ケネス・ブラナー監督『マイティ・ソー』

おすすめマーベルコミックの5作目を鑑賞した。
監督がケネス・ブラナーで2011年の作品。伝説の世界と現世とがミックスして、伝説世界の青年と現世の女性学者が出会って愛し合う。前の4作がいまの地球上の話で戦闘シーンがすごかったのに比べると、現代のシーンは追いかけられたり爆発したりするが戦争ではないので、ちょっとだけほっとして見ていられた。

物語は父王(アンソニー・ホプキンス)が子に王位を譲るところからはじまる。血気盛んな長男のソー(クリス・ヘムズワース)が身勝手な英雄主義をかざして父に疎まれ、こどものときから兄をじっと見ていた次男がうまく父に取り入って後継者になりそうだ。
ソーはパワーを奪われ地球に追放されてニューメキシコに着地。天文物理学者のジェーン(ナタリー・ポートマン)と助手と指導者の3人に発見される。

いろいろあって、ソーの側近たちがソーを助けに地球へきて大活躍。目的を達して自国へ帰ることになり、ソーとジェーンは愛を誓い合う。しかし、国と地球との架け橋を弟との戦い中に崩してしまった。いまは地球との間の架け橋がない。

ジョン・ファヴロー監督『アイアンマン2』

前作と同じ監督と主演俳優で2010年に製作された。
アイアンマンが世界各地で起きる紛争を鎮圧していることで、世界平和のために貢献しているとトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)は誇り高く「スタークエキスポ」で語る。しかしそれでは他の軍事産業は儲からない。競争会社のハマーはアイアンマンを自分の工場でも作ろうと必死になる。
トニーの体は生命維持装置のアーマーの動力源「パラジウム」から出る毒素に蝕まれつつある。あせるトニーは秘書のペッパー(グウィネス・パルトロー)に社長の座を譲り、新しい秘書ナタリー(スカーレット・ヨハンソン)を雇う。

ロシアにシーンは移って、ずっと昔にトニーの父と共同研究していた科学者が亡くなった。かつてアメリカ在住していたときにスパイ容疑で追放され貧困生活だった。息子のアントン(ミックー・ローク)はついに自分でアイアンマンを作り出す。モナコのカーレースに現れるシーンが圧巻。カーレースに出ていたトニーは必死のパッチで撃退する。
捕まったアントンをハマーが脱獄させて自分の工場へ連れて行く。そこで新しいアイアンマンをアントンが生み出す。
トニーの友人ローズ空軍中佐(ドン・チードル)は、トニーが遊んで悪酔いするのをとがめて「マーク2」を無断で装着した上で没収し空軍に持ち帰る。
立ち直ったトニーは父の遺言の映像を見てリアクターを新たに作り出す。
最後のシーンでトニーとローズの二人が、アントンのアイアンマンたちに囲まれて戦うシーンで、高倉健と池部良の「唐獅子牡丹」を思い出した(笑)。

グウィネス・パルトローに加えて神秘的なのに強いスカーレット・ヨハンソンが加わって凛々しい美女二人。
ミッキー・ローク、わたしはかつて彼の大ファンだった。「イヤー・オブ・ザ・ドラゴンを見てめろめろになり、「ダイナー」は大毎地下劇場で、「ランブルフィッシュ」はレーザーディスクを買い、「ナインハーフ」はスバル座で見た。「エンゼル・ハート」「死にゆく者への祈り」「フランチェスコ」「欄の女」「バッファロー’66」も見ている。
顔が変わったという話を聞いていたが、今回は悪役なのだが純なところが透けて見えた。やっぱりファンだから。

ジョン・ファヴロー監督『アイアンマン』

「アイアンマン」という言葉を知らず映画があったことも知らなかったくせに、見始めたらおもろくてやめられない。マーベルコミックの実写映画化作品(2008)。アメリカはじめ各国でヒットしたというのも納得。

巨大軍事企業の〈スターク・インダストリーズ〉の社長であり天才発明家のトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)は、新型ミサイルをアメリカ軍にプレゼントするためにアフガニスタンを訪れ、帰りに現地ゲリラの激しい攻撃を受ける。スタークは必死に逃げるが小型ミサイルが爆発。そのミサイルにはスタークの社名が刻まれていた。スタークは意識を失いゲリラの拠点に拉致される。
【胸には車載用バッテリーに繋がった電磁石が取り付けられていた。爆発の際、飛び散ったミサイルの破片がトニーの心臓周辺に突き刺さったため、電磁石で破片を引き留めておかなければ1週間で命を落とすというのである。】
という体になったスタークは解放の条件としてミサイルの組み立てを強要される。ミサイル組み立てをしていると見せかけて、捕虜になっていた科学者の協力で「マーク1」を作って自分の体に装着し脱出する。

