ジェームズ・アイヴォリー監督『上海の伯爵夫人』

2005年の英米独中の映画、カズオ・イシグロの脚本で、1936年の上海の夜の世界が舞台。重要な日本人役マツダを真田広之が演じている。撮影がクリストファー・ドイル。

ヒロインのロシアから亡命してきた元伯爵夫人ソフィアをナターシャ・リチャードソン(ヴァネッサ・レッドグレイヴと映画監督トニー・リチャードソンの娘、2009年没)が演じている。そしてヴァネッサ・レッドグレイヴとその妹リン・レッドグレイヴがソフィアの家族の役で出演している。

ソフィアは娘や家族を養うためにクラブで働いている。夜中働いて朝帰り、椅子で仮眠していると朝になりベッドが空いてようやく横になれる。出勤の準備をしていると家族から化粧しているところを娘に見せないようにと言われる。

ジャクソン(レイフ・ファインズ)は元外交官で、事故で娘を失い自分は失明してあてのない毎日を送っていたが、クラブでソフィアに親切にされて彼女を気にするようになる。競馬で当てた彼はクラブ「The White Countess」を開店し、ソフィアを店の中心に据える。
毎夜ジャズやシャンソンやダンスで享楽の上海の夜が続くが、なにかが欠けているように思い、ジャクソンは客のマツダに打ち明ける。マツダはこの店に足りないものは政治的緊迫感だと言い、その後は共産党、国民党、日本人が遊びにくるようになる。マツダの不気味さを真田広之がよく出している。

ようやく昔の知り合いと連絡がつき、ソフィアの一家は香港へ行けるようになるが、その費用はソフィアがジャクソンに出してもらったお金である。そして、金額不足としてソフィアひとりが取り残される。泣き叫ぶ娘を発見してソフィアは抱きしめる。

戦火のちまたになった上海の町を人々は逃げまどっている。自動車で出かけたジャクソンは行き詰まり人力車に乗り換え、そして歩いて杖をなくす。
なんとか会えたジャクソンとソフィアと娘は寄り添って上海を脱出する。