膝の痛みは悲しみが溜まった痛み 群ようこ『かるい生活』から

群ようこの3冊の本(『ぬるい生活』『かるい生活』と『ゆるい生活』)を買った。ときどき出してよさげなところを読んでいる。ぬるくないし、かるくないし、ゆるくない生活をされていると思う。まとめて「たのしい生活」3部作といったらいいかな。

今日読んだ『かるい生活』に膝の痛みのことがあった。
群さんがお世話になっている漢方薬局の先生の言葉で
ーここから引用ー
「膝の痛みはね、悲しみが溜まった痛みだっていわれているわよ」
といわれた。それはいったい何かとたずねたら、その人が生まれてから今まで、表に出せずにぐっと堪え続けていた強い悲しみがあると、それが後年、膝の痛みになって出てくると教えられたというのだ。
ー中略ー
試しに膝の直接的な痛みとは関係がない、精神的な悲しみに効果がある調剤をして服用してもらったら、足の不具合が嘘のように治ってしまったのだといっていた。
ー引用終わりー
悲しみが溜まった痛み、わたしの膝の痛みはなんの悲しみが溜まったのだろう。耐え続けてきた強い悲しみがあるんだろうかと考える。
わたしは長い年月膝の痛みに耐えてきた。先日生まれてはじめて膝の水を抜いてもらったが、あのきれいな水はわたしのどんな悲しみを秘めていたのだろう。

エドワード・D・ホック『怪盗ニック全仕事 5』

いただいた分厚い本のページを繰ると文字が小さくてぎっしりと詰まっている。いつになったら読み終わるのかしらと気になったが、心温まる物語ばかりで読みやすくすいすい進んでいった。ブログにどんな感想を書こうかと戸惑ってしまって日にちが経った。「怪盗」ぶってないほんとうの「怪盗」の物語である。
最初の物語「クリスマス・ストッキングを盗め」はニューヨークのクリスマス物語である。ニックと彼のガールフレンドのグロリアにはクリスマスストーリーがよく似合う。この物語ではグロリアは活躍しないが、ニックが帰宅すると待っていて一緒にクリスマスを祝い、プレゼントの交換をする。グラスを傾けながらニックがさっきまで関わっていた事件の話をするだろう。グロリアにはプレゼントの品物にニックの暖かさが重なって素敵な夜になったろう。

怪盗ニックの仕事の最初はでっかい仕事や不可能をやってみせることが多かったように思う。それはそれで面白かったが、今回は心温まる結果になる仕事が多くなったように思う。
グロリアが関わると事件がもひとつ人間臭く感じられる。
ニックとグロリアは長い年月をいっしょに暮らしてきた。結婚はしてなくて内縁関係であるが、長年連れ添ってきた年月の重みがある落ち着いたカップルだ。
この物語が続いているのは、そしてニックの泥棒仕事が続いているのは落ち着いたグロリアがいるからだ。いるだけではなく、ニックの仕事を助け機敏に働く能力がある。家でひとりでパソコンを使ってなにかやる能力ももっている。

引用、314ページ。
彼女がジェット機からおりてくるのを見て、ニックは結婚証明書がなくても、長いあいだグロリアと一緒に暮らしている理由を改めて知らされた。頭には白髪が増え始めてきたのに、染色を拒んでいる。しかし、彼女にはまだ皮肉で陽気なユーモアのセンスがある。彼女は人生全体を娯楽、とくに彼女のために設計された娯楽だと見なしていて、ニックはその中でも最高の娯楽なのだ。おそらく、ニックが一緒にいて満足できる唯一の女性だろう。
(木村二郎訳 創元推理文庫 1300円+税)

『地球の歩き方 シカゴ 2018~19』

どっかへいきたいと歌の文句が口に出て、勝手な節回しでうたっている。どっかへいきたい〜 どっかってどこよ。狭いマンションのリビングのテーブルで本を読んでいるが、身が入らなくて、どっかへいきたい〜とつぶやく。いまのところは年末の不祥事から回復できてないからまだ先の話だ。

