イアン・ランキン『監視対象』(1)

イアン・ランキンの新シリーズと知って飛びつくように買った。わたしはリーバス警部シリーズ13冊を出るたびに読んできた大ファン。DVD BOXをお借りしてイギリスのテレビドラマ「リーバス警部シリーズ」も4作見ている。〈「黒と青」 「ゆれる愛」(邦題「首吊りの庭」)「死せる魂」「死の理由」〉リーバス警部も好きだが彼が働くスコットランド、エジンバラの街や風景が好き。

先月の11日に買ったのだが、キンドルで漱石を読んだりしたものだからすぐに読み出せなかった。しかもさっさと読めない本で、いま読み終ったところだがまた最初からおさらいしないといけない。文字は少し大きいけど厚い文庫本だ。

主人公のマイケル・フォックス警部補は監察室に勤務する警官である。警官の不正や不品行を調査するのが仕事である。彼は小学生のときからウォッカを飲み酒に親しんできたが、いまは絶対の禁酒を守っている。バーではたいていトマトジュースを飲んでいる。離婚していて一人暮らし。ズボンのベルトはしなくてズボン吊りを愛用している。車はボルボ。同僚のスポーツカーに乗るとどうも足元がしっくりしない。

フォックスは老父を介護施設に入れて少なからぬ費用を負担している。妹は好きな男と同棲しているがその男からDVを受けているらしい。

今日はここまで。続きをまた書きます。
(熊谷千寿訳 新潮文庫 1100円+税)

電子書籍で夏目漱石「行人」を読む

キンドルには〈無料本〉というのがたくさんあってありがたい。青空文庫を縦書きにして読みやすくしているのが多いみたいだ。すでに青空文庫で岡本綺堂の「半七捕物帳」や横光利一、宮本百合子などけっこう読んでいるが、まだまだの本がいっぱい。当分電子書籍の新刊を買わないでいけそう。菊池寛訳の「小公女」があったので古い岩波少年文庫版を捨てた。何度も読んでいるからほとんど覚えていて、菊池訳に入ってないところを思い出した。ミンチン女史がインドの紳士を訪ねてきて、セーラが生意気な子だというところ。セーラが言い返すところが好きやねんけどな。まあ、読むときに思い出せばいいか。

小学校のときから親しんでいる夏目漱石だけど、3回くらいしか読んでなかった「行人」を今回読んで夢中になった。読むと思い出すのだが、その先がどうなるか覚えていないのでどんどん読み進む。そんなミーハー的興味まで満足させてくれた。

二郎が梅田ステーションで降りると母の遠縁の岡田が天下茶屋から迎えに来ている。そうそうお兼さんという奥さんだったと思い出した。二郎の両親の世話でいっしょになった岡田夫妻は円満に暮らしている。二郎は友人の三沢に会うつもりなので、この家を連絡先にしてあった。三沢は入院していた。
それから病院へ行って三沢と会い、彼が泊まっていた宿に滞在することにする。三沢は入院している女性「あの女」に惚れている。女と病気の話が延々と続く。
退院した三沢を送った翌日は母と兄夫婦を迎えにまた梅田ステーションへ行った。母のお気に入りのお手伝いさんの縁談をまとめようという岡田の計画である。縁談はうまくまとまった。

そこから話がややこしくなる。兄の一郎夫妻の不和が母にも二郎にも影を落とす。そうだ、昔読んだときは、嫂と二郎が一郎の要請で和歌山に行った章を読むのにどきどきしたっけ。
一郎は二郎に「直は御前に惚れてるんじゃないか」と言い、自分の妻を連れて和歌山に行き、妻に真意を聞いてほしいと頼む。二郎はいくら断っても引かない兄に悩み、母にも言われて中止しようとするが、兄は引かない。結局ふたりは和歌山に出発する。

杉江松恋『海外ミステリー マストリード100』

24日の日記「本との出会いとVFC例会」で書いたけど、家から本を持って出るのを忘れるという珍しいことがあった。それで堂島地下街のコンビニで週刊誌か女性誌でも買おうと思ったんだけど、ふと横にあった文庫本の細い棚を見たらこの本があった。
杉江松恋「海外ミステリーマストリード」(日経文芸文庫)。この本が出ているのも知らなかったが、著者のお名前は雑誌やネットでよく見かける。シャーロック・ホームズでギネスを手に読むのにちょうどいいと思った。

