木下恵介監督『不死鳥』

昨日に続いて木下恵介監督作品を見た。8作目で製作は1947年。1945年だけは1作もなく、その前後は半年に1本という早さだ。
昨日の「大曽根家の朝」に比べて「不死鳥」は完成度が高くて見応えがあった。

小夜子(田中絹代)は、戦地で亡くなった夫の真一(佐田啓二)との間に生まれた息子を育てつつ、夫の生家で両親や弟や妹とも折り合いがよく自分の居場所を確立している。
学生時代に出会った二人は内密の交際を続けてきた。真一は小夜子を父親に紹介するが許されない。
招集された真一が出発するまで二人は片時も離れないで過ごす。出征シーンや千人針を街頭で頼むシーンもあり、緊迫した雰囲気の中で恋人たちは自分たちの時間を持つ。
小夜子は弟と軽井沢に疎開して学校の先生をしながら農作業にも励む。
真一は1週間の休暇が決まった。小夜子のところへ真一の父親がやってきて息子とは結婚させないというが、結局小夜子の純情にほだされて帰国中に結婚ということになった。
そして真一は戦死し、小夜子は思い出を胸に秘め、子どもを胸に抱いて生きている。次男が結婚して家を継ぎ息子がもう少し大きくなったら、ミシンができるからどこかで店を持ちたいと将来も見据えている。

田中絹代は女学生から恋する女へ、そして子持ちの戦争未亡人の役を自然に演じていてすばらしい。佐田啓二はこれがデビュー作だそうですごく初々しい。