クリストファー・マンガー監督『ウェールズの山 』

8月29日の大阪翻訳ミステリ読書会の課題本ベリンダ・バウアーの「ラバーネッカー」はウェールズに住む少年パトリックの成長物語でもあった。作者のベリンダさんもウェールズに住んでおられる。そのせいか、なんとなく背景にウェールズの風景を感じた。ほんまに、なんとなくウェールズ(笑)。

25年くらい前のことだが「イギリス児童文学研究会 ホビットの会」というのに月に一度参加していた。ひと月に一人の作家を取り上げるので多作の作家だと大変だった。ウェールズを舞台にした作品はどのくらいあったのか、思い出すこともできないが、好きな作家もいた。会員の一人がウェールズ協会に入っていろいろと話してくれたことも忘れてしまったが、なんとなくウェールズ恋しい気分になって映画「ウェールズの山」(1995)を見ることにした。以前見てから20年近く経ってる。
おじいさんが孫の少年に話す物語になっているが、クリストファー・マンガー監督がその少年のように思えた。大人になって祖父に聞いた話を映画にしたって感じ。

1917年のある日、イングランド人が2人(若者アンソンがヒュー・グラント)南ウェールズの村にやってきた。彼らは地図作成のためファノン・ガルーの山の高さを測る。みんなが固唾を吞んで待つが、5メートルの差で「山」でなく「丘」とされたウェールズの「山」。
村の人たちは技師たちを村から出さないように頑張り(大人げないおもしろさ)、山上に土を運ぶ。途中で雷雨になるがめげずに、最後にはベティがアンソンを色仕掛けまでするが真面目なアンソン。日曜日は安息日だが牧師を中心に作業をする。アンソンは村人に合流する。
高齢の牧師が最後に倒れ亡くなり、積み上げた土の中に埋葬する。
日が沈みみんなは帰って行き、愛し合うアンソンとベテイはふたりで山に留まる。日が昇るのを待ち測量すると、ファノン・ガルーははっきりと山であった。

ピーター・カッタネオ監督『ポビーとディンガン』

「フル・モンティ」、「ラッキー・ブレイク」と2本だけ見ているピーター・カッタネオ監督の2005年の作品。オーストラリアでオパールの原石の採掘をしている一家の物語である。
昔ながらの採掘場で一山当てたらお金になると頑張っている父親と、スーパーで働いている母親と息子アシュモルと娘ケリーアンの仲のよい家族だ。ケリーアンには架空の友だちポビーとディンガンがいて、いつもいっしょである。学校に行っても友だちはいなくて架空の友だちといっしょにいる。ご飯を食べにお店に入ってもお皿を2枚余分にもらって並べる。

ケリーアンを架空の友だちから離すために、父がポビーとディンガンを車に乗せて採掘場に出かける。ちゃんとシートベルトをしめてやって見送るケリーアン。
父はいろいろ忙して帰りにはすっかり忘れて連れて帰らなかったので、ケリーアンは絶望する。あまりの悲しみように父親は採掘場にポビーとディンガンを捜しに行くのだが、他人の穴を踏んでしまい盗掘と騒がれる。
ケリーアンは入院することになり、その前にアシュモルに夜中にポビーとディンガンを探しに行ってもらう。アシュモルは採掘場でオパールを見つける。ディンガンのおへそについていたオパール。

子どもふたりが可愛くてけなげで、他愛ない映画だけど熱心に見てしまった。可愛い妹と頼れるお兄ちゃん、あたしにも夢見がちな子ども時代があったっけ(微笑)。

ウォシャウスキー兄弟 監督・脚本 『マトリックス リローデッド』

最初の「マトリックス」(1999)をレンタルビデオで見た覚えがあるのだが、感想を書いてなくて残念だ。その続編の「マトリックス リローデッド」(2003)をいま見た。
まあ映画の内容はよくある話なんだけど、主人公ネオを演じるキアヌ・リーブスの格闘技の美しい姿と静止したときの美しい顔に満足したからいいか。ネオが人類最後の都市ザイオンを救おうと戦いを続ける姿が美しい。
それにプラス、トリニティーを演じるキャリー=アン・モスのスタイリッシュな美しさにも驚いた。オートバイでの格闘シーンもとてもよかった。
このふたりの存在で人類の未来が明るく見えてきた(笑)。