それでお仕事で遅くなるIさんを待ちながら1/3くらい読んだ。そしてふと気がつき、目次の書名の上に□があったので、読んだ本に*を入れていった。数えたら100冊のうちの50冊読んでいた。うーん、少ないような、いや多いような気もするが、ミステリ読みとしては少ないかな。
サラ・パレツキーとドロシー・L・セイヤーズがあるし、「レベッカ」があるのがいいな。レジナルド・ヒルよしよし、フェルディナント・フォン・シーラッハがちゃんとある・・・。
途中でミステリーから離れた時期が長いけど、こどものときから父親の探偵小説と雑誌を読んでいるから古いのはよく読んでいる。ポー「黒猫」、ルルー「黄色い部屋の秘密」、クロフツ「樽」、ミルン「赤色館の秘密」、ベントリー「トレント最後の事件」、そしてセイヤーズの「大学祭の夜」なんかを思い出す。親兄姉が読んだ後のよれよれになった雑誌「宝石」でウィリアム・アイリッシュやチャンドラーやクレイグ・ライスを読んだ。そんなことも思い出してしまった。

ここからが本の紹介。
1冊の本の紹介が3ページに収めてある。日本語タイトルと作家名(生年-没年)があって原書名と出版年がある。そして〈あらすじ〉〈鑑賞術〉〈さらに興味を持った読者へ〉〈訳者、その他の情報〉となっている。
読んでない本は〈あらすじ〉〈鑑賞術〉でかなり内容がわかり、これから買って読もうと思った本あり。
ありがたいのは〈さらに興味を持った読者へ〉で、100冊に入れなかった作家の紹介があること。特にわたしがミステリーにもどってきたときに、ポケミスをがばっと買って読んだネオハードボイルドがたくさん取り上げてあるのがうれしい。これが100冊のうちに入っていたらチェックの数が増えていたはず(笑)。

不満がいっこ。〈さらに興味を持った読者へ〉の章に警察小説がかなり入っていて好きな警察官たちがいるのだが、イアン・ランキンのリーバス警部の名前が出てこない。見落としかもしれないけど現時点では見あたらないので。いまちょうどランキンの「監視対象ー警部補マルコム・フォックスー」を読んでいるところです。
(日経文芸文庫 650円+税)

カーリン・イェルハルドセン『パパ、ママ、あたし』

スウェーデンのストックホルム、ハンマルビー署のコニー・ショーベリ警視と部下たちが、すさまじい犯罪に正面から立ち向かうシリーズ。先日読んだ「お菓子の家」が第1作で今回の「パパ、ママ、あたし」は第2作。2冊ともタイトルは甘いのに内容は強烈な犯罪と真っ正面から立ち向かう警官たちの物語である。次作でショーベリシリーズの第一期三部作が終る。そのあと部下のメンバーが変わって3作あるそうだから楽しみ。

若い母親は泣き叫ぶ病気のわが子を抱いてなすすべなく立っていた。夫は日本での技術セミナーに出ていて、あと4日と何時間かで帰ってくる。彼女は泣き止まぬこどもを抱いてドアに鍵をかけ外に出た。

イェニファーとエリーセの姉妹のアパートはたいていの日が午前中からパーティで、母親の友人たちがたくさん集まっている。コーヒーとオープンサンド、そして酒とタバコをそれぞれが持ってくる。
未成年の姉妹は母親にかまってもらえなくて、冷蔵庫から黙って酒を取り出して飲んでいる。イェニファーはボーイフレンドと約束があると言って出かけた。

父親は息子を出て行かすまいと暴力をふるう。ヨッケは学習能力に欠けていて24歳になっているのに就職できず、母の介護で父に小遣いをもらい、新聞配達で補っている。倒れて意識不明だったが、目が覚めると傷だらけの顔でよろよろと起き上がり父の財布からお金を盗んで外に出た。今夜はイェニファーとフィンランドクルーズの船に乗る約束がある。
船は出港し、イェニファーはバーで男性に話しかけられたり、酒をおごってもらったりしながら船は進み夜は更けていく。そしてイェニファーの絞殺遺体が見つかった。

ハンナは3歳と数カ月の子どもだ。明るくなって目が覚めると一人ぼっちだった。母がいないので泣くが返事がない。冷蔵庫と冷凍庫から食べられるものを出して食べる。あちこち電話の数字を押しているうちに女の人が出て、バルブロと名のり話し相手をしてくれ、窓からなにが見えるか聞きだす。ハンナは一人で夜になると泣き寝入りし、朝は空腹で目が覚め、そこにあるものを食べる。

