田村隆一『詩人のノート』をアマゾン中古本で買った

先週姉の家に行ったとき買って行った花の名前をド忘れして、なんやったかなと悩んでいたら、姉が『詩人のノート』に出てたのにと言った。「その本知らんわ、見せて」と言ったら、20年くらい前に人に貸したままとのこと。「最近あの本ものすごく読みたいねん。古本屋に行ったってすぐにあるわけないしな」と続けて言うので、ネットで調べるからと本のタイトルと筆者をメモして帰った。
田村隆一『詩人のノート』(1977 朝日新聞社)はすぐに出てきたので即買ったのが今日届いた。あさって持って行くのでそれまでに読んでしまうつもり。
先週の木曜日に話題になったのが、次の木曜日行くのに間に合ったんだからすごいわ。

わたしがネットやってていちばんありがたいと思うのは古本を買うとき(笑)。1円の本に送料をプラスして手に入った喜びはなにものにも代えがたい。
P・D・ジェイムズのダルグリッシュ警視長ものの2/3はアマゾン中古本である。段ボール一箱に収まっていて、昨日も押入れから取り出し好きなところを拾い読みしていた。
ダルグリッシュがエマとはじめて会うところや、ケイト・ミスキン警部とピアース警部のメールのやりとりとか、すぐに出てくるところが我ながらすごい。

森の小道、ヘニング・マンケルの『霜の降りる前に 上下』を読みながら

ヘニング・マンケルの『霜の降りる前に 上下』を読んでいる。ストーリーを追って早読みしているので、もう一度ゆっくり味わって読むことになるなあと最初からわかっているという読み方(笑)。今回はクルト・ヴァランダー刑事ものだけど、娘のリンダが登場して父と娘の共演であり競演である。

物語は初老の女性文化地理学者が年代物のベスパに乗って森へ入っていくところからはじまる。彼女は森の小道を探すのが趣味で、今日の目的地は湖と城の間にある森だ。ベスパを置いて歩いて森の中の道をいくと、人間の通った形跡のない小道があった。

ここんとこを読んでいたら羨ましくてしょうがない。すぐに彼女は何者かに殺されてしまうのだが・・・
本の感想はいずれ書くことにして。
今日は「森の小道」という言葉に反応してしまったので、小道の話。

子どもの時に母の実家の山梨県の農家の庭、その近くには小川があり泉があった。少し歩くと笛吹川の支流になる川があり小道があった。そこをぶらぶら歩くのが大好きだった。
豊中市内に住んでいたときは自転車で林っぽいまばらに木があるところまで行って、眺めて帰ってきた。まだ田んぼや畑があってレンゲやタンポポやスミレがいっぱいで小道を歩いて小さな川に出た。
泉北にいたころも散歩によく行った。丘があり池があり墓地があった。山野草の宝庫のような田んぼがあった。

ハイキングに行っても脇道が好きで帰れる範囲で寄り道していた。なんせ方向音痴なので迷ったら危ない(笑)。
秋の北八ヶ岳に登ったときはナナカマドに魅せられたなあ、そして少し雪が降ってきて森の中のキノコに雪が帽子のようだった。

なんかスウェーデンの森の風景がわたしの中の「田舎好き」を刺激していった。
(柳沢由美子訳 創元推理文庫 上下とも1100円+税)

これから読む本が積んである

ここにサラ・ウォルターズの本が4冊(買ったばかりの中古本『荊の城 上下』と、Sさんが貸してくださった『エアーズ家の没落 上下』)あってホクホクしている。『黄昏の彼女たち 上下』は読んでしまってここにある。あとは『半身』だけかな。『夜愁』は昔読んだけど、今度は自分の本にして読むことにしよう。
ということで、サラ・ウォルターズを読む気持ちいっぱいなんだけど、その前に読んでしまいたい本がある。
ヘニング・マンケル『霜の降りる前に 上下』。ちょっと読みかけたがクルト・ヴァランダー刑事と娘のリンダが最初から出てきていい感じ。数日はスウェーデンの雰囲気の中で過ごす。
ヘニング・マンケルさんは昨年お亡くなりになって、本書を読めばあと1冊になるはず。翻訳されはじめてからずっと出るたびに読んできた。そこからスウェーデンと北欧の作品をよく読むようになった。

鼻がぐずぐず、目がしょぼしょぼ。ベランダに出ただけなのに花粉はすごいね。今日は早寝したいです。またクシャミ。

サラ・ウォーターズ『黄昏の彼女たち 上下』(2)

上巻はじわじわと胸にしみこむ女性どうしの愛の物語だった。好意とか善意とか友情とかでなく、ひたむきな肉体の行為を伴った愛に目覚めてふたりはリリアンの夫レナードの留守に結ばれる。
下巻は一転して殺人事件の物語になる。殺されたのはレナードで、殴られ殺された死体が屋敷の庭の外に横たわっていた。
リリアンはチャンピオンヒル殺人事件の悲劇の妻として注目され新聞種になる。
レナードは以前にも会社帰りに殴られて血まみれになったことがあった。浮気相手の若い女性ビリーの婚約者スペンサーが怒りの一撃をくらわせたのだ。そのことを調べたケイプ警部補とヒース部長刑事によってスペンサーが逮捕された。読者はスペンサーが犯人でないのを知っているから、この逮捕劇の行方がどうなるか気になる。スペンサーはずっと留置されている。

