楽しき雑談

「楽しき雑談」は中野重治の本のタイトルで、内容は忘れたがタイトルだけは覚えていて、この日記でもすでに使わせてもらっていると思う。このタイトル大好き。
今夜はヴィク・ファン・クラブの例会日だったが、大阪市観測史上最大の雨量だったくらいだから、だれも出てこないと思ったものの、そこは生真面目君のわたしのこと、ちゃんと6時にはシャーロック・ホームズに座っていた。
いつもギネスとなにかなのだが、今日はお腹を減らしておいてタイカレーとサラダとウーロン茶という食事メニュー。食べているさなかに京都からYさんが来た。京都は雨ではなかったそうだ。彼女はギネスとサンドイッチで遠出が楽しそう。わたしは食後にアップルサイダーをたのんでおしゃべりが止まらない。
先日ははずまない会話に、残り少ない人生の時間がもったいないと思っていらいらしたが、今日は雑談ほど楽しいものはないわと思いつつ笑い転げていた。
グループの男女がダーツを教えてもらって楽しそうにやっているのに、Yさんが「がんばって」と声をかける。次回は挑戦するかもね。そういえばOさんが去年来たときはダーツを楽しんだっけと思い出した。Oさんは12月に大阪でライブをやるのでまた会える。ダーツする時間あるかな。
最後はアイリッシュコーヒーで〆て機嫌良く帰ってきた。

カレン・キエフスキー『キャット・ウォーク』

女性探偵ものをT氏に貸していただいた3冊目。1989年発表で1996年に翻訳発行されたもの。わたしはまるで知らなかったが、「カタパルト」(1997)、「浮遊死体」(1998)、「焦がれる女」(1998)、「デッド・エンド」(1998)と「キャット・コロラド事件簿シリーズ」として続けて福武文庫から出ている。(※カッコ内は日本での出版年)
訳者あとがきによると、キャット・コロラドはサクラメントの私立探偵で、サクラメントはカリフォルニア州のほぼ中央、「東京から見た浦和みたいなところ」だそうである。

親友チャリティが夫サムと離婚するつもりだが、サムは20万ドルをギャンブルですってしまったという。調べてほしいと頼まれたキャットは友だちの仕事はしたくないのにと思いながら腰を上げる。ラスベガスへ飛んだ彼女は幼なじみのデックに偶然出会う。デックはどうも危ない仕事をしているらしい。
ホテルのトイレで女性の死体と出くわすが、調べると女性はサムとつきあっていた。キャットはサムに会いにいく。その後、サムが建築現場で落下し死亡する。
新聞記者のジョーと知りあい意気投合し食事によばれて妻のベティと知りあう。そこには刑事のハンクがいた。ハンクは自分が乗る車に妻が乗って殺されてから独り身を通しているが、ようやくキャットを見て新しい人生を生きようと思う。

キャット「あたしは5マイル走れるし、2マイル泳げるし、玉突き台を自分で動かすし、荒っぽい言葉もしゃべれば、ワイルド・ターキーもあおるし、激辛メキシコ料理だって食べるわよ」
ハンク「いいね、まさにぼくの理想のタイプだ」
(柿沼瑛子訳 福武文庫 800円)

深作欣二監督「仁義なき戦い 広島死闘篇」

「仁義なき戦い」を順番に見るつもりでレンタル屋にあれば借りることにしている。2作目「広島死闘篇」(1973)があった。
前回活躍した広能昌三(菅原文太)は呉に広能組をもったが、今回は主役を助ける役。刑務所にいるとき、暴れて独房に入れられた山中正治(北大路欣也)にそっとご飯を差し入れてやる。
刑務所から出た山中は無銭飲食して大友勝利(千葉真一)らに叩きのめされるが、村岡組組長の姪で戦争未亡人の靖子(梶芽衣子)に助けられ恋仲になり村岡組組員となる。姪との間が組長の知るところとなり、若頭松永(成田三樹夫)の指示で九州へ逃れる。そこで組長を射殺し広島へ帰ることを許される。
大友勝利は実父の大友長次(加藤嘉)から破門され、新たに大友組を作って派手に抗争を続ける。最後まで不気味ですごい。

