イーサン・ホークとアーロン・エッカートが好き

好きだった映画スター、ごく初期はジャン・ルイ・バローとジャン・マレーに夢中。それからいろんな人を経てモンゴメリー・クリフト。いろいろいたんだけどこの3人が抜群に好き。夢中にはならなかったけどずっと好意を持ってるのはクリント・イーストウッド。

さて、いま話題の『マグニフィセント・セブン』にイーサン・ホークが出ている。ちょっと前に『ブルーに生まれついて』でトランペッターのチェット・ベイカーをやっている。まだ見てなくてどっちもそのうち見るつもりだけど、どっちもいいだろうな。
イーサン・ホークの名前だけは知ってたけど、ビフォワーシリーズの『ビフォア・サンライズ(日の出前)』と『ビフォア・サンセット(日没前)』をネット配信で見て相手役のジュリー・ デルピーともども夢中になった。3作目の『ビフォア・ミッドナイト(真夜中前)」は無料になるのを待てずDVDを買って見た。
3作ともにジュリー・ デルピーのほうが激しく見えるけど、彼は彼女を受け止めながら彼の激しさがある。これでイーサン・ホークのファンとなった。

アーロン・エッカートは先日見たクリント・イーストウッド監督『ハドソン川の奇跡』で副操縦士をやっていい味を出していた。『幸せのレシピ』『エリン・ブロコビッチ』ではええ感じやなって思った。その後に見たのが『抱擁』で、惚れ惚れ。グウィネス・パルトローの恋人になって素晴らしい笑顔を見せた。これもDVDを買って何度も見ている。

クリント・イーストウッド監督『ハドソン川の奇跡』

久しぶりに見たクリント・イーストウッド監督の映画。内容はわかっているのに最後まではらはらして見ていた。
乗客たちと機長と副機長と乗務員を入れて155人を乗せて飛び立った旅客機。ニューヨークの街が美しい。すぐに鳥がエンジンに飛び込むトラブルが発生する。最寄りの飛行場を指示されるが時間が足りない。機長のサリー(トム・ハンクス)はハドソン川に降りると即座に決断し実行する。副機長ジェフ(アーロン・エッカート)も沈着に対処する。
155人はニューヨークの沿岸警備隊や警官たちに助けられ全員が無事に助けられた。1月の寒さの中を川に着水したのでみんな無事ってほんとに奇跡。

機長の判断ミスと決めつけるコンピュータ・シミュレーションを使った調査会議で、サリーとジェフは被告人を見るような視線にさらされる。機長が判断を下す時間を35秒遅らせてシミュレーションをやり直したら、近くの空港にたどり着くのは不可能だという結論が出る。サリーとジェフがちょっとの間を部屋から外に出て微笑み合うところがよかった。

大好きなアーロン・エッカートが口ひげを生やして副操縦士になっているのがかっこよくてうれしかった。

『ヒロシマモナムール』のエマニュエル・リヴァさんが亡くなった

58年前にたった一度しか見ていない映画だけど、エマニュエル・リヴァと岡田英次が抱き合うシーンをいまだに覚えている。そして彼女がドイツ人男性と愛し合ったことで戦後のフランスで頭を丸坊主にされ引きまわされるシーンも強烈だった。
彼女のつぶやき「私、広島で何もかも見たわ」彼が答える「君は何も見ちゃいない」繰り返されるこの言葉もよく覚えている。いま思い出すとデュラス的なセリフだが、当時はふーん、こんなシーンになる恋愛がしたいと思ったり、こんなシーンはつらいやろなと思ったり。岡田英次がかっこよくて満足だった。

監督アラン・レネ、原作がマルグリット・デュラス(当時は知らなかった)、製作者は永田雅一(大映社長)とフランス人のジャック・アンドレフェー、1959年製作。
十三の大映映画館に一人で行ったんだけど実は岡田英次のファンだったから。まだ子供時代から抜けてなかったといまにして思う。のちにアラン・レネ監督について知り上映された映画をほとんど見て、デュラスの本をたくさん読むようになった。
『ヒロシマモナムール』という映画が『24時間の情事』という名前で封切られたことに憤慨したが、それはもっと後になってからだ。
続編のような吉田喜重監督のヒロシマを描いた『鏡の女たち』(2002)を思い出した。

