レニー・エイブラハムソン監督『ルーム』

アイルランド出身の作家エマ・ドナヒュー原作の『部屋 上下』(講談社文庫)の映画化。7年間密室に監禁されていた女性ジョイ(ブリー・ラーソン)が生んだ子どもジャックが5歳になった日から物語がはじまる。犯人は毎週やってきてドアを暗号で開く。生活に必要な品物を買ってきて、ジョイを犯して帰っていく。ジャックは寝たふりをしてその様子を見ていた。

朝起きるとジョイは狭いルームでジャックにご飯を食べさせ、歯を磨かせ、ストレッチさせる。髪を切るハサミがないからジャックの髪は伸び放題だ。ジャックはこの髪には力があると思っている。口喧嘩するけど、二人きりで愛しあっている家族。ジョイはなんとか脱出しようと頭をしぼる。ある日、ジャックが熱を出したと演出して男をだまして外に出そうとするが相手にされない。ついに決断したジョイは敷物にジャックを巻いて死んだとだまし、男に捨てに行かせる。こうして車から逃げよと教えて。
囚われていたルームを探す女性警察官のてきぱきした応対が気持ちよい。必死の逃亡劇が成功し、母と子は両親の家に帰ることができた。

そこから外の世界へ出た母と子の苦悩がはじまる。マスコミにも追いかけられる。家族にも感情の行き違いが起こる。
とにかくジャックは可愛い子で長い髪が女の子みたいでとても魅力がある。祖母にその髪を切ってもらい病院の母に届ける。そこで、祖母と孫は愛しあっているのを確認。髪は母に力を与えた。
小さな犬をもらい、近所に住む少年と遊ぶようになり、退院した母と抱き合った少年は成長していた。

とても迫力があり隙のない映画だった。
ブリー・ラーソンはアカデミー賞の主演女優賞。

トム・フーバー監督『リリーのすべて』

世界初の性別適合手術を受けたリリー・エルベ(エディ・レッドメイン)と妻のゲルダ( アリシア・ヴィキャンデル)を描いた2015年に製作(イギリス、アメリカ、ドイツ)された映画。
1926年、デンマーク コペンハーゲンで風景画家アイナーと肖像画家のゲルダ夫妻は穏やかに暮らしていた。ある日ゲルダのモデルが来られなくなって脚の部分を描くのにアイナーにモデルになってもらう。妻の出したストッキングと靴とドレスを身につけてポーズしたアイナーは真剣に女装が自分の身に合っているのを感じた。
あんまりぴったりなので、ゲルダは夫を女装させてリリーと名付けパーティに出かけることにした。美しいリリーは客たちの目を引く。
外出にも慣れだんだんリリーでいることがぴったりしだしたアイナーは絵を描くことをやめる。
夫妻はいろいろな医師に相談するがたいてい精神疾患という結果で、拘束衣を着せられるところで必死に逃げたこともあった。
ゲルダの絵が売れ出し、二人はパリへ行く。アイナーの幼馴染ハンスがパリで画商をやっていてゲルダを手助けする。
そしてついにまだ先例のない性別適合手術をする医師を探し出し手術を受けることになった。

リリーに扮するエディ・レッドメインをはじめて見たが、ほっそりと美しい男性であり、着替えて化粧するとものすごい美貌の女性。スーツを脱いでドレスに着替えるシーン、女性化するところがすごかった。

マーティン・スコセッシ監督『ラスト・ワルツ』

昨夜はボブ・ディランのステージを思い出しているうちに懐かしさがつのり、久しぶりに映画『ラスト・ワルツ』を見ることにした。1978年製作のマーティン・スコセッシ監督の作品で、ザ・バンドの解散コンサートの映像とインタビューを組み合わせて絶妙な美しさをもった映画である。

そのころはジャズから離れてパンクにはまりだしたころで、ザ・バンドなんてバンドがあったのも知らなかった。そのころから読み出したロック雑誌に出ていたのか、誰かから勧められたのか、相方が見に行き、帰ってから「ものすごくよかった、明日見に行け」と強引に勧めたのだ。
難波の映画館に行ったらけっこう人が入っていた。2階の前のほうに座って最終回を見たわけだが、最初はわけがわからず、途中からは熱中してもう一度見たかった。

ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、ヴァン・モリソン、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、ドクター・ジョン、マディー・ウォーターズ、ロニー・ホーキンス、ポール・バターフィールド、ニール・ダイヤモンド、エミール・ハリス、ザ・ステイプルズ、リンゴ・スター、ロン・ウッド、・・・。以上、ネットから出演者名をコピペしました。

ニール・ヤングを初めて知った。よかった〜 ロビー・ロバートソン、このときはまだ真価がわかってなかった。この二人を知っただけで幸運だったなあ。
そしてボブ・ディランが素敵だった。名前となにかで聞いた歌しか知らなかったのが、ここで見てすごい人だとわかった。

最後にラスト・ワルツがバックに流れて、これで終わったと思ったら、なんと「グリーンスリーブス」が美しく奏でられ、もうもう感激の涙だった。昨夜もじーんとしながらいっしょに歌っていた。