とにかく俳優が若くてぎらぎらしていて、生きることは暴力を振るうこととばかりに生き生きしている。
わたしは「仁義なき戦い」1作目を見てから、ヤクザ映画を見なくなったが、成田三樹夫が大好きだったのを思い出した。金子信雄、加藤嘉、素晴らしい役者が生きていたころ。成田三樹夫ももう亡くなったんだ。

オフ会で手渡しした会報の反響がうれしい

いったん涼しかったのも昨日で終わり今日は蒸し暑い。涼しい数日があっただけによけいに暑い。
今度大阪へ行くときに会いたいと春から言っていたHさんと、彼とはずっと前からネットで親しくしているヴィク・ファン・クラブ会員のNさんと、3人でシャーロック・ホームズでオフ会。

Nさんに会報を手渡したほうが早いと思って持って行ったのがすごく喜ばれた。1ページ1ページを丁寧に見て、それぞれの原稿についてコメントするのに返事をして、書いている人の説明をした。この会にはパンクロッカー、クラシック指揮者、テクノDJがいることや、いま福島のこどもたちのために頑張っている医師、モンゴルに核廃棄物処分場を作ることに対して反対運動をしている医師。そして翻訳家と多彩な人たちがいる。そしてさまざまな場所でそれぞれの生活している会員たち。改めて会報を続けて出そうと決意した。それだけどうしようかなと思っていたってことだが(笑)。

行きしにジュンク堂へ寄って、ロバート・クレイス「天使の護衛」とベンジャミン・ブラック「溺れる白鳥」を買った。両方ともRHブックスプラス発行。早く読みたい。

佐伯清監督『昭和残侠伝 一匹狼』

引き続いて第3作「昭和残侠伝 一匹狼」(1966)を見た。
古くからの銚子の漁港の網元浜徳と彼を助ける潮政(島田正吾)一家に対して、新興の川鉄一家は暴力と札束で、漁師らを自分の手中にしていく。武井繁次郎(高倉健)が病気の潮政の娘を助けてきたのはちょうどその最中だった。勘当した娘だからと会おうとしない潮政だったが、娘の墓前で義理を立てて会わなかったことを繁次郎に話し、繁次郎はここでやっかいになることになる。
一方、桂木竜三(池部良)は川鉄一家の世話になっている。近くで小料理屋をしているのが妹の美枝(富司純子)で、繁次郎に惹かれていく。
そして、川鉄一家の横暴が極まっていき、竜三は繁次郎と勝負するはめになるが・・・そして最後はふたりの斬り込みとなる。

最初のシーンでさしていた傘を投げ捨て警察署に入って行く池部良がいい。高倉健と池部良がストイックでひときわ美しい。そして古風な折り目正しい生き方を貫く潮政の島田正吾が絶品だった。

暗いつらい映画だ。昭和初期という時代設定と製作された60年代と原発事故の現在とが重なる。

アン・クリーヴス『野兎を悼む春』(2)

「野兎を悼む春」(1)を書いてから1週間経ってしまった。もちろん読み終えて、もう一度味わいつつ読んだ。ジミー・ペレス警部が穏やかにいろんな人と話しながら核心に迫っていくところがいい。そしてこの巻はペレスの部下サンディ・ウィルソン刑事の成長物語でもある。

サンディの祖母ミマの小農場の敷地内には遺跡があるということで大学生のハティとソフィが発掘作業をしている。ハティは鬱病で入院したこともある繊細な女性で、考古学という自分にあった仕事に生き甲斐を見いだし打ち込んでいる。

ミマに電話で誘われたサンディが小農場へ行くと銃弾に撃たれたミマが倒れていた。捜査の結果、サンディの従兄弟のロナルドが野兎を狙った銃弾がミマに当ったとわかる。ペレスは起訴に相当しないと考えつつ腑に落ちない点があることで迷い調べようと思う。
次にハティの死体が見つかり自殺とされるが、ペレスにはどこかおかしく思われ、地方検察官の捜査許可をとる。

