エリナの背中には大腿部の後ろ側と背中と臀部に擦過傷と青あざができていた。まだ息のあるうちに意識を失った状態でついたものだった。何者かがエリナを引きずって森へ入って行き木の根元に運んだと推測できる。
同僚のペルツァがづけづけいう。「おまえの大好きな仕事じゃないか、カッリオ。おまけに、真性のフェミニスト集団の事情聴取ができるときた」しかも今日の事情聴取にはおれがつくことになったと満足げ。
館にいるヨハンナは古レスタディウス派の宣教師の妻で、教義により避妊も中絶もせずに9人のこどもを産み育ててきた。最後のこどもを母体が危ないということで中絶したのだが、その支えとなったのがエリナだった。ヨハンナはエリナを雑誌とテレビで知って連絡したという。ヨハンナは夫がエリナを殺したと確信をもっている。夫は自分を神の道具だと思っているから、自分のこどもを殺したエリナを罰したと。
詩人のキルスティラとエリナは2年ほど前に男性性に関するセミナーで知り合った。まるっきり意見の食い違うふたりは列車やレストランで話を続け、最後はキルスティラの部屋に泊まって恋人同士になった。
州刑務所からハルットウネンが脱獄したという連絡があった。マリアと同僚のパロが追いつめて捕まえた男だ。ハルットウネンは自分を捕まえた警察官のひとりが女性だったことに強い憎悪を抱いている。拳銃を持ち歩くことにしたというパロがハルットウネンに人質にされてしまう。ほんとうは女性の自分を人質にしたかったろうとマリアは思う。
捜査に向かうマリアを夫のアンティは気遣う。マリアが後先考えずに走ってしまうから。
そんな忙しさの中で妊娠検査薬を買ってくる。避妊効果は100%でないと避妊リングに書いてあった。医者に行くとやっぱり妊娠していてマリアはこどもを生もうと思う。
(古市真由美訳 創元推理文庫 1200円+税)