ペドロ・アルモドバル監督・脚本『私が、生きる肌』

今夜もペドロ・アルモドバル監督の映画を見ることにしたのだが、この作品、見ている間も見終わっても、すごい!としか言葉が出てこなくて、どう書いたらいいものか。
2011年の作品。原作ティエリー・ジョンケ(ハヤカワ文庫)

主な舞台は世界的な形成外科医ロベル・レガ(アントニオ・バンデラス)の大邸宅。邸宅の中に手術室があり監禁室あり。死体を埋めてもバレない広さの庭があり血の付いた寝具を燃やしても平気なのである。趣味は盆栽で、植木を剪定して自分の思う姿に矯正する。人間も思う形に仕上げられるわけだ。

ロベルの妻ガルは自動車事故で大やけどを負い、療養中に窓ガラスに映った醜いケロイドの自分の姿に絶望し自殺する。一人娘のノルマは母の自殺を目撃したショックで精神を病みクスリを常用している。偶然パーティで出会った洋品店の息子ビセンテ(ジャン・コルネット)とノルマは腕を組んで庭園へ出る。二人は抱き合うがノルマが大声で叫びだしビセンテは逃げ出す。ロベルは死んだ娘を見つけて、ビセンテを探し出し追う。
ついにビセンテを捕まえて監禁したロベルは、ビセンテを去勢し性転換手術をほどこし人工膣を装着する。膣を広げるために小から大のペニスを並べて受け入れ態勢を整えさす。ついにビセンテは美女に生まれ変わる。ロベルは彼女をベラ(エレナ・アナヤ)と名付ける。
鍵のかかった部屋で孤独に過ごすベラはテレビでヨガへの誘いを見てヨガの本を要求し熱心に学びはじめる。美しい肉体のヨガのポーズ。

ついに、ロベルの拳銃を手にしたベラはロベルを撃つ。
ようやくベラはロベルの邸宅から逃げ出して母の洋品店へ帰った。

思い出しつつストーリーを綴った。こういう映画が好き。

ペドロ・アルモドバル監督『トーク・トゥ・ハー』

『トーク・トゥ・ハー』(2002)は『オール・アバウト・マイ・マザー』と『ボルベール〈帰郷〉』の間に位置するペドロ・アルモドバル監督「女性賛歌三部作」の二作目。

とても激しい作品で見ているだけで疲れたがその疲れが心地よくもある。
バレエを見ている観客席に二人の男性がいる。マルコは舞台を見ながら涙を流している。ベニグノはそれをいぶかしく思っている。

母の介護を15年間続けたベニグノは母の死後マンションのベランダから見えるバレエ教室の練習を眺めていて、ダンサーのアリシアに恋をする。財布を落とした彼女が拾ってくれた礼をいうとぐずぐずとした態度。結局後をつけて住まいを確認する。
その後アリシアが交通事故に遭い植物人間になると、介護師となって病院に就職し彼女の看護を積極的に引き受ける。彼女の体や髪を洗いマッサージするのが喜びになって4年経った。

旅のライターのマルコは女性闘牛士のリディアと知り合い愛し合うようになるが、彼女は闘牛場で牛に刺されひどい怪我をしアリシアと同じ病院で治療を受けるも目を醒ますことなく死亡する。マルコとベニグノは病院で親しくなるが、マルコは仕事をするべく旅に出る。

病院ではアリシアが妊娠していることがわかり騒ぎになる。
サイレント映画を見に行ったベニグノが見た映画、女性科学者が発明したクスリを飲んだ男性の肉体が縮んでいき、小さくなった彼は眠っている女性の性器の中に入っていくというもの。
ベニグノは逮捕され刑務所に収監される。

事情を知って慌ててベニグノに会いにいくマルコの必死さ、二人の間に愛があるのがわかる哀しくも美しいシーン。マルコはアリシアが昏睡状態から醒めたことを知るが、ベニグノには言うなと口止めされる。