砂漠であてなくさまよったが米軍の捜査隊に保護されて生還。記者会見の席で、もう軍事関係の仕事はしないと発言する。
そして、自分の設計した最新鋭人工知能のJ.A.R.V.I.S.(ジャーヴィス)とともに「マーク2」続いて「マーク3」を完成させる。
会社を乗っ取ろうとする重役が裏で画策をはじめる。
最後は、秘書のペッパー(グウィネス・パルトロー)の協力のおかげで悪をやっつけ、記者会見に臨む。

あっ、彼女はグウィネス・パルトローだと一目見て気がついた。相変わらず上品で美しい。ロバート・ダウニー・Jrもだが、一流の俳優の出演で映画の格が上がっている。
アイアンマンのメタリックな美しさにもおどろいた。組み立てのしかたがきちんとしてるのがすごい。
明日の予定「アイアンマン2」が楽しみ。

ルイ・レテリエ監督『インクレディブル・ハルク』

【マーベル・コミックのヒーローが集結した「アベンジャーズ」への流れのうえで、上記の順番で見ること】という指示があって、見るべきは「アイアンマン」(2008)「アイアンマン2」(2010)だったんだけど、あまりにも昨日の「ハルク」がおもしろかったので禁を破ってハルクもの「インクレディブル・ハルク」(2008)を見てしまった。

「ハルク」には、ちょっとちゃちなところがあったのだが、今回はリアリティがあり格調高かった。リアリティというのもおかしいが。
ハルクに変身する青年ブルースをやっているエドワード・ノートンのインテリらしさがいい。恋人ベティ(リブ・テイラー)が科学者らしくしっかり見守るのもよかった。そしてベティの父のロス将軍がウィリアム・ハートなのだ。途中からだんだん娘を見守る父親になっていく。悪役というか精鋭部隊のブロンスキー(ティム・ロス)がタカ派の軍人で、みずからの肉体を怪物化してハルクに迫る。

放射線の研究をしているときに事故が発生、〈怒りを感じて心拍数が200を越えると約2.7メートルもの巨大な緑色のモンスター=ハルクに変身する特殊体質〉になったブルースは、軍の追跡を逃れてリオデジャネイロのスラム街に住んでいる。なんとか怒りの制御を身につけようと武道家のところに通ってもいる。ばれるときはこんなもんで、ちょっとしたことから居場所が見つかり追跡される。包囲されて逃げ惑い、間一髪でハルクに変身して暴れる。

アメリカに戻ったブルースは恋人のベティと会う。ベティの父ロス将軍にベティの言葉が通じるわけもなく、大学キャンパスで大包囲網が繰り広げられる。
そして最後はニューヨーク、暴れるブロンスキーをやっつけるためにヘリコプターから飛び降りたブルースはハルクに変身していた。ベティが危ぶみつつ見守るなか死闘が繰り広げられ、ヘリは墜落する。

アン・リー監督『ハルク』

長いことマンガやコミックスとご無沙汰している。嫌いではないのだが。今回、どんな映画のDVDでも持ってるらしいT氏にマーベル・コミックスをまとめて貸していただいた。今夜は天神祭やからアメコミでも見ようじゃん、というノーテンキなことで、順番に見るように指定された一番目の「ハルク」(2003)を見た。マーベル・コミックスってなんのことかと思ったら、ニューヨークに本社を置く二大アメコミ出版社のひとつだとウィキペディアにあった。

「ハルク」というタイトルで昔のテレビドラマ「超人ハルク」を思い出した。30年くらい前やったかな。ふだんは真面目な農民(だったと思う)だが、正義の怒りにかられて着ているシャツを引き裂いて、緑色の超人ハルクに変身する。週に一度のお楽しみだった。

最初のシーンは気持ち悪い実験映像が字幕とともに続いている。ヒトデの手を切ったり、液や血がほとばしったり。その研究をしているブルースの父親ニック(ニック・ノルティ)が、小さい息子の腕に出来上がった注射液を注入する。これは失敗で対処方法を模索している最中に、ニックの生体実験が発覚しすべての研究から外される。
息子は4歳で両親を知らずに育つ。

真面目な研究者に成長したブルース(エリック・バナ)と同じく研究者のベティ(ジェニファー・コネリー)は愛し合っている。実験をしていたとき、ブルースは事故で大量のガンマ線を全身に浴びる。その後、彼の体内で異変が起きる。怒りの感情にかられたとき、彼の体が膨張し緑色の醜い大男に変身し暴力をふるうのだ。
政府軍と大企業とがハルクの生きている体から、成分(?)を取ろうとハルクを追う。怒りが増幅してますます強くなるハルク。ミサイルも戦闘機もなんでもやっつけてしまう。飛ぶし、水の中でも死なへんし。