バルブロは警察に連絡するが電話番号を確定するには1週間かかると言われる。彼女は意を決して歩いてハンナの住宅を探すことにする。ハンナが窓から見えると言った景色を求めて。しかしストックホルムは広い。

ショーベリが信頼している部下のペドラは深夜のジョギング中に、公園で倒れている女性とベビーカーの赤ん坊を見つける。赤ん坊は病院で治療を受けるが母親は死亡していた。
同じ夜に起こった二件の殺人事件の関係者が交わる。
(木村由利子訳 創元推理文庫 1200円+税)

カーリン・イェルハルドセン『パパ、ママ、あたし』

スウェーデンのストックホルム、ハンマルビー署のコニー・ショーベリ警視と部下たちが、すさまじい犯罪に正面から立ち向かうシリーズ。先日読んだ「お菓子の家」が第1作で今回の「パパ、ママ、あたし」は第2作。2冊ともタイトルは甘いのに内容は強烈な犯罪と真っ正面から立ち向かう警官たちの物語である。次作でショーベリシリーズの第一期三部作が終る。そのあと部下のメンバーが変わって3作あるそうだから楽しみ。

若い母親は泣き叫ぶ病気のわが子を抱いてなすすべなく立っていた。夫は日本での技術セミナーに出ていて、あと4日と何時間かで帰ってくる。彼女は泣き止まぬこどもを抱いてドアに鍵をかけ外に出た。

イェニファーとエリーセの姉妹のアパートはたいていの日が午前中からパーティで、母親の友人たちがたくさん集まっている。コーヒーとオープンサンド、そして酒とタバコをそれぞれが持ってくる。
未成年の姉妹は母親にかまってもらえなくて、冷蔵庫から黙って酒を取り出して飲んでいる。イェニファーはボーイフレンドと約束があると言って出かけた。

父親は息子を出て行かすまいと暴力をふるう。ヨッケは学習能力に欠けていて24歳になっているのに就職できず、母の介護で父に小遣いをもらい、新聞配達で補っている。倒れて意識不明だったが、目が覚めると傷だらけの顔でよろよろと起き上がり父の財布からお金を盗んで外に出た。今夜はイェニファーとフィンランドクルーズの船に乗る約束がある。
船は出港し、イェニファーはバーで男性に話しかけられたり、酒をおごってもらったりしながら船は進み夜は更けていく。そしてイェニファーの絞殺遺体が見つかった。

ハンナは3歳と数カ月の子どもだ。明るくなって目が覚めると一人ぼっちだった。母がいないので泣くが返事がない。冷蔵庫と冷凍庫から食べられるものを出して食べる。あちこち電話の数字を押しているうちに女の人が出て、バルブロと名のり話し相手をしてくれ、窓からなにが見えるか聞きだす。ハンナは一人で夜になると泣き寝入りし、朝は空腹で目が覚め、そこにあるものを食べる。

バルブロは警察に連絡するが電話番号を確定するには1週間かかると言われる。彼女は意を決して歩いてハンナの住宅を探すことにする。ハンナが窓から見えると言った景色を求めて。しかしストックホルムは広い。

ショーベリが信頼している部下のペドラは深夜のジョギング中に、公園で倒れている女性とベビーカーの赤ん坊を見つける。赤ん坊は病院で治療を受けるが母親は死亡していた。
同じ夜に起こった二件の殺人事件の関係者が交わる。
(木村由利子訳 創元推理文庫 1200円+税)

カーリン・イェルハルドセン『お菓子の家』

ヘニング・マンケルからはじまったスウェーデン北欧そしてドイツのミステリがおもしろい。
今回また新しい作家カーリン・イェルハルドセンが紹介された。「お菓子の家」はコニー・ショーベリ警視シリーズの第1作。訳者あとがきによると当初の予定の3作は終ったが、シリーズは新メンバーも加わって6作目まで出ているそうだ。おととい買ったのは第2作「パパ、ママ、あたし」だが、両方とも甘いタイトルなのに中身はきつい。読んだ人からの口コミで硬い本好みの人へ広がっていけばいいな。

トーマスはこどもの時から目立たないように生きてきていまも一人暮らしをしている。だれも彼の存在に気がつかず職場でも無視されている。
【ここストックホルムの成人には、もちろん違うルールが適用される。ここでは個性的な考えが評価され、伝統を破る外見が、往々にして好意的に迎えられる。そして何よりも、教育を受け、自立していなければならない。】
こんなスウェーデンだがトーマスに社会は厳しかった。結果はいまのような目立たない男になってしまった。