ロナルドの妻アンナはイングランド人だが、この島で伝統工芸品をつくっていこうと考えている。紡いだり、機織りしたり、編んだりしたものをインターネットで売り、滞在式講習会も開きたいと、赤ん坊が生まれて張り切っている。
サンディの母イヴリンは地域評議会の議長とか地元のプロジェクトに熱心に関わっている。でも農場の収入が少ないからやり繰りに追われている。
昔ながらの島でありながら、少しずつ変わっていこうとする島の人たちだが、船を持って漁業に従事している者は恵まれていて、農業者はいまも貧しい。

ペレスは画家のフランと結婚したいと思っているが切り出せないでいる。今回は本人はなかなか出てこずにペレスの心の中にいるのと電話で話すぐらいだ。それも電話を娘のキャシーがとってしゃべり続けたり。それだけペレスと母子の間に親密さがあるということだが。でも最後にはちゃんと島にくる。
(玉木亨訳 創元推理文庫 1300円+税)

日本人のブルース

月に一度のSUBの西山 満 QUARTET[西山 満(cell) 歳森 彰(P) 財 盛紘(B) 弦牧 潔(D) ] 。毎月一度の演奏を欠かさずに行って31回目だ。聴くたびにアンサンブルがよくなる。特に今夜は西山さんが最後にやったブルースを、メンバー全員よくやったと褒めた。客たちも一体になって楽しんだ。
わたしは聴きながら日本人と日本の音楽について考えていた。てれくさいので〈(笑)〉と入れたいところ(笑)。

この1週間に3本の日本映画を見た。「仁義なき戦い」(戦後のヤクザ)、「昭和残侠伝」(設定は戦後だがイメージは昭和初期のヤクザ)、「嵐が丘」(中世のはぐれもの)と時代が違って表現が違うが、なにか共通のものがあるとジャズを聴きながら思った。特に「嵐が丘」はイギリスの女性作家によるヨークシャーの荒野の物語を日本に置き換えたものだが、日本を描くのに、その物語を借りてきたものだ。

今夜の演奏は、アメリカのジャズというものに対して、これが日本のジャズです、と言っているようなちゃらちゃらしたものではない。真剣な日本のジャズなんだと思った。4人の奏者が真剣に生きていること、真剣に音楽をやっていること、から発生した音がほんとの日本のブルースの演奏になったと思う。

佐伯清監督「昭和残侠伝 唐獅子牡丹」

目下、気分は健さんで、肩で風切って歩く気分(気分だけですが)。そして池部良の美しさに溺れている。この映画は封切りで見ていた。傘をさしかけるシーンの美しさは覚えていたとおり。

シリーズ2作目「昭和残侠伝 唐獅子牡丹」(1966)は昭和初期に舞台を設定している。1作目は戦後だったが戦前の雰囲気が濃厚だったから、ぴったりの時代設定だ。
花田秀次郎(高倉健)は宇都宮の左右田組の客分だったが、自分の弟分(津川雅彦)の恋人が左右田組の息子に惚れられて困っているので駆け落ちさせる。話を通しにいくとその代わりに榊組の親分、秋山(菅原謙二)を斬るように頼まれて殺す。折り目正しく死んで行く秋山に秀次郎は襟を正す。
榊組は石材掘りの請負業をしているが、左右田組はすべてを分捕ろうと画策している。組長は元は榊組の人夫だった。
3年後に刑務所から出てきた秀次郎はまず秋山の墓参りに行くと、秋山の子どもがいてなついてくる。そこに秋山の妻(三田佳子)が来るが秀次郎は名乗れない。その後は左右田組の悪行を知ってなにかにつけ榊組に味方する。
榊組にアジア諸国を放浪していた畑中圭吾(池部良)がもどってきた。秀次郎と対決しようとするがひとまずとどまる。
そして我慢の緒が切れた秀次郎が左右田組に向かおうとすると、畑中がいた。彼の差しかけた傘の下で巻いてあった布から刀を取り出す秀次郎。雪が降る道を行くふたりの姿に主題歌がだぶる。