元旦の夜に見た映画。2日連続でペドロ・アルモドバル監督の作品を見て疲れた。

ペドロ・アルモドバル監督 ペネロペ・クロス主演『ボルベール〈帰郷〉』

ペドロ・アルモドバル監督の映画を全部見たいとずっと昔に『オール・アバウト・マイ・マザー』を見たときから思っていたのに、なぜか『抱擁のかけら』と『バッド・エデュケーション』しか見ていなかった。しかも当ブログに『抱擁のかけら』の感想が見当たらない。書いてないはずないので探さなければ。

先だって相方が友人に勧められたのは劇場上映中の『ジュリエッタ』なんだけど、映画館にめっそいかないわたしらは昔から見たかったのにまだ見ていなかったのを家で見ることにした。『ボルベール〈帰郷〉』(2007)を昨夜大晦日から元旦にかけて見た。

ライムンダ(ペネロペ・クロス)は夫と娘のパウラと暮している。失業した夫は妻に冷たくあしらわれ、義理の娘のパウラに手を出す。抵抗したパウラは父親を台所の包丁で刺し殺してしまう。
ライムンダは泣いている娘から真相を聞き、夫の死体を隠そうと流れた血を拭き取り毛布に包む。そこへ近所のレストランの店長が来て、店じまいするから鍵を預かってくれと頼む。気付かれなくてよかった。

その地へ来ていた映画撮影の人がレストランのそばにいたライムンダを見て店の人と思い大勢のランチを頼む。ライムンダは友だちの顔を見るとパンやケーキを焼いてくれるように頼み、お金を借りて買い物に行きランチの支度をする。料理の手際がよくて新鮮な野菜がうまそう。

物語の展開が早い。殺人だけでなく死んでいたはずの人が出てきたりしてすごくおかしい展開。夫の死体は友人の手を借りて遠くへ埋めに行く。埋めたところにある大きな木の幹に墓碑銘のように文字を彫りつける。

撮影隊がレストランで打ち上げパーティするときライムンダは歌を歌う。それをじっと見る娘と姉と長いこと隠れていて現れたばかりの母親。姉の美容室でライムンダから隠れるところがおかしい。

『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』に続くペドロ・アルモドバル監督「女性賛歌三部作」の三作目。

映画『ジュリエッタ』を見る代わりに原作の本、アリス・マンロー 小竹由美子訳『ジュリエット』(新潮社 2400円+税)を読むことにした。昨日深夜アマゾンに注文した本が今日夕方届いた。すごい。

ウディ・アレン監督 ケイト・ブランシェット主演『ブルージャスミン』

昨日はなにが見たいか思いつかなくてこれならいいかと見たんだけど・・・今日になって見たい映画あったやんかと思い出した。ケイト・ブランシェットの『ブルージャスミン』。去年のアカデミー主演女優賞をとった。
始まるとすぐに思い出した。ヴィヴィアン・リーが主人公ブランチを演じたエリア・カザン監督『欲望という名の電車』。妹(キム・ハンター)とその夫スタンリー(マーロン・ブランド)とその同僚ミッチ(カール・マルデン)の舞台劇の映画化。杉村春子がブランチをやった文学座の舞台も同時に思い出した。
狂っていくヒロインの姿を見るのはつらいが、女優にとってはやりがいのある役だろうと思う。ブランチもジャスミンも。

ジャネットという本名をジャスミンに変えて、名前のとおりの美貌と優雅な身のこなしで生きてきたジャスミン。ニューヨークで金持ちと結婚して超豪華な暮らしをしてきたが、夫が逮捕され自殺し彼女はすべてを失う。ともに養女だった妹を頼ってサンフランシスコにやってくる。飛行機に乗ってもファーストクラスに慣れていたからとランクを落とすつもりはさらさらない。とっても上手に奥様ファッションで決めている。

社交生活は得意でも働いたことがないジャスミン。歯医者の受付に就職してそのお金でパソコン教室へ行く。パソコンを覚えてネットで資格を取ってインテリアデザイナーになるつもり。そうはなかなかいかないだろうと思っていると、パーティで知り合った男性と結婚といううまい話になる。だが、身から出たさびでみんなうまくいかず、部屋を飛び出したジャスミンは街のベンチに座り延々と独り言をいう哀れなシーンで終わり。

