ミクシィ・コミュニティ「昔 素敵な少女雑誌があった」を懐かしむ

昔の少女雑誌「白鳥」のことを「幻の雑誌『白鳥』と内田静枝編『長沢節』というタイトルで2007年1月に書いている。
そのころJさんが主催していたミクシィのコミュニティ「昔 素敵な少女雑誌があった」にずいぶん書き込んだ覚えがあるが、いつの間にかコミュ自体が消えてしまった。60年くらい前の少女雑誌の写真をたくさん見せてくださってすごくありがたくうれしかったのだが。こんなことなら気に入った写真だけでも保存しておけばよかったと思ったが後の祭り。でもこどものときから少女時代にかけて心の友だった少女雑誌の写真を再び見られた喜びの気持ちは残っていてそれだけでも充分と思っている。

それから7〜8年経って、最近、Jさんがミクシィに再度出てこられたのでちょっと言葉を交わした。そしたらこのサイトを教えてくださった。
吉本由美さんによる『吉本由美のこちら熊本!』というサイトの<a href=”http://kumamonne.blog.fc2.com/blog-entry-66.html”_blank”>「小さな町の小さな図書館は少女雑誌の宝島」(2013.05.04)</a>という記事。いざとなったら熊本の菊陽町図書館に行ったらいいのである。多分行かないだろうが、そこに存在していると思うだけでも満足。
Jさん、教えてくださってありがとうございます。

そういえば、こどものとき読んだ本を探して、千里の国際児童図書館にあるのがわかり、コピーしてもらったことがあった。
願えば叶うものだと思ったものだ。願いにはかなりの努力が必要だが・・・。今回はJさんが当時わたしが喜んだことを覚えてくださったからね。そしてミクシィをやめずにいたから。

吉田喜重監督『エロス+虐殺』〈ロング・バージョン〉

1970年公開の作品。公開時に見た記憶があるから45年前だ。覚えていないところばかりだが、思い出したところもあり。今回は216分のロング・バージョンだから公開時の映画館では1時間近く短縮されていたと思う。

なんとなく興味を持って買った「ユリイカ」(高峰秀子特集号)で、吉田喜重監督のインタビューを読んで、論理的な人だと驚いたのが最初だ。次に岡田茉莉子の「女優 岡田茉莉子」を買って読んだ。この本がまたすごくページ数が多くておもしろく、しばらく岡田茉莉子さんオンリーで過ごした。
岡田茉莉子と吉田喜重監督に惹かれて次に買って読んでいるのが吉田喜重「小津安二郎の反映画」(岩波書店)。いま注文中が「ユリイカ」(吉田喜重特集号)で明日くらい届くはず。
ということで、ミステリ読書はお休み中である。
その流れで今日はYouTubeで「エロス+虐殺」を見たというわけ。まだまだ見ていないのがあるのを調べて、さっき「鏡の女たち」のDVDを注文した。

ありゃ、もう2時半だ。映画の感想はまた今度書くことにして今夜は寝る。

映画『水で書かれた物語』岡田茉莉子と吉田喜重監督

岡田茉莉子が書いた「自伝 岡田茉莉子」を読んでいたら、小津安二郎、木下恵介を筆頭に日本映画の監督がたくさん登場するので、日本映画見たい熱が上がっている。特に茉莉子さんの夫である吉田喜重監督の映画が見たい!!
わたしが見たのは「秋津温泉」「エロス+虐殺」「嵐が丘」だけだ。今夜見た「水で書かれた物語」もすごくよかった。
「ユリイカ」でのインタビューを読んだら本も読みたくなって、おととい注文した「小津安二郎の反映画」が今日はまだだったが明日には届くだろう。

さっきまで「水で書かれた物語」を見て、その後に特典として吉田監督と岡田茉莉子さんへのインタビューがついていたので、時間が気になったが見てしまった。たしか2004年に行われたNHKのものだった。とにかくカッコいいカップルである。

