肉なしハンバーガーとシボーン部長刑事

肉無し食べ物シリーズは〈肉無し肉じゃが〉〈肉無し麻婆豆腐〉〈肉無しチリコンカン〉ときて、次は〈肉無し茄子のカレー〉。
ひき肉を入れないで、ニンニクとタマネギをゆっくりと炒め、大切りの茄子とトマトをたっぷり炒めて水を少々。カレーペーストといろんなスパイスで味付けした。なんや〜肉を入れないほうがうまいやん。大きな茄子とトマトを4個ずつ使って2回分あった。

そしたらおもしろいものにぶつかった。イアン・ランキンの「死者の名を読み上げよ」を読んでいたら70ページにこんなことが書いてあった。
2005年、スコットランドはエジンバラでG8が催されて世界各国から首脳が集まっている。そこへG8反対のデモ隊がイギリス各地から集まってきた。警備する者もイギリス各地から集められて大変な人数がいる。シボーン部長刑事の両親はデモ隊のバスに乗ってやってきた。草原のテント村にデモ隊の人たちはそれぞれテントを張っている。リーバス警部が見ていると年配者が多くて楽しそう。みんなスローガンのついたTシャツを着て手作りの横断幕を持っている人もいる。大テントが張られて食べ物を提供している。フライドポテトや肉なしハンバーガーが用意されている。どちらかというとヒッピー風な人の多いデモ隊である。
この本はすぐ読むのがもったいなくて2年半も寝かせてあったがいま読んでよかった。
〈肉なしハンバーガー〉やってみよう。
(延原泰子訳 ハヤカワミステリ 2000円+税)

テレビドラマの「リーバス警部」をDVDで

イアン・ランキンの「黒と青」がハヤカワポケットミステリで出たのは1998年7月、すぐに買って読んでいた。すごく熱中してそれから出るたびに全部買って読んでいる。リーバス警部シリーズの8作目というのが残念だった。デビュー作から読みたかった。14と15册目が単行本になり、最後の2作はまたポケミスにもどっている。その間に1作目と2作目が文庫で出ている。訳されていないのが3〜6の4冊ある。

ブログを書き始めるよりずっと前のことで、2003年に「ミステリマガジン」で短編「貧者の晩餐会」を読んだ感想が書いてある。その後が14冊目の単行本の「血に問えば」である。すごく熱中していたポケミス時代の感想がないのは残念だ。
最後のリーバス警部の事件「最後の音楽」と退職してからの短編「最後の一滴」の感想はある。だが、最後の一つ前の「死者の名を読み上げよ」は2010年3月から未読のまま置いてある。なんだか読むのがもったいなくて。
いま読みかけのリーバスよりちょっと古いモース警部やダルグリッシュ警視ものを読み終り感想を書いたら読むことに決めた。

ドラマは4本(「黒と青」「ゆれる愛」「死せる魂」「死の理由」)あり、リーバス警部をジョン・ハナーが演じている。ジョン・ハナーは「スライディング・ドア」を見ているのだが、覚えていない。「フォー・ウェディング」でゲイの青年をやってるそうなのでそのうち見たい。
ぱっと見た感じがちょっとイメージ(どんなイメージやねん-笑)と合わなかったが、見ているうちに納得。強面の中に繊細さがあるという感じがうまく出ている。

イアン・ランキン「リーバス警部シリーズ」作品名
1 紐と十字架
2 影と陰
3 翻訳なし
4 翻訳なし
5 翻訳なし
6 翻訳なし(ドラマでは「死の理由」)
7 血の流れるままに
8 黒と青
9 首吊りの庭(ドラマでは「ゆれる愛」)
10 死せる魂
11 蹲る骨
12 滝
13 甦る男
14 血に問えば
15 獣と肉
16 死者の名を読み上げよ
17 最後の音楽

P・D・ジェイムズ『ナイチンゲールの屍衣』(2)

