ダルジール警視のヨークシャーパーキンを食べた

最後の作品「午前零時のフーガ」、ダルジール警視はホテルのテラスで、濃いヨークシャー・ティーをポットで頼み、あと、パーキンもいいな、と注文する。〈ヨークシャー名物の生姜と蜂蜜のケーキ〉だと註があったが、パーキンはどんな味がするのだろうと気になって、「パーキン食べてみたい」と去年の日記に書いた。訳者の松下祥子さんが〈レジナルド・ヒル〉で検索したら当日記が出てきたそうで、「ミステリマガジン」に作り方を書いてくださった。わたしはケーキは食べるけど作らないのを知っているSさんが作ったのを今日送ってくださった。持つべきものは友♪ 昼食後と夕食後に厚切りしたのを濃い紅茶で食べた。うまかった。まだ明日の分もあって幸せ◎

ヴィク・ファン・クラブの会報に彼女が書いた作り方を引用させてもらう。
【ゴールデンシロップ110g 黒糖蜜25g バター75g ブラウンシュガー75gをボウルに入れ、弱火にかけて溶かす。 ここにオートミール175g 小麦粉75g ベーキングパウダー小さじ1杯 生姜粉小さじ1杯と塩ひとつまみを混ぜ入れ、さらに卵1個と牛乳大さじ1杯を加えて混ぜたらケーキ型に流し込み、140度のオーブンで1時間半ほど焼く。】

オートミールはわが家の常備品でスープに入れたりお粥にして食べている。それで気がついたのだが、うちで買うのは健康食品店で普通のオートミールだ。一度だけ砕いたオートミールを知らずに買ったが、あれはケーキ用だったのだといま気がついた。オートミールを入れたケーキがあるなんて知らなかった。検索したらオートミールを使ったパンケーキの作り方があって、これならカンタンそう。
(松下祥子訳 ハヤカワポケットミステリ 1800円+税)

パスコーとハリウッド映画 『ダルジール警視と四つの謎』

まだまだ読んでいるレジナルド・ヒルのダルジール警視シリーズ。昨日は短編集「ダルジール警視と四つの謎」を読んだ。初期のころの四つの短編なのだが、ダルジールとパスコーとウィールドがはじめて出会う「最後の徴集兵」が楽しい。ずっと彼らの活躍を読んできた者にとっては、こうして3人は出会い働いてきたのかと感慨無量的な気分になる。

ダルジールとパスコーが陥る危ない場面のときに、パスコーがハリウッド映画の名台詞できめるのがおもしろい。優等生ぽいパスコーにいたずらっ子のような三枚目的なところがあるからこのシリーズはおもしろいのだ。
【「遅れる、遅れる、とっても大事なデートに遅れる」(「がんばれ、巡査」から)パスコー刑事は歌った。窮地に立たされると、彼はお手本となる対処法をいまだに映画に求めてしまうのだ。】
作品の最初が↑で、それからページを繰ると、「お熱いのがお好き」「キー・ラーゴ」「戦場にかける橋」「栄光の調べ」「静かなる男」「ワイルド・パンチ」「誰が為に鐘は鳴る」「シェーン」「巌窟王」「バグダットの盗賊」と映画の主人公の台詞や動きを思い出して、いまの自分のやるべきことの規範を求めようとする。

レジナルド・ヒルさん、楽しんで書いてはります。

後期の作品「ダルジールの死」では、パスコー主任警部はずっと上の組織CAT(合同テロ防止組織)本部に呼ばれてマンチェスターで働くが、自分からヨークシャーに帰ることに決める。そのときのパスコーの「カンザスに帰ります」(原注「オズの魔法使い」より)と決めた台詞に爆笑。
(秋津知子他訳 ハヤカワ文庫 820円+税)