クロード・ベリ監督『幸せになるための恋のレシピ』

今日はラブコメディとか楽しい映画が見たいなとT氏のDVDを探したら、料理がテーマの中にこれが入っていた。フランス映画で主演がオドレイ・トトゥ(「アメリ」しか見ていないけど)というのがいいな。
2007年の作品。とても感じがよくて最後まで楽しく見られた。ハッピーエンドを通り越して最後は大団円。若者は手に仕事を! 老人は最後までわが家で過ごす! いまやフランスでも日本でも不可能に近い夢物語だけど、だからこそ楽しく映画で見せてもらったわけだ。

画家を目指して清掃のアルバイトをしながら屋根裏部屋で暮らすカミーユ(オドレイ・トトゥ)は、貴族出身のフィリペールと知り合う。食事に誘うと由緒ある食器をバスケットに入れてやってきた彼はカミーユの部屋が寒いのに気がつく。その後にカミーユがインフルエンザで苦しんでいると自分の部屋に連れて暖かくして看病する。同居人の女好きのコック フランクは反対するが、結局3人で暮らすことになる。
一人暮らしのフランクの祖母が病気で倒れ、養護施設に入れられるが猫のいる家に帰りたがる。カミーユは引き取って自分が介護するという。
険悪な関係ではじまったフランクとの仲が修復されていき、もしかして三角関係になるかと心配したが、そんなことにはならなくてよかった。

ペドロ・アルモドバル監督『バッド・エデュケーション』

ものすごーく好みの映画だった。
ずっと昔に見た「オール・アバウト・マイ・マザー」と、先日見たばかりの「抱擁のかけら」 と2本だけしか見ていない監督だが、半自伝的映画と知ったからには早く見たい。1980年代を描いた2004年の作品。美しい恋愛映画だった。

若くして成功し活躍している映画監督エンリケ(フェレ・マルティネス)のもとに、イグナシオだがいまはアンヘルと名乗る青年(ガエル・ガルシア・ベルナル)が訪ねてきた。イグナシオは16年前にエンリケが少年時代を過ごした神学校の寄宿舎の親友の名前だ。エンリケには彼がイグナシオと納得できないが、二人の少年時代を描いた脚本を持ってきて読んでほしい、映画に出演したいという。なにか納得できないものを感じるエンリケだが、脚本が素晴らしいので映画化することになった。

エンリケは脚本を読んで子ども時代を思い出す。
少年時代のイグナシオは聖歌隊員で美しいボーイソプラノで歌った。マノロ神父はイグナシオを寵愛していた。エンリケとイグナシオはスポーツや会話で惹かれ合うが、マノロ神父に邪推されてエンリケは退学になった。イグナシオは愛を失い神も失った。
それから16年、エンリケには過去のイグナシオとここにいる青年とが同じ人物とは思えない。彼の故郷を訪ねて母親に会い話を聞く。

イグナシオの弟が、田舎であんな兄がいたら近所の人たちにどう言われるかわかるかというところでわが家では同感の笑いが起こった。

二人の少年時代をやった少年二人とも美しい。
イグナシオ(アンヘル)と女装のサハラ役が、「モーターサイクル・ダイアリーズ」でゲバラをやったガエル・ガルシア・ベルナル。
わたしはエンリケ役のフェレ・マルティネスが好み。

ロバート・ロドリゲス監督・製作・脚本『シン・シティ』

まず、ウキペディアから頂いた知識から。フランク・ミラーによるコミック「シン・シティ」を映画化したもので、監督はロバート・ロドリゲスの他に原作・脚本のフランク・ミラー、クエンティン・タランティーノがスペシャルゲスト監督。出演者がミッキー・ローク、ブルース・ウィリス、ジェシカ・アルバ、クライヴ・オーウェンなど多彩。

