レベッカ・ミラー監督、製作、脚本『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』

レベッカ・ミラー監督、製作、脚本『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』

イーサン・ホークの出ている映画は無条件で見たくなる。共演が『フランシス・ハ』のグレタ・ガーウィグとなれば、そしてジュリアン・ムーアだもん、おしゃれな映画と決まっている。じっさいに見たらおしゃれでインテリっぽくて笑えるところもあり、共感するところもありでまあまあ楽しかった。コロンビア大学教授でイーサン・ホークの奥さんの役がジュリアン・ムーア。ちょっと儚い感じがしてよかった。
滑り出しはおもしろくなりそうだったが、もひとつだったなあ。ただイーサン・ホークの気が弱そうだけどけっこう厚かましくて、世の中やっていけるのかしらという感じなのにやっていってるところが、そんなもんかなあなんて感じでした。

イーサン・ホークが出てる映画ならなんでも見たい。

森田童子さん

森田童子さんが4月に亡くなったと昼頃のネットニュースで知った。
わたしは70年代中頃に森田さんのコンサートに二度行っている。仕事場の隣室が音楽事務所でときどき小さなコンサートの余り券をくれる。そのときもタダ券をもらって森田童子って名前は聞いたことあるわと厚生年金会館中ホールへ行った。その前に音楽事務所の社長がこの人の歌はちょっと変わってるから参考にとレコードをくれた。歌も良かったけど、つぶやくような語り声がよかった。何度も聞いてからコンサートに出かけたのだが、歌声だけでなく雰囲気にも魅せられた。

そのころまでわたしたちはジャズばかり聞いていて、70年代になってからは特にフリージャズに打ち込んでいた。70年代後半になるとフリージャズに疲れてきたところへ、森田童子の静かな歌声が心に沁みたのだ。

隣室の音楽事務所へ行ってよかったと何度もお礼をいったからか、もう一枚レコードをくれた。その中の一曲、桜の花びらが散るという詩がよくて、覚えて得意になって歌ったものだ。
それから半年くらいして今度は御堂会館(と記憶している)でやると知って、友だちの分まで3枚入場券を買って行った。舞台に出てくるときの内気そうなところがかっこよかった。

その夜で堪能してしまったみたいで、森田童子熱が冷めていったところへ、ジャーン! パンクロックが来た! 同じ御堂会館でエルビス・コステロは78年だったかな。すごかった。それから一直線でパンク一筋になった。8年くらいパンク・ニューウェーブに浸かってた。

でも、森田童子さんの歌は大切に心にしまってあった。今日は午後からずっと聞いているが、懐かしく麗しい声は変わらず。
ご冥福をお祈りします。

グザヴィエ・ドラン監督・脚本・製作・主演『マイ・マザー』

ツイッターなどで名前ばかり目にしてまだ作品を見たことがなかった監督で俳優のグザヴィエ・ドランの第1作『マイ・マザー』をようやく見た。2009年に製作されたカナダの映画。
わたしの好みの作品ですごくよかったとしかいいようがない。
ユベール少年の美しさに惹かれた。友人もいい。母親はその世代の女性のいやらしさと人の良さがあってそんなもんよねという感じ。若くしてうまい作家である。
女性の先生がよかった。生徒を泊めるのは禁じられているといいながら泊めてくれて、ユベールに才能があるから彼が書いた詩を新人賞に応募したという。
お別れに詩集をくれて◯ページの詩を読むようにいう。だれのなんという詩集だろう。

今日はイアン・カーティスの命日、アントン・コービン監督『コントロール』

ポストパンクのバンド「ジョイ・ディヴィジョン」のボーカル、イアン・カーティスが23歳で自殺してから38年経った。今夜は映画『コントロール』を見て、いまも大好きなイアン・カーティスを偲ぶことにした。
当時はお金がないのに輸入レコード店で高価な最新輸入レコードを吟味して買うのが楽しみだった。レコードジャケットのデザインが素敵で買ったのがこの「アンノウン・プレジャーズ」だった。レコードを繰り返しかけていっしょに歌っていたあのころ。いまも大好きで、たくさん聞いてきたパンク、ニューウェーブのレコードの中でも一番好きな曲だ。

マンチェスターのバンドということも好きなところ。行ったことはないし、イギリスのどこらへんかもよく知らないが、ミステリーで身近になった。ニコラス・ブリンコウ『マンチェスター・フラッシュバック』は捨てがたい魅力のある街マンチェスターが出てくる。

映画を見終わってよかったなあというのみ。いまも好きです、イアン・カーティス。

「アンノウン・プレジャーズ」のレコードジャケットのデザインについて検索したら、「ジョイ・ディヴィジョンのアルバムカバーの謎が今明らかに」というサイトが出てきた。38年経って謎が解けました。

ダニー・ボイル監督『T2 トレインスポッティング』とイアン・ランキン

2017年製作のイギリス映画。1996年製作の『トレインスポッティング』から20年ぶりの続編ということで期待して見始めたんだけど、前作での印象的な画面以外はほとんど忘れていて、のめりこめなかった。
『トレインスポッティング』を見たのも封切りからかなり後になってからで、友人の男子が騒いでいたから促されて見たようなわけで。でも見たらとても面白かった。それで期待はしてたんだけど。もう一度前作を見てから気持ちの準備をして見たらよかったかもしれない。
今日はとりあえず、見たというだけ。

エディンバラの高地というか丘というか、木々の緑と空の色がよかった。
久しぶりにイアン・ランキン描くエディンバラを思い出した。ジョン・リーバス警部とシボーン・クラーク部長刑事。エディンバラの上品ではない地域で働く警官たちの物語だが、映画に出てくる壊れそうな住宅に彼らが出入りする姿が目に浮かんだ。

