メアリ・バログ『うたかたの誓いと春の花嫁』

翻訳者の山本やよいさんに新訳書を2冊送っていただいた。「キリング」と本書で、いつもなら「キリング」に飛びつくのだが、体調のせいでロマンスのほうを先に読むことにした。
訳者あとがきに「華麗なるリージェンシー・ロマンス」とあった。はじめて知った言葉なので検索したら「リージェンシー・ロマンスとは英国の摂政時代を舞台にしたロマンスのことです」とあって、皇太子ジョージ(のちのジョージ4世)がイングランド国王に代わって摂政となった時代だが、広くはヴィクトリア時代の前まで入るそうだ。そして「リージェンシー・ロマンス」とは、ジェーン・オースティンの小説のようなロマンスをさすとあった。これで今日はすごく勉強した気分(笑)。

甘口ではあるが手に取るとやめられない。夜遅くまで読んでなにをしていることやら(笑)。主人公のヴァネッサがジェーン・オースティンの「高慢と偏見」のエリザベスを3倍にしたくらいの気の強さなのだ。相手のエリオットはダーシーさんに負けない美男子で、なんと最初は田舎のダンスで二人は最初に踊り言葉を交わす。

物語は、名門伯爵家の血筋ではあるが両親を亡くし地味に暮らす一家を中心に繰り広げられる。イングランド中部の田舎のコテージで姉のマーガレットが妹のキャサリンと弟のスティーブンの面倒をみてゆったりと暮らしている。そこへ突然、ハンサムな子爵エリオットが現れ、この家の長男スティーブンが伯爵家を継ぐことになったという。
4人は伯爵家の本邸で暮らすことになり貴族社会の仲間入りをすることになる。次女のヴァネッサが本書の主人公で、病気のへドリーと結婚して1年半で死に別れ、近くの婚家で暮らしている。エリオットは放蕩をしてきたが30歳になるしそろそろ結婚したいと思っていて、長女のマーガレットに申し込もうとするが、マーガレットには叶わない恋をしている相手がいる。ヴァネッサは姉を窮地から助けようと、自分からエリオットに結婚を申し込む。ヴァネッサは美人ではなく、美貌の姉と妹の間にはさまれて〈地味な娘〉と言われて育った。
なんだかおかしな展開だが、結局は結婚していろいろあって、だんだんと愛を確認していく。
(山本やよい訳 原書房ライムブックス 914円+税)

トム・フーバー監督『英国王のスピーチ』

最近はイギリスの小説や映画に囲まれて暮らしている感じ。
1930年代、ジョージ5世が亡くなり、長男のエドワード8世が〈世紀の恋〉で王位から降りて、二男のアルバート王子がジョージ6世(コリン・ファース)として王位に就く。
カズオ・イシグロの「日の名残り」がこの時代のイギリスの政治や紳士階級の暮らしぶりを書いていたなあと思い出した。

アルバートは真面目な人で幼児体験から吃音になった。王様は昔は馬に乗って威厳を見せていたらよかったが、20世紀では演説をしなければいけない。アルバートは王の代理の演説をしたラジオ放送でしくじる。妻のエリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)は言語療法士のライオネル(ジェフリー・ラッシュ)を見つけて夫といっしょに治療に行く。
ライオネルはオーストラリア人でなにも資格を持たず自分の経験で治療をしていた。第一次大戦のときの戦闘神経症に苦しむ元兵士を治療した自信がある。
葛藤を抱えたアルバートだが、過去の話をしたり体を動かしたりしているうちに二人の間に友情が芽生える。
王位につきジョージ6世となり戴冠式にのぞまなければならない。ローグを呼んだ王にカンタベリー大主教はイギリス人の専門家をつけるというが、しりぞけてローグとともにやりぬく。王はそのときのニュース映画を家族とともに見る。家族というのは娘のエリザベス(いまのエリザベス女王)とマーガレット(華やかだったマーガレット王女)である。
ドイツのポーランド侵攻を受けてドイツを敵にした第二次世界大戦がはじまる。王は大英帝国全土に向けて緊急ラジオ放送で演説する。放送室ではローグと二人きりで完璧な演説をする。放送室から出てきたジョージ6世は家族とともに宮殿のバルコニーから手を振る。

