P・D・ジェイムズ『殺人展示室』再読と「百合」

図書館で借りて最初に読んだのは2010年4月、今回約5年ぶりに自分の本で読んだ。
本書の翻訳発行は10年前なので、その間こんなおもしろい小説を読まなかったことを悔やむ。偏った読書をしていたものだ。イギリスの警察小説はレジナルド・ヒルのダルジール警視に夢中になったがずいぶん遅かった。翻訳されるのを最初から読んできたのはイアン・ランキンだ。ピーター・ラヴゼイもコリン・デクスターもジョセフィン・テイも読み出したのは遅かったが、夢中になって翻訳されたほとんどの作品を読んでいる。
まあ、大先輩のドロシー・L・セイヤーズはずっと昔から読んでいるからいいとするか。

お正月に川端康成の作品を何冊か読んで美しい日本語に魅了されたのだけれど、その後に本書を読んで今度は論理的な英語(翻訳されたものであっても)にほとほと感心した。
並行して雑誌「ユリイカ」の「百合」特集を読んで自分なりにわかった気がした。
百合:レズビアン=川端康成:P・D・ジェイムズ
吉屋信子や川端康成の作品は麗しい「百合」であって文句のつけようがない美しさ。だが、ダルグリッシュ警視長と特別捜査班の論理はレズビアンとしての堂々たる態度みたいなもの。
あくまでも勝手な想いである。
「殺人展示室」のアダム・ダルグリッシュ警視長、ケイト・ミスキン警部、ピアーズ・タラント警部、読み返して懐かしかった。シリーズ最後まで読んで結末わかっているから気分良い。
(青木久恵訳 ハヤカワポケットミステリ 2005年2月発行 1800円+税)