ベルトラン・ボネロ監督・音楽『サンローラン』

いい映画だった。すっごく気に入った。ベルトラン・ボネロ監督『サンローラン』(2014年,フランス・ベルギー合作、第67回カンヌ国際映画祭で上映され、セザール賞・最優秀衣装デザイン賞を獲得)紹介記事に「イヴ・サンローランの人生で最も輝き、最も墜落した10年間を描く」とあったので超期待して見はじめた。どんな役かヘルムート・バーガーが出るのも期待でわくわく。
1960年代後半、イヴ・サンローラン(ギャスパー・ウリエル)は共同経営者のピエール・ベルジェが増やしていく仕事に追われていた。映画・舞台衣装、コレクション、プレタポルテ、オートクチュールと絶え間なく追いかけてくるなか、モデルのベティとクラブに繰り出して遊ぶ。
美しい男ジャックと出会ったイヴはどんどん引き込まれていく。ジャックとともに酒と薬とに溺れ命を落としそうになる。
豪華な邸宅で贅沢な暮らしをしているが、心は虚ろ。そんなイヴを支えるスタッフがカバーしてショーの準備が出来上がっていくところがすごい。

最後のほうでヘルムート・バーガー扮する年老いたイヴが出てきた。豪華な部屋の椅子に座ってタバコをくわえ、オペラが好きだといいマリア・カラスのレコードをかけるようにいう。カラスの「蝶々夫人」の ある晴れた日に が美しく響く部屋でイヴは眠りについた。

ジャリル・レスペール監督『イヴ・サンローラン』 (2014年の映画)

サンローランの映画ができたと聞いたときから見たかった。サンローランの服をもっているわけでもないのに、サンローランのファンなのである。
若き日のサンローラン(ピエール・ニネ)と知り合い共同経営者で後援者として共に過ごしたピエール・ベルジェ(ギヨーム・ガリエンヌ)がサンローランの死後に一緒に買い集めた美術品などを競売に出すので、終生添い遂げたのだなとわかる。ちらっと解説を読んだら50年にわたって支えたと出ていた。

わたしはサンローランとほとんど同時代の人である。中学生のときにディオールの名前が姉たちの会話に出て、ロングスカートの人を見かけるようになった。
姉のファション雑誌のお古をもらって見ていたからファッション雑誌歴も長い。自分で買うようになって、『それいゆ』を経て『装苑』『ハイファション』『流行通信』『ミセス』など長いこと買っていた。サンローランは雲の上の存在だけど、今シーズンのドレスとか雑誌で見てよく知っていた。すごい人生を生きぬいたサンローラン、素晴らしいものを遺した。

チャド・スタエルスキ監督、キアヌ・リーブス『ジョン・ウィック:チャプター2』

第1作『ジョン・ウィック』がめちゃおもしろかったので、理屈抜きで2作目も見たいなと思っていた。とにかく格闘技がすごいし、撃ち合いがすごいし、カーチェイスもすごい。女も男もなく撃ち合い殴り合い殺しあうところがいい。伝説の殺し屋ジョン・ウィックに関わる人々は血にまみれて倒れる。死闘の背景に音楽や美術や装飾を美しく描き出していて、そこで人間がえげつなく殺される。
歌声が聞こえてオペラかと思ったら、DJも入ったバンドの演奏で、クラシックのような現代音楽のようなロックコンサートのようでいい感じだった。

キアヌ・リーブスは若い時から好きだったけど、歳をとっても清潔で正義感にあふれた役がよく似合う。
オトコマエが好き、清潔感あふれるオトコが好き、孤独そうなオトコが好き。なので理屈抜きで好きな映画だという。

デヴィッド・リーチ監督、シャーリーズ・セロン『アトミック・ブロンド』

シャーリーズ・セロンの名前はずっと前から知ってたが歌手だと思っていたほど無知だった。昨日はアメリカのロビイストをジェシカ・チャステインがやっているのを見たから、今日は理屈抜きでばったばったと投げ倒すような、撃ち殺すような映画が見たくて『アトミック・ブロンド』を選んだらアタリだった。

東西冷戦が終結してベルリンの壁が崩壊した時代の凄腕女性諜報員の話で、スパイ、二重スパイ、女性スパイ同士の同性愛もあって盛りだくさん。殴り合いがいっぱい、撃ち合いもいっぱい、刃物で殺し合い、階段を転げ落ち、カーチェイスあり、暴力につぐ暴力でお腹いっぱいになった。

女性と男性が殴りあい、撃ち合うシーンも多く、男性に負けない暴力をふるう主人公に肩入れして気分良く見ていた。
音楽も良くクラブシーンも楽しめた。

二度見て納得『女神の見えざる手』

ありがたいことにユーネクストでもう一回『女神の見えざる手』を無料で見られるということで、夕方早い時間から2回目を見た。2回見てようやくストーリーと物語の世界の全貌が理解できてよかった。
まず新聞の外国記事でしか知らなかったロビイストという職業のあらましがわかったことが大きい。新聞等でわかったつもりでもわからなかったロビイストという人間の仕事ぶりや私生活が出てきて納得がいく。
主人公のスローン(ジェシカ・チャステイン)が「肉を切らせて骨を切る」みたいな戦術さえ使って世の中を仕切っていくところがすごい。

最後は自分から仕掛けて逮捕され刑務所に入るのだが、数ヶ月後に弁護士が面会にきて、あと何ヶ月かで出られると教えてくれる。その間に常習していた薬から抜け出せたようでよかった。いくら美貌で頭が良くても薬で体をもたせ続けるのは無理だ。
しかし、ぴったりフィットした服と細いヒールの靴で闊歩していたけど疲れるだろうな。