原作も評価も知らなかったが、ただ新たなミッキー・ロークがいいという評判のみで見たくなった。
ミッキー・ロークはかなりの間大好きで、ハリウッド美男俳優では、モンゴメリー・クリフト(「赤い河」)の次に好きな俳優だった。「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」の最初のシーンの大写しの笑顔でめろめろになり、「白いドレスの女」「ダイナー」「ランブルフィッシュ」「ナインハーフ」「エンゼル・ハート」「フランチェスカ」と見に行き、レーザーディスクも買った。あとはボクサーの映画とか見たような気がするが興味を失ってしまった。
それ以来のミッキー・ロークなのだ。ずいぶんと強面のメークをしているけど、目のあたりとか昔の美男の面影が漂っていて、しかも一夜を共にした美女のために闘う男マーヴ役だからよかった。
もうひとり、心臓に持病を持つ刑事ハーティガンを演じるブルース・ウィルスもよかった。丈の長いトレンチコートがよく似合う。
マーウとハーティガンのスタイルも生き方も昔のハードボイルドミステリの主人公のよう。
そして第二話のクライヴ・オーウェンがよかった。なんで見ているのか覚えていないのに、なにか懐かしさを感じた。
正義の刑事ブルース・ウィルスが陰謀にはまって投獄されている間、手紙を出し続けたのがジェシカ・アルバ(「キラー・インサイド・ミー」しか見ていない)で、少女から強く優しい女性に成長している。
第二話の娼婦街は娼婦たちが武装し治安を維持していて、警察も介入しない自治区である。女用心棒は二刀流と手裏剣と弓矢の使い手でものは言わないが存在感があった。

音楽にも映像にも満足した。原作を読んでみたい。

ジョセフ・コシンスキー監督『オブリビオン』

「オブリビオン」(2013)というのはどういう意味かな。コマーシャルとか映画情報とか全然見てないから、トム・クルーズが出ているだけで見ることにした。先だって見た「オープン・ユア・アイズ」のリメイク作「バニラ・スカイ」の話をしていたところだったし。トム・クルーズは「トップ・ガン」(1986)を見てから好き(好いたらしいオトコ)で、その後に「レジェンド/光と闇の伝説」(1985)のレーザー・ディスクを買っている。

近未来SF映画「オブリビオン」をいま見終わったんやけど、最後はどうなったんだろう。
ストーリーを読むと、「1977年、地球は”スカヴ”と呼ばれるエイリアンの襲撃によって壊滅的な被害を受け、生き残った人類は他の惑星への移住を余儀なくされていた。人のいない地球で無人偵察機で監視を続けるジャック・ハーパー(トム・クルーズ)は未確認飛行物体の墜落現場に向かい、カプセルの中で眠っている若い女性を見つける。」とある。

月も破壊されてしまい壊滅状態の地球、実はぼろぼろに負けていて移住するどころか、大多数の人たちが滅亡し、生き残った人たちがレジスタンスとして細々と暮らしていた。その中心人物がピーチ(モーガン・フリーマン)。

ニューヨークの廃墟など壊滅状態の地球の映像がすごい。CGを使わず実際に巨大なセットを作り、その周囲に標高3000メートルの山で撮った映像を投影しているそうだ。アイスランドで長期ロケして見たことのないような景観を撮れたとも解説にあった。
映像が美しくもすごい中にトム・クルーズが活躍する。相変わらずのオトコマエの上に締まった肉体美も変わらず。女性を見てニッと笑うところも愛らしい。

アレハンドロ・アメナーバル監督『オープン・ユア・アイズ』

去年の8月に見たトム・クルーズ主演の「バニラ・スカイ」のオリジナル版、スペイン映画の「オープン・ユア・アイズ」(1997)。「バニラ・スカイ」も良かったけど「オープン・ユア・アイズ」のほうがずっと良かった。主演のエドゥアルド・ノリエガの美しさがなんといっても効いている。いまもトム・クルーズ大好きやねんけど、主演の美青年はやっぱり若いほうが良い。