それぞれの看護婦たちの生活や過去が調べられる。みんな個性的で恋人のいる人や女性どうしで仲良くしている人たちもいる。
主任教官ミス・ロルフは医者になりたかったが父親が女が教育を受けることを良しとしなかった。ダルグリッシュとの会話で父親の話をし男性の医師たちを鋭く批判するが、ダルグリッシュはふさわしい返答が思い浮かばない。
いま気がついた。ダルグリッシュの魅力ある独身女性たちとの丁々発止の会話がこの本の魅力かもしれない。

ダルグリッシュは事件をほとんど解明しかけたと思う。あと一日二日で解決できる。
ダルグリッシュがナイチンゲール・ハウスからホテルへ帰ろうと歩いているとき、突然、背後から襲われる。向かい合おうとした瞬間に強烈な一撃が左のこめかみから肩へそれて、彼は前のめりに倒れた。しばらくして看護婦の一人が通りかかり助け起こして実技室へ連れて行く。外科医が処置しようとするが、ダルグリッシュは麻酔を拒んで痛みをこらえつつ縫ってもらう。

マスターソン巡査部長は捜査中に話を聞くため一人の女性と一夜をダンス場で過ごす。その報告を聞いたダルグリッシュの言葉。
【警官でいながら、常に思いやりを失わないでいるということは、できそうもないことだと思う。しかしもしきみがそういう無慈悲な行いそのものを愉快に思うようになったら、多分それは警官をやめるべき時だよ。】
(隅田たけ子訳 ハヤカワポケットミステリ)

P・D・ジェイムズ『ナイチンゲールの屍衣』(1)

久しぶりに読んだダルグリッシュシリーズだが、書かれたのは古くてシリーズ4冊目である。調べるついでに全作品のタイトルをコピーしてきた。(○のついてるのが読んだ本)
1962年 女の顔を覆え
1963年 ある殺意
1967年 不自然な死体
1971年 ナイチンゲールの屍衣 ○本書
1975年 黒い塔
1977年 わが職業は死
1986年 死の味
1989年 策謀と欲望
1994年 原罪 ○
1997年 正義 ○
2001年 神学校の死 ○
2003年 殺人展示室 ○
2005年 灯台 ○
2008年 秘密 ○
わあ、読んでないのが7冊もある。えらいこっちゃ〜ぼちぼち読んでいかねば。
「死の味」は持っている人を知っているので貸してもらおう。
本書は亡くなった姉のを姪にもらってきたうちの1冊。

看護婦養成所の視学官ミス・ピールは1月の寒い朝早くジョン・カーペンダー病院の視察のために出かける。看護婦養成所はビクトリア朝式大建築ナイチンゲール・ハウスのなかにあった。看護婦たちが実技の研修を受けるところを視察するのだが、その日はピアス看護婦が患者の役で直腸食餌法が実践される。本当の病人なら栄養物を入れるところをこの日は温めたミルクが投与される。全員が見守る中でピアス看護婦はベッドから転がり落ち苦悶しながら息絶えた。

地元警察が調べているうちに第二の殺人がおこる。
朝起きてこないファロン看護婦の部屋へ行くと彼女はベッドで死んでいた。
そこでスコットランドヤードのアダム・ダルグリッシュ主任警視の出番である。このときはまだケイト・ミスキン警部ではなく、マスターソン巡査部長がついている。
ファロンの本棚にはダルグリッシュを含む現代詩人のコレクション、インディアン・ペーパー(どんな紙かしら)に印刷して、なめし革で製本したジェーン・オースティンの完全なひとそろいなどがあり、ダルグリッシュは自分たちは同じ好みを持っていたんだと思う。
(隅田たけ子訳 ハヤカワポケットミステリ)

P・D・ジェイムズ『女には向かない職業』(2)

コーデリアはバーニィが乗っていたミニでどこへでも出かけて行く。図体が小さいから人を訪ねるときにも停めやすい。
ケンブリッジでの聞き込みは同じ世代の男女と話ができて楽しいこともあった。
村へもどってコテージでマークが首をつっていたベルトを調べ、自殺でないことを確認する。庭の井戸をのぞいたとき何者かに突き落とされるが、必死で壁を這い上がりもう少しのところまでいくが蓋が閉まっている。死を覚悟してじっとしていると近所の人が助けてくれた。探偵は作品中に一度は危害を加えられるものだが、それにしてもようやるわ、コーデリア。

