蓮實重彦さんの『伯爵夫人』は6/22発売予定

「蓮實重彦氏の『伯爵夫人』は6/22発売予定 」という新潮社のツイートを見てびっくりした。表紙の写真がルイズ・ブルックスだ。作品の中でも言及されているから当然かもしれないが、ちょっとびっくりした。
わたしは大岡昇平の著書『ルイズ・ブルックスと「ルル」』(1984 中央公論社)を出たときにすぐに買った。なんと32年前のこと!! 年に一度は出してきて楽しんでいる。

蓮實重彦さんのことは数年前まで無関心だったが、吉田喜重監督のことを知りたくて買った本によく出てくるので気になりはじめた。そして小津安二郎監督にも無関心だったが、そのつながりでいろいろと読み、小津の映画も見て言わんとしていることがわかって、いまは愛読者である。
そういうときに出た蓮實さんの「伯爵夫人」が載っている『新潮』4月号だからわくわくして買って読んだ。期待以上におもしろかった。ぜんぜんエロくはなかったけど(笑)。

もうひとつ発見があった。以前に書いたけどもう一度書いておこう。
なんとまあ、『ルイズ・ブルックスと「ルル」』に収録されているルイズ・ブルックスの2つの文章「ギッシュとガルボ」「パプストとルル」は四方田犬彦さんが訳したものである。いままでぜんぜん気が付かなかったけど。最近になって夢中で読んでいる四方田さんの本、いろいろ繋がっておもしろい。

四方田犬彦さんの『心ときめかす』を心ときめかせて読んでいる

翻訳ものばかりに気を取られて100冊以上の本を出しておられるというのにお名前もろくに存じあげなかった。去年手にした2003年発行の『ユリイカ』吉田喜重監督特集号で四方田さんが書いた「母の母の母」を読んで論理的な人やなと思ったのが最初である。それ以来、吉田喜重、蓮實重彦、四方田犬彦をわたしは先生と呼んでいる。
そんなときに姉が購読している『波』で四方田さんのインタビューを読んだ。今年出た本『母の母、その彼方に』についてである。えっ、箕面!!

その前にアマゾンの中古本でこれはと買ったのが『ハイスクール 1968』だ。まず、これをと読み出して一通り読んだときに『母の母、その彼方に』を買ってきた相方にとられた。わたしらにとっては1968年は忘れられない年である。きっと四方田さんもと思ったが、わたしらよりもずっと若くてハイスクールのときだったのだ。いろんな人の経験談や回想や自慢話を聞いたけれど、高校生だった人の話は聞いていない。非常に勉強になった。

いままでに読んだ本
『赤犬本』(扶桑社 1993)〈図書館〉
『ハイスクール 1968』(新潮社 2004)
『歳月の鉛』(工作社 2009)
四方田犬彦・鷲谷 花 編集『戦う女たち 日本映画の女性アクション』(作品社 2009)
『女神の移譲 書物漂流記』(作品社 2010)〈図書館〉
『人、中年に到る』(白水社 2010)〈図書館〉
『母の母、その彼方に』(新潮社 2016)
いま注文中『ひと皿の記憶 食神、世界をめぐる』(ちくま文庫 2013)

いま読んでる本『心ときめかす』(晶文社 1998)〈図書館〉
平野甲賀さんの装丁になる美しい本で文字も読みやすくてうれしい。四方田さんが心ときめかすものってなんだろう。『枕草子』がいちばん先にある。やっぱり普通に語ってはいない。ノスタルジックな歌『ペィチカ』についての真実をはじめて知った。そして『アリラン』の真実をいままで知らなかった。
「蜜の歴史ー矢川澄子」は大好きな森茉莉のこと。フランス語に「神聖なる怪物」という言葉があって、コクトーやオーソン・ウェルズのような大芸術家たちを指すそうだ。四方田さんの見るところでは日本の文学者ではたった二人しかいなくて、三島由紀夫と森茉莉だという。
こんなふうに「心ときめかす」ことがたくさん書かれたエッセイ集である。さあもう少し読んでから心ときめかしつつ寝るとしよう。
(晶文社 1900円+税)