友人からのメールが退屈から救い出してくれた。
彼女、中野和子さんの原稿「ヴィクの街シカゴ」がいま発売中の『地球の歩き方 シカゴ 2018~19』に載っている。去年の夏に編集部の方から原稿依頼があったので、ちょうどシカゴ旅行から帰ったばかりの中野さんを紹介した。
他の会員にその話をして「コラム記事やねんけどね」といったら、「飛行機で座ったらいちばんに『地球の歩き方』のコラムを読むよ。そういうときにちょうどええねん」とのことだった。その言葉を今日編集者に伝えたら喜ばれたので、いいことを伝えたとうれしくなった。

わたしは『地球の歩き方 シカゴ1994ー95』に「ヴィクのシカゴ」を書いた。それから何度か改訂版を書いたがいつか途切れていた。今回は頼まれてよかった。ほやほやのシカゴネタを持った中野さんがいる。
興味を持った方は『地球の歩き方 シカゴ 2018~19』を買って読んでください。全体が読み物としても楽しいです。

大阪の川と橋と小野十三郎の詩集『大阪』

ちょっと用事があって大阪ドームの近くへタクシーで行った。二人で行くので、もし必要があればと車椅子を畳んで荷物入れに。帰りは暖かくて気持ちよいので相方が車椅子を押すという。帰り道はよくわかっているので、どの橋を渡って帰るかと相談した。千代崎橋は家の方からは離れているので松島橋がいいかな。そうそう大渉橋が渡りやすかった記憶がある。大渉橋へ行ったら橋の横に木津川に沿って松島橋まで遊歩道のようなものができていた。全部コンクリート造りだから色気はないけどよく清掃されて清潔な感じ。
気持ち良いので歩く練習をすることにして、空の車椅子を押しながら次の松島橋まで川のほとりを歩いた。気持ち良い。かなり足の具合もよくなってきた。歩きのためだけに、ここにきて散歩するのもよいなあ。

川に沿って歩いていると水鳥が浮かんでいるのが見えた。なかなか風流じゃん。大阪ええなあ。
小野十三郎の『大阪』を思い出した。
「姫島や千船では道はすべて海のほうに向かっている」というような一節があった。千船の会社で働いているとき大切にしていた詩集だ。自転車で川に沿ってずんずん下り海に近いところまで走ったことがあった。

メアリ・バログ『終わらないワルツを子爵と』

メアリ・バログの本が大好きだ。真っ当なイギリスの貴族の考えと生活が丁寧に描かれている。登場人物のどこまでも真面目で真剣な言葉や態度に惹かれて読み通す。
《サバイバーズ・クラブ》シリーズの第2巻。戦争で視力を失ったヴィンセントは家族の過保護を避けて自立しようと決意する。出会ったのはソフィアという少年のような女性だった。

訳者の山本やよいさんに送っていただいて二度読んだから、次に待っている友人にまわす。ずいぶん楽しんだ。毎度書いているけど甘い物語が大好きなのだ。

昨日の夜アンヌ・フォンテーヌ監督『ココ・アヴァン・シャネル』を見たら、フランスの贅沢な邸宅が出てきた。豪華な各部屋のインテリアがすごくて、家具や棚や引き出しの衣類の数々に目がまわった。
庭園の一郭に陣取ってピクニックするところは印象派の絵のよう。馬がたくさんいて庭園や周りの道を走れるし、ゲームもできる。

『終わらないワルツを子爵と』を読んだところだったのですごく参考になった。
孤児のソフィア(ソフィー)は貴族階級出身だが一人ぼっちでおばの家のお手伝いさんのように住み込んでいる。
その夜、ヴィンセントと出会い話して二人とも孤独なのを知る。
深夜おばの機嫌を損ねて家を追い出され教会に逃げ込んだソフィーをヴィンセントが助けて期限付きの求婚をする。女たち(祖母、母、姉3人)の過保護から逃れたい一心で。
その足でロンドンへ出て行ったのは前作『浜辺に舞い降りた貴婦人と』の主人公、ヒューゴとグウェンドレン夫妻のところ。グウェンの世話で翌日は美容師の手できれいになり、結婚式の衣装をはじめとしてひと財産ほどの衣装を買い込む。ヒューゴの屋敷ででソフィーは貴族のやり方を学び、結婚式と結婚初夜を迎える。《サバイバーズ・クラブ》のメンバーたちが二人を祝福し送り出す。

