ピーター・ジャクソン監督・製作・共同脚本「ホビット 竜に奪われた王国」

去年の8月に1作目の「ホビット 思いがけない冒険」を、今回もまたご厚意に甘えて見せてもらった。
【邪悪なドラゴンにスマウグに王国エレボールを奪われたドワーフの王子トーリンはスマウグを退治し、王国を奪い返そうと13人の仲間と、灰色の魔術師ガンダルフ、そしてホビットのビルボ・バギンズらとエレボールを目指して旅を続けている。】(ウキペディアより)という物語。
今回も長くて161分あった。竜との戦いのシーンがちょっと、いやかなり長かったが、ぎくっとするおそろしい場面が何度かあって、退屈しないようにできている。最初のほうででっかい毒蜘蛛がいっぱい出てくるところで「ああっ!」と叫んでしまったし(笑)。

旅の途中で出会うエルフの王子レゴラス(オーランド・ブルーム)、その妹で闇の森の守備隊長タウリエル(エヴァンジェリン・リリー)と二人とも美しくて強い。ドワーフのキーリが毒矢で負傷して旅を続けられなくなって寝ているところへ、タウリエルが薬草を持って行き呪文を唱えて治す。タウリエルは兄が来いと言っているのに逆らって残ったから、兄は苦戦する。

ビルボ(マーティン・フリーマン)は出演場面は多いがちょっと地味な印象、ガンダルフ(イアン・マッケラン)の出番が少なかったのがちょっと残念。
1作目を受けて3作目につなぐ役目の2作目という感じ。風景が美しくて大画面で見たらさぞ雄大だろうと思いました。3作目「ホビット 決戦のゆくえ」が待ち遠しい。

 

オードリー・ウェルズ監督・脚本『トスカーナの休日』

今日もばたばたと過ごした。すこし落ち着きたい、心温まる映画が見たい、と思って選んだが、もし大甘の映画だったらどないしょう。解説読んだらなんかよさそう。アメリカのベストセラー小説を女性監督オードリー・ウェルズが監督したもの。ウィスキーとパンとチーズ、オリーブも用意して楽しむ姿勢をとって見た。

作家で厳しい批評で知られるフランシス(ダイアン・レイン)はある日突然夫から離婚を迫られ家を出る。レズビアンの友人パティは妊娠中で取りやめたゲイ仲間とのツアーを譲ってくれる。楽しいイタリア旅行中にフランシスは築300年の家を衝動買いし、イタリア トスカーナに住むことにする。
古い建物の修繕をするのは親切な不動産屋が紹介してくれたポーランド人の労働者一家で、話しているうちに彼らが知識階級出身であることがわかる。
明るく楽観的にふるまっているが、孤独に悩まされる。うまく知り合った男前の男性といい仲になるのにパティがやってきたためにデートを断る。パティの出産を手伝ったりして、日にちが開いたせいで男には他に女性がいるのがわかりサヨナラ。散歩で出会った子猫は連れて帰っている。
失意のフランシスだが、仲を取り持ったポーランドの若者と地元の少女との結婚パーティをわが家の庭で開く。
パーティの場のフランシスのところに若いアメリカ人がやってきて、以前自分が書いた作品をフランシスに辛口批評されたと言う。その的を得た批判のおかげで前に進めたと言った彼と、その後は楽しく暮らすようになった。めでたしめでたし。

いかにもイタリア的な大胆な美貌の女性の存在がフランシスの生き方に影響を与える。
最後のほうでトレビの泉にドレスのまま入って水と戯れるシーンは、フェデリコ・フェリーニ監督の「甘い生活」のアニタ・エクバーグそのまま。フランシスに背中を押されて泉に入って行く紳士はマルチェロ・マストロヤンニそのまま。

午後はつるかめ整体院、夕方からタムタムカフェ→プラタス

日記を読み返すと。「疲れた」という言葉を使い過ぎているような気がするが、ほんまに疲れているのは確か。姉疲れや会報疲れなんかを併せて勤続疲労であろう。
午後につるかめ整体院に行って触ってもらっているうちにぐっすり眠ってしまい自分のいびきで目が覚めた。おかげでかなり疲れがとれて気分よく帰ってきた。
同時に台風の日に転んで歯を折り歯医者通いをしていた相方の歯の治療が片付いた。