ニコラス・ハイトナー監督『ヒストリーボーイズ』

ニコラス・ハイトナー監督の映画をはじめて見た。舞台監督出身だそうで、この作品も同名の舞台をキャストもそのままで2006年に映画化したもの。

1983年、イングランドの名門大学オックスフォードやケンブリッジを目指して、ヨークシャーのグラマースクールの進学クラスで8人の生徒が勉強している。
老教師ヘクター(リチャード・グリフィス)は人間味のある学問を広く学ぶよう個性的な教え方をしている。それでは進学は無理だと校長はオクスフォード出の若い教師アーウィン(スティーブン・キャンベル・ムーア)を採用する。アーウィンの教え方はヘクターと正反対の受験教育である。
ヘクターは超太っているが繊細な人で、詩や哲学を教育や人生の糧にしている。対立するアーウィンはいやな奴っぽく出てきたけど繊細な人であった。
もう一人の女性教師はどうなのかと見ていたら、もののわかった人で最後にはまとめ役のようになっていてナイスやった。
生徒たちは可愛い上にしっかりしてるしで目のご馳走だった。こんな勉強でオクスフォードへ入るんだなとちょっと思ったけど、いやいや、しっかり本を読み必死で論文を書いていた。しかも面接のときの自己主張がしっかりしている。

ヘクター先生がオートバイで通勤していて走るシーンがけっこうあるのだが、ヨークシャーのこういう道をダルジールシリーズ(レジナルド・ヒル)のウィールド部長刑事も走っているのだと感慨深いものがあった。
音楽が80年代はじめらしくニューウェーヴだったし、ゲイシネマでもあって、なんだかうれしかった。

マイク・リー監督『家族の庭』

マイク・リー監督・脚本の2010年のイギリス映画。マイク・リー監督の映画は「キャリア・ガールズ」(1997)と「人生は、時々晴れ」(2002)を見ている。

病院で中年の女性が眠れないと訴えている。医師は血圧などを検査してから心理カウンセラーのジェリー(ルース・シーン)のところへ行くように言う。ジェリーは冷静に質問し患者は睡眠剤が欲しくて苛立つ。「来週も来て。あなた次第よ。強制しないわ」とジェリーは言う。
診察後にジェリーは病院の事務員メアリー(レスリー・マンヴィル)に帰りにちょっとどこかに寄ろうと誘われ、夫のトム(ジム・ブロードベント)が晩ご飯をつくってくれるから1時間つきあうわといいバーへ。ジェリーは帰り、メアリーは向こうにいる男に目を向けるが、その男には相手が来る。
ジェリーと地質学者のトムは仲が良いインテリの夫婦で40年にわたって円満な生活を送ってきた。市民農場を借りていて日曜日にはいっしょに野菜作りに励む。

春、夏、秋、冬と季節ごとに物語が進展する。
メアリーが来て勝手なおしゃべりをしてワインを飲み過ぎ泊まらせたこともあった。彼女は自分のことしか話さない。二度結婚して二度ともうまくいかなかった。いまも常に相手にする男を捜している。
トムの友人ケンが田舎からくる。トムはいっしょに友人たちとゴルフをして彼を励ます。夫婦のガーデンパーティにはメアリーも来て車を買った話を延々としている。メアリーがタバコを出すと、他の客はそっとその場を離れる。ケンだけが残っていて手を出すがメアリーは相手にしない。太った男は嫌いだ。彼女はトムとジェリーの息子でまだ独身のジョーを狙っている。

ジョーは次に来たとき作業療法士のケイティを恋人としてみんなに紹介する。そのときも来ていたメアリーは衝撃を受ける。それ以来メアリーの訪問はなくなった。
その後にトムの兄ロニーの妻が亡くなり、葬儀に行ったトムとジェリーは無気力になったロニーを家に連れて帰り同居する。

冬になって寒い休日に夫婦は市民農場へ行く。留守の間にメアリーがコートも着ずに玄関に。ロニーが困りつつドアを開ける。寡黙なロニーにメアリーが語りかけ、いっしょにタバコを吸う。
そこへトムとジェリーが帰って来て気まずい雰囲気。
またそこへジョーとケイティのカップルが来て家族だけの雰囲気が醸し出される。

イアン・ソフトリー監督『K-PAX 光の旅人』

先日見たイアン・ソフトリー監督の作品「鳩の翼」は心に残るものがあった。お借りしたもう1作「K-PAX 光の旅人」(2001)はジーン・ブリュワーのSF小説の映画化であるというので期待して見た。とても気持ちのよい映画だった。

