田山花袋『蒲団』

中学生の夏休みに一度読んだだけの本を青空文庫で読んだ。読みたい作品をiPad miniに入れてもらったのですごく読みやすい。
家には日本文学全集があって手当り次第に読んでいた夏休み。貧乏人の子沢山だからどこかへ行くということもなく、働きに行く者は行き、学校へ行ってる者は家事や母の内職の手伝いをした。弟は毎日自転車で仲間と遊びに出かけてた。わたしは家にある本を片っ端から読んでいた。

いちばんよく覚えているのは何度も読んだ『ジェーン・エア』で、これは一生の愛読書となった。漱石全集もそのころから読んでいた。文学全集の中に入っていたのに名前を忘れてしまった作家もたくさんいる。都会で学んでいた男子が病気して田舎に帰った話とか悲しい物語もあったが、作品名も作家名も忘れてしまった。

田山花袋の『蒲団』だって作家名と作品名のほか、いちばん最後の一節、作家が「蒲団にくるまって女の匂いを嗅ぎ、びろうどの襟に顔を埋めて泣いた。」ってとこ、いまだに覚えているところをみると、性的なものを感じたのね。親きょうだいにも言わなかったもんね。胸にしまい込んで(笑)。
いま読んだら、思いこんでいたより真面目な小説だった。私小説の代表みたいに言われているのも納得なのであった。

サラ・パレツキーの新作『カウンター・ポイント』12月発売!!

ツイッターをうろうろしていて見つけたうれしい情報です。さっそくお知らせ!

サラ・パレツキー『カウンター・ポイント』2016/12/19発売
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1400円+税)
出版社内容情報=元恋人から依頼を引き受けた探偵ヴィクは、二十五年前に起きた殺人の真相を追う。事件の裏に潜む巨大な闇とは!? 待望の最新刊

ヴィク健在!!
元恋人って誰だ? どの人かなあ。思いつかないなあ。
ミスタコントレーラスさんにまた会えると思うとうれしい。

まだ1カ月以上あるけど発売日が決まっているし待つのも楽し。
来月の「Vic Fan Club News」は新刊期待号だな。会報出したころに新刊発売だから、1月号は感想特集になるな。

今夜は『銭形平次捕物控』を青空文庫で読む

11月に入って寒くなった。ヒーターかエアコンをそのときの気分でつけている。10月の終わりに相方が風邪をひきかけたのを暖房とお風呂と湯たんぽで撃退した。こっちにうつらないでよかった。風邪引きは薬より温めることやと改めて実感。カイロも役に立つ。暖かい下着も。

姉のところへ行くとなんだかんだと疲れる。その上に毎日の電話かけで疲れている。人のケアばかりしないで、自分のケアもせなあかんとつくづく思う今日この頃。
近いうちになにか楽しいものを買いに行こうと思ったが、なにが楽しいねん? 結局本しかないな。

*古本をアマゾンで1冊注文中。
イーヴリン・ウォー 吉田健一訳『ブライヅヘッドふたたび』 ちくま文庫 (古本 送料とも1700円)
*そして相方が近々本屋に行くとき買ってきてもらう本。
ヘニング・マンケル 柳沢由美子訳『流砂』創元社 2592円
ピエール・ルメートル 橘明美訳『傷だらけのカミーユ』文春文庫 907円

いま読みかけの本は置いといて平次親分の物語をひとつ(鈴を慕ふ女)読んでからお風呂に入ろう。

よしながふみ『きのう何食べた?』12巻(2016年秋最新単行本)

このシリーズを最初から東京の友だちに貸してもらって読んでいる。はじめは何冊かどばっと借りて、その後は出るたびに送ってもらっている。ほとんど年に1回だから忘れたころに送ってくるのがおもしろい。
「おー今年も出たか」と言いながらページをめくる。返却するまで二人が読んでもう一度読んでからお返ししている。本書の主人公たちと同じようにのんびりの付き合いが長く続いている。

ゲイカップルの日々を食事をとおして淡々と描いた『モーニング』連載の漫画で、2007年から続いていてこの先も続く。物語も絵も緻密でよくできていると感心しながら毎度読んでいる。人物たちは実際の年月に合わせて年を取っていくのにも共感する。
弁護士の筧史朗(シロさん)と美容師の矢吹賢二(ケンジ)は東京の2LDKのアパートで暮しているゲイのカップルである。毎日シロさんは仕事の帰りに食材を買い調理する。できあがったころにケンジが帰ってきて楽しい食事になる。食材の紹介と作り方を懇切丁寧に描いているのが本書の特徴。

今回最初は両親のところへ久しぶりに行ったシロさんがすき焼きの牛肉の残りをもらってきたので、具をたっぷりですき焼き。うまいうまいと食べ終わってから、ケンジがいう。「でもシロさん、まだお腹に余裕あるでしょ? この煮汁を半分くらいにしてもう一度火にかけてね」「新たに卵2個を溶いて」「すき焼きの煮汁を卵とじにして、軽くよそったごはんの上にのっけて〆の卵どんぶりね」
シロさん「うわケンジこれうまいよ!!」