谷崎潤一郎『鍵』

ちょっと前のことだが梅田で待ち時間があったときに読むものをなにも持ってないのに気がつき、大阪駅構内のイカリスーパーの横にある本屋に入って文庫本を探した。今年になってから川端康成の文庫本をけっこう買って読んでいる。新い文庫本の紙の手触りが気持ちよい。新しいといっても本が新しいのであって中身は古典である(笑)。アマゾンの中古本にまさかあると思わなかった井上靖の「夢見る沼」なんか古い本があっただけでありがたかったが、文庫本は新本が好きである。
ざっと眺めてその日は谷崎潤一郎にした。谷崎は好きでけっこう読んでいるが、読んでなかった「鍵・瘋癲老人日記」にした。発表当時はずいぶん話題になった作品である。

そのときは本は不要だったので帰って未読本の箱に入れておいたのを、数日前から他の本と並行して読み出した。内容がきついので今回は「鍵」だけにした。発表当時にいろんなところで紹介されていたからどういう小説かわかっているけど、いざ読むとすごさがあって感嘆した。

夫婦ともに秘密の日記を書いていて、相手が読んだか気にしていると書いて、こういうふうに隠したとかセロテープを貼ったのを剥がした跡とか、鍵が落ちていたとか、中年というより老年にさしかかろうとしている夫婦の話。酔ってセックスして、熟睡しているところをポラロイドカメラで撮って・・・
読み終わったとき、これは「文学」だと感じた。
(「鍵・瘋癲老人日記」 新潮文庫 630円+税)

藤枝静男『志賀直哉・天皇・中野重治』

アマゾンから読む気を誘う本の広告がよく入るが、本書もミステリとか翻訳小説のあいだに入っていた。この2年ほどのあいだに藤枝静男の作品を何冊か買ったからだろう。最初に読んだのが、一昨年の4月に雑誌「ワイヤード」でメディア美学者の武邑光裕氏が選んだ6冊のうちに入っていた「田紳有楽・空気頭」だった。すごい小説だった。びっくりしたなあ、もう。いまそのとき書いた感想を読んだがすごいと思った気持ちが現れていて笑える。

今回はタイトルに惹かれた。とはいえ、志賀直哉の作品を読んだのは中学の夏休みで、日本文学全集が家にあったからたくさん読んだ中の一人である。なにがいいのかよくわからんかったままにいまにいたる。

中野重治はハタチくらいで夢中になり無理して全集を買った。「むらぎも」がお気に入りだった。いくつかの詩はそらで言えるほどだった。ほら、雨の品川駅とかね。でも30歳くらいのときに北海道旅行するために古本屋に売ってしまった。
その頃から日本文学より翻訳物ばかり読むようになって室生犀星全集とかも売ったなあ。

二人の作家のあいだに「天皇」があるのにも惹かれたのだが、自分の本にしてみると読む気力がない。読まなくてもわかる部分があるような気もする。で、その前に収録されている志賀直哉について書いている随筆のような文章を楽しんで読んだ。藤枝さんが若い頃に志賀直哉に私淑していて、お宅に伺ったり(一日置きに!)していた様子が微笑ましい。

はじめのほうにあった言葉を引用する。
【誰しもそうであろうと思うのであるが、「雑談」を読むと、中野重治という強情で個性的な人間が、志賀直哉という同じく巌のように強い個性と力量を持った芸術家にむかって、まるで相手の懐に頭をおしつけてごりごりに揉みこむような気合いで迫って行く光景が思い浮かんでくるのである。中野氏の心中に内在する畏敬の念が、こういう姿勢のうちに否応なしに現れている点にも快感がある。】
これだけでわたしは納得した。でも志賀直哉を読んでないのでは話にならない。そのうちに読んで、ここにもどることにする。
(講談社文芸文庫 1500円+税)

スコットランドの地図(リーバス警部)