ニューヨークのグランドセントラル駅構内に突っ立っていて、ひったくりと間違われて保護された男はプロート(ケヴィン・スペーシー)と名乗り、K-PAXという惑星から来た宇宙人だという。マンハッタンの精神病院に入院させられて、精神科医のマーク(ジェフ・ブリックス)が担当する。宇宙人と主張するプロートにセラピーや投薬は一向に効かない。マークはいろんなことを聞くが、プロートの言うことは変わらない。サングラスをかけているだけで普通の人間に見える。
患者たちはプロートから影響を受けて前向きに変わりはじめる。

マークは天文学者の知り合いに依頼してプロートを学者たちのところに連れて行く。学者たちは光速よりも速く地球へ来たと聞いて、実際にやってほしいと頼むと、プロートはいきなり「アディオス!アロハ!」と言う。一瞬のうちにメキシコとハワイを経由して戻ってきたのだと。
マークはプロートに魅了されたように彼の治療に打ち込む。催眠療法でプロートから聞きだした情報をたよりに彼の謎を解こうとするマークは必死に過去を探る。

ケヴィン・スペーシーがなにげなくという感じで宇宙人をやっているのが気持ちよかった。

イアン・ソフトリー監督『鳩の翼』

Uさんがミクシィのコメントで書いてくださったのだが、ルース・レンデルは映画の「鳩の翼」を見てヒントを得て「階段の家」を書いたそうだ。それで当ブログを探して読んだら、ちゃんと「鳩の翼」にならって遺産を狙う計画を立てると書いてあった。そういえば映画の「鳩の翼」を見ていなかった。
それで、DVDがずっと家にあるのを思い出して、見たらすごーく素敵な映画だった。雨のロンドンと暗いヴェネツィアの映像がよかった。

1910年のロンドン、上流階級から没落したケイト(ヘレナ・ボナム=カーター)は伯母(シャーロット・ランプリング)の世話になって暮らしている。父親も伯母からの送金でぐーたらな暮らしをしている。旧弊な伯母の世話で結婚せざるを得ないのだが、彼女にはジャーナリストのマートン(ライナス・ローチ)という恋人がいる。伯母が許すはずがなく背けば遺産はもらえなくなる。
あるパーティでアメリカ人の金持ちの孤児ミリー(アリソン・エリオット)と親しくなる。ミリーはマートンに一目惚れする。ケイトはミリーが病気で先が短いことを知り、マートンをミリーと接近させて遺産を手に入れようと計画を練る。3人でヴェネツィア旅行をしようと誘って、マートンとミリーが近づくようにしむける。自分はイギリスに帰って待つが嫉妬に苦しめられる。

ミリーはマートンと恋の夜を過ごした後で、ヴェネツィアで死ぬ。彼女はケイトとマートンが愛し合っていることを知っていて遺産を遺した。
イギリスへもどったマートンをケイトが訪ねる。ミリーからの遺産についての手紙が届いていたのをマートンが暖炉へ投げる。でも弁護士に言えばいいのよとケイト。しかし、ふたりの間にはミリーの想いが残っている。

ミロス・フォアマン監督『恋の掟』

これもTさんに貸していただいた映画でコリン・ファース主演作のところに入っていた。検索したら、なんとびっくり、ラクロの「危険な関係」の映画化(1989)であり、あのヴァルモンをコリン・ファースがやっている。さらに驚いたのはヴァルモンが本気で愛してしまうトゥールヴェル夫人役がメグ・ティリーなのだ。メグ・ティリーは「再会の時」(ローレンス・カスダン監督 1983)で、ベトナム帰りの麻薬の運び屋ウィリアム・ハートと最後に結ばれるちょっとぶっ飛んだ若い女性の役で記憶に残っている。レーザーディスクで何度も見た好きな映画だ。

しかし、コリン・ファースに遊び人の役は似合わない。どことなくコメディっぽい。が、当時の衣装がとても似合って馬に乗っても池に落ちてもカッコいいのであった。豪華なベッドで寝ている姿も美しい。
劇場シーンもパリの屋敷も田舎の屋敷も生活も着るものもすごい豪華で美しい。さすがにこの豪奢は人民を搾取して成り立っているんやなと思った。イギリスのお屋敷が出てくる映画は貴族は貴族なりに義務を果たしているという感じがする。単なるイギリスファンだからかもしれないが。

メルトゥイユ侯爵夫人(アネット・ベニング)は昔のフランス映画のジャンヌ・モローの印象が消えないから、だれがやっても気に入らないと思うが、美人ですねという印象。セシル(フェルザ・バルク)は重苦しい印象だったが、物知らずな少女が大人になっていくところを見せていた。
メグ・ティリーはヴァルモンに恋してしまった人妻役なんだけど、抑えているところがすごくよかった。コリン・ファースと演技していてほんとに恋に落ちたのがよくわかる。ふたりの間にこどもができたけど結婚はしなかった。