・ペンもちょっと出ていたっけ。

気になって出演作を検索したら全然知らなかった『この世の果ての家』があった。原作がマイケル・カニンガムで「1990年に発表され、ピューリッツァー賞を受賞した。2004年に映画化され、カニンガム自身がその脚本を書いた。」とある。
マイケル・カニンガムの『めぐりあう時間たち』は映画もよかったが原作はなおよい愛読書である。もしかして原作があるかもとアマゾンを見たら、なんと角川文庫で『この世の果ての家』があった。即注文。別れたゲイのカップルのうちの一人と同棲している女性の役がロビン・ライト。今日の収穫(笑)。

グレゴール・ジョーダン監督『インフォーマーズ』

ミッキー・ローク出演作つながりで見た2008年の作品。原作は『レス・ザン・ゼロ』でデビューしたブレット・イーストン・エリス。映画『レス・ザン・ゼロ』は見たはずだが全然思い出せない。

最初から美形の男子がたくさん登場たのにはおどろいた。
はじまってすぐにパーティに来た青年が車にはねられて死ぬ。見ていた青年たちのショック。この華やかな生活にも死は忍びよる。
ロサンゼルスに住む金持ちの親たち、そのこどもたちの贅沢な生活と退廃ぶりが描かれている。

登場人物たちに少しの共感も持たないが、そういう状況にいる人たちを描いているのはわかる。
映画プロデューサーのビリー・ボブ・ソーントンとキム・ベイシンガーの夫妻は息子と娘がいて娘が問題を抱えている。夫はテレビキャスターのウィノナ・ライダーと愛し合っているが動きがとれないでいる。妻も息子の友人とできているのだが。

久しぶりのウィノナ・ライダーがきれいだし悩んでいらいらするところもよかった。ミッキー・ロークは顔を見たからいいとする。
1980年代の音楽がバックに流れて懐かしかった。ディーヴォとかね。

ダーレン・アロノフスキー監督『ブラック・スワン』

初めて見たダーレン・アロノフスキー監督作品。おととい見た『レスラー』(2008)の次の作品が『ブラック・スワン』(2010)と知ってびっくりし、もう一度見ようということになった。かたや年を取り心臓に病気を抱えるレスラーが病をおして試合に出る話。かたや「白鳥の湖」を完璧に踊る生真面目なバレリーナが新しく与えられた役柄の黒鳥を踊りきる物語である。2人とも命を賭けて仕事を全うした。

ニューヨークの一流バレエ団でバレエに全てを捧げているニナ(ナタリー・ポートマン)。バレリーナだったがニナを妊娠したために踊りをやめた母(バーバラ・ハーシー)はいまは画家で、優等生の娘を過剰な愛情で縛っている。
振付師トマ(ヴァンサン・カッセル)はニナの踊りは認めていて白鳥役を与えるが、官能的な黒鳥の踊りが色気が足りないのが不足である。キスをしてきたトマの唇を噛んだニナに彼は積極性を感じて黒鳥を踊らせることにする。
しかし優等生なニナは性的に目覚めていず、代役のリリーの積極的なやりかたに妄想をいだくようになる。リリーが誘いに来てクラブに行き、クスリを入れた酒を飲まされ騒ぐ。帰ろうとするニナをリリーが追ってきてニナの部屋で二人は強烈なセックスに酔うが、これはニナの妄想だった。
リリーは代役として稽古に励んでいるのがニナの気に入らない。
初日がきた。ニナは完璧に『白鳥の湖』を踊りきった。しかし、白鳥の白い衣装から真紅の血が滲み出しニナは気を失っていく。

母親役のバーバラ・ハーシーが素晴らしい表情と演技を見せる。彼女の作品は『ライトスタッフ』『ナチュラル』しか思い出せないんだけど、その2本が素晴らしくて、好きな女優と聞かれると名前をあげる。特に『ライトスタッフ』の彼女が好き。

ダーレン・アロノフスキー監督、ミッキー・ローク主演『レスラー』

『ブラック・スワン』(2010)を見てからアロノフスキー監督にものすごく興味がわいてきた。先日マイケル・チミノ監督が亡くなったときに作品表を見ていたらミッキー・ロークがすごくカッコよかった『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(1985)があった。そうやった、あのころどんなにミッキー・ロークが好きだったか思い出したらうるうるしてきた。
そして、見たばかりでもう一度見るつもりの『ブラック・スワン』の監督が『レスラー』の監督だと知った。これは見なあかんということで、いま見終わったところである。

ウキペディアによると「1991年にはプロ・ボクサーに転身。ボクサー引退後に再び俳優業に戻った。ボクサー時代の怪我が元で整形手術を受けている。2009年には、整形手術が失敗したとインタビューで語っている。」とある。
ということだが、『レスラー』のレスラーはもう年寄りの部類に入る役柄で、好きになったダンサーとのからみやほったらかしていた娘とのやりとりは、哀愁が漂ってむしろ美しかった。

