グザヴィエ・ドラン監督・脚本・製作・主演『マイ・マザー』

ツイッターなどで名前ばかり目にしてまだ作品を見たことがなかった監督で俳優のグザヴィエ・ドランの第1作『マイ・マザー』をようやく見た。2009年に製作されたカナダの映画。
わたしの好みの作品ですごくよかったとしかいいようがない。
ユベール少年の美しさに惹かれた。友人もいい。母親はその世代の女性のいやらしさと人の良さがあってそんなもんよねという感じ。若くしてうまい作家である。
女性の先生がよかった。生徒を泊めるのは禁じられているといいながら泊めてくれて、ユベールに才能があるから彼が書いた詩を新人賞に応募したという。
お別れに詩集をくれて◯ページの詩を読むようにいう。だれのなんという詩集だろう。

今日はイアン・カーティスの命日、アントン・コービン監督『コントロール』

ポストパンクのバンド「ジョイ・ディヴィジョン」のボーカル、イアン・カーティスが23歳で自殺してから38年経った。今夜は映画『コントロール』を見て、いまも大好きなイアン・カーティスを偲ぶことにした。
当時はお金がないのに輸入レコード店で高価な最新輸入レコードを吟味して買うのが楽しみだった。レコードジャケットのデザインが素敵で買ったのがこの「アンノウン・プレジャーズ」だった。レコードを繰り返しかけていっしょに歌っていたあのころ。いまも大好きで、たくさん聞いてきたパンク、ニューウェーブのレコードの中でも一番好きな曲だ。

マンチェスターのバンドということも好きなところ。行ったことはないし、イギリスのどこらへんかもよく知らないが、ミステリーで身近になった。ニコラス・ブリンコウ『マンチェスター・フラッシュバック』は捨てがたい魅力のある街マンチェスターが出てくる。

映画を見終わってよかったなあというのみ。いまも好きです、イアン・カーティス。

「アンノウン・プレジャーズ」のレコードジャケットのデザインについて検索したら、「ジョイ・ディヴィジョンのアルバムカバーの謎が今明らかに」というサイトが出てきた。38年経って謎が解けました。

ダニー・ボイル監督『T2 トレインスポッティング』とイアン・ランキン

2017年製作のイギリス映画。1996年製作の『トレインスポッティング』から20年ぶりの続編ということで期待して見始めたんだけど、前作での印象的な画面以外はほとんど忘れていて、のめりこめなかった。
『トレインスポッティング』を見たのも封切りからかなり後になってからで、友人の男子が騒いでいたから促されて見たようなわけで。でも見たらとても面白かった。それで期待はしてたんだけど。もう一度前作を見てから気持ちの準備をして見たらよかったかもしれない。
今日はとりあえず、見たというだけ。

エディンバラの高地というか丘というか、木々の緑と空の色がよかった。
久しぶりにイアン・ランキン描くエディンバラを思い出した。ジョン・リーバス警部とシボーン・クラーク部長刑事。エディンバラの上品ではない地域で働く警官たちの物語だが、映画に出てくる壊れそうな住宅に彼らが出入りする姿が目に浮かんだ。

ベルトラン・ボネロ監督・音楽『サンローラン』

いい映画だった。すっごく気に入った。ベルトラン・ボネロ監督『サンローラン』(2014年,フランス・ベルギー合作、第67回カンヌ国際映画祭で上映され、セザール賞・最優秀衣装デザイン賞を獲得)紹介記事に「イヴ・サンローランの人生で最も輝き、最も墜落した10年間を描く」とあったので超期待して見はじめた。どんな役かヘルムート・バーガーが出るのも期待でわくわく。
1960年代後半、イヴ・サンローラン(ギャスパー・ウリエル)は共同経営者のピエール・ベルジェが増やしていく仕事に追われていた。映画・舞台衣装、コレクション、プレタポルテ、オートクチュールと絶え間なく追いかけてくるなか、モデルのベティとクラブに繰り出して遊ぶ。
美しい男ジャックと出会ったイヴはどんどん引き込まれていく。ジャックとともに酒と薬とに溺れ命を落としそうになる。
豪華な邸宅で贅沢な暮らしをしているが、心は虚ろ。そんなイヴを支えるスタッフがカバーしてショーの準備が出来上がっていくところがすごい。

最後のほうでヘルムート・バーガー扮する年老いたイヴが出てきた。豪華な部屋の椅子に座ってタバコをくわえ、オペラが好きだといいマリア・カラスのレコードをかけるようにいう。カラスの「蝶々夫人」の ある晴れた日に が美しく響く部屋でイヴは眠りについた。

ジャリル・レスペール監督『イヴ・サンローラン』 (2014年の映画)

サンローランの映画ができたと聞いたときから見たかった。サンローランの服をもっているわけでもないのに、サンローランのファンなのである。
若き日のサンローラン(ピエール・ニネ)と知り合い共同経営者で後援者として共に過ごしたピエール・ベルジェ(ギヨーム・ガリエンヌ)がサンローランの死後に一緒に買い集めた美術品などを競売に出すので、終生添い遂げたのだなとわかる。ちらっと解説を読んだら50年にわたって支えたと出ていた。

わたしはサンローランとほとんど同時代の人である。中学生のときにディオールの名前が姉たちの会話に出て、ロングスカートの人を見かけるようになった。
姉のファション雑誌のお古をもらって見ていたからファッション雑誌歴も長い。自分で買うようになって、『それいゆ』を経て『装苑』『ハイファション』『流行通信』『ミセス』など長いこと買っていた。サンローランは雲の上の存在だけど、今シーズンのドレスとか雑誌で見てよく知っていた。すごい人生を生きぬいたサンローラン、素晴らしいものを遺した。