年金生活者のイングリットは大腿骨を折っての入院生活のあとで家に戻ってきた。車椅子で送ってもらいドアのところで一人になった。杖をついて部屋に入ると嗅ぎ慣れない匂いがする。明かりをつけると知らない男が倒れていた。イングリットは病院へもどった。おどろいた看護婦のマギットはあと2時間半で仕事が終るから待っているようにと言う。そして二人は死体のある部屋へもどり警察へ電話する。

ハンマルビー署刑事課のコニー・ショーベリ警視は家で子どもたちの相手をしている。8歳の長男シモン、6歳と4歳の娘がいて、1歳児の双子は養子である。妻のオーサは教師で仲のよい家族だし、ショーベリは家事をいやがらない。しかし、妻のほうが家事の負担が多くなりショーベリが外へ出るときに爆発することがある。
呼び出しを受けてショーベリは現場へ向かう。
殺されていたのはまともな実業家で良き夫であった。なぜイングリットの部屋なのかも関連が見えない。

それから続く連続殺人、被害者の共通点は44歳くらいだということ、共通の地名もわかってくる。

ショーベリの部下たちのてきぱきとした仕事ぶりもよい。女性刑事ペトラや女性たちがいきいきと働いている。
なぜかオープンサンドをよく食べている。もう一度読んでのせているものをチェックしよう。
(木村由利子訳 創元推理文庫 1000円+税)

カーリン・イェルハルドセン『お菓子の家』

ヘニング・マンケルからはじまったスウェーデン北欧そしてドイツのミステリがおもしろい。
今回また新しい作家カーリン・イェルハルドセンが紹介された。「お菓子の家」はコニー・ショーベリ警視シリーズの第1作。訳者あとがきによると当初の予定の3作は終ったが、シリーズは新メンバーも加わって6作目まで出ているそうだ。おととい買ったのは第2作「パパ、ママ、あたし」だが、両方とも甘いタイトルなのに中身はきつい。読んだ人からの口コミで硬い本好みの人へ広がっていけばいいな。

トーマスはこどもの時から目立たないように生きてきていまも一人暮らしをしている。だれも彼の存在に気がつかず職場でも無視されている。
【ここストックホルムの成人には、もちろん違うルールが適用される。ここでは個性的な考えが評価され、伝統を破る外見が、往々にして好意的に迎えられる。そして何よりも、教育を受け、自立していなければならない。】
こんなスウェーデンだがトーマスに社会は厳しかった。結果はいまのような目立たない男になってしまった。

年金生活者のイングリットは大腿骨を折っての入院生活のあとで家に戻ってきた。車椅子で送ってもらいドアのところで一人になった。杖をついて部屋に入ると嗅ぎ慣れない匂いがする。明かりをつけると知らない男が倒れていた。イングリットは病院へもどった。おどろいた看護婦のマギットはあと2時間半で仕事が終るから待っているようにと言う。そして二人は死体のある部屋へもどり警察へ電話する。

ハンマルビー署刑事課のコニー・ショーベリ警視は家で子どもたちの相手をしている。8歳の長男シモン、6歳と4歳の娘がいて、1歳児の双子は養子である。妻のオーサは教師で仲のよい家族だし、ショーベリは家事をいやがらない。しかし、妻のほうが家事の負担が多くなりショーベリが外へ出るときに爆発することがある。
呼び出しを受けてショーベリは現場へ向かう。
殺されていたのはまともな実業家で良き夫であった。なぜイングリットの部屋なのかも関連が見えない。

それから続く連続殺人、被害者の共通点は44歳くらいだということ、共通の地名もわかってくる。

ショーベリの部下たちのてきぱきとした仕事ぶりもよい。女性刑事ペトラや女性たちがいきいきと働いている。
なぜかオープンサンドをよく食べている。もう一度読んでのせているものをチェックしよう。
(木村由利子訳 創元推理文庫 1000円+税)

よしなが ふみ『きのう何食べた?』1巻〜8巻

だいぶ前のことだけど、なんかおもしろい本はない?と友だちに言ったら、これおもしろいよと1巻から7巻まで送ってくれて、続いて出たばかりの8巻も送ってくれた。読んでツイッターとミクシィでおもしろいと書いたら、今度は違う友人が1と2をくれた。
2007年から「モーニング」に連載。1巻は07年の11月に出て、8巻は13年の12月に出ている。ファンが定着しているのだろう。

