P・D・ジェイムズ『ナイチンゲールの屍衣』(2)

それぞれの看護婦たちの生活や過去が調べられる。みんな個性的で恋人のいる人や女性どうしで仲良くしている人たちもいる。
主任教官ミス・ロルフは医者になりたかったが父親が女が教育を受けることを良しとしなかった。ダルグリッシュとの会話で父親の話をし男性の医師たちを鋭く批判するが、ダルグリッシュはふさわしい返答が思い浮かばない。
いま気がついた。ダルグリッシュの魅力ある独身女性たちとの丁々発止の会話がこの本の魅力かもしれない。

ダルグリッシュは事件をほとんど解明しかけたと思う。あと一日二日で解決できる。
ダルグリッシュがナイチンゲール・ハウスからホテルへ帰ろうと歩いているとき、突然、背後から襲われる。向かい合おうとした瞬間に強烈な一撃が左のこめかみから肩へそれて、彼は前のめりに倒れた。しばらくして看護婦の一人が通りかかり助け起こして実技室へ連れて行く。外科医が処置しようとするが、ダルグリッシュは麻酔を拒んで痛みをこらえつつ縫ってもらう。

マスターソン巡査部長は捜査中に話を聞くため一人の女性と一夜をダンス場で過ごす。その報告を聞いたダルグリッシュの言葉。
【警官でいながら、常に思いやりを失わないでいるということは、できそうもないことだと思う。しかしもしきみがそういう無慈悲な行いそのものを愉快に思うようになったら、多分それは警官をやめるべき時だよ。】
(隅田たけ子訳 ハヤカワポケットミステリ)