サラ・パレツキー『ナイト・ストーム』(1)

一回目を読み終わり二回目を読んでいるところだ。いつものことだがストーリーがおもしろいのでどんどん読んでしまう。結局一度目は全体をつかめてないし細部も楽しめてない。大団円でほっとして、さあもう一度とアタマにもどる(笑)。ヴィクは今回も体を張って頑張るが、もうちょっとで危ういところだった。

二度目もかなり読んだので明日から感想を書こうと昨夜思ったのだが、深夜になってからなんか風邪を引きそうな気分になった。寝ると暖まるまでに時間がかかり明け方までごろごろしてしまった。めっそないことだ。お風呂を省略したのがまずかったかな。

それで今日はいつもどおりにしていたけれど、日常生活はそれでいいが気分が上がらないので、感想は後日に延期する。

今回の舞台の東欧については映画と小説の知識がわずかにある程度。
先日見た映画、マイケル・ウィンターボトム監督「ウェルカム・トゥ・サラエボ」、サリー・ポッター監督「耳に残るは君の歌声」も時代は違うが東欧のこどもの話だった。「ナイト・ストーム」に出てくる東欧出身の大金持ちのこども時代も悲惨なものだったのだ。
(山本やよい訳 ハヤカワ文庫 1160円+税)

「瓦礫の焼却ダメ!大抗議in大阪市役所」に参加

先週の木曜日「大阪瓦礫受け入れ勉強会」で勉強してきた。当ブログに報告を書いた他は何人かにメールしただけだ。そうそうVFCの会報にも書いたのを載せるからそこそこの人に読んでもらえてるかな。

今日は中之島の大阪市役所前に行った。ここに一人瓦礫焼却に反対している者がいるということを態度にするだけでもいいじゃなのと思って。

巨大な市役所の建物、その南側に広い道路をはさんで堂島川が流れている。その道路の歩道のところに抗議者たちは三々五々やってきて、市役所の窓と壁に向かって市長たちにスピーチする。あいだに若い女性が司会とともにコーラーをやる。それに和してわたしたちは叫ぶ。「瓦礫受け入れ反対」などなど。

暗くなってきて堂島川の水面の波立ちが美しい。川の上に半月が輝いている。美しいなあ大阪、奇跡的に放射能から免れている大阪。そこに岩手県から廃棄物が運ばれてきて此花区の焼却場で焼却される。放射能の混じった煙が風とともに大阪の空を舞う。
大阪には東北関東から避難している方がたくさんいらっしゃる。なにもなければこれからも避難者を受け入れていくことになるだろうに。

お洒落なワンピースのFさんはチラシを通る人に配っている。渡すだけでなくきちんと説明している。美人さんに説明されてつい聞いてしまう人がいる。

マイケル・ウィンターボトム監督『ウェルカム・トゥ・サラエボ』

ちょっと前にマイケル・ウィンターボトム監督の「GO NOW」を見たら他の作品も見たくなった。知っているのは映画館で見た「日陰のふたり」だけかと思ったら「24アワー・パーティ・ピープル」(2002)を2回見て感想を書いていた。

今日はいつか見たいと思っていた「ウェルカム・トゥ・サラエボ」(1997)を見て、その勢いでマンチェスターつながりの「24アワー・パーティ・ピープル」をもう一度見てしまった。久しぶりの二本立て。

サラエボでは1984年冬季オリンピックがあった。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争によるサラエボ包囲は1992年4月から96年2月まで続き、12000人以上が殺害され、50000人以上が負傷したものと推測されている。死傷者の85%は軍人ではない市民であったそうである。

映画はテンポよくはじまったが、街中での銃撃が続き、結婚式に向かう家族が銃弾で倒れる。子どもが走って逃げて行く。イギリス人のヘンダーソンやアメリカ人のジャーナリストたちが現地の運転手を雇って特ダネを目指して撮影に向かう。彼らは銃弾の嵐の中の子どもたちを救おうと報道するが、むくわれない。バスで子どもを救出する活動をしている女性を知ったヘンダーソンは、街で出会った少女エミラを連れてバスに乗る。エミラが片時も離さず世話をしていた赤ん坊はバスを停めた兵士に連れて行かれる。イギリスの自宅へ帰ったヘンダーソンは妻の同意を得てエミラを養女として育てようとする。イギリス生活になれたエミラだったが、そこへサラエボからエミラの母親が返してほしいと言ってくる。再びサラエボにもどったヘンダーソンは養女の署名をもらうべく破壊された街の中を探し歩く。