コリン・ファースはいつ見てもなに見てもええわ。
妻のエリザベスがとても人間味があってよかった。仲のよい夫婦やったんやな。
メアリー王太后をクレア・ブルームがやっている。最初の映画チャプリンの「ライムライト」(1952)からだから、すごい長い女優人生だ。
2010年のイギリス映画。

まちあそび復活

昨日は本を読みヴィク・ファン・クラブの会報をせっせとやったが、足腰が弱っている感じで買い物にも行かなかった。風邪引きくらいでナンギなことやとがっくりだった。腕振り体操するのもしんどい。
今日は起きたときから元気で腕降り体操は200回。朝食は食べないので紅茶とビスケットを朝食代わりにして朝食後の薬を飲んだ。

昼ご飯を食べて片付けた。
さあ、元気だぞ、街歩きに出るぞ。
歩いて南船場へ行って、年末から行こうと言っていた相方が見つけたパンとケーキの店で、おいしいコーヒーとチョコレートケーキを食べた。道に面したテラス風なところに大きなストーブがあり、膝掛け毛布が用意してある。ケーキのチョコレートがすごくボリュームがあってうまかった。ここはパンもうまい。

バケットなどパンを買って、すぐそばのオーガニックカフェ&オーガニック食品店へ。相方が野菜や玄米を買っている店だ。カフェでオーガニックワインを頼んで和んだ。
自分らのお土産に店先で焼いている安然芋の焼き芋を買った。

リリアン・J・ブラウン『猫は殺しをかぎつける』

1988年発行の本で出たときから知っていたのだが、猫が家にいて、なにからなにまで猫づくし生活をしていたので、ミステリまではと遠慮したのだった。
仕事場が別にあったときは、猫のためにクッションやぬいぐるみを置き、あちこちに膝掛け毛布や布があり、部屋そのものが「花子の家」だった。
そんなことを思い出しつつ翻訳の出たシリーズ最初の本を読んだ。
検索したら29作も出ているんだ。そのうち25冊がここにある、ヤッホー〜
1966年から書きはじめている息の長いシリーズを、ずっと待っていて読むって快楽だったろうな。
Jさんに頂いた本、とにかく早く読んで次にまわそう。

2匹のシャム猫「ココとヤムヤム」と飼い主の新聞記者のジェイムズ・クィラランの楽しい物語。クィラランは独身で身長6フィート2インチ、しかし体重は医師から30ポンド減量を言い渡されている。そんなときに新しいグルメ記事を書けという編集長のお達しがある。

読みながらクレイグ・ライスみたいだと思った。ユーモアとか女性がクィラランに話しかけるところとか。
おデブちゃん友の会—全員重量級—の会合では堕落者が罪を告白する。趣味を持ちなさいと言われて、食べるのが趣味なのって答えたのには笑った。
猫だけでなく食べることが好きな人にもおすすめ。

ミス・リード『ドリー先生の歳月』

たくさんいただいた本の中の単行本2冊がミス・リードの本だった。名前を聞いたことがあるという程度の知識しかなかったのでありがたい。
「ミス・リード・コレクション」と名付けられた7冊の本をみんな欲しかったと2冊読んだところで思う(笑)。いえいえ、いただいた2冊で充分にイギリスの田舎の生活がわかります。

去年レジナルド・ヒルさんがお亡くなりになった。彼の作品を読んでいると、古き良きイギリス(ヨークシャー)を愛していた人だったと思う。いまのイギリスになくなりつつある人間味やウィットが充満している彼の本の中でも「異人館」と「完璧な絵画」の田舎は最高だ。
図書館で年末に「異人館」を借りてきて再読し、これは買って持っていようと思った。
のどかな田舎に警官が入り込んだり(完璧な絵画)、オーストラリアとスペインから自分の過去を調べにきたり(異人館)と、外からの風や光があたって、田舎の風物が輝く。みんなそれぞれ過去があったのが明らかになり、愛も甦る。
まあ、いわば、お伽噺のような世界で、だから好きなんだけど。