心ときめかす
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四方田 犬彦
晶文社
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佐野洋子 文 北村裕花 絵『ヨーコさんの “言葉” それが何ぼのことだ』

去年のヴィク・ファン・クラブ(VFC)の会報でKさんに紹介されたテレビ番組と本が会員の中で話題になった。我が家にはテレビがないのでそのままスルーしていたが、会員のYさんが今日宅急便で本のほうを送ってくださった。VFCはとっても友愛に満ちた会だ(自慢)。

佐野洋子さんの絵本『100万回生きたねこ』はすっごく有名な猫の本である。わたしは買ったけどすぐに姪に持って行かれたままだ。谷川俊太郎さんと結婚して話題になったことがあったが6年で離婚された。2010年に72歳で乳がんのため亡くなった。
NHKワンセグ2・Eテレにおいて『ヨーコさんの言葉』が2014年度制作・放送された。いまは日曜日の朝8時55分〜 水曜日の午後10時45分〜 放送されている。

さっそく開くと文章が少なくて楽しげな絵なのですぐに読み終えた。絵が楽しいのでこんなに慌てて読んだらあかんともう一度読んだ。
猫と暮らす60代の画家ヨーコさんの幼年時代の思い出から、若いときの友だち付き合いのいろいろ、日常生活の風景。そして愛猫ががんで死ぬのだが毅然とした死に方についての考察がすばらしい。
絵が素敵。もうちょっと佐野さんを美人に描いてほしかったなあ、と勝手な想いがわいたが、全体のトーンからいくとこれでいいのね。
(講談社 1300円+税)

中原昌也 自伝『死んでも 何も残さない』に付箋を貼った

引用(130ページ)
【 貧乏な都会っ子は不幸だ。共感は得られないし、生まれ変わることもできない。世界中のモノや情報が腐るほど視界に入ってきても、結局、手に入れることができない境遇。寂しくて、みんなが好きでないマイナーなものに想いを寄せるしかなかった。田舎にいたら、マンガやヤンキーに行ったのかもしれないけれど、バブルの頃の東京には何もかもがある不幸があった。】

付箋を貼っておいたのに昨日は見逃していた。
いい言葉というより、わたしのことを語ってくれている言葉だと思った。うまいこというなあ。わたしは彼よりもずっと年長だけど、生まれも育ちも不幸な貧乏な都会っ子である。そして、そういうことをいう年齢を過ぎても言える貧乏という特権を手放していない。
死んでも、なにも残っちゃいないよ。

中原昌也 自伝『死んでも 何も残さない』

先日の午前中にNHKラジオ第一放送をかけたら「すっぴん」アンカーの藤井彩子さんと話していたのが本書の著者中原昌也さんだった。たしかテキーラの飲み方についてが話題だった。ヘンな面白い人だなあと聞いていたら作家だとのことで、さっそく検索したのが発端だった。
たくさん本を出しておられ、先日「伯爵夫人」で話題になった三島由紀夫賞を2001年に受賞している。アマゾンでつらつら眺めて単行本で安い本を探して、いちばん安く手に入る単行本が本書だった。中原昌也 自伝『死んでも 何も残さない』(2011 新潮社)
さっそく注文したのがおととい到着。表紙とカバーにかわいいイラストがあり、特にカバーは真っ赤な地に黄色いクマさんのイラストがかわいい。前は前向き、後ろは後ろ向きのランドセル背負ったクマさん。

昨日と今日で読んでしまった。
小説と思って読み出したので違和感あり。それであちこちしてから最後のページを見たら「本書は著者の談話を編集部が構成したものである。」とあった。それで納得しておもしろく読んだ。