ついに裁判が始まって、リリアンは家族とよりもフランシスと裁判を傍聴すると主張して二人は裁判所の傍聴席に座る。スペンサーは冤罪から逃れることができるのか。フランシスの心の動きが繊細に描かれていて苦しくなる。

他の用事もしつつ長い物語を熱中して読んだものだから、目は充血するし座りすぎで腰はだるいしで、これはあかんとストレッチに励み長風呂して整体院にも行ってようやく回復した。

『荊の城』が良かったのを思い出してアマゾンの中古本を注文した。『エアーズ家の没落』は友だちが貸してくれる。

サラ・ウォーターズ『黄昏の彼女たち 上下』(1)

サラ・ウォーターズの作品は『荊の城』と『夜愁』の2作を図書館で借りて読んだだけだ。今回はどういう心境の変化か出ると聞いたときから買うつもりになっていた。パトリシア・ハイスミスの『キャロル』で百合心が刺激されたせいかな。タイトルがいいしね。
読み終わったらすっごくよかったので、こうなったら訳されている『半身』『エアーズ家の没落』も読まねば。もちろん一度読んだ本も買って再読せねば。

ロンドンから南へ5-6キロ離れたカンバーウェルといううらぶれた村のチャンピオンヒルという丘に建つ屋敷にフランシスは母親と住んでいる。並んで建つそれぞれの屋敷の前には広い庭が横たわり、その庭を木々がとりまいている。
第一次大戦で兄と弟が戦死し、その後父親が亡くなったのだが、母と娘が思っていたような財産は残っていなかった。広い屋敷で使用人も雇えずに家事雑用は全部フランシスの肩にかかっている。
フランシスは以前にクリスティーナという女性の恋人と付き合っていたが家に戻った。クリスティーナは別の女性とロンドンで自活して暮していて、フランシスはときどき母に内緒で彼女らの部屋を訪ねる。

今回どうしようもなく現金が足りなくなり2階を貸して家賃を得ることにした。新しい住人はレナードとリリアンのバーバー夫妻で、労働者階級出身らしいが言葉の訛りはない。レナードはホワイトカラーでリリアンは専業主婦である。
フランシスとリリアンはだんだん仲良くなっていく。リリアンが『アンナ・カレーニナ』を読んでいるところから会話がはずむ。一緒に公園を散歩してランチを食べる。
フランシスが過去のクリスティーナとの話をしたあと、リリアンは腕を突き出してフランシスの乳房の間から突き出しているなにかを握るように指をまるめゆっくりと手を引いた。その場所は心臓の真上で、そこから突き出した見えない杭をリリアンは引き抜いたのだ。

長い長い作品で上巻はフランシスとリリアンが惹かれあっていくところが素敵な愛の物語である。
(中村有希訳 創元推理文庫 上下とも1240円+税)

今日は中原淳一先生の誕生日

今朝ツイッターを開いたら中原淳一先生のうるわしい姿が目についた。1913年の今日2月16日が誕生日だそうだ。
わたしが「先生」とよぶのは中原淳一先生だけである。

わたしの一家が住んでいた大阪市内の家は第二次大戦のアメリカ軍の空爆で焼けてしまった。命からがら逃げた家族がのちに郊外の小さな文化住宅にまとまって住むようになった。どんなときでも本を忘れない父親が、知り合いや古本屋や屑屋とかいろんなところで本を手に入れてきて、その中に戦前の『少女の友』があった。
『少女の友』には中原淳一先生の絵がたくさん載っていて、わたしはその絵の上に薄紙をのせてなぞり便箋をつくったりした。
川端康成の『乙女の港』の淳一描く表紙と挿絵が大好きだった。主人公の大河原三千子とお姉さまの八木洋子が大好きだった。
吉屋信子の本もたくさん読んだ。『花物語』の挿絵も淳一先生だった。
ここからわたしの「百合」趣味が生まれたのだから筋金が入っている。
その後は姉が買い始めた『ひまわり』、その後は『それいゆ』『ジュニアそれいゆ』を引き継いでずっと読んでいた。

いまも、本や絵葉書やメモ用紙やハンカチなんぞの小物を持っていてときどき出して眺めている。

クライム・スリラーのあとには乙女もの

昨日はハラハラドキドキのクライム・スリラーを読み終えて感想を書いたが、納得できないところがあったので読み返した。ちゃんと理屈にあっている。ハイスピードで適当に読み終えた自分が悪いのだが、はじめての作品でよくこれだけの物語を仕上げたものだ。三部作のあと2冊も訳してほしいなあ。寝るまで読んでいたのに夢を見ることなく眠れたのはなんでかな。