どっとクライマックスになって事件は終わる。とても複雑な事件だったがコーデリアは頑張った。マークのことを思いながらしたことと、レミングに告げる。謝礼金は支払われて一息つけそう。

そこへスコットランドヤードのダルグリッシュ警視から呼び出しがかかる。ダルグリッシュ警視は鋭いがコーデリアは頑張る。事件のすべてを調べあげたダルグリッシュはコーデリアから聞きだしたいことがある。22歳の女性探偵は頑張る。
事務所へもどると新しい依頼人が待っていた。

小泉喜美子さんの訳は小気味よく歯切れがよくて読みやすい。
(小泉喜美子訳 ハヤカワポケットミステリ)

P・D・ジェイムズ『女には向かない職業』(1)

ずっと昔に読んだ本が姪の家にある姉の遺した本棚にあったのでもらってきた。ヴィク・ファン・クラブを発足させる前に読んでいたから21年以上前になる。もう一冊「皮膚の下の頭蓋骨」(1982)を読んだ覚えはあるのだがこれも全然覚えていない。
一昨年にアダム・ダルグリッシュ警視シリーズを数冊読んでP・D・ジェイムズのとりこになった。「女には向かない職業」(1972)を再読しようと思ったのもダルグリッシュ警視のおかげである。そのダルグリッシュ警視が本書に出てきたのにはびっくりした。ほんまにきれいに忘れていたので(笑)。

コーデリア・グレイという名前がまずステキ。リア王の娘コーデリアからとった名前である。彼女が生まれてすぐに母が死んだ。それ以来父親(旅まわりのマルキシスト詩人、そしてアマチュア革命家とコーデリアは説明する)と暮らすが養母は次々に変わり、学校の先生を困らせ、という具合で成長する。頭がよくAクラスであり大学の奨学金もとれたはずなのに16歳で父親の便利屋をするようになった。

探偵事務所長のバーニィ・プライドはダルグリッシュ警部の部下だったことがあり、警察を辞めてからも誇りにしていた。コーデリアは探偵仕事や銃の扱いを教えてもらいつつ彼のもとで働いてきた。
バーニィが癌を苦にして自殺したあと、引き継いで探偵事務所をやっていくことにする。コーデリアの想像の中の母は探偵は〈女には向かない職業〉と思っているのだが。こうして22歳の女性探偵が誕生した。

最初の仕事の依頼は自然保護に対する貢献でナイトに叙せられた高名なロナルド卿からだった。以前した仕事の依頼主からの紹介だったが、バーニィはこの仕事には絶対ボーナスがつくといっていた。そのボーナスがコーデリアの第一回の仕事となった。
秘書のレミングが事務所に来ていっしょにその屋敷を訪れる。ロナルド卿は「わしの息子が首をくくった。その理由を調べてもらいたい」と依頼する。

コーデリアは息子が住んでいた農園のコテージに住み込む。ここからマークの大学友だちからの情報を得るためにケンブリッジへ行く。
(小泉喜美子訳 ハヤカワポケットミステリ)

エイヴリー・エイムズ『名探偵のキッシュをひとつ』

昨日は考えが飛躍しておかしなところへ着地した。あれはわたしの妄想だがすごくうまく言い表していると思う。現実にはミクシィの「強い女」のコミュニティに翻訳ミステリの登場人物は女性探偵だろうとコージーの主人公であろうと出てこない。どちらにしても少数派なのである。運動をしている女性だって女性全般からすれば少数派である。
でも、彼女たちが世の中を変えていくのには間違いない。わたしらがジーパンと運動靴で開いた道を踏み越えて。