デヴィッド・フランケル監督『プラダを着た悪魔』

2006年製作の評判になった映画を10年後のいま見た。当時の雑誌やネットでの評判や批評を思い出す。今日見ていてもすでに見た映画みたいで二度目に見ている印象。
地方の大学出身でニューヨークで働き成功しようと出てきた女性の物語。
人使いの荒い編集長メリル・ストリープのもとで働きだしたアン・ハサウェイは時間に関係なく呼び出され、私用も含めて用事を言いつけられる。恋人とパーティでくつろいでいても携帯に電話が入れば走り出さねばならない。まだ出版されてない本を双子の娘たちのために手に入れろ、それもすぐにという命令で走り回る。
ダサい服装をファッショナブルに変えて装わせてくれる男性が出てきたり、本の原稿を手に入れてくれる男性がいるし、運がいいんだけど、それを生かす才能やセンス、気配りがある。本だって双子のために2部コピーして、それに表紙をつけてやる配慮がある。

コーヒーを持って走るのは日常茶飯事、ステーキも持って走る。先輩の同僚は慌てて車にぶつかり大怪我、目標にしていたパリ出張がパーになる。その前に編集長はアンを見込んでパリへ連れていくと決めていた。
大味だけどおもしろい映画だった。パリもニューヨークも華やかで。

Carolar’s fan Book『Flung Out Of Space』を読む幸せ

去年の暮れに『キャロル』(パトリシア・ハイスミス、柿沼瑛子訳、河出文庫)を読んでからずっと『キャロル』にひたっている。その次に映画を見た。映画館で映画を見るのは久しぶりですごく上質な恋愛映画だった。
それからはツイッターで映画『キャロル』を何回見た何十回見た何百回見たとの共感のツイートがたくさんあり、英語版のDVDを楽しんでいる人もいて羨ましいかぎりだった。その後アマゾンで字幕版のBlu-rayが出るのを知りすぐに申し込んだ。
大阪でキャロラー会が発足したというツイートを横目で見ていた。友人に行くんですかと聞かれたけど、いくら厚顔なわたしでもこのトシでのこのこと行くのもね、ということでツイートを羨ましく読んでいた。

キャロル合同誌『Flung Out Of Space』の発行を気にしていたのだけど、申し込みが遅れて1回目の締め切りに間に合わず増販の申し込みに滑り込んだ。届いたのが9月30日だった。
『キャロル』の本と同じ大きさで表紙のカバーと帯がそっくりな出来栄えである。すごい本格的。プロローグからはじまって第一部、第二部とエピローグまで、文章とイラスト(カラー版たくさん)とコミックで構成されている。書いているのはすべてキャロラーさんたちである。文章力がすごい、絵を描く能力がすごい、その力が結集した本である。「好き」という原動力が文章を書かせ絵を描かせているのを感じる。(ベタ褒めです。)

裏表紙の言葉がすべてを語っていると思うので引用する。
【今日キャロりたい・・・と思ったあなた。この一冊でこれから毎日キャロれます。(中略)映画『キャロル』をこよなく愛する者達によって創られた渾身の一作】
本が届いてから今日まで毎日あちこち読んだりイラストを眺めたりしていたが、なかなか紹介記事が書けないでいた。今日になってふと思った。毎日楽しんで読んでいると書いたらいいんや。わたしの大切な生涯に何度でも読む本に加えて。

晩ご飯はホットドッグ

最近なぜかホットドッグ食べたい熱が高まっている我が家。ふだん食べないものを食べるのはうれしいような冒険のような(笑)。
パンとソーセージさえあればできるからと相方がサミープーでパンを、ビッグビーンでソーセージを買ってきた。今夜のご飯はお酒なしでサラダとパスタのあとにホットドッグとコールスローとコーヒー1人2杯という献立。うまかった。

ホットドッグというと思い出すのは映画『恋に落ちて』。メリル・ストリープがニューヨークの街角でホットドッグを買ってうまそうに食べるシーンがあった。本体を手に持ってからチリをつけてもらうんだけど、「もっと、もっと」と何度もつけてもらう。それが「通」なのかなんて思ったものだ。

今日のうちのはチリは味付けに使っていたけど、ソーセージにのせたのは辛子マヨネーズだった。つけてある葉っぱには先日手にいれたハバネロをほんの少々使ったそうだ。
次のときは「もっと、もっと」とチリにしたいな。

ジョン・G・アヴィルドセン監督、シルヴェスター・スタローン脚本・主演『ロッキー』

昨日『クリード チャンプを継ぐ男』を見たら、たまらなく『ロッキー』を見たくなった。『ロッキー』で無名のロッキーとの試合を考えついたのがクリードの亡き父アポロだった。両方ともほんとによくできた映画でそつがなくストーリーが自然で楽しい。