そんなもんで今日は目が疲れているし呑気に過ごした。とはいえやっぱり本を読んでいた。きちんと活字を追わなくてもわかっているジーン・ポーターの『そばかすの少年』は大好きな同じ作家の『リンバロストの乙女』の前の作品である。孤児院で育った少年はリンバロストの森の番人に雇われ、木々や花々や鳥たちや虫たちと友だちになる。森で知り合った少女の気働きと行動で彼の高貴な出自がわかりめでたしめでたしなのだが、愛し合う二人の姿や、死に物ぐるいで森の盗賊をやっつけるシーンとか何度読んでも楽しい。
少年少女だった二人が『リンバロストの乙女』では、立派な大人になってでてきて、悩める乙女を支える。
というわけで今日は殺人事件からちょっと遠ざかっておりました。

アレクサンデル・セーデルベリ『アンダルシアの友』続き

分厚いポケミスを読み終わった。ずっと読んできたスウェーデンのミステリは警察官が活躍&苦悩するものが多いが、今回はクライム・スリラー(スウェーデンの新鋭が放つクライム・スリラーと裏表紙の解説に書いてある)である。最初は勝手が違ったが読んでいるうちにどんどん引っ張られてしまった。おもしろかった〜

主人公のソフィーは夫と死別し息子と二人で住み心地のよい家で暮らしている。看護師として大きな病院で働いているが、ある日交通事故で大怪我をした患者が運ばれてくる。特定の患者に関心を持つのはいけないが、出版業というエクトルの言葉遣いや態度に好意を持つ。エクトルのほうはソフィーに惹かれているのを隠さないで退院してから食事に誘う。
エクトルはソフィーのことを知りたがる。そして話の最後に「おれのことは、怖がらなくていい。絶対に」と言った。
実はエクトルは〈アンダルシアの犬出版〉という社名で本を出版しているものの、実は大掛かりな犯罪組織の中心人物だった。エクトルとソフィーが食事に行ったのをつきとめた国家警察警部グニラはソフィーに接近する。部下の刑事ラーシュは盗聴や隠しカメラでソフィーを探る。
ロシア人のギャングも出てくるし、ソフィーの昔の友だちイェンスは武器商人として登場してソフィーと行動を共にする。

解説によれば、本書はソフィーを主人公とした三部作の第1作だそうだ。次の訳はあるのかな。
(ヘレンハルメ美穂訳 2100円+税 ハヤカワポケットミステリ)

アレクサンデル・セーデルベリ『アンダルシアの友』を読んでいる

一昨年の1月に出た本。紹介記事も読んだことがなく感想も読んだことがない。スウェーデンのミステリはいろいろあるけれど、この本も作家も知らなかった。
一昨年の夏にジュンク堂のポケミス棚をふらっと見ていて手に取った。まず第一にグレー地に赤い文字で原書名と作家名があるのが気に入った。第二に『アンダルシアの友』というタイトルが気に入った。言葉としては『アンダルシアの犬』しか知らないけど(笑)。
高いけど買おうかなとページをめくっていたら

外にはストックホルムの夜が広がっていた。

という一行があって、おっ、文学的!と思った。それで買ったのだが本棚に置いたまま1年半経ってしまった。

ようやく読み出して面白いのに気がついた。あと少しで読み終える。

2/3まできたところで、スウェーデン国家警察の警部グニラの家に上司が訪れるシーンがある。庭の片隅に小さなあづまやがあり、テーブルにグニラ手製のシナモンロールと紅茶が出される。それを見ながら上司は「部下にお袋さんと呼ばれているそうだね」と話を切り出した。
こんなとこも好き。もう少しで終わるんで今夜中に読んでしまう。
(ヘレンハルメ美穂訳 2100円+税 ハヤカワポケットミステリ)

タンポポのサラダと堀井和子さんの本

野菜の市に行った相方の買い物の中にイタリアン・タンポポが入っていた。濃い緑の大きな葉っぱ。泉北に住んでいたころによく田んぼのへりとかで摘んできて食べたのを思い出した。30数年前のはなし。
どうやって食べたかなと考えて、ベーコンを炒めたのとゆで卵を崩したのと合わせたのだと思い出した。緑、黄、赤が混ざってきれいな彩りが食欲を誘う。のちにはタンポポの代わりに春菊でやっていたが、なぜか最近忘れてた。

たしか本にあったんやでと探した。『堀井和子の気ままな朝食の本』があった。螺旋綴じの同じ装丁で4冊ある。タンポポのサラダはちゃんとあったが堀井さんのはタンポポとベーコンだ。ゆで卵を使っているのは別の本だったみたい。でも、懐かしい本4冊のページをめくって楽しいひととき。

わたしは昔「歩く植物図鑑」と言われていたくらい雑草の知識があった。ハイキングなんか行くとあれは○○、これは○○とうるさくいうので敬遠された(笑)。食べられる雑草を採って帰ったが母親に却下されたっけ。「戦争中でもないのにこんなもん食べへん」だって(笑)。
最近は野にも山にもご無沙汰で草の名前も忘却の彼方に行ってしまった。

本棚から久しぶりに出してきたので記しておく。すべて白馬出版発行。
『堀井和子の気ままなパンの本』(1987)
『堀井和子の気ままな朝食の本』(1988)
堀井和子『ヴァーモントへの本』(1988)
堀井和子『おいしいサンフランシスコの本』(1989)