「昭和残侠伝 唐獅子牡丹」全9作の土台がここに決まったという感じ。1作目はこれ1本だけという気持ちがあったろうが、この作品ではシリーズにしていく気持ちがある。それにしても主題歌がなんていいのだろう。斬り込みのシーンにびたっと決まって高揚感がいやが上にも盛り上がる。

吉田喜重監督『嵐が丘』

お盆休み映画鑑賞の3本目は前から見たかった吉田喜重監督「嵐が丘」(1988)。原作エミリ・ブロンテの「嵐が丘」は中学2年のときお年玉で買って以来何度も読んでいる。だけど映画は1939年のハリウッド映画、ヒースクリッフをローレンス・オリヴィエがやったのしか見ていなくてお話にならない。それよかアンドレ・テシネ監督でエミリ・ブロンテをイザベル・アジャーニがやっている「ブロンテ姉妹」が「嵐が丘」の雰囲気を伝えていると思う。

吉田喜重監督の「嵐が丘」は舞台を日本の中世に移している。役者の立ち居振る舞いやメイクと衣装が能や歌舞伎を取り入れており、広大なロケ地に建てられたおどろおどろしい鳥居や屋敷も中世的な雰囲気が漂う。うまい設定である。物語は原作どおりなので、時代を中世以降に設定したら、あの強い愛に生きる女性は描けなかったような気がする。一方、愛する女の骸骨まで愛するということは、やっぱり中世にしたのがよかったように思う。

松田優作の映画はこのほかに「ブラック・レイン」しか見ていないというお粗末。まわりの女子たちが騒ぎすぎていたこともあるけど、ちょっと距離をおいてた。「嵐が丘」では「ようやっている」という感じで、他の映画の松田優作を見たい。

1988年の映画だがこれだけの大作なのに映画「嵐が丘」があることさえ知らなかった。いかに映画から(そして音楽からも)離れていた時代か、いまになって不思議がっている。
吉田監督の映画は「秋津温泉」(1962)、「エロス+虐殺」(1969)しか見ていなくて、どうもすみませんというしかない。これからDVDでできるだけ追いかけたい。

佐伯清監督「昭和残侠伝」

懐かしき「昭和残侠伝」だけど、シリーズ1作目ははじめてだ。このシリーズはタイトルを覚えていないが何本か見ており、後期だと思うけど、雪が降っていて池部良が傘を高倉健にさしかけるシーンが美しかった。それだけでなく全体に様式美ともいうべき極ったシーンがあってしびれたことを思い出した。

戦後すぐの闇市シーンからはじまる。浅草の青空市場からマーケットを建てるまで、伝統を守る神津組に新興やくざ新誠会がからむ。由緒ある組の親分は時代の流れのなかで跡目にしようと考えている清次が戦争から復員するのを待っている。親分が息子の目の前で銃弾に倒れ遺言を残したあとに清次(高倉健)がもどってくる。清次の恋人綾(三田佳子)は縁続きの組の親分と結婚していた。
家出した妹を探して風間(池部良)は東京へ出てきて組の居候になっている。池部良と菅原謙二が仁義をきるところがなんともいいようがない。売春婦に身を落とした妹はこの組の一人と恋仲になっていた。殺された恋人の葬式の場で兄と妹は出会い、妹は結核で入院するが死んでしまう。
力のある親分の世話で小売商たちをなんとか自立させようとマーケットを建設していると、夜中に新誠会に火をつけられて全焼。

我慢の緒が切れて清次が立ち上がる。みんなはこれからのマーケットのことを考えろ、俺はひとりで行く。歩き出すと風間が待っていた。ふたりは新誠会事務所へ乗り込む。