チャド・スタエルスキ監督、キアヌ・リーブス『ジョン・ウィック:チャプター2』

第1作『ジョン・ウィック』がめちゃおもしろかったので、理屈抜きで2作目も見たいなと思っていた。とにかく格闘技がすごいし、撃ち合いがすごいし、カーチェイスもすごい。女も男もなく撃ち合い殴り合い殺しあうところがいい。伝説の殺し屋ジョン・ウィックに関わる人々は血にまみれて倒れる。死闘の背景に音楽や美術や装飾を美しく描き出していて、そこで人間がえげつなく殺される。
歌声が聞こえてオペラかと思ったら、DJも入ったバンドの演奏で、クラシックのような現代音楽のようなロックコンサートのようでいい感じだった。

キアヌ・リーブスは若い時から好きだったけど、歳をとっても清潔で正義感にあふれた役がよく似合う。
オトコマエが好き、清潔感あふれるオトコが好き、孤独そうなオトコが好き。なので理屈抜きで好きな映画だという。

デヴィッド・リーチ監督、シャーリーズ・セロン『アトミック・ブロンド』

シャーリーズ・セロンの名前はずっと前から知ってたが歌手だと思っていたほど無知だった。昨日はアメリカのロビイストをジェシカ・チャステインがやっているのを見たから、今日は理屈抜きでばったばったと投げ倒すような、撃ち殺すような映画が見たくて『アトミック・ブロンド』を選んだらアタリだった。

東西冷戦が終結してベルリンの壁が崩壊した時代の凄腕女性諜報員の話で、スパイ、二重スパイ、女性スパイ同士の同性愛もあって盛りだくさん。殴り合いがいっぱい、撃ち合いもいっぱい、刃物で殺し合い、階段を転げ落ち、カーチェイスあり、暴力につぐ暴力でお腹いっぱいになった。

女性と男性が殴りあい、撃ち合うシーンも多く、男性に負けない暴力をふるう主人公に肩入れして気分良く見ていた。
音楽も良くクラブシーンも楽しめた。

二度見て納得『女神の見えざる手』

ありがたいことにユーネクストでもう一回『女神の見えざる手』を無料で見られるということで、夕方早い時間から2回目を見た。2回見てようやくストーリーと物語の世界の全貌が理解できてよかった。
まず新聞の外国記事でしか知らなかったロビイストという職業のあらましがわかったことが大きい。新聞等でわかったつもりでもわからなかったロビイストという人間の仕事ぶりや私生活が出てきて納得がいく。
主人公のスローン(ジェシカ・チャステイン)が「肉を切らせて骨を切る」みたいな戦術さえ使って世の中を仕切っていくところがすごい。

最後は自分から仕掛けて逮捕され刑務所に入るのだが、数ヶ月後に弁護士が面会にきて、あと何ヶ月かで出られると教えてくれる。その間に常習していた薬から抜け出せたようでよかった。いくら美貌で頭が良くても薬で体をもたせ続けるのは無理だ。
しかし、ぴったりフィットした服と細いヒールの靴で闊歩していたけど疲れるだろうな。

ジョン・マッデン監督『女神の見えざる手』

2016年にイギリス、アメリカで製作された2時間12分の映画。おもしろくて長時間を画面の前に座ったまま見続けた。タイトルからは連想できない内容に引きづられて最後までいった。

エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)は大手のロビー会社で辣腕をふるう花形ロビイストで、男たちの間をさっそうと仕掛け人として働いている。新しい仕事は銃所持の規制を支持するほうの立場で、彼女はさまざまな銃規制派の人たちを支持する活動に積極的に取り組んでいく。

スローンの部下の女性エスメは、学校で銃を持った人間から逃れるためにロッカーに隠れたという過去があって、隠していたのだが、スローンに生放送のときに暴露され、それからは注目されるようになる。

華やかに活動するスローンだが、眠らないよう薬を飲んで毎日を過ごし、夜はホストクラブの男をベッドの相手に派遣させている。

いろいろと複雑な内容で、一回見ただけでは書ききれない。
聴聞会があり、自分の意思で有罪となり、刑務所に送られる。
最後のところをもう一度見ないと上院議員の犯罪がはっきりわからない。
今日はこれで寝る。すごい映画だった。

アンヌ・フォンテーヌ監督『ココ・アヴァン・シャネル』

シャネルを描いた映画は4本あるそうだが、今夜はそのうちの1本『ココ・アヴァン・シャネル』(2009)を見た。『アメリ』のオドレイ・トトゥがシャネルをやるということで興味津々。

貧しい姉妹(シャネルは妹)が面会に来ることのない父親を毎日曜日孤児院で待ちながら過ごす。成長したふたりは夜は酔っ払いの兵隊を相手にナイトクラブで歌い、仕立て屋の隅でお針子として働く。懐具合のよいバルサンは兵役を終えると帰ってしまうが、ココはパリへ出ようと足がかりにバルサンの家(大邸宅)を訪ねて居候になる。
乗馬服を器用に作り、馬に乗ることを覚え、競馬場のファッションを知り、自己流の帽子と服で目立つ。
フランスの大邸宅の屋内と庭園の豪華さにため息。
バルサンのイギリス人の友人と恋に落ち、海辺に連れて行ってもらうが、彼は実は貧しくて大金持ちの女性と結婚するところだった。

シャネルの凜とした生き方が描かれていて、応援しながら見ていた。最後は成功した彼女のコレクションの場面、感動した。