本書がおもしろいのは東京育ちの子供時代を経て高校中退にいたる親子関係、そして音楽関連のことを淡々と語っていること。バイトしても東京の子のおっとりしたところとちゃっかりしたところがあっておもしろい。四方田犬彦さんについで東京で育った男子の生態がわかった。

彼が活動していた1990年代、2000年代はわたしはもう音楽を聞くことを卒業していたので「暴力温泉芸者」というバンド名は知っていたけど聞くことはなかった。

次は小説を読もうと思う。それにしても知らない作家が多すぎる。

蓮實重彦『伯爵夫人』をもう一度

『緋牡丹博徒』のシリーズを4日連続で見て疲れた。映画を見終わってから検索して登場人物やストーリーを確認して一応の感想のごときものを書いて、そのことをくっちゃべって、寝るまで大変。しかも昨日とおとといと三島由紀夫賞を蓮實重彦さんがもらって記者会見というのがおもろいと知ってネットで探して見た。おとといはニコ動で蓮實さんの会見の様子、昨日はその前の町田康氏の記者会見。両方見たから蓮實さんの態度もよくわかった。

わたしは○○賞というのに興味がない。新聞をとるのをやめたら○○賞があることさえわからない。それでも去年の芥川賞の騒ぎは伝わってきて中継を見た。又吉さんは感じの良い作家さんでお話を楽しめたし、姉に『文藝春秋』を借りて読んだ。容姿が気に入った直木賞の東山彰良『流(りゅう)』を買って読んだが、こっちもおもしろかった。

今年はまた無関心にもどっていた。そこへ三島賞。賞よりも先に作品を読んだ。
蓮實さんの小説を読みたいと思ったのは、最近よく読む吉田喜重さんの本に書いておられる文章が気に入っていたのと、『伯爵夫人』は「エロい小説」という噂を聞いたから。『新潮』を買って読んだら長い小説なのにやめられないおもしろさ。おもしろいし猥褻な言葉が出てくるけどエロくはない。その点がもの足りないとわたしは思った。エロくないと思ったのはひょっとしてわたしだけかもしれないが。

第二次世界大戦が始まるその日のその夜のもの苦しさが伝わってくる。何者だったのか伯爵夫人が去っていった。これからもう一度読む。
(新潮4月号 954円+税)

またまた四方田さんの本 『人、中年に到る』

四方田さんの本をしつこく読んでいる。
わたしの仕事コーナーに本が積み上がった。買った本が何冊になったかなあ。まだ10冊はないなあ。図書館で借りた本が3冊ある。読んで気に入ったら買う。
わたしは図書館で借りるより古本でいいから買うほうである。自分のものにした本がいとしい(笑)。それでいて読み終わると人に貸したりあげたりするのだが。置く場所がないから「これっ」と思わない本は泣く泣く処分する。

今日目が覚めて読んだ本は図書館で借りた『人、中年に到る』(白水社)である。この本も自分で持っていたい。
いい言葉があったので引用。
【だが書物などその土地の図書館に行って読めばいいと嘯(うそぶ)く者たちには、わたしが長年慣れ親しんできた書物の物理的実在から立ち上がるオウラを理解することはできないだろう。書物とは情報の束でもなければ、文字の収蔵庫でもない。それは読むという意思に応えるために物質的に結晶した、書く意思にほかならない。】

今日アマゾン中古本から届いた本は、四方田犬彦・鷲谷 花 編集『戦う女たち 日本映画の女性アクション』(2009 作品社)。少々汚れていてもいいやと思ったが、まるで新本のようにきれいでうれしい。ちょっと開いたら「緋牡丹お竜」についての一章があった。お竜さんの映画は全部見ている。日本映画はよく知らないのでここから入り込むことにしよう。四方田さんの文章タイトルは「女の戦いはなぜ悲しいのか」である。ぐさっときた。