屋敷についた二人は驚く家族の中で自然に楽しくふるまい、家族らは二人を祝福するようになる。
目の見えないヴィンセントが自然にふるまえるように体を鍛えられるように配慮して庭園を考えたり、犬を訓練して目として使うとかソフィーの賢さがどんどん発展していくところが楽しい。
(山本やよい訳 原書房ライムブックス 1100円+税)

群ようこ『ぬるい生活』

群ようこさんの名前は『本の雑誌」を毎月買っていたときがあって昔から知っていた。雑誌に載ってるから読んだので単行本は読んだことがなかった。写真を見ると知的な印象で上手に年をとってはるなと思った。
『週刊現代』の群ようこさんのインタビュー記事「書いたのは私です」を読んだらおもしろかったので紹介されている『かるい生活』を読みたくなった。アマゾンを探したら、さきに出た『ぬるい生活』があったので中古本を注文したのが昨日届いた。読みかけたらおもしろいので、続けて読もうといま2冊(『かるい生活』と『ゆるい生活』)を注文したところ。
いちばんに家族と絶縁した経緯を知りたい。

蔵書の8割がたは処分したといっておられる。わたしは数年間にわたってぼちぼちと本の処分をしているがしきれないので弱っている。一度にどかんと出したらいいんだろうなと思う。そこらへんのことを知りたい。まあぼちぼち出してかなり減っているけど、これからが問題だ。捨てられない本が残っているんだから。

『ぬるい生活』は更年期の話が大部分である。読んでる途中で更年期真っ最中の友だちにこの本を買うようにメールした。
(朝日新聞出版 540円+税)

久生十蘭『十字街』が出てきた

出てきたっていっても、30年も前にそこへ置いいたのは自分だから驚くことではないが、好きな作品が手元にあるのがすっごくうれしい。
久生十蘭『十字街』が朝日新聞夕刊(1951/1/6日-6/17)に連載されたとき、わたしはこどもだったが毎日夕刊の配達が楽しみだった。まだ見ぬ(いまもまだ見てないが)パリに生きる主人公たちのことをどきどきしながら読んでいた。エキゾチックな挿絵も素敵だった。

それから何十年も経って三一書房から久生十蘭全集が出るのを知り無理して手に入れた。1970年だから約20年後だがすごくおもしろく読んだのを覚えている。その頃は本を買う量が半端でなく好きな作家の全集を揃えることに夢中になっていた。

結局、久生十蘭の全集は「顎十郎評判捕物帳」ぐらいしか読まずにさっきまで積んであった。さっきもう読むことはないなと思って捨てる本の中に入れた。『十字街』だけちぎり取ってファイルした。いまは読みたい作品があれば、久生十蘭コレクション (朝日文芸文庫)が手に入る。生きていれば海野弘さんの解読も買って読める。(久生十蘭『魔都』『十字街』解読 海野弘 右文書院)
ああ、本棚を調べてよかった。まだ出てきそう、ほとんどゴミになるけど宝が隠れているかも。

読書生活再開

いまようやくサラ・パレツキー『フォールアウト』を読んでいる。おもしろくてどんどん進み3分の1までいった。明日も読み続けるだろう。なんかようやく本来の自分にもどった感じ。

去年の11月くらいからちょっと硬い本を連続で読んでいた。『ハンナ・アーレント』は映画を見てから伝記を読み、夫のハインリッヒ・ブリュッヒャーとの間柄に憧れた。著書は読もうと思いつつまだ読んでない。同じ頃に映画『サラの鍵』を見て、慌てて原作(タチアナ・ド・ロネ)を買って読んだ。原作も映画もこの日記に感想を書いてある。1942年ナチに占領されたパリでユダヤ人たちが逮捕されヴェルディヴ→アウシュヴィッツに送られ殺された。生き残った一少女のそれからの人生のつらさを掘り下げて書いた秀作。