今夜は外食しようと久しぶりに日本橋のタムタムカフェへ。
ぬる燗の清酒 旭日によく味のしみたおでんが超うまい。
今日のメニューは「おうちごはん定食900円(・鳥取県産ブリあら大根・ほうれん草ゴマ和え・レンコン天婦羅・ソウメンカボチャ酢の物・新米ご飯と味噌汁付) 。
ブリのあらは何年ぶりかに食べて感激の味(家では菜食してる)。
それよりなによりの美味は料理人アベチカちゃんとパートナーとの会話だ。
他のお客さんたちとも何気ない会話を楽しんだ。

帰り道でコーヒーを飲もうと味園プラタスへ寄った。立ち上がった先客の男性(DJ)がすぐに「マントヒヒ回想」サイトを話題にしたのにはびっくり。わたしのマントヒヒ時代にはまだ生まれてなかった若者が、サイトをおもしろいと言う。阿部薫のことを聞きたがる。そしてフリージャズ、パンク、ニューウェーブの話を聞きたがる。森田童子を知ってるかと聞かれて二回コンサートに行ったと言って尊敬された(笑)。
あまり出かけていない昨今だが、遊び人の相方のおかげでどこへ行っても若い話し相手に不自由しない。幸せなことだ。

雨の音を聞きながら「山の音」を読んでいた

「雨の日の猫は眠い」という言葉を猫を飼っているときになにかで読んでほんまやなと思った。外は雨、猫だけではなく人間も眠い。
片付けをすませテーブルに未読本を数冊置いてなにを読もうかと迷っていたら、あくびがはじまりハナミズずるずる。これはあかんとコーヒーをいれてナッツの缶を開けた。これで眠気をごまかして本を読もう。未読本はあかん、何十回目になる川端康成「山の音」にしよう。とても好きな小説で、最初に発表された雑誌から読んでいたような気がする。

鎌倉に住む会社経営者の信吾の長男の優しい嫁菊子への繊細な心遣いがこころに染みる。戦争のせいで気持ちが荒んだ修一は新婚の妻をないがしろにして外で女遊びにふけっている。
老夫婦と息子夫婦が暮らす家に娘がこどもをふたり連れて戻ってくる。息子は美男なのに娘は美人でなくひがみっぽい。修一と菊子は美男美女で、保子と房子は美しくない母娘である。菊子はいやがらずこどもの世話をする。

物忘れをするしネクタイの結び方を一瞬忘れたりで老年に入って行く自分を眺める信吾の気持ちをなんとなく読んでいたけど、いまでは共感して読んでいる(笑)。
妻の保子はまるい性格のいいひとなのだが、図太い神経の持ち主のように描かれている。信吾が保子の美しい姉に惹かれていたからだ。

微妙なこころの動きと生々しい夫婦生活の描写があって、その遠景には山の音が聞こえる鎌倉の自然がある。

ジェシカ・ベック『誘拐されたドーナツレシピ』(ドーナツ事件簿シリーズ 5)

2012年から読み出したドーナツ事件簿シリーズの5冊目。ブログ内でばらけていたのでこれからコージー・ミステリの項に整理する。
この順番で4冊読んでいる。
「午前二時のグレーズドーナツ」
「動かぬ証拠はレモンクリーム」
「雪のドーナツと時計台の謎」
「エクレアと死を呼ぶ噂話」

1冊目を読んだときにドーナツが食べたくなったが、近くにおいしいドーナツ屋さんがなかった。フロレスタのドーナツを食べて満足したのは1カ月後だった。
5冊目を読み終った今日は姉の家に行ってたのだが、ふと思い出して帰りに新大阪駅までタクシーで出た。駅構内にクリスピークリームドーナツの店があるのを発見してそのうち買おうと思っていたのだ。プレーンとチョコレートのを買って帰りさっき食べた。大甘〜い。スザンヌの作るドーナツはこれより素朴だろうな。

アメリカ、ノースカロライナ州にある人口5001人の町エイプリル・スプリングスで、スザンヌ・ハートは小さなドーナツの店〈ドーナツ・ハート〉を経営している。
恋人の警察官ジェイクは勤務地が離れていて滅多に会えない。父は亡くなっていて独り者の母ドロシーと地域の警察署長は目下ラブラブな関係。
知り合いの便利屋ティムが殺されて、しかもスザンヌが家の近くの森で遺体を発見した。
わりと単純なお話なんだけど、町の人たちとの会話とかこと細かく書いてあって、アメリカの田舎ってこんなのかと思う。どこかへ行ってもだれかとしゃべってもすぐ知れ渡るんだから大変だ。
今回もスザンヌが動き出すと噂が流れるし妨害がはじまる。おまけに、これ1冊しかない大切なレシピノートが盗まれる。