ヘンダーソンのイギリスの家が緑に囲まれてインテリアが素晴らしいのにおどろいた。上流階級出身なんや。そして子どもを養子にするのが自然に行われるのにもおどろいた。

大阪は第二次大戦のとき、3月から8月までアメリカ軍による爆撃を何度も受けて市民は逃げ惑った。わたしの家族はばらばらになって逃げたが、あとは郊外で再会できて食べ物はなかったが生き延びた。その後は母親と小さい子どもは山梨県へ逃れたがまさに難民だった。
いま、そんなことも思い出しつつ福島を想う。

「大阪瓦礫受け入れ勉強会」で勉強

弁天町学習センター7階講堂で開催された〈「大阪瓦礫受け入れ勉強会」学習会:19時〜21時&交流会:21時〜21時半 講師:下地真樹さん〉に行ってきた。
大慌てで晩ご飯を食べて定刻に到着。きりっとした女性の司会で下地さんの話がはじまった。

わたしが下地さんのことを知ったのは、去年の暮れの「放射能燃やしていいのか 住民説明会」で、その後は関西電力前抗議集会の正門前におられるときに何度か顔を見ている。それから「木下黄太講演会 7月17日 此花」に来ておられて、熊本一規先生の講演会「がれき処理、除染はこれでいいのか」では司会をされていた。
それよりなにより、8月30日の「大阪市主催ガレキ説明会」での橋下市長に対する質問がすごかった。橋下さんは返事ができなくて即閉会してしまったのだから。

今日はレジュメが配られた。最初の1枚のおもては「2011年3月〜6月の放射能物質の都道府県別降下量と汚染」で、東北と関東地方は濃く、新潟、富山、岐阜、愛知を入れた西の方は薄い。裏面は「世界が輸入禁止にしている日本の食品」で、いろんな国に禁止されている。ほんまに食べて応援とかしててええのか。

そして綴じてあるレジュメは、
〈環境省「広域処理」の論点〉 広域処理は輸送費がかかるし不合理なので今までやったことがなかったのが、今回はじめて行われる。大阪府の検討会議は環境省提出資料について、疑わないで「検討しない会議」だった。その他、多くの疑問点。
〈なぜ「広域処理」が重要なのか〉 「原発安全神話」が崩れたいま、「放射能安全神話」になっていること。国が言っているから大丈夫だと地方は隠蔽、抑圧、無視に動き、原発は危険だなどと考えないようにする教育をしている。
〈焼却処理と埋立処理の安全性〉 焼却炉内の汚染、安全性の確認には「総量がどこに行くかが問題」、排気、排水、焼却灰はどうなるか。
〈低線量・内部被曝の危険性の軽視1・2〉 放射性セシウムの一回摂取と長期摂取による体内残存量の経時推移の表で説明。
〈被災地支援としての有効性1・2〉 莫大な輸送費等の無駄、このお金で被災地でできることがたくさんある。「本当の復興のためには、「広域処理」でごまかさず、共に考えていくべきことがたくさんあるはずです。」

その他
大阪人は根拠のない安心感をもっている。岩手の瓦礫を福島よりマシと思ったらいけない。
わからないこと、安全性を立証できないことはやってはいけない。
汚染を広げないようにするのは我々世代の責任である。おとしまえをつけないと被害を受けるのは子どもたちである。
福島の事故は人類初めての経験である。放射能は危ないと福島の人たちに言おう。

講義が終わって集まった人たちの中から連絡事項や感想など。次に集められていた質問への解答があって終了。

次回は26日(水)此花区民ホール3階4・5会議室 学習会:19時〜21時&交流会:21時〜21時半 講師:下地真樹さん 会費300円

サラ・コードウェル『かくてアドニスは殺された』(2)

この作品はゲイミステリとして紹介されたものだった。ジュリアが一目惚れした美青年には男性の恋人がいた。その二人の恋については書き手がロンドンにいる安楽椅子探偵だから、激しい描写はないが、生きていること、おこなったことの哀しさがしみじみと伝わってくる。

それとユーモア。ホテルの客室係の女性たち4人が本を読んでいて、昼休みの時間をしっかり起きていたと証言する。彼女たちは非常に興味深い本を順番に朗読していた。恋愛小説ではなくエンゲルスの「家族、私有財産および国家の起源」。二人が大学院生ということだ。女性と学問について批判した警察の副署長に通訳の女性がつっかかって激しい応答。この本はわたしも若いときに読んだので笑った。

ユーモア、その2。ジュリアのペティコートとスリップの裾がスカートより長くて困っていると、仲良くなったメアリルーがハサミで切り取ってくれる。その後もスカートの裾を直してもらうが、メアリルーの部屋で下着姿のまま話していたら彼女が主婦の生活の話をしているうちに泣き出し、ジュリアが抱いてあやしているところへ、ご主人がノックをせずに入ってきておかしな雰囲気に。