セサール(エドゥアルド・ノリエガ)は美青年で独身で金持ちで、一度つきあった女とは二度目はないと決めている。自分の誕生日パーティで友人ペラーヨといっしょに来たソフイア(ペネロペ・クルス)に一目惚れして部屋に連れ込む。それを見ていた前の彼女のヌリアは嫉妬して、自分の車に乗るように仕向け、暴走する。大破した車で生き残ったセサールは美しい顔がめちゃめちゃになる。
いまの技術ではここまでしかできないと言われ、むごたらしい手術跡のある顔になり、その上にマスクをかぶることを薦められる。
バーで傷跡のある顔を見たバーテンが驚くがすぐに酒をおごると言って注ぐとあとはどんどん飲んで泥酔して道路で寝込む。翌朝路上で寝ている耳元にソフィアが「オープン・ユア・アイズ」と囁いて手を握った。ソフィアとベッドで抱き合って眠りにつき、目が覚めたとき横に寝ていたのはヌリアだった。

アレハンドロ・アメナーバル監督ショートフィルム『ルナ 月は見ていた』

昨日見た「オープン・ユア・アイズ」のDVDについていたおまけを続けて見た。主演がさっきまで見ていた「オープン・ユア・アイズ」のエドゥアルド・ノリエガである。モノクロ画面でものすごく美しい。すっごく美しいからドラマの終わりはどうなるのか心配になる。
1995年の作品で監督自身がカフェのウェイターをやっている。

仕事の帰りに車が故障したアルベルトは15分ほどかかってようやくヒッチハイクできた。運転していたのは若い女性(ニエベス・エランス)で最初はとりとめない会話をしつつ進んで行く。女性がスタンド横のカフェでお茶を飲もうと誘う。アルベルトは妻がいるので早く帰りたいが、しかたなくカフェに立ち寄る。カフェのウェーターは女性を見ていやな顔をする。
テーブルでお茶しながら女性はどんどんアルベルトに迫ってくる。返す言葉を切り返し、言葉でアルベルトをしばろうとする。
早く帰りたくて「明日会おう」と逃げると、電話番号を聞かれ嘘の番号を言うとそれも見破られ、トイレに行っている間に妻に電話するとそれも立ち聞きされ・・・ウエィターからはあの女には気をつけろと忠告されるが、どうしたらいいものやら。
むごい最後を月は冷たく照らしていた。
女は怖い。気をつけてね、あなた。

エドガー・ライト監督『HOT FUZZ ホット・ファズ – 俺たちスーパーポリスメン!』

明日は雨のようだから今夜はなにかおもしろい映画を見ようと、ちょっと屁理屈ですが(笑)。

先日ネットで映画感想を読んでいたら、エドガー・ライト監督の「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(2013)を待っているとあった。これはちょっと見たいなとT氏のDVDを探したら、前篇の「HOT FUZZ ホット・ファズ – 俺たちスーパーポリスメン!」(2007)があった。
エドガー・ライト監督の映画を1本も見たことがないのでいい機会だと見ることにした。すっごいおもろい映画で笑ってばかり。

ロンドンの首都警察で働くニコラス・エンジェル(サイモン・ペッグ)は大学を首席で卒業、警察学校でもトップ、検挙率もトップで何度も表彰されたエリート警察官。あまりにも仕事ができすぎて周囲の人間に煙たがられ、田舎町のサンドフォードに左遷される。
サンドフォードに来たエンジェルは超真面目なスタイルを崩さずというかそれが自然体なのである。村人のちょっとした違反を許さず検挙するから、同僚にも上司にもけむたい存在だ。村の支配者たちの集団には警察の上部の人間も入っていて自分たちの利益のためにがっちり固めている。
相棒のダニー(ニック・フロスト)は警察映画マニア。ともに動くと周りは敵だらけで、ダニーはエンジェルに車をやるから帰れと言い、一度はロンドンに帰る。

ロンドンへ帰る途中で考え直してもどってきたエンジェル。サングラスをかけ武装して、なんと白馬にまたがっている。これってクリント・イーストウッドの「ペールライダー」じゃんと思ったら、そのあとはハリー・キャラハン刑事みたいな活劇だったり、西部劇のシーンだったりとすっごく楽しませてくれた。
イギリスの活劇はおもしろくて楽しい。