グレン・フィカーラ/ジョン・レクア監督 ジュリアン・ムーア主演『ラブ・アゲイン』

心温まる映画が見たいなと探してジュリアン・ムーアだからと期待した。笑って見終わったがちょっと柔らか過ぎ。まあ予備知識なしで見たんだからしかたない。テレビドラマを見ているようでお腹の底から笑えなかった。達者な俳優がたくさん出ているのにもったいなかったなあ。

10代からつきあって結婚して浮気もせずにきた40代の夫婦だが、妻エミリー(ジュリアン・ムーア)が同僚(ケビン・ベーコン)と浮気したのを知って、夫キャル(スティーヴ・カレル)が責め離婚にいたる。裕福そうな家には妻と子供2人が残る。
キャルはバーでナンパしようと頑張るがダサくて相手にされない。それを見ていたかっこいい男ジェイコブ(ライアン・ゴズリング)が手取り足取り指導してようやくナンパ方法を会得する。でもなかなかうまくいかないもので、これでもかと笑わせる。
ジェイコブのほうはプレイボーイだったのに若いハンナ(エマ・ストーン)にメロメロになる。ハンナが失恋したのに同情して家に連れて帰ったのだが、ふたりがくっつくところが笑わせる。

芸達者な俳優が揃いいっぱい笑わせてくれて楽しい映画なんだけど、あまりにも上手くいきすぎるところにモンクをつけたくなった。

トム・カリン監督『美しすぎる母』

見たい映画をメモしてあるのからこれどうかなと選んだ。美しい母がジュリアン・ムーアだから文句なし。そして息子が『リリーのすべて』でリリーをやったエディ・レッドメインである。
「1972年11月17日、バーバラ・ベークランドは誰よりも愛する息子・アントニーに殺された。」とあるが、本当に実話を映画化(2007年 西仏米)したものだそうだ。

貧しい家庭に育ったバーバラはフランス人の大金持ちと結婚して息子が生まれ、表面的にはなに不自由のない毎日を送っている。
息子が赤ちゃん時代の1946年から物語がはじまり、少年から青年へと成長していく。その間、夫と妻の間にいろいろと齟齬があり、浮気があり、息子は育っていき女性とも男性とも関係を持つ。母と父が抱き合っている横に息子もきて3人で抱き合うなどショックなシーンがいっぱい。

1972年に美青年に成長した息子が素敵なスーツを着て母とファッション話を交わし、そのあと母は息子の横にいって下半身を触る。
その後に息子は母親を殺してしまう。死体となった母を横に、冷静に警察に電話し、そして腹が減ったと中華屋に出前を頼む。警官が来たときは床に座ったまま食事中だった。

滝田洋二郎監督『おくりびと』

2008年の日本映画。第81回アカデミー賞外国語映画賞、および第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞などを受賞した。と ウィキペディアに書いてあった。評価されるだけのいい映画だと思う。ふだん考えたこともない葬式に関係する仕事の話で、世間知らずのわたしにはおおいに勉強になった。
当時、すごく評判になったけど見ていなかった。あまりにも評判が高すぎて見送っているうちに通り過ぎてしまったという感じ。8年後の今夜アマゾンプライムで見たんだけど、隙のないいい映画だと思う。

東京でクラシック音楽で食べていく道が絶たれ故郷山形にもどり仕事を探す。「旅のお手伝い」というぼやけた宣伝文句にどんな仕事かと行ってみると葬式の前段階の「納棺」だった。
いろんな遺体との出会い、さまざまな遺族とのやりとり、そして世間の偏見、一生の仕事と思えるまでのいろんな出来事が丁寧に描かれている。
「旅のお手伝い」と書かれたNKエージェントの広告を見たことからはじまり、最後は子どもの自分を捨てて出て行った父親の遺体と向き合う。
本木雅弘の演技と町や村の風景に引っ張られて一生懸命見た。山形を舞台にしたのもとてもよかったと思う。