続いて山本やよいさんが訳された『否定と肯定』をいただいて、これは真剣に読んだ。アメリカの大学で現代ユダヤ史を教えるデボラ・E・リップシュタット教授の法廷での闘いが、繊細に真剣に記されている。

12月中は読むのに精一杯で、真面目な本たちのそれぞれの感想を書いてないのは頭も疲れて文章化ができなかったから。
いま2月も半ばになって読書欲が湧いてきた。続いて感想を書く欲が湧いてくる予感がする。
いま、手元にある読みかけ本は、鹿島茂『パリの秘密』『明日は舞踏会』、富岡多恵子『釋迢空ノート』、白波瀬達也『貧困と地域』、まだまだあるので当分困らない、どころかあって困っちゃう(笑)。

ロマンスが好き メアリ・バログ『浜辺に舞い降りた貴婦人と』

翻訳者の山本やよいさんにいただいた。わたしはロマンスが大好きなのでいただいてすぐに読み、友人たちを一回りした本がもどってきたのでまたじっくりと読んだ。このあとはまた他の友人にまわす。
メアリ・バログの本は以前に数冊のシリーズを読んでおり、達者な筆で女性と恋愛模様を書く力に魅せられてきたが、今回も惹きつけられた。

物語はコーンウォールの海辺で知り合った子爵未亡人のレディ・ミュア、グウェンドレンと元軍人のトレンサム卿、ヒューゴが繰り広げる愛の物語。まじめに結婚や生活を考え語り合う二人の会話がすがすがしい。ロンドンの社交界や田舎の屋敷での泊まりがけで続くパーティの描写が楽しい。

ロマンス小説を最初に意識して読んだのはジェイン・オースティンだった。映画『ユー・ガット・メール』でメグ・ライアン扮する子供向けの本屋の女主人が「高慢と偏見』を200回読んだと話していて、わたしは20回だ!とびっくりしたんだった。その前後にはコリン・ファースがダーシーさんを演じているDVDを買って毎晩見てた。リージェンシーロマンス大好きなんだとその頃気づいたんだった。
お金持ちたちが主人公のラブロマンスだからそこそこにしておこうと思っても、やっぱり真面目な恋物語が大好きだ。

本書では甘い恋愛描写に具体的なセックス描写がたくさん付け加えられて愛好者にはたまらない魅力の本。シリーズ1作目なのでこれからが楽しみ。
(山本やよい訳 原書房ライムブックス 960円+税)

クレイグ・ライス『スイート・ホーム殺人事件』

この本もこどものころからの愛読書。父親と次女と長男と三女のわたしが愛読していて、登場人物の、次女エープリル、弟アーティー、長女ダイナの会話を真似して「オコダカマカリキ」とみんなでやっていた。彼らの会話の「オダマリ」に「カキクケコ」をくっつけた簡単な合言葉だが、自分の言葉にくっつけてしゃべるのは面倒だった。紙に書いて読みながらしゃべったっけ。たしか小6だった。

いまここにある文庫本は1976年発行のもの。それでも42年前か〜 何十回も読んでいるからぼろぼろである。今回読んだらもう読むことはないから捨てる。20年くらい押入れで眠っていた本で新訳が出たら買うつもりだったが出なかったなあ。
クレイグ・ライスの本はけっこうあるがもういいかな。持っていても荷物だな。ヘレンたちシカゴの3人組好きだったけど。

なんと、文庫本は42年前だけど『宝石』という雑誌で読んだのはもっと古い本だった。「戦後」という時代に父親が買い込んだもので、我が家はぴかぴかのアメリカ文化を汚い古本やゾッキ本で学んだ。本の中には主人公たちが買うお菓子と家で作るお菓子があって憧れたものだ。

作家のお母さんすてき、ビル・スミス警部かっこいい。こどもたちはかしこい。
これからもう一度あちこち読んでからおさらばする。(長谷川修二 訳、小泉喜美子 解説。ハヤカワ文庫)