「ドリー先生の歳月」では、ドリー先生が生まれてからいろいろなことに出合いつつ教師を続け、ついに教師を辞めて田園生活を楽しむところまでを、率直にまっすぐに書いている。
ミス・リードの語りは率直で、咲いている花、実っている実、そよぐ風、小川の流れ、洗濯物など田舎の家のあれこれが語られる。

ドリーの父フランシスは屋根葺き職人で母のメリーと姉のエイダがいた。
町の南に沼地があって貧乏な人たちが住んでいた。ドリーたちはそこより少しましなところに住んでいた。わずかなお金でどうやって家族を養っていくかよりも、どうしたら自分たちの窮状を身近な人たちに隠しておけるかと苦労する人が多かったがドリーの両親も同じくだった。

1888年に生まれたドリーは人形のエミリーをいつも抱いていて祖父母にも愛されて育った。のちに出会った生涯の友がエミリー。
知り合いからの紹介で一軒家を借りられることになって一家は喜ぶ。
その家で大きくなり、教師となり、恋をする。村人に信頼されている。この家で子ども時代からの友エミリーと暮らそうと決める。
(中村妙子訳 発行:日向房 発売:星雲社 1999年 2000円+税)

CT初体験

咳こむことが少なくなって夜も熟睡できていい案配になった。でもまったく抜け出したわけでない。なんとなくしんどい。この数日の状態を医師の友人にメールしたら、その症状は高齢者にとって「マイコプラズマ肺炎」のおそれがあり、集中力の低下やしんどいのは危険信号だから、一度診療所で診てもらったほうがいいとのこと。
最初に返信をもらった土曜日に相方が行きつけの医者に行き血液検査をしてもらい、検査結果はまだ出なくてもと薬をもらってきた。
わたしはぐずぐずして今日になった。最後に内科に行ったのはいつのことだろう。20年くらい前にインフルエンザにかかったとき以来かな。ブログ以前のことはわからんので困る。

近所の診療所に行ってみた。おしゃれな機能的な感じのする診療所で、まず保険証を渡したら体温を測るように言われた。36.5度。2日休みだったせいで患者さんいっぱい待ち。本を読みながら1時間半くらい待って全部で2時間かな。
知り合いに「マイコプラズマ肺炎」のおそれがあると聞いて来たと言うと、中年の男性医師が聴診器をあてながらそれはあるとのこと。レントゲンを撮ってみましょうという。レントゲンの結果は肺に陰があるからと、次にCT(コンピュータ断層撮影)を撮ることに。あれよあれよと縄文人から現代人へ一足飛びであった。
CTの結果はのちほど出るそうで、薬をもらって帰った。今日は医者疲れしたので早寝じゃ。

アーロン・エルキンズ『古い骨』

関西翻訳ミステリ読書会の課題書を早めに買って読んだ。アーロン・エルキンズの本を読むのは5年ぶりで3冊目になる。5年前の2008年に読んだ「骨の島」の感想に「古い骨」を読んだことがあると書いているが、それは間違いで、「暗い森」を読んだのだと思う。たしか友だちと話していて、彼女が持っていた本のモン・サン・ミッシェルの写真について話した覚えがある。「モン・サン・ミッシェル、絶対に行くからね」と彼女は言った。阪神大震災前のまだバブルが消えてないときだった。その後、彼女の仕事も泡と消えてつきあいも切れた。そんなことを思い出しつつ読んだ。1冊の本にもいろいろまつわる話がある。

妻のジュリーと結婚して熱々の(13冊目も熱々だが)人類学者ギデオン・オリヴァーは、一片の骨から真実を暴き出すことができる人である。そして彼が出かけると〈骨〉がある。

今回はモン・サン・ミッシェルの島で〈国家警察北海岸地方犯罪捜査部〉のジョリ警部が出席している司法人類学の講習に、ギデオンが講師として参加している。今日はプルターニュ地方ではあいにく白骨死体のからんだ殺人事件がないので標本を使うとギデオンは話し始める。

ところが、古い屋敷での晩餐会のあと、すぐに地下室で紙にくるまれた白骨が見つかる。
今朝方、満ちてきた潮に引きずられて死んだ老人の死に方もおかしい。
過去の事件と今日亡くなった老人と、遺産相続の件で集まった人たちと、事件に首をつっこんだギデオンとアメリカ人のFBIのジョンはジョリ警部と協力して真犯人を追いつめる。
(青木久恵訳 ハヤカワ文庫)

こんなときに読む本 それはコージー!