サラ・コードウェルは女性で、オクスフォード大学で法律学を学び、卒業後はウェールズ大学で法律学を講義し、その後、ナンシー大学でフランス法を学んだ。
テイマー教授のシリーズは4冊あり本書は第一作。いま検索していたら、テイマー教授は年齢・性別不明なんだって。そうかヒラリーって女性かなって思ったけど、男性でもある名前かなと思い直したんだった。
また読みたい作家ができた。
(青木久恵訳 ハヤカワポケットミステリ)

サラ・コードウェル「かくてアドニスは殺された」(1 )

柿沼瑛子さんお勧めのゲイミステリのうちの1冊。あとの2冊とともにアマゾンの中古本で買った。「かくてアドニスは殺された」(1984)というタイトルはずいぶん前から知っていたが、読もうと思ったのははじめて。1981年に発表されたサラ・コードウェル最初の作品である。そのころはハードボイルドな女性探偵ものに向かっていた。すこし落ち着いてからエドマンド・クリスピンがすごく好きになった。ドロシー・L・セイヤーズは別格で、ジョセフィン・テイが好きになって訳されているのは全部読んだ。

「かくてアドニスは殺された」は読み出したらとても味わいのある作品だった。書き手はオクスフォード大学のテイマー教授で、猫の餌やりをロンドンを留守にする友人に頼まれて、休暇をロンドンで過ごしている。教え子の法曹学院の弁護士たちがそのまわりにいて和気あいあいと飲んだりしゃべったりしている。
そのうちの一人ジュリアはたよりない女性で、しょっちゅうものを落としたり転んだりしているのだが、休暇をとってヴェネツィアにツアー旅行に行った。残った弁護士たちは彼女からの手紙をみんなで読んでわいわい言うのを楽しみにしている。
ジュリアはツアー客の中に美青年を見つけて熱を上げている。また女性客とも親しくなった。そんな微に入り細にわたる手紙を読んでみんなわいわい言っているうちはよかったのだが、ジュリアが殺人容疑で逮捕されたというニュースが入ってきた。ジュリアは青年の部屋の中にいたのちに一人で出て行った。2時間後に青年の死体が発見された。
ジュリアの無罪を証明するために弁護士たちは各々ができることをはじめる。テイマー教授は〈安楽椅子探偵〉として活躍する。
(青木久恵訳 ハヤカワポケットミステリ)

ニコラス・ブリンコウ『マンチェスター・フラッシュバック』

先日〈翻訳ミステリー大賞シンジケート〉のサイトで〈わが愛しのゲイ・ミステリ・ベスト5◆パート2(執筆者・柿沼瑛子)〉を読み、〈パート1〉も読んでびっくり、10冊のうち3冊しか読んでない。
そのうち2冊(サラ・コードウェルの「かくてアドニスは殺された」、ニコラス・ブリンコウの「マンチェスター・フラッシュバック」をアマゾンの中古本で注文。「かくてアドニス・・」のほうはクラシックミステリの香りがして楽しそう。

「マンチェスター・フラッシュバック」(1998)は最近見た「ジョイ・ディヴィジョン」のイアン・カーティスを描いた映画「コントロール」と同じマンチェスターが舞台だ。ディケンズの作品にも出てきてた工業都市で、大阪が日本のマンチェスターといわれていたときもあった。

マンチェスター警察のグリーン警部がロンドンのカジノへ行く。カジノの支配人がジェイクできちんとした仕事ぶりだが、15年前はマンチェスターの不良少年でありグリーンと関わりがあった。
ゲイ小説ということで、グリーンとジェイクが恋人同士だったとか思って読み出したのだが、そこは違ってた。

グリーン警部は15年前の男娼殺しと同じ手口の殺人事件が起きたので、ジェイクに手伝ってほしいという。殺されたのはジェイクの男娼時代の仲間だった。
ジェイクは16歳から自分は〈燃え尽きた男〉と思っており、知らない人からも〈トップモデル〉と間違えれほどきちんとした服装をしている。いまやジェイクは結婚していて愛し合っている妻がいる。

一等車でマンチェスターの駅に到着したジェイクは15年前の自分と向き合う。
当時17歳のジェイクは体を売って稼いだ金で夜になると親友のジョニーとディスコに繰り出し、パンクミュージックとドラッグで狂っていた。そうしているうちに路上で少年に出会い、児童福祉関係者によってとほうもないことが行われているのを知る。またゲイを蔑んでいる警官とのやりあいがあり、ジョニーは殺される。

イギー・ポップやデイヴィット・ボウィやブライアン・フェリーの曲がかかるディスコで、ラリった少年たちが踊る。80年代のパンクシーンを思い出しつつ読んだ。
著者のあと2冊(「アシッド・カジュアルズ」「ラリパッパ・レストラン」)を読むのが楽しみ。

ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q キジ殺し』

だいぶ前に読み終ったのに感想を書いてなかった。少々あやふやになった記憶を探りつつ書こうと思って広げたらなかなかおもしろい。これから友だちにまわすので、もどってきたらまた読もう。

前回の〈檻の中の女〉事件を解決して名前をあげた〈特捜部Q〉のカール・マーク警部補に、上司のヤコプスンは告げる。「オスロ警察から特捜部Qを視察にくるから頼むよ」そして、チームを強化するためローセ・クヌスンという女性を一人入れたという。そういうことにも反発を感じるカール。このローセが常識破りでおかしい。でも仕事はどんどんこなしていく。

キミーという謎の女がいて街を歩いている。駅のエントランスホールで待ち受けてこれっと思ったのはミンクのコートを着た上品な女性で、車輪のついたスーツケースを持っている。乗車券の料金を調べている女性からスーツケースをさっとうばい、外に出てタクシーに乗った。1時間してキミーは見違えるような女になっている。しかし、彼女を見た者がいて今度こそ捕まえろと言っている。

アサドが古いファイルから次に取り組むべき事件を探し出した。1987年の連続殺人事件は18歳と17歳の兄妹が身元の確認もできないほど暴行され殺されていた。容疑者の少年たちの父親はみんな裕福で影響力を持っていた。
いま少年たちは大人になって、民間病院の経営者、国際的に名高いファッション・デザイナー、株式ディラー、亡くなったが船舶会社代表など。同じように有閑階級に属していたキアスティン(キミー)についてはいま誰も居所を知らない。犯行を認めて服役中の一人だけはみじめな人生を送っている。

キミーは麻薬中毒のティーネにお金を払って情報をもらっている。ゴミ箱から拾った女性誌に出ている有名デザイナーのフローリンが、キミーを捜していたとティーネは告げる。

だんだん過去と現在の事件がつながっていく。警察上層部や官僚たちの圧力の中を3人組はひたすら事件と取り組む。
(吉田薫・福原美穂子訳 ハヤカワポケットミステリ 1900円+税)

歯の治療がすんですっきり

7月の20日ごろのことだが、ご飯を食べていたら小臼歯にかぶせてあった金属と中の歯がぽろりと折れた。歯医者さんに前回も笑われたけど、今回も40年前の治療のあとが残っているのを見て感心しておられた。その歯の根を調べてもらったら差し歯ができるということでやれやれ。反対側の1本を前回治療してもらったのがいま全然違和感なしなのでゆうゆうとしたもの。
7/24、7/31、8/8、8/21、9/3、9/11の6日間。わりと日にちが空いているのは、歯医者さんの予約が詰まっていたから。
最後に歯が元々丈夫なのとふだんの手入れがいいから気持ちよく治療できたと褒めてくださった。

歯が悪いと肩が凝るし腰にもくるような気がする。左右のバランスが崩れていると思うので、腕振り体操をすることにした。昔は単純なことはしたくないみたいな気持ちで続かなかったが、今回は朝500回と夜200回を続けている。

三宅菊子さん 追悼/イアン・ランキン

イアン・ランキンの「死者の名を読み上げよ」を読んでいたら、二度も死者の名を読み上げるところがあった。一度目はG8に反対する集会でイラク戦争の犠牲者1000名の名前を読み上げる。読み手が交代しながら読んでいく。二度目はリーバス警部がバーでグラスを掲げて事件の死者の名を5人読み上げ、続いて先週亡くなった実弟の名前を読み上げる。
【死者の名を読み上げ、忘れ去られてないことを死者に知らせる。】

思い出したのは三宅菊子さんのこと。
8月8日に三宅菊子さんが東京都内の自宅で亡くなっているのが見つかったとツイッターの書き込みで知った。それまで何十年も彼女の存在をすっかり忘れていた。
わたしが彼女のことを知っていたのは、作家三宅艶子さんのお嬢さんである菊子さんが、松川事件の被告だった佐藤一さんと結婚したときだ。朝日新聞に広津和郎さんの小説が連載されたのが1954年だといま検索してわかった。わが家は一家で愛読したというのは松川事件に関わっている広津さんの小説だからだ。年齢からいって三宅さんが秘書をしたのはもっと後かしら。とにかく被告だった佐藤さんと結婚したというニュースはショックだった。祖母が三宅やすこ、母が三宅艶子という作家を家族に持つ毛並みの良いお嬢様がというショックだったかな。お嬢様だからこそできたとも思った。初期の「アンアン」にお二人の写真があったような気がする。小津安二郎の映画の一シーンのようだった。

いま検索したら著作もたくさんあり、東京の出版界で活躍されていたのを知った。きりきりしゃんとしたひとだったみたい。
ここに、名前を読み上げ、ご冥福をお祈りします。