さて、本の感想。
主人公シャーロットはオハイオの小さな町プロビディンスで祖父から継いだチーズ店を従兄弟のマシューと共同経営している。祖父と祖母は第二次大戦後にフランスから移住して苦労の末にお店を開いた。シャーロットの両親は小さいころに自動車事故で亡くなっている。
この町は近所にアーミッシュのコミュニティがあって観光客が多く、しゃれたお店が次々と開店している。祖母は町長でありプロビディンス劇場の経営者でもある。
従兄弟のマシューは妻が勝手にイギリスに帰ってしまったので、双子の小学生姉妹を連れてチーズ店で働きだした。店員のレベッカはアーミッシュ出身の若い娘できびきびと働いている。バイトのボズは16歳のコンピュータの達人。店の経営が順調なので、これから別館をつくって販路を広げようと改装中。

近くのチーズ製造業者のジョーダンにシャーロットは惹かれている。まるでエロール・フリンのようないい男(なんでいまの時代にエロール・フリンなんかわからん)。
新装開店のパーティにたくさんのお客が来る。クリスティーンは次期町長に立候補しようと虎視眈々。夫のエドは女好きでいやなやつである。
チーズとワインが次々に出されてパーティは盛り上がっている。シャーロットは記者から質問を受けてこれからやりたいことを話して上機嫌。と、そこへ外の歩道からつんざくような悲鳴が聞こえた。エドが倒れており祖母が壁際にうずくまっている。放心状態で手が血に染まっていた。

祖母は逮捕されるが在宅拘禁ということで帰ってきた。町長選挙の日が迫っている。シャーロットは犯人捜しを始める。レベッカが助手をつとめる。直感で考えて警察署長を悩ましながらまっしぐら。

登場人物が多くて、普通に読むだけならすっとばしてすすむが、読書会となるとそうもいかない。面倒だが〈主要登場人物〉にもどっては、この人はなに屋さんかと確かめた。
犯人を突き止めるまでにあっちこっちと鼻をつっこむシャーロット。おばあちゃんは拘禁生活にいらいらして庭で道に向かって演説したり芝居の稽古をしたり。
(赤尾秀子訳 原書房コージーブックス 895円+税)

コージー・ミステリについて考えた

明日(27日)行われる関西翻訳ミステリ読書会で取り上げる課題本、エイヴリー・エイムズ「名探偵のキッシュをひとつ」をようやく読み終わった。コージー・ミステリを読書会で取り上げるって珍しいと思う。読書会の中心にいるKさんが筋金入りのコージー・ファンで、彼女はヴィク・ファン・クラブの会報にも「コージー・コーナー」ページを持っている。
わたしはコージー好きかと考えるとそうであるというにはあまり読んでいない。友人から借してもらって読んだのが多い。

さて本書を読んで考えるところがあった。ただ借りて読んだらさっと読んでおもしろかったというところだが、読書会でなにか感想を述べねばならぬ、ので考えた。

サラ・パレツキーと彼女の探偵V・I・ウォーショースキー(ヴィク)が1982年に世に出て今年で30年になる。日本で翻訳紹介されたのは3年後の1985年で、その6年後の1991年にヴィク・ファン・クラブが発足した。わたしはハードボイルドファンとしてサラ・パレツキーの本が出たときから読み、他の女性作家の本も読んでいたのだが、世の中の動きは違っていた。たくさんの女性たちに強い女性のナンバーワンとしてもてはやされ、その流れでファン・クラブ発足に発展していったのだった。

それからファン・クラブはずっと続いてきたのだが、わたしは世の中の動きが変わっているのに気がつかなかった。はじめてのSNS ミクシィに入ったとき、コミュニティに入ろうと探したときに「強い女性」というようなのがあり、そこであげられていた名前は主に日本のコミックの主人公たち(ナウシカや草薙素子など)で翻訳ものの女性探偵は入っていなかったのである。ということで、ヴィク・ファン・クラブにいる女性たちは普通でなく並外れた読書家ばかりであることに気がついた次第だ。