翻訳ミステリ読書会とヴィク・ファン・クラブ例会

2日続けて西梅田へ。翻訳ミステリ読書会は某ビルの11階セミナールームで、ヴィク・ファン・クラブは毎度おなじみの大阪駅前第一ビルのシャーロック・ホームズである。

読書会のほうは2時間ジャストをジェイムズ・エルロイ「ブラック・ダリア」について語り合った。人前で話すのは苦手なので少し緊張したが、笑いをとりながらしゃべれたのでまあまあか。
若い人、団塊世代の人、翻訳を勉強している人や翻訳家など多彩なメンバー。女性が多かった。同じ本を読んでいるのに、立場や考えや受け取り方が違っているのもおもしろい。エルロイに入れこんでいる人もおり、かなわんかったという人もおり。

翻訳本の編集者による「ブラック・ダリア」のおしゃれなレジュメが配られた。エルロイと彼の作品について書かれている。エルロイ以外のブラック・ダリア(エリザベス・ショート)殺人事件を扱った作品の紹介が勉強になった。ノンフィクションと分類されたところに「ハリウッド・バビロン」(ケネス・アンガー)があるのがうれしい。長年のわたしの愛読書(最近あまり出してなかったが)だから。「エルロイの脳内にはこの本のようなあれこれが詰まっているのです。」という解説になるほどとうなづいた。
9時に終了して二次会は遠慮して帰宅。

ヴィク・ファン・クラブのほうは例のごとく雑談の3時間だった。会報の内容についてあれこれ。読書のこと、原発関連のこと、会員の活動のことなどいろいろ。ギネスとおいしい料理の楽しい時間。
例会に来てほしい人、原稿を書いてほしい人が仕事と家事・育児で忙しくて時間がとれないのが残念だ。

ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』(2)

元ボクサーのリーとバッキーが警察官になったことで、政治的・社会的な裏がたっぷりある白人警察官どうしの試合が企画される。試合をすることに決めた日にバッキーはリーとケイに出会う。3人のゆるぎない友情の第一歩になった日。ケイはどうしようもない子供たちと言いたげな顔で二人を見ていたが、別れるときにバッキーに一言「その歯をなおしてもらえば、あなた、すごいハンサムなのに」。彼は口を開かないといい男だがすごい出っ歯が邪魔している。

リーとケイは同居しているけど結婚ではなく、リーはなぜかケイとバッキーを結婚させたがっている。リーもケイも暗い過去を背負っている。
ふたりはボクシングで名を挙げてからは警察内での位置もあがり荒っぽさで名を馳せている。あるとき3人の運命を変える事件が起こる。ブラック・ダリアことエリザベス・ショートが惨殺された事件である(1947年に実際に起こった事件で未解決)。ブラック・ダリアは殺された上に肉体を上下に切断されていた。
バッキーは事件にのめりこむ。リーが行方不明になり、月日が経ち、バッキーとケイは結婚する。だがバッキーはブラック・ダリア事件とエリザベスを忘れることができず、事件の聞き込み捜査中に知り合った金持ちの娘と関係し、夫婦関係は破綻する。
やがてバッキーは個人的にエリザベスの出身地へ出かけて、働いていたときの様子などを聞き出す。彼女は優しい女性だったと当時を知る人たちは語る。

時代と金持ち娘の父親が映画「チャイナ・タウン」を思い出させた。

最後にはケイからの手紙に希望が見えてほっと読み終えることができた。
(吉野美恵子訳 文芸春秋 690円)

ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』(1)

翻訳ミステリ読書会が明日になった。ジェイムズ・エルロイ「ブラック・ダリア」がテキストに決まっていたのにもかかわらずまだ読めてない。咳のせいで深刻そうなのは受付なかったと言っておこう。1時過ぎにようやく読み終えた。なんとしても感想をまとめあげねばならぬ。
この「kumiko日記」と以前の「kumikoのほとんど毎日ページ」を調べて、エルロイの感想がひとつもないのがわかった。なんとカンニングはできひん(笑)。
正面突破はあきらめることにして、感じが似ていると思い出した映画のことをと考えたのね。ところがその映画のタイトルが出てこない。相方に「鼻に傷をつけられるやつ」「水道局が出てくる」「ロマン・ポランスキー」と出てきた言葉をぶつけて、映画名「チャイナ・タウン」をようやく思い出して、ブログ内検索したら、なんとまあ〈ブライアン・デ・パルマ監督「ブラック・ダリア」〉(2007年10月)というのが出てきた。えっ、この本は映画になってて、しかもあたしは見てたんや。「チャイナ・タウン」どうこうという前に「ブラック・ダリア」の映画があったんや。しかも、日記には「チャイナ・タウン」を思い出すと書いてあった(笑)。

