デヴィッド・ヒューソン『キリング 1 事件』

訳者の山本やよいさんからいただいた本。風邪で体力低下のためコージーなものばかり読んでいたので遅くなったがようやく読み終った。読みはじめたら一直線。
表紙カバーに〈デンマーク史上最高の視聴率を記録した警察ドラマ! シーズン1・TVシリーズの小説版〉とある。どういうことかしらと、解説から読み出した。
いま北欧ミステリの人気が高まっていて「ミレニアム」三部作が世界的人気である。わたしは「ミレニアム」は読む気が起こらないのだが、その他の北欧とドイツの作品はけっこう読んでいて、その魅力にはまっている。
本書はデンマークの首都コペンハーゲンを舞台にした警察小説である。元々はソーラン・スヴァイストロップのオリジナル脚本によるテレビドラマであるが、イギリスでの人気があがったためにイギリスで小説化が企画された。そして執筆者がデヴィッド・ヒューソンに決まった。
デヴィッド・ヒューソンはヨークシャー出身のイギリス人で、ローマ市警のニック・コスタ刑事が活躍するシリーズ(わたしはニック・コスタ刑事ファン)や、ヴェネツィアを舞台にした作品がある異色の作家である。英語で書かれたデンマーク警察の物語が自然に読めるのもうなづける。

小説「キリング」は4回に分けて出版される。本書は「1 事件」で、物語の最初は19歳のナナが必死で森を逃げまわるところからはじまる。すぐ次の章になって、デンマーク警察の女性警部補サラ・ルンドが登場する。彼女は婚約者のベングトと前の夫との息子のマークと3人でスウェーデンへ引っ越すことにして、今日はデンマーク最後の日である。後任のイエン・マイヤがやってくる。気の合いそうにない二人のところへ上司ブシャードが来て、仕事だという。
発見されたのは血のついたブラウスとレンタルビデオのカードだった。カードの名前はナナの父親タイスのものだった。二人の警察官は家を訪ねてナナが在宅かと聞く。
やがて、運河で車が見つかりドアをこじ開けるとナナの死体が現れた。車は市長選挙立候補者のハートマンの選挙活動用のものだった。
サラ・ルンドに上司はスウェーデン行きを延期するように要請する。今週中はいると返事をしたサラにイエン・マイヤはすぐに交代したいという。サラの指揮の下では働きにくい。だがサラはすでに事件にはまりこんでいる。

サラ・ルンド、カッコいい。話を聞くのがわたしの仕事ですと執拗に質問する。大きな目でじっと見つめられると相手はたいてい話し出す。もうデンマークの自分の住まいは片付けてあるので、母親の家に泊まっての出勤である。婚約者に謝りつつご飯を食べるのも忘れて捜査にかかりきる。
第2部が待ち遠しい。
(山本やよい訳 ハヤカワ文庫 780円+税)