ミッキー・ローク出演でわたしが見た映画
白いドレスの女(1981)、ダイナー(1982)、ランブルフィッシュ(1983)、イヤー・オブ・ザ・ドラゴン(1985)、ナインハーフ(1986)、エンゼル・ハート(1987)、フランチェスコ(1989)、蘭の女(1989)、バッファロー’66(1998)
こうやって眺めると、わたしの80年代はミッキー・ロークとともにあったのだとわかった。
リリアーナ・カヴァーニ監督の『フランチェスコ』は彼女がミッキー・ロークに惚れ込んで出演を頼んだのだと思う。

映画『ブラック・スワン』を見て思い出したバレエ映画

バレエ映画が好きだ。小学生のときひとまわり上の姉(いまつきあっている姪の母)に連れて行ってもらった『白鳥の死』でバレエに目覚めた。のちに昔の朝日新聞社の何階かにあった朝日会館で二度目を見て、主演の少女ジャニーヌ・シャラという名前を覚えた。彼女はパリで大人のバレリーナになって、自分のバレエ団を率いて日本にやってきて踊った。新聞記事を読んで行きたいと思ったものだ。

『白鳥の死』はパリのオペラ座の話で、二人のうち一人がプリマバレリーナの地位を得る。落とされたほうにはバレエ学校の生徒の熱烈なファンがおり、プリマが練習している床が外れるように細工する。床は外れプリマは大怪我をして一生踊れなくなりバレエ教師として生きることになる。なのに、応援していたバレリーナは結婚して去っていった。
少女は才能を認められるが、自分のしたことがばれるのを恐れて逃げ出す。結局捕まってしまい、自分の罪を白状する。
少女の未来のために最後は許すというストーリー。バレエシーンがすごく美しいのだ。

今日、ダーレン・アロノフスキー監督『ブラック・スワン』を見て『白鳥の死』を思い出した。『白鳥の死』をもう一度見たいものだ。
『赤い靴』は封切りで見て夢中になり何度も見た。レーザーディスクを買ってからは何度見たことか。いまもDVDでときどき見る。
今日見た『ブラック・スワン』を入れてバレエ映画の秀作は3本になった。

ウィリアム・モナハン監督『ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-』

アマゾンプライムでタイトルを見つけて、知っているようなタイトルだなあと検索したら好きな作家ケン・ブルーウンが原作だった。うちに本があるかなと探したら『酔いどれに悪人なし』と『酔いどれ故郷に帰る』の2冊(ハヤカワ文庫)が出てきた。『ロンドン・ブルバード』は新潮文庫から刊行されているが多分持っていない。

この映画『ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-』(2010 イギリス)は一度見た記憶がある。ところが見ながらそうだったと思い出すのだが、その先までは覚えていない。最後のシーンだって、ああこうやって死んでいくんだったと思い出した。いい映画なんだけど深さが足りない感じ、と自分の記憶力退化を映画のせいにしている。

ミッチェル(コリン・ファレル)は傷害罪で3年間服役して出所した。もう裏社会にはもどらないつもりで職を探そうと思っていると、偶然、女優のペニー(キーラ・ナイトレイ)のボディガードを引き受けることになる。ペニーはパパラッチの追いかけに悩まされていて、家から外に出られない。ミッチェルはできるだけのことをして彼女を守る。そんな清潔に生きようとするミッチェルをギャングのボスはしつこく自分の下で働くように勧誘する。
きちんとした服装でしっかりと仕事をするミッチェルにペニーは惹かれる。
最後はなんとなんと・・・こんな最後を迎えるなんて・・・映画の話だけど悲しくなった。

コリン・ファレルはアイルランド出身の太い眉毛が特徴の男前。Tシャツやスエット姿もいいし、スーツを着てもよし。

エリア・カザン監督『ラスト・タイクーン』

1940年に亡くなったスコット・フィッツジェラルド最後の未完の小説『ラスト・タイクーン』の映画化(1976)で、エリア・カザン最後の監督作品である。日本では長い間ソフト化されていなかったが、21世紀になってからDVDが発売されたとウィキペディアにあった。タイトルも知らなかったし、エリア・カザンへの関心をなくしていた。1952年の赤狩りに協力してリリアン・ヘルマン、ダシール・ハメットその他の名前を出した人だから。

豪華出演者たちに惹かれて見た。
登場人物がすごい。まず白黒映画のラブシーンからはじまるのだが、そのカップルがジャンヌ・モローとトニー・カーティスなのだ。ジャンヌ・モローの人気女優ぶりがすごい。そのシーンを写真で見たから全体を見る気が起こった。
主演の映画プロデューサーがロバート・デ・ニーロで、ジャック・ニコルソン、ロバート・ミッチャム、レイ・ミランドと男性たちが熱演。当時の男たちのスーツ姿がきりっとしてていい。
女優はどの役かわからなかったが、名前を知っている人はテレサ・ラッセル、アンジェリカ・ヒューストンなど素敵なドレス姿が美しい。デ・ニーロの恋人は野暮ったくてもひとつだった。
ロバート・デ・ニーロはほっそりとして神経質で、きりきりと仕事をしているが、女性に向いて笑うと人の良さが出てよかった。
デ・ニーロとジャック・ニコルソンは殴り合いあり卓球もするし楽しく共演してた。