読み終って思ったのだが、スザンヌもお母さんも恋愛中なのにお泊まりしない。お相手はデートしておうちへ送ってお帰りになる。明日の朝が早いドーナツ屋さんだからって、せっかくジェイクが来てるのに。
(山本やよい訳 原書房コージーブックス 870円+税)

川端康成「女であること」(本と映画)

いま調べたら「女であること」は1956年に新潮社から刊行されているから、朝日新聞に連載されたのは54・5年だろうか。わが家は朝日新聞をずっととっていたから連載小説はこどものころから全部読んでいた。川端康成は「乙女の港」以来大好きな作家だから毎朝姉と新聞の取り合いだった。

物語は大阪の“さかえ”という若い女性が、船場の旧家から東京へ飛び出して行くところからはじまる。東京では母の友人の佐山家にやっかいになるが、佐山家に行く前に生理になったので、その期間をステーションホテルに滞在する。
読むまで忘れていたことが多く、読むとああそうやったと思い出した。いまになって買って読もうかと思ったのは、あるシーンのこと。
さかえは佐山夫人の元恋人に近づいて交際するのだが、ふたりでデパートのハンカチ売り場へ来て、さかえはいちばん上等なハンカチを男ものと女ものとを2ダースずつ買う。その買い方の鷹揚さに驚いた店員の千代子は後姿を見送るのだが、そこへ来たのが佐山家に厄介になっている友人の貧しい妙子。それで、あれが話題のさかえさんと千代子も納得。
覚えていたとおりだった。貧乏な少女はハンカチ2ダースに圧倒されて何十年後も覚えておった。とともに、大阪の女性が東京の女性を圧倒しているところに手を叩いたことも思い出した。

詳しく解説した映画のサイトがあった。1958年公開のモノクロ映画。
さかえは久我美子、佐山夫妻が森雅之と原節子、妙子が香川京子、監督が川島雄三。
映画は丸山明宏(美輪明宏)の歌でスタートする。タイトルのバックに若き日の写真あり。
原節子も久我美子も美しくてまぶしい。

オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督『インベージョン』

原作はジャック・フィニイのSF小説「盗まれた街」で、2007年に4回目の映画化されたもの。
フィニイの名前は昔から知っているが本は読んだことがない。もしかしたら「レベル3(異色作家短編集)」を買った覚えがあるので読んだかもしれない。

ニコール・キッドマンがワシントンに住む精神分析医キャロル役、すごくきれいで真面目で、ちょっとゾンビっぽい映画の品格を高めている。夫と別れて小学生の息子と二人暮らし。ハローウィンの日でスーパーマンの衣装で登校する息子を見送るという楽しくきちんとした日常生活を送っている。パーティでは美しく装って知的な会話で周りの人たちを魅了する。

そのころ原因不明のスペースシャトル墜落事故が発生。空中分解したシャトルの破片が地球の各地に落ちてくる。破片についたウィルスが世界中になぞの感染症を引き起こす。周りの親しい人たちも感染していく。
別れた夫との面会日に息子を行かしたのが心配になり会いに行くと、夫はすでに感染していてキャロルもその毒を浴びる。眠ったら最後、発病するのがわかっているので、眠らないように頑張る。息子は小さいときにかかった感染症で免疫ができていて眠っても発病しなかった。
恋人の医師ベン(ダニエル・クレイグ)とともに街を脱出したが、あとで会おうと別行動になり、待っている間に追われたり襲われたり危機一髪が続く。

「インベージョン」はいま現在見るのにもっともふさわしい映画だと実感した。ニコール・キッドマンがウィルスの恐怖と闘っている姿を見ながら、エボラ出血熱の恐怖を実感していた。

キャットクラブニュース1993

ゼロックスコピー機のリース期間が過ぎ延長期間も過ぎて、いよいよ返還期日が近づいた。ゼロックスのコピー機を使いはじめてから30年くらいリースの連続だった。仕事の移り変わりで最近はヴィク・ファン・クラブの会報専用になっていたが、これからは「VFC会員サイト」に切り替え、会報はページ数を減らしてパソコンのプリンタで出す。