エイドリアンは気が弱くて人見知りの女の子、ペットショップで黙々と働いている。ロッキーが惚れて気を使うのでだんだん気持ちがほぐれていく。感謝祭のデートで後片付けしかけているスケート場で無理言って10分で10ドルだか払って氷上で話し合うシーンがいい。
エイドリアンは上品に装ったら美人だ。そして実は気が強い。広い気持ちで受け入れるロッキーとつきあってよかったね。昨日の映画では癌で早死にしたとロッキーが言ってた。
ロッキーは昨日の映画では老年になって現れたけど、ずっと独身だったのかな。こうなればあと3本を見るしかないか、「あらすじネタバレ」を読んで好奇心を満足させるか(笑)。

1976年はジャズ喫茶からそろそろ抜け出してロックを聞き出したころ。すぐにパンクに夢中の時代になった。前後して会社勤めをやめて独立した。事務所を借りてロッキーの心意気だったさ。

ライアン・クーグラー監督、シルヴェスター・スタローン主演『クリード チャンプを継ぐ男』

懐かしの『ロッキー』は1976年、『ロッキー2』は1979年、『ロッキー3』は1982年。この3本を映画館へ見に行っておおいに楽しんだ記憶がある。40年前に見たのにその後テレビ映画で見たりしたせいか内容をよく覚えていて、勇ましいテーマ音楽も「エイドリアン、エイドリアン」と叫んだロッキーの声も覚えているくらいだ。
その後3作は見ていなくて現在にいたる。いま調べたら全部で6作あるそうな。

今日見た『クリード チャンプを継ぐ男』はロッキーが戦ったアポロの息子アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)が主役である。クリードが生まれたのはアポロが亡くなってからだった。母が亡くなり施設で育つがアポロの夫人に引き取られる。何不自由のない生活でいい仕事についていたが、父譲りの血が騒ぎボクシングを志す。
目指すはフィアデルフィアのロッキーのところ。孤独に暮しているロッキーに仕込んでくれと頼み込む。ロッキーは知り合いのジムに連れて行き基礎から教える。
懐かしきフィアデルフィアの街並みを走るクリードとロッキー。さすがにロッキーは車に乗っているが。
アパートの下の部屋の騒音に文句を言いに行くと若い女性が住んでいて親しくなる。

シルヴェスター・スタローンのスター性ににっこり。マイケル・B・ジョーダンはいいとこの息子さんが一生懸命やるのが初々しかった。
また1から見ようぜという声がしている。

アニエスカ・ホランド監督『秘密の花園』

先日古い文庫本からフランシス・ホジソン・バーネットの『秘密の花園』をiPad miniに入れてもらった。文字も紙も古びてたので読みやすくなってありがたい。何気なしに最初のページを読んだらいつものことで最後まで一直線。読み終わったら次は映画を見たいなあとアマゾンプライムを調べたら、400円払えば今日と明日見られる。さっそく見始めていま見終わったところ。

アニエスカ・ホランド監督1993年の映画。この監督の映画は他に見ていないが、イギリス ヨークシャーの自然と少女と少年を描いてとても美しい映画だ。
インドでこどもに無関心な両親に育てられた少女メアリー、コレラの流行で両親が亡くなり、助かった彼女はイギリスの伯父に引き取られた。ヨークシャーのお屋敷には妻を花園の事故で亡くした伯父と息子のコリンがいたが伯父は孤独に旅に出ることが多く、いとこのコリンはいつ死ぬかわからない恐怖に震える病弱な少年だった。

メアリーが着いたときはまだ寒かったが、召使のマーサにもらった縄跳びをしながらメアリーは飛び回り「秘密の花園」のありかを突き止める。そこはコリンの母が亡くなった場所で、それ以来伯父が閉鎖していた。
メアリーが花園を見つけたのは春がくる少し前のことで、そこで枯れ草の下に生え出した花々の芽を見つける。やがて春が来て、外に出るのを怖がっていたコリンが花園を見たがり、マーサの弟ディコンの助けがあって花園は3人のこどもたちの笑い声で満ちる。

明日もう一回楽しもう。メアリーちゃんの着てる服がすてき。ロンドンからのお取り寄せかしら。

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フランコ・ゼフィレッリ監督、シャルロット・ゲンスブール主演『ジェイン・エア』

『ジェイン・エア』の映画化は3本見ている。ジェインとロチェスターさんをジョーン・フォンテインとオーソン・ウェルズ、シャルロット・ゲンスブールとウィリアム・ハート、ミア・ワシコウスカとマイケル(ミヒャエル)・ファスベンダー。どれも素敵なジェインとロチェスターさんである。

『ジェイン・エア』の映画化と知ったら行かずにはいられない。1996年の春に梅田の映画館へひとりで行って楽しんだ。期待があまりにも大きくてちょっとがっかりしたっけ。今日はDVDで2度目。覚えていた印象よりもずっとよかった。
シャルロット・ゲンスブールのジェーンにすごく期待していて裏切られなかったのは前も今も同じ。線の細さがすごくジェーンらしいし、実際的に役に立つところがただのきれいな若い女性ではないところをうまくやっていた。そしてロチェスターさん役のウィリアム・ハートもなかなかよかった。線が細すぎると思っていたが、彼のロチェスターになっていた。

大好きなイギリスのヨークシャー地方、川が流れる広い庭園と大きなお屋敷。ろうそくの明かりがきらめく広間での大宴会。
楽しんだ。

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