蚊取り線香とかゴキブリホイホイとかうちわとか夏の必需品を物入れから引っ張り出したら、向こう側に地図の箱が見えた。段ボール箱に古い紙の地図がぎしっと詰まっている。
登山に夢中だった20代前半に買った山の地図は整理してしまったから、その後は地図を見るだけのために買ったものだ。スコットランドとアイルランドの料理やイラストの趣味の地図は見るだけで楽しい。タータンチェックの地図もあって捨てがたい。
新聞全紙大のイギリス地図にはあちこちの都市の名前に赤線が引いてある。そのころはイギリスのミステリはドロシー・L・セイヤーズしか読んでなかったから、ミステリのために買ったのではない。イギリス児童文学研究会に所属していたとき読書会のために買ったのかな。友だちがエディンバラ大学に留学したときにエディンバラに線を引いたのかもと、回想がぐるぐるする。

ここ10日間くらい毎日どこかのページを読んでいるイアン・ランキンの「他人の墓の中に立ち」で、エディンバラ警察のリーバス元警部が捜査で北のほうへ行くところを地図で追った。インヴァネス、アバディーン、パースがすぐに見つかった。A9号線はこんなところを通っているのかと思った。昨日はネットでネス湖やらいろいろいってみたから今日は紙の地図で空想をふくらませている。

イアン・ランキン「他人の墓の中に立ち」(2)

リーバス元警部は墓地で在職中に同僚だった男の埋葬に立ち会っている。死者は制服組だったが話がしやすく役に立つ情報をもらったこともある。帰り道、車に乗ってジャッキー・レヴィンのCDをかける。リーバスには“他人の墓の中に立ち”と聞こえるが実は“他人の雨の中に立ち”と歌っている。

リーバスのいまの仕事は昔の殺人事件の被害者について調べることだ。重大犯罪事件再調査班の事件簿には11件の被害対象がある。そのうち墓がある場合はそこへ行ってみた。いくつかには家族や友人からの花が供えられていた。添えられたカードに名前があれば何の役に立つかわからないが手帳に控えファイルに入れる。
リーバスには最近まともな身分証すらない。定年退職した警察官で、民間人としてたまたま警察署で働いているだけだ。班の中では上司だけが警察官である。しかも、この班は近く新たに発足するはずの未解決事件特捜班が動き出すと不要になる。

リーバスが部屋にいるとき電話がなり、受付がマグラス警部に会いたいという女性ニーナ・ハズリットが来ていると告げる。同僚に聞くとマグラスは15年前に退職している。リーバスは彼女に会って話を聞く。ニーナの娘サリーは1999年の大晦日に行方不明になって以来連絡がない。18歳になったばかりだった。サリーの事件は未解決のままである。ニーナはその後に起こった未解決の若い女性の殺人事件を列挙して、みんなA9号線に関わっていてサリーの事件が発端だったという。しかも新しく同様の事件が起こったと告げる。
リーバスは元同僚のシボーン・クラーク警部をランチに誘い新しい事件について聞く。三日前にアネットが家を出たまま帰ってこず、風景写真だけが携帯電話で送られてきた。

そしてリーバスの命がけの捜査がはじまり長い長い物語がはじまる。
(延原泰子訳 ハヤカワミステリ 2200円+税)

イアン・ランキン「他人の墓の中に立ち」(1)

ジョン・リーバス警部はエジンバラ警察署を2006年に定年退職した。現役最後の事件「最後の音楽」では、深く関わり過ぎて上層部から睨まれつつ必死の捜査を続けて事件を解決する。
退職したリーバスに元部下のシボーン・クラーク部長刑事が醸造所めぐりツアーを退職祝いに贈ってくれた。そこで出くわした事件を解決するのが短編「最後の一滴」。