その他、秋だからサツマイモご飯、リンゴのマフィンなど、いろんな食べ物の作り方が語られ、二人のそばに寄ってきた人たちの料理のうんちくも楽しく、これ作ってみようかなと思わせる楽しい漫画だ。
(講談社 581円+税)

清野栄一『デッドエンド・スカイ』

うちの本棚にある相方の本を借りて読んだ。家にある本はおおまかにはわたしがミステリと乙女もの、相方がSFとIT関連と社会問題関連と分かれているが、あと半分は二人とも読む共有の文学書である。ふだんはじぶんの本を読むのが忙しくて読書範囲を広げないんだけど、今回は清野さんについて相方がいろいろしゃべるし、うちにある本の解説もするので興味をもって読もうかなと言ったら、最初に読むのはこれがいいと出してくれた。
カバーの内側にDJしている清野さんの写真があってとてもかっこいい。2001年発行の本だから15年以上若いときだ。もっと前に知っておけばよかった、ってどういう意味じゃ(笑)。

さっき読み終わったのだが久しぶりに清々しい小説を読んだ気分である。博之という主人公がいろんな場所に旅をして人の生死にも関わる物語だ。
最初の作品「プルターニュ14-1」はパリのプルターニュ通の19世紀に建った建物に住む人たちの話。パンションには失業者と外国人とアルツハイマーの老教授が詰め込まれ、そこに博之も住んでいる。1Fはパリで一番安くて狭いカフェがある。
とても貧しくて汚い場所の物語だけど、とても清々しい作品だ。博之に欲がないからかな。

二番目は東京に戻って働いている博之のところに、遠い親戚で幼馴染の幸太郎が仕事と住むところをなくして転げ込んでくる。ワンルームマンションのベッドの横にふとんを敷いて同居する二人。幸太郎の言葉「おれと博之は十五の時にパンクを聴いた」。それで全部通じる。

5編の小説が入っていて、その4つ目が「パラダイス・ホテル」。
メルボルンで借りたレンタカーが砂漠で動かなくなり、車を降りてバックパックを背負い歩き出す。足元にはカンガルーの骨が散らばっている。そして見つけたのがパラダイス・ホテル。
わたしのアタマには映画『バグダッド・カフェ』(1987)が思い浮かんだ。実はタイトルが出てこなくて検索もならず苦労(?)したんだけど。

最後の作品が「プルターニュ14-2」。パリ、真夏の炎天下で沸騰するデモ隊と催涙弾を構えた機動隊に囲まれる。
(河出書房新社 2000円+税)

平幹二朗さんの田沼意次が好きだった

平幹二朗さんというと、池波正太郎原作の連続テレビドラマ「剣客商売」で田沼意次を演じていたのを思いだす。田沼意次についての池波さんの解釈が気に入り、平さんの偉そうににっこりする顔や着物の着こなしや動きが気に入っていた。
ドラマは田沼失脚の前で終わっているが、失脚したのを知っている読者にとって胸にせまる終わりかただった。
田沼は主人公秋山小兵衛の息子大二朗の妻三冬の父だから、田沼失脚後に秋山家がどんなことになったか気になって仕方がないのである。

平さんを若い頃は好きになれず俳優座の舞台も見たことがなかった。なぜかというと仲代達矢ファンだったから。仲代さんの俳優座の芝居は「ハムレット」をはじめとして大阪での公演は全部見た。同じように俳優座の二枚目だった平さんは無視してた。

テレビの時代になって「三匹の侍」でファンになった。テレビを見た翌日は会社でやはり三匹ファンのおっちゃんと昨夜はよかったねえと語り合い、殺陣を真似して遊んだ。長い間続いた人気番組だった。その後の「眠狂四郎」もよかったといま思い出している。殺陣がとても素敵だった。

中野和子『「売れる」ハンドメイド作家になる!』は楽しくてためになる

この本は20年以上の友人である著者からいただきました。楽しくてためになる本です。
まっすぐに縫うのさえままならぬわたしとは縁のないハンドメイドだが、やさしい文章と写真とイラストでハンドメイドの楽しさとその実現について教えてくれる。今日一日楽しんで読んだ。すべての色合いがとっても甘くて綺麗。
中野さんはわたしよりずっと年下の友だちなんだけど、最近はまるで先輩のような気がしている。素早くセンス良く作品を仕上げる彼女。それだけじゃないところが中野さんで、書くことだって本書を読めば誰だって達者な筆遣いに感心するに違いない。

最初の「トップクリエーターの場合」では現在活躍しているクリエーターの人物と作品が紹介されている。仕事をしながら時間をやりくりして作っている、家事育児をこなしながら作っている、リタイア後に地方で暮らしながら作っている、などなどいろんな立場の人たちの制作風景が厳しくも楽しそう。

苦労して出来上がった作品を売るのにはどうしたらいいかが次の課題で、ウェブサイト利用について詳しい説明がある。
作品の写真撮影、商品の包装のしかた、説明文の書き方、いっぱいやることがあるのを丁寧に手取り足取りという感じで教えてくれる。
出品の仕方の詳しい説明に、順番にやっていけば出品できそうと思ってしまった(笑)。
品物の配送方法、価格の決め方、確定申告にもふれていてほんとに親切丁寧な本です。
(監修:菅村 大全 グラフィック社 1600円+税)