最初からずっと料理を作っては食べてばかりのマンガなんだけど、料理を作るのがゲイのカップルというところが新しいというか、今風なんですね。毎日、お金をかけずに何品かのおかずを作っている。

主人公カップルは43歳の弁護士 筧史朗(シロさん)と二歳年下の美容師 矢吹賢二(ケンジ)。
シロさんは40歳近くになってはじめて新宿二丁目のハッテン場(ゲイが集まる有名なところ)に友人と行ってケンジと出会い、その後ケンジが働く美容院で再会。シャンプーしてもらいながら、一生分の勇気を奮い起こして「ウチ 来る?」と言った。「じゃ、じゃあ、行っちゃおうかな」とケンジ。それ以来二人の同居がはじまり3年くらい経った。

毎日シロさんは6時に仕事を終らせて買い物して帰る。スーパーの値段をよく見て安いものをうまく買う。栄養も考えた献立を考えてさっさと作り、出来上がったころにケンジが帰ってくる。二人の食事シーンが楽しい。シロさんは自分たちの老後のことを考えて貯金している。だから紹介されている料理はシンプルで経済的によく考えられている。

ずいぶん前に読んでしまったのをまた読み出したらおもしろくてしょうがない。また全部読んでしまいそう。そろそろ返さなきゃいけないのに。
(講談社 1巻 571円+税)

ローナ・バレット『本の町の殺人』

友だちにもらったコージーミステリだが、ちょっとしんどいときの気分にぴったり。
主人公トリシアはミステリー専門書店を経営している。ニューヨークで華やかに暮らしていたが離婚してから心機一転してニューハンプシャー州の本の町ストーナムでミステリー専門書店を開いた。
ニューハンプシャー州はニューイングランド地域の一部で、東部がメイン州に北部がカナダに接している。そこに本の町ストーナムがあるという設定。訳者あとがきによると、町のモデルはヘイ・オン・ワイというウェールズの小さな田舎町で戦後に地場産業が衰退してから1960年代に本の町として再生し、いまは〈古書の聖地〉として知られて世界中から観光客が訪れているそうだ。

古書と専門書の店が軒を並べ、それを目当ての観光客たちが訪れる町。
トリシアの店はベーカー街221Bのシャーロック・ホームズの下宿兼探偵事務所の建物にそっくりで、飼い猫の名前はミス・マープル。お客は座り込んでコーヒーを飲みながらのどかに本を読むことができる。という優雅な生活がお隣りの料理本専門店の経営者が殺されて一転する。女性保安官は第一発見者のトリシアをなぜか犯人と決めてかかる。
その上に鬱陶しい姉のアンジェリカが訪ねてきた。トリシアは5歳上の姉がずっと苦手だった。
容疑を晴らそうと必死のトリシアに協力するアンジェリカは危険な目にもあう。二人は深く話し合い、事件を通してだんだん理解しあうようになった。
事件を調べる間に、認知症とされて施設に入れられていた老婦人グレイスを助け出すこともできた。
(大友香奈子訳 創元推理文庫 980円+税)

ジョセフィン・テイ『裁かれる花園』を再び

久々に「歌う砂」を読んだらアラン・グラント警部が相変わらず魅力的で、好きなところを繰り返し読んだ。クラダ島へ行くところ、そこで出会う人たちも気に入っている。
テイの本は何冊か持っているが、今回読みたくなったのがグラント警部シリーズではない「裁かれる花園」で、前回は図書館で借りて読んだ。今回どうしても手元に持っていたくなりアマゾンの中古本で手に入れた。読んでいるうちに忘れていたところを思い出したり、ここが気に入っていたと喜んだり楽しい読書ができた。
なにか書いてあるかなと〈ジョセフィン・テイ アーカイブ〉を探したら6年前に読んで感想を書いていた。

セイヤーズの「学寮祭の夜」はオクスフォード大学で、学寮祭に参加したハリエットがのちに寮で起きつつある怪事件の解明を頼まれて寮生活を送ることになる。
こちらは2年制の体育大学で実技の練習で明け暮れる学生たちに惹かれたルーシーが、学友だったヘンリエッタ学長に請われて長期滞在する。
どちらも学生たちの生態がよく描かれている。すでに中年になった主人公が若者たちに対して抱く批判的な気持ちがわかり過ぎる(笑)。
「学寮祭の夜」も「裁かれる花園」もミステリーというよりも、女学生ものという感じが好き。「学寮祭の夜」のほうが恋愛小説でずっと好きだが、こちらも宝塚的なところに惹かれる(笑)。
(中島なすか訳 論創社 2000円+税)