はじめてリーバスを知ったのがポケミスの「黒と青」で、読むなりとりこになり、それ以来翻訳が出ると買い続けている。スコットランドがなんとなく好きでエジンバラに憧れていたが、リーバス警部のエジンバラはえげつない暗部ばかり出てくる。
とにかく長い年月イアン・ランキンとジョン・リーバス警部のファンであったし、いまも彼以上に好きな警察官はいない。ダルグリッシュさえも。
2011年にシリーズ最後の「最後の音楽」を読んだのだから長い空白だった。それが今回、重大犯罪事件再調査班に所属して過去の迷宮入り事件の埃を払い落とすという仕事についている。

2014年に新しいシリーズ「監視対象」が出た。主人公マイケル・フォックス警部補はロジアン・ボーダーズ州警察職業倫理班(PSU)に所属する警官である。作品には納得したけどフォックスが好きとはまだ言えない。
そしたら今回「他人の墓の中に立ち」では、フォックスはリーバスに批判的な立場に立って出てくる。まだ全部読んでないから言えないけど、最後はリーバスのことを理解して握手するような気がするんだが・・・。
早くこれをアップしてしまってあと100ページほど残っているのをできたら今夜中に読んでしまおう。
(延原泰子訳 ハヤカワミステリ 2200円+税)

篠田桃紅「一〇三歳になってわかったことー人生は一人でも面白い」

先に自叙伝を読んだので理解しやすかった。
本書は大きく4章に分かれ、4章が40項目に分かれたわかりやすい構成になっていて楽しく読めた。
高齢者の文章によくある青汁を毎日飲んでいるとか体操しているとかの健康法などいっさいなく、楽しく一人暮らししていることが伝わってくる。自然体なんだけど大きな声で自然体でやってますというところがない。
ずっと着物でとおしてはるそうだが、自慢するでなく人に勧めるでなく、自然に着物を着ておられる。ふと、剣豪 塚原卜伝が歳をとって静かに暮らしている食事中に斬りこまれ、卜伝は鍋の蓋を盾にして刀を止めたところを思い出した。ほんま、名人の暮らしをされていると感じた。
各章の終りにはまとめの言葉が入っていて、おっ!と思うところ何カ所もあり。
これ↓気に入った。

なんとなく過ごす。
なんとなくお金を遣う。
無駄には、
次のなにかが兆している。
必要なものだけを買っていても、
お金は生きてこない。

すごくおしゃれで楽しい人だ。
あと、恋の話を聞きたかったと思うのは野暮かなあ。
(幻冬社 1000円+税)

篠田桃紅『百歳の力』

先週の「週刊現代」に篠田桃紅さんのインタビューが載っていてた。今年4月に発行された篠田桃紅「一〇三歳になってわかったことー人生は一人でも面白い」(幻冬社)について語っていてすごく興味を惹かれた。
先週本屋に行ったら新刊書のところに平積みしてあって横にもう一冊「百歳の力」(集英社新書 2014年6月発行)があったので両方買った。
順番に読もうと「百歳の力」(103歳の現役美術家唯一の自伝!)を先に開いた。

桃紅さんは1913年、旧満州・大連生まれ、百歳を過ぎた今も現役で活動を続けている美術家である。5歳から父に墨を習いはじめた。父は「桃紅李白薔薇紫」からとって「桃紅」と号をつけてくれた。
当時は女学校へ行くということはすぐに結婚するということであり、いろいろな友だちの結婚を見ることになる。自分は結婚しないで生きていこうと決心し、お兄さんが結婚するので邪魔にならないように家を出る。書を教える場所を借りると生徒がたくさん集まった。住まう家も借りた。
戦争中は空襲から死を免れ、年老いた両親とお腹の大きい妹とともに疎開する。苦労の末に結核に罹るが女医さんの「治る」という言葉に勇気をもらって闘病する。
40歳代でアメリカに行くチャンスに恵まれた。当時のアメリカ行きの大変な事情が書かれていて勉強になる。

そしていま、103歳になる美術家は「ゲテモノ、という言葉があるけれど、それは当たっているかもね。でも、まがいものではないつもり。」と言い切る。
(集英社新書 700円+税)