いま女性探偵ものは売れなくてコージーものが売れているという。女性探偵や女性警官でなくて、地元に根付いて暮らしを立てている女性。地方の小さな町でドーナツ店、チーズ店などの小売業である。元祖コージーのようであるクッキングママのシリーズはケータリング業である。
お節介で、お人好し、おしゃべり、甘いもの好き、おしゃれ、などなどが主人公の特徴である。

最近になって、脱原発の運動をしている女性たちと話したりツイッターやブログを読ませてもらっているけど、コージーの主人公たちと同じ感じなのだ。肩肘張らない自然体でおしゃれでセンスがよい。デモで浴衣を色っぽくあるいは子どもっぽく着こなしているのを見ると隔世の感じをもつ。昼はデモで練り歩き夜はクラブで踊る。理屈を言いつつ行動している。女子デモを企画し女子会をつくる。チラシやプラカードのセンスのいいこと、コージーの主人公たちのキルトや刺しゅうみたい。
昔の足元固めてジーパンでというのもきりっとしてよかったが、スカートを翻して素足にサンダルもよいものだ。

イギリスのミステリ名作をもらった

姪は翻訳物を読まない人なので、いつも母親が遺したミステリ本を持って帰ってほしいと言っている。わたしがまわした本もあるのを知っているからだが、読まない人間にはものすごいでかい本棚に入った本の処理は困るよね。前回は雑誌「宝石」の内容を覚えているのをたくさんもらった。その後、別にしまってあったのが出てきたらしく、ポケミスと文庫本がびっしり並んでいるのにおどろいた。20年くらい前に亡くなったので1990年くらいまでに出たハードボイルドとイギリスの警察ものがいっぱい。ほんまに好きな人が見たら宝の山やでと言いつつ、数冊もらって帰った。

P・D・ジェイムズ「女には向かない職業」(昔読んだまま。いま思い出しつつ読んでいる)「ナイチンゲールの屍衣」(未読)、コリン・デクスター「キドリントンから消えた娘」(読んだけど内容覚えてない)「ウッドストック行最終バス」(ウッドストックをアメリカの音楽祭があったところと間違えて買ってがっかりした思い出あり。1976年)、ルース・レンデル「乙女の悲劇」は初めて読む。
それにしても昔のポケミスの字の小さいことよ。

上記のことをツイッターでつぶやいたら返信があった。ルース・レンデルの「ハート・ストーン」を読みたくなったんだって。こりゃあきません、だって全然知らないんだもん。彼女がいうならきっとステキな本に違いない。検索したらこんなことが・・・「父と妹の三人で古い館に住む少女のお話」「母親が病死した15歳から19歳になる前までを一人称で綴った」なんて書いてある。福武文庫って高いだろうなとアマゾンで見たら、なんと61円なのであった。すぐに注文したから明日くらい届くでしょう。

ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q 檻の中の女』(2)

5年前にさかのぼる。民主党副党首ミレーデ・ルンゴーは美貌と頭脳で記者たちに好かれていた。彼女は首相と彼の賛同者にも決して媚びないチャーミングな女性だった。夜は働かないことで了解を得ているミレーデは仕事が終わると家に車を走らせる。家政婦が食事の用意をしてある家に弟のウフェがテレビを見ながら待っている。障害をもつウフェはミレーデだけを頼りに生きている。21年前の自動車事故で両親が亡くなり、ウフェは内臓出血で5カ月入院した。脳の血管に出血があったためいまも口がきけない。ミレーデだけが助かったのだ。

ミレーデはウフェと週末にベルリンへ行こうと思う。ふたりはフェリーで出発する。
そのフェリーでミレーデは行方不明になった。捜査は難航しミレーデは見つからないままである。ウフェは最初は海へ突き落とした犯人として逮捕されるが釈放されいまは施設にいる。

それから5年、カールとアサドは調査を再開する。
当時の捜査状況をあらゆる角度から検討して一歩ずつ前進していく。
カールは私生活もややこしい。別居している妻がいて義理の息子はカールの家にいる。昇格試験を受けないために警察署内での位置もややこしい。
次作「特捜部Q キジ殺し」を早く読みたい。
(吉田奈保子訳 ハヤカワポケットミステリ 1900円+税)