週刊誌で広告を見て買おうと思っていたら12.11のデモ帰りに本屋があった。すぐに読みはじめて、日本で最初の女子デモは大阪という記述にぶつかって、わたしも参加したデモ「原発いらん!女子デモ!? だれデモ!@大阪」とからめて書いた。その後、木村二郎さんにいただいた本の感想を書いて、年末の雑用をしていたら年が明けて、なんやかんやでもう1月が終わる。
先週ようやく読み上げたが雑用が多く館山緑さんのライトノベルの感想を書いただけで雑文ばかりだ。なんか弁解ばかりしているが、年月かけて調べて書いた本だからちょこっと書くわけにいかない。と言いつつ、やっぱりちょこっとだけしか書けないか。
本書を読んで、飛田という街についてここまで書いた人がいることに驚いた。この本は男性には書けないし、女性だって井上さん以外に書けない。縦横無尽に飛田にせまっている。飛田という独特な街と住んでいる人たちへの愛があるから書けた本である。好奇心で読んで愛にうたれる。
わたしが中学生のころ、郊外の下町っぽいところに住んでいたのだが、あるときFさんとこの娘が飛田にいるというウワサが駆け巡った。近所の男が飛田に遊びに行って、店に座っている彼女を見かけたというのだ。わたしよりも3歳ぐらい上の彼女はハタチを前にして大人の女だった。貧しいわけではなく男が好きなんだって。飛田にいると言われても当時のわたしにはわからなかったが、彼女が侮蔑されていることはわかった。大人たちが飛田というときの独特のニュアンスが頭に残った。
遊郭についての思い出はもう一つある。阪神沿線にある会社で働いていたとき、正月に数人のグループがこれから松島遊郭に初買いに行くという。彼らは楽しげにタクシーで出かけて行った。年中行事だったらしいが翌年は参加者が減ってたしかこの年で終わったのだった。
そして現実の飛田というには古い話だが、1970年代に天王寺区旭町にあったジャズ喫茶マントヒヒに通っていたころは、今池の駅から歩いていくと飛田へ曲がる道が右側にあった。暗い道の向こうにピンク色の街灯が見えて神秘だった。
本書を読んでいるうちに飛田や遊郭にかかわる三度の経験を思い出した。本の感想はこれから。
(井上理津子著 筑摩書房 2000円+税)