この本を読んだのは1994年、それから「L.A.コンフィデンシャル」「ホワイト・ジャズ」「ハリウッド・ノクターン」「アメリカン・タブロイド」と出版されるとすぐに読んできた。最近は全然読んでなかった。明日の読書会で盛り上がって新作を読む気になるかもしれない。中島由美さんがヴィク・ファン・クラブ会報4月号に「アンダーワールドUSA」を紹介してくださっている。

第二次大戦が終わったあとのロサンゼルス、主人公バッキーは警察学校を出たころに相棒のリーと出会う。リーはヘビィ級でバッキーはライトヘヴィ級のボクサーだった。
※続きは明日ということで。
(吉野美恵子訳 文芸春秋 690円)

レジナルド・ヒル『甦った女』読んだのは三回目

前回読んだのは4年前で、その数年前に読んだときも図書館のお世話になった。今回は中古本といえ自分の本で読んだ。また数年もしないうちに読みたくなるだろう。すごい引力を持つ作家だ。
内容は前回「レジナルド・ヒル「甦った女」再読」として自分でいうのもなんですが丁寧に書いているので、今日は雑感でいく。

27年前に外交官のジェイムズ・ウェストロップとパメラ夫妻はミックルドア卿の屋敷に招待されていた。パメラが殺されミックルドア卿と愛人とされたシシーが逮捕された。男は処刑され、終身刑だったシシーはいまになって釈放された。
27年前の殺人事件について再調査のため、ロンドンから副警察長に出世したヒラーをリーダーにした調査チームがやってくる。当時の責任者タランティア警視は若手刑事のダルジールに目をかけてくれた。ヒラーが大嫌いなダルジール警視は自分なりの調査をはじめる。

ダルジール警視は休暇をとって個人的にアメリカへ行く。ニューヨークでの賑やかな滞在の後に、列車でヴァージニア州の州都ウイリアムズバーグまで行く。ニューヨークのタクシーと大違いの静かな動きに感激しダルジールは降りたときに過分のチップを渡す。

ジェイムズ・ウェストロップはウイリアムズバーグで古い屋敷の相続人であるマリールーと穏やかに暮らしている。人生を捨てていた彼はマリールーに会って生き直すことができた。しかしいまは癌で余命幾ばくもない。そこへダルジールが訪れて物語は最終章へつき進んで行く。

そこで、わたしは映画「アナザー・カントリー」(1983)を思い出した。コリン・ファースが共産主義者を演じていた映画だ。あれや。

レジナルド・ヒル「ベウラの頂」(3)

10日以上ずっと本書を読んでいる。本を読む時間が少ないせいもあるけど、それにしてもこれだけ長く1冊の本を読んでいるのはめずらしい。二度は最初から読んで、つぎはお気に入りのところを繰り返し読んでいる。

読んでいるうちに映画「ピクニックatハンギング・ロック」(1975)を思い出した。オーストラリアで実際に起こった事件を書いた小説をピーター・ウィアー監督が映画化した。1900年のバレンタインデーに寄宿学校の女子生徒たちが岩山へピクニックに行き、3人の少女が魅せられたようにずんずん登っていき姿が消える。白いドレスの少女たちの美しさと儚さがいつまでも残る映画だった。

15年前にデンデイルの村から3人の少女が消えてまだ見つかっていない。そのとき捜査に関わったダルジール警視とウィールド部長刑事はその事件を忘れることはない。近い場所でいままたひとりの少女が犬を連れて散歩中に消えた。

15年前、貯水池にするためにデンデイルの村は全村が移住させられた。絵本「みずうみにきえた村」(ジェーン・ヨーレン文/バーバラ・クーニー絵 ほるぷ出版)を見ると、ニューイングランドの村がボストンに水を供給するために消えて湖になった様子がくわしくわかる。そのように「ベウラの頂」を仰ぎ見る村も水没させられた。いまは水位がさがって壊された昔の村が峯から見える。