プリンタはA4なのでB4が出せない。でもB4やA3が出せても最近は不用だった。そのとき、あっと閃いたのは「キャットクラブニュース」(1993.5〜1994.2)。B4で1号から8号まで手書きの版下がしまってある。B4を8区画に分けて小さなペン字でぎっしり。最後の3回はMacで文字打ちしている。
手書きからぼちぼちタイピングできるようになり、会報の発行へ繋がっていったんだな。内容もいい(自画自賛)けど、そういう自分の来た道を振り返れることもできていい資料だ。とりあえずは3部ずつコピーした。紙の真ん中を切って折るとうまく小冊子になる。好評だったのでいろんな人にあげた。100部くらいは作っているはず。
3部ずつ作って保存しておくことにした。薄いピンク色の紙にコピーしたのをカッターナイフで真ん中に切れ目を入れて折る。めんどくさいが自分のものだ。

お風呂三昧

3連休といってもなにもなし。雨が降ろうがどこも行かないから関係ない。
朝ゆっくり起きてお風呂に入った。半身浴で汗を出して、髪から足の先までチロルの石けんで洗った。ああいい気持ち。
昼はお湯たっぷりで長風呂した。昼間のお風呂って贅沢な気分になる。
お風呂を出て訳者からいただいたロマンス小説を読んだ。昨夜から読んでいて今夜中に読み終る。「悪しき貴族は乙女をさらう」というなんともすごいタイトル。乙女気分で読んでいるが、イギリスの貴族令嬢もお風呂によく入る。
読み終えたら夜のお風呂、足先まで温まってゆったり寝るつもり。

このブログの読者の方から「ほとんど毎日が本を読んでDVD見て、あとは食べ物、どこかへ行くとか動きがないですね」と言われたけど、ほんまにそうなんで仕方ない。月に3日は姉の手伝いに行って翌日は疲れが残っている。
週に一度は整体院に行って疲れをとってもらいほっとする。
夜遊び大好きだったけど、最近は翌日が疲れるので滅多に出かけない。家で本を読んでいるのがいちばん好きなのでこれでいい。
なんかすごくよく疲れると思う今日この頃。でも、医者の世話にならず快食快眠快便だからまあいいか。人の世話もしてるし。

川端康成におぼれる・・・『千羽鶴』

先日の本棚片付けで出てきた文庫本の中に川端康成が数冊あった。「雪国」や「川のある下町の話」は覚えているけど、「美しさと哀しみと」はどんなんだったかしらと古ぼけた文庫本を開いたら、すぐに耽美の世界に入り込んでしまった。P・D・ジェイムズというがっちりしたイギリスミステリの世界でかしこまっていたわが魂は、あっという間に川端康成の美の世界に絡めとられていた。どっちも上等な文学だから読むのに矛盾がないのだ(笑)。

こうなったらちょっとの間は川端康成におぼれようと新しい文庫本を買うためにジュンク堂に行った。買ったのは「千羽鶴」「みずうみ」「女であること」の新潮文庫3冊。これを読み終ったら「山の音」も買おう。この他にも好きな本があったのを徐々に思い出そう。
そんなことを思って買った土曜日に「千羽鶴」を読み出した。翌日は雷鳴で目を覚ました夜中に続きを読んでしまった。だけど「千羽鶴」は飛び去って行かず、鶴の脚に絡めとられて昨日と今日と2度目を読んでいる。
昔だって何度も読んだ本だけど、いま人生の酸いも甘いも噛み分けてるつもりなのに(笑)、菊治の惑いに胸が痛み、太田夫人と文子の甘美と苦悩に想いがいく。

新調文庫には「千羽鶴」の後日談「波千鳥」が入っている。
菊治が千羽鶴のふろしきを持った見合い相手の稲村ゆき子に惹かれたのが前作の冒頭だった。
太田夫人と文子との葛藤で悩む菊治にゆき子が惹かれて結婚するのが「浜千鳥」の冒頭である。菊治の惑いや傷はゆき子の素直さに癒されていくようだが・・・

映画「千羽鶴」(1953)を見た記憶がないのに、栗本ちか子役の杉村春子の顔と声が思い出されたのは驚いた。検索したらやっぱり杉村春子だった。菊治は森雅之、太田夫人が小暮実千代なんだけど覚えてない。