四方田犬彦さんの本まだまだ読書中

いつも在宅だから同じだけど連休だからなんかほっとしてだらだらと過ごした。夜更かしして朝は昼に起きるし、だから翌日はまた寝付けなくて昼起きになる。姉の家に行くときは睡眠時間を削って(笑)、朝8時起きして9時過ぎに出かける。それが続けばいいんだけどそうはいかず、昨夜もまた3時過ぎに寝て今朝は昼前に起きた。終わりなき夜の時間が好きなんだからしょうがない。

昨日は『MOE』で猫話を楽しんだあとは四方田犬彦さんの本『ストレンジャー・ザン・ニューヨーク』を読み終えて、『人、中年に到る』を読みはじめた。まだ途中だがすごくおもしろい。
さっきネットで次に読む本を探していたら『戦う女たち――日本映画の女性アクション』(作品社)があったので注文した。2009年に出た本だけどよさそうというか好みだわ、きっと。この本の四方田さんは、鷲谷花さんとともに〈編集〉となっている。きっと女性の書き手による元気な文章に溢れている本にちがいない。
さて、もう少しの間、中年になった四方田さんを楽しむことにしよう。

猫の絵本には負けるね

今日は姉の家の帰りに家庭用品を買おうと東急ハンズへちょっと寄ったんだけど、帰りに地下の喜久屋書店で雑誌『MOE』6月号を買ってしまった。特集「猫と絵本が好き!」に惹かれて。ふろくにヒグチユウコさんの猫の絵がついた一筆箋がついているのもうれしくて。猫の絵本には負ける(笑)。

家に帰ってひとりで楽しもうと思っていたら猫と少女漫画が好きな相方が寄ってきたので、ひとまず連載漫画を開いていっしょに見た。
ヒグチさんの連載漫画「いらないねこ」を5月号で読んで続きがどうなったか心配していたが、ひとまず問題が解決したのでホツとした(笑)。

絵本の紹介「MOE読者アンケート 私の好きな猫の絵本」があるんだけど、うちに猫がいてネコネコしていたころとは違ってる。ほとんどの本を知らない。「まだまだある! 猫のロングセラー絵本」のところで、ようやく昔持っていた本が出てきた。
新しく買う元気はもうないので、ずっと持っているお気に入り絵本を出してきて楽しもう。

『エデンより彼方に』をいま見てよかった

昨夜『エデンより彼方に』を見てすぐに感想を書いた。いつものことだが、あとで読んだらストーリーを書くことばかりに気を使い、自分の感想が不足しているのに気がついた。今夜は同じトッド・ヘインズ監督のボブ・ディランを描いた映画『アイム・ノット・ゼア』(ケイト・ブランシェットがディラン役!)を見たのだが、こちらはもう一度見てから感想を書くことにして、今日は昨日の続き。

Sさんがこの映画のことを教えてくれたときに見ていたらどうだったろう。いまのような気持ちでは見ていなかったような気がする。
Sさんはその後自分が夢中だった秋月こおの作品『富士見2丁目シリーズ』を教えてくれた。愛し合う二人の若い音楽家(指揮者とバイオリニスト)の音楽への精進と愛の生活が描かれたシリーズ。これがわたしのBLへの目覚めだった。10巻くらいは買っていたと思う。毎度同じようなものだが、音楽への愛と知識も勉強になったし、ベッドシーンもなかなか素敵で、ロマンチック大好きなわたしは連載されていた『小説ジュネ』も毎号買うことになった。
最近はたまにハーレクインぽいのを訳者さんにいただいて読んでいる。どっちかというと、西洋ものが好きだ。だから『エデンより彼方に』も『キャロル』も大好き。

もともとプルースト、ジャン・ジュネ、ジャン・コクトーに心酔していたから素質はあったんだけど、『富士見2丁目シリーズ』で目が覚めたのはほんとで、『キャロル』に続き『エデンより彼方に』をいま見てほんとによかった。