今回の事件はダンビーで起こったが、前回の事件と似ている。「きっと少女を襲った野郎はそこでやめられないだろう」とダルジールはいう。二度目の犯罪を起こさせないこと、いまの事件の解決と15年前の事件をいまこそ解決しなければ。それぞれの警官たちが動く。

ピーター・パスコーは娘ロージーが重病にかかり生還した体験から事件に深い関与の気持ちを持つ。
【「・・・ぼくはデーカー夫妻に対してそういう気持ちなんだ。彼らに残されているのは、知るということだけだ。ぼくがこの段階で言っているのは正義でも報復でもない。ただ単に知るということだけだ。この点で、ぼくは間違っているかもしれないが、彼らに対して、また、ロージーをぼくらに返してくれた神だか盲目の運命だかに対して、ぼくにはこの件を確かめる責任がある。】

15年前に行方不明になったひとりの少女の家を訪ねると、窓台に野の花が生けてある。キツネノテブクロとオニタビラコ、わたしも知っている野の花なのがなんとなくうれしい。
(秋津知子訳 ハヤカワポケットミステリ 1800円+税)

レジナルド・ヒル『ベウラの頂』(2)

ベッツイの母は薬の過剰服用で亡くなり、父親は石を上着のポケットに詰めて入水自殺した。ひとりになったベッツイは金持ちの親戚ウォルターとクローイ・ウルフスタンに引き取られやがて養子縁組する。そして一流の精神科医によって治療を受ける。
いまはほっそりとしたからだで金髪のかつらの美女で未来あるクラシック歌手である。クローイにとっては行方不明になったままの娘メアリーの代わりになるはずもないが、受け入れている。
そういうことをダルジールに話したのは上流階級出身のキャップだった。二人の仲は修復されていく。
村の人たちが15年前と同じように迷宮入りするだろうといっているのを感じてダルジールはあせる。

ノヴェロ刑事は当日外にいた人たちが見かけた車について調べる。ゴミ箱のゴミをビニール袋に入れて持って帰ったのが決定的なところで役に立つ。
先の見えない捜査中にパスコーとエリーの娘ロージーが重病にかかり入院する。ノヴェロはパスコーに替わって調査仕事をやりとげる。ノヴェロはカトリック教徒でロージーのために蝋燭をあげて祈り、そのことをパスコーに告げる。

ウィールドの恋人エドウィンが社主のイーンデイル出版社が出した絵本「ニーナとニックス」をウィールドがロージーにプレゼントした。この地方に伝わる少女と怪物のお話をロージーはいまいちばん気に入っている。この本がエリザベスが歌う「亡き子を偲ぶ歌」とともに物語の背景になっている。
(秋津知子訳 ハヤカワポケットミステリ 1800円+税)

レジナルド・ヒル『ベウラの頂』(1)

図書館の本でヒルを読みはじめた最初のころに読んでおもしろかったのだが、おもしろみが半分くらいしかわかっていなかったのだといまわかった。一度読み終わって再読しているところだが、本書はみんないいダルジール警視シリーズの中でも特に素晴らしいと思った。

登場する警察官たちの過去がわかっているのとないのでは大違いで、だからこういう現在があるのだとわかって読むとよけいにおもしろい。特に「幻の森」でダルジール警視が出会ったキャップ・マーベルとの再会があるし、ウィールド部長刑事が伴侶を得る「完璧な絵画」の登場人物たちのその後がいろいろある。「幻の森」でウィールドに救われた猿も出てくる。パスコーは同じ名前の曾祖父ピーター・パスコーが第一次大戦中に英国軍によって処刑されたことのショックがあとをひいている。今回は娘ロージーが重病にかかって回復するまでの苦悩をこえて事件に取り組む。若き女性刑事ノヴェロの苦渋や活躍も胸に響く。