ジェームズ・ボールドウィン『もう一つの国』のここが好き

長いこと愛読している本のうち、特に何度も読んで、これからも何度も読むだろう本が何冊かある。くたびれ果て変色した本の背表紙をとり本文の背を切り揃えてスキャンして電子書籍化しiPad miniで読めるようにしてもらった。古い本が生き返ってiPad miniの画面に現れた。この本、ジェームズ・ボールドウィンの『もう一つの国』(集英社)は絶版らしいから貴重だ。

全部読み通すと複雑な内容なのでそこらは後回しにして、わたしが読むのは197ページ。
ある春の夕方パリ在住のアメリカ人作家エリックはサン・ペール街を歩いていた。向こう側の道を歩いていた青年が抱えていた携帯ラジオからベートーベンの「皇帝」が聞こえてくる。エリックは青年イーヴに続けて聞かせてと頼む。二人は並んでベートーベンを聞きながら歩く。エリックはイーヴのお腹が空いているのを感じて晩ご飯に誘う。そして恋がはじまる。
ここだけ読むと納得して本を閉じる。前も後ろもあったもんじゃない。この恋のシーンの美しさが大好き。

Carolar’s fan Book『Flung Out Of Space』を読む幸せ

去年の暮れに『キャロル』(パトリシア・ハイスミス、柿沼瑛子訳、河出文庫)を読んでからずっと『キャロル』にひたっている。その次に映画を見た。映画館で映画を見るのは久しぶりですごく上質な恋愛映画だった。
それからはツイッターで映画『キャロル』を何回見た何十回見た何百回見たとの共感のツイートがたくさんあり、英語版のDVDを楽しんでいる人もいて羨ましいかぎりだった。その後アマゾンで字幕版のBlu-rayが出るのを知りすぐに申し込んだ。
大阪でキャロラー会が発足したというツイートを横目で見ていた。友人に行くんですかと聞かれたけど、いくら厚顔なわたしでもこのトシでのこのこと行くのもね、ということでツイートを羨ましく読んでいた。

キャロル合同誌『Flung Out Of Space』の発行を気にしていたのだけど、申し込みが遅れて1回目の締め切りに間に合わず増販の申し込みに滑り込んだ。届いたのが9月30日だった。
『キャロル』の本と同じ大きさで表紙のカバーと帯がそっくりな出来栄えである。すごい本格的。プロローグからはじまって第一部、第二部とエピローグまで、文章とイラスト(カラー版たくさん)とコミックで構成されている。書いているのはすべてキャロラーさんたちである。文章力がすごい、絵を描く能力がすごい、その力が結集した本である。「好き」という原動力が文章を書かせ絵を描かせているのを感じる。(ベタ褒めです。)

裏表紙の言葉がすべてを語っていると思うので引用する。
【今日キャロりたい・・・と思ったあなた。この一冊でこれから毎日キャロれます。(中略)映画『キャロル』をこよなく愛する者達によって創られた渾身の一作】
本が届いてから今日まで毎日あちこち読んだりイラストを眺めたりしていたが、なかなか紹介記事が書けないでいた。今日になってふと思った。毎日楽しんで読んでいると書いたらいいんや。わたしの大切な生涯に何度でも読む本に加えて。

台風18号去って、吉田喜重熱高まる

昼間は蒸し暑くてやりきれなかったけど、晩ご飯後は涼しくなった。ご飯前にえらく風が吹いて雨が降り込んだが、いまは静か。半袖Tシャツを着ていたら寒いのでカーディガンを羽織った。
食後に『週刊現代』をばたばためくっていたら、自分の中からもっと落ち着いてちゃんと本を読もうよと呼びかける声が聞こえたような気がした。梅雨の頃から読みかけて置いてあった吉田喜重著・蓮實重彦編『吉田喜重 変貌の倫理』が読みかけのまま置いてあるのに気がついた。狭い部屋の一角だからいつも見えているが、暑いと見えないんだわ。ああ重い本を買ったものだなとぱらぱらと読んだところを読み返した。蓮實さんとの対話が楽しい。
しかしまあ、この重たい本をジュンク堂で現金(3800円+税)で買って持って帰ったんや。すごい吉田熱だった。
吉田喜重の映画を全部見たいというているわりにまだ半分くらいしか見ていない。これも課題だ。ネット検索したら2014年10月に岡田茉莉子さんとともにお元気な記事があった。

検索を続けたら「放送文化基金」というサイトがあった。吉田さんは「テレビドキュメンタリー番組審査委員長」をやっておられ、『ETV特集 薬禍の歳月〜サリドマイド事件・50年〜』(NHK)で最優秀賞と演出賞を受けたNHKディレクターの石原さんと対談されている。今年の9月16日なので最新のお写真を見られてうれしい。内容はこれから読むんだけど。

涼しくなったせいかちょっと理屈っぽいことも理解できるようになった。
秋だからと食べてばかりいないで勉強もしなくっちゃと身を引き締める。
明日は姉の介護に行く。