5日にたくさん本を送ってもらった。引っ越しなさるので不用になったとのことで、書き出してあるのを全部もらうことにした。重い箱が届いて改めて本て重いなあと思いつつ開けると文庫本57冊、ハードカバー2冊が入っていた。

ヴィク・ファン・クラブができたころに好きな人がいたドロシー・ギルマンの「おばちゃまはスパイシリーズ」と同じくギルマンのコージーな冒険恋愛小説。だれに譲ろうかと考えたが、咳と筋肉痛に悩まされているときに読み出したらおもしろくて、こんなときのコージー!と思いましたです。

それからSさんに貸していただいている、モンゴメリ「アンの思い出 上下」を読んだ。モンゴメリの最後の作品。「赤毛のアン」のファンが読んだら感涙ものだと思う。短編小説の前に詩とアン一家の会話がある。アンはお医者様と結婚して子どももいて幸福であるが、戦争で息子を亡くしている。その悲哀があって、乗り越えた家族の語らいと安らぎがあって、けっこう辛辣な短編小説がある。
わたしの感想を書けばすらっと書けるけど、これはあかんと思った。思いがたくさんある人が思いを書かなきゃいけないと思う。
もともと「赤毛のアン」のファンでないのは、読むのが遅すぎたからでだと思う。少女時代は暗い英国もので凝り固まっていたからね。大人になってから読んだから遅かった。というわけで、本書については、興味深く読んだとだけ書いておく。

それから、いただいた本の1冊、ミス・リードの「ドリー先生の歳月」がよかった。これはそのうちに書きます。

七草がゆ

正月の準備などしないので、元旦と2日は在庫野菜で簡素に昼は洋食、夜は和食ですました。3日は姉の家の宴会で肉と魚と揚げ物をたっぷり食べた。4〜6日は残り物をもらって帰った肉系でこれはいかんと言いながらビールを飲んだりした。甘いものもよう食べた。
だから今日は胃袋を正常にもどさなあかん。幸いにしてお腹の調子はよい。
昔の人はよう考えたもので、ここで七草がゆとした。いままで好きなときにお粥を食べるがなと言っていたが、風邪を考えて今日はやっぱり七草がゆ(笑)。
七草には少ないがセリなど緑の葉と大根やニンジンなどを入れたお粥はうまかった。うちのオリジナルでお餅も入れた。

さて、おとといからの風邪引きだが、いっこうにようなりません。どちらかの咳で夜中に目が覚めるので昼間はぼやっとしている。横になったら2時間寝てしまった。あげくが筋肉痛がひどい。
今夜はお風呂で温もって湯たんぽもってベッドに入ることにしよう。
本はいただいたドロシー・ギルマンのコージーなありえない物語のクライマックスをつぎつぎに読んでいる。うまいこと書いてるわ。

風邪引いた&本がいっぱい

数日前から相方が咳をするので風邪やからおとなしくするべしと言うたんやけど。妻の暖かくもこうるさい言葉もなんのその、年末年始の夜遊びで風邪をこじらせ、その上にわたしまで風邪気味とあいなった。
今シーズンは風邪を引かないなぁと喜んでいたのになんたること。咳が出て鼻水が出て大変です。足元を冷やさないようにレッグウォーマーをはめて、肩にはサロンパスと背中にカイロ貼った。ふとん乾燥機でおふとんを温めて寝よう。
今日はうだうだして過ごし昼寝もしたし夜は熱いうどんを食べて温もった。明日ものんびり過ごしたらきっと治るでしょう。

ミクシィで知り合ったJさんが引っ越すので本を譲りたいとつぶやいておられたので、他の方がもらわないならと数日待ってから申し込んだ。先に一人おられた方は本のタイトルで選ばれたので、わたしは残ったのを全部引き受けた。文庫本57冊、ハードカバー2冊の大荷物をどさっと受け取った。読んでない本がほとんどである。今年中に読み切れるかな。友人にもまわしてみんな読み終ったら貸本店へ持って行くから本が長生きする。