デンデイルの村がダムの底に沈むと決まったとき、ベッツイは7歳で両親と暮らしていた。ベッツイは小太りで色が黒かったせいもあり男の子がほしかった母親の気持ちから髪は短くスボンをはかされていた。父親は農業のほかにベウラの山に羊を放牧する権利を持っていた。
知り合いのおじいさんは「鼻」と呼ばれていたベウラの山の斜面にはいっぱい洞穴があって、日向で眠り込むと水の精なんかに連れ込まれ二度と帰ってこなかった子供たちの話をしてくれた。
その話をするのをぴたっとやめたのは、ほんとにそれが起こりはじめたからだ。夏休みに入ったとき、ジェニーがいなくなった。次にマッジがいなくなり、その次にベッツイのいとこのメアリーがいなくなった。3人とも金髪の美しい少女だった。
ダルジール警視やウィールド部長刑事たちの必死の捜査にもかかわらず迷宮入りしたのが15年前のことだ。パスコー主任警部はそのあとに赴任してきた。

15年後の日曜日の朝、ピーターとエリーとロージーのパスコー家の食事中にダルジールがやってきた。ラジオのマーラーを聞いて普通はドイツ語だろうという。「エリザベス・ウルフスタンが歌うマーラーの〈キンダートーテンリーダー、亡き子を偲ぶ歌〉第一番」とアナウンサーがいい、続けて解説が、これは彼女自身の翻訳であること、22歳でこういう難曲に取り組むひとは珍しいという。
エリザベス・ウルフスタンはいなくなったいとこのメアリーの両親の養子になってベッツイからエリザベスに名前を変えた。髪を金髪にしようとして失敗しカツラをかぶっているが、ほっそりした体にするのに成功しいまは将来ある歌手として注目されている。

ダルジールはアロハシャツ姿でくつろいでいるところに少女が行方不明と呼び出しがかかり、パスコーを引きずり出しにきた。
ローレインは今朝早く両親がまだ寝ているあいだに子犬のティッグを連れて散歩に出たまま帰ってきていない。
ダルジールは15年前の未解決事件との関連を思う。たまたま15年前に容疑者だったが取り逃がしたペニーが帰ってきたという落書きを見かける。
(秋津知子訳 ハヤカワポケットミステリ 1800円+税)

レジナルド・ヒル『死にぎわの台詞』

「社交好きの女」「殺人のすすめ」「秘められた感情」「四月の屍衣」(※この間に未訳が2冊ある。読みたい!)「薔薇は死を夢見る」に続いて「死にぎわの台詞」ということになる。
ジュンク堂で見つけてまだ未読本があったと喜んで買ったら図書館で借りて読んでいた。3人の老人の事件だから地味だけど、いろいろと考えさせられる。

ある寒い11月の夜に3人の老人が死んだ。パリンダー(71歳)は4時間近く氷雨に打たれていたが最後に暖かい濡れたものの感触で目を覚まし「ポリー」とひとこと言って病院へ運ばれたが到着時死亡した。同じころディークス(73歳)は自分の家の浴室で亡くなった。彼の最後の言葉は孫の名前「チャーリー」だった。ウェスタマン(70歳)は自転車に乗ってパラダイスロードを走っていて車にはねられた。病院での最後の言葉は「パラダイス! 運転してたやつ・・・あのふとっちょ・・・酔っぱらいめ!」だった。問題の車にはダルジール警視が乗っていた。しかもいかがわしい馬券屋といっしょだったし、車に乗るときも見られていた。

その夜、ピーター・パスコー主任警部とエリーは娘ローズが初めて迎えた誕生日をワインで祝っていた。そこへウィールド部長刑事から電話がかかる。「えい、クソッ!」パスコーは言った。「クソッ!クソッ!クソッ!」パスコーは出かけてウィールドと捜査をはじめる。
捜査中に、エリーの父の様子がおかしいことを母からの電話で知り、エリーはローズを連れて両親の家にいくことにする。認知症がだんだん進んできた父と疲れた母、エリーとパスコーも老人問題に否応なく直面する。
(秋津知子訳 ハヤカワポケットミステリ 1500円+税)