ジーン・ケリー&スタンリー・ドーネン監督「踊る大紐育」

もう10年も前になるかな、古い映画のDVDが1枚500円で書店で大量に売っていたことがあった。新聞で知って近所の本屋に行き興奮して20枚くらい買った。500円だけあって画質が悪い。でもとにかくも俳優の顔が見えてストーリーが追えれば満足だった。
昔見て良かった映画はまた見て懐かしみ、タイトルだけ知っている映画は汚い画面でも見えたらOKだった。「若草物語」「恋愛手帖」「ジェーン・エア」「レベッカ」とか大喜びだった。その中にまだ見ていないのが1枚「踊る大紐育」(1949)が残った。つまらなかったらどないしょうと思うと踏ん切りがつかない。ようやく今夜踏ん切って見た。

「踊る大紐育」は、子どもの頃に家にあった雑誌「スクリーン」の古い号を見て憧れていた映画だ。ヴェラ=エレンはわたしの女神だった。
監督も兼ねているジーン・ケリーはこの後たくさんのダンス映画に出演してフレッド・アステアと人気を分けていた。それからフランク・シナトラの若い時が見られてありがたい。
三人の水兵さんにジーン・ケリーとフランク・シナトラ、もう一人はジュールス・マンシュイン(「絹の靴下」「イースター・パレード」)、女性陣はヴェラ=エレン、アン・ミラー、ベティ・ギャレット。
24時間の休暇をもらった3人の仲良し水兵さんたちが、ニューヨークを楽しもうと名所見物からはじめる。地下鉄のポスターのモデルになっているヴェラ=エレンに惚れ込んだジーン・ケリー、博物館では恐竜の化石を見ていたが壊してしまう。博物館の学者アン・ミラーがジュールス・マンシュインに惚れ込み、タクシー運転手のベティ・ギャレットがフランク・シナトラに熱をあげて離さない。

シャーロット・マクラウド「納骨堂の奥に」

「Vic Fan Club News」の人気連載「コージー・コーナー」にシャーロット・マクラウド(1922-2005)「納骨堂の奥に」が紹介されていた。コージー・ミステリはあまり読まないが翻訳が懐かしい浅羽莢子さんだし買って読むことにした。著者も主人公のセーラ・ケリングの名前も昔から知っているけど読んだことがなかった。
なんてったってコージーだからとゆったり気分で読み出したら、なんだか様子が違う。すげえすげえと土日月と3日間で読み終えた。シリーズ第一弾である。次も読みたい。

ボストンの旧家の若奥様であるセーラは夫のアレクザンダー(従兄)と、姑(伯母)と古い大きな屋敷で暮らしている。アレクザンダーが41歳でセーラが19歳になる前に結婚した。いまも上品な夫を愛しているから不自由は感じていないが、お金の管理をまかせている夫からわずかな家計費しかもらっていない。

フレデリック大伯父が亡くなって、セーラは納骨堂へ来ている。
妻といっしょに埋葬されるのはいやだから自分だけケリング家の納骨堂へという遺言を実行するために納骨堂の中を見に来たのだ。
ボストンコモンの周りの古い墓地は全部史跡に認定されていてなにも動かせないが、壁際の納骨堂はケリング家のものなので利用できると役所から返事をもらった。
別の従兄ドルフが来て納骨堂の鍵を開けた。煉瓦の壁が立ちはだかっている。係員とケリング家の男たちが力づくで破ると、若い女の死体が目の前にあった。
(浅羽莢子訳 創元推理文庫 1,000円+税)

柴崎友香「春の庭」

去年の芥川賞を受賞したこともお名前も知らなかった柴崎友香さんの「春の庭」を買って読んだ。先日すでに日にちの過ぎた「週刊現代」9/12号の書評ページをめくっていたら「わが人生最高の10冊」の左側にある「柴崎さんのベスト10」が目についた。3位の「ニューヨーク・ストーリー ルー・リード詩集」である。この本は相方の愛読書であって実はわたしは読んでない。ただ我が家はしょっちゅうルー・リードの歌声が聞こえるしパソコン画面に顔が見えるから全身にしみついている。実はわたしは昔からジョン・ケイルのファンなのです。

そんなわけで、おおいに興味をそそられ本文を読んだ。ちなみに1位はデニス・ジョンソンの「ジーザス・サン」、2位は漱石の「草枕」大賛成。10位まで好みが合う本ばかりと思ったが、特に6位の吉田健一「東京の昔」はわたしの大好きな本である。こういう好みの人が書いた小説を読んでみたい。
というわけでアマゾンで中古本が100円であったので即注文、届いたのをすぐに読んだ。

いつも翻訳本をそれも北欧のミステリを好んで読んでいるし、この数日はピエール・ルメートルの猛スピードで超残酷な3冊を読み終わったところである。はやるルメートル頭を抑えて読み出した。「春の庭」というタイトルが素敵で表紙カバーの写真がいい。
読んでいくうちにおだやかな語り口に引き込まれていった。

離婚して独り暮らしになった太郎は元美容師でいまはサラリーマン生活をしている。借りているアパート「ビューパレス サエキIII」に住む住民との穏やかなやりとりが描かれる。
アパートから見えるおしゃれな一戸建ちの空き家にアパートに住む独り暮らしの西さんは執着する。太郎も西さんとつきあっているうちに興味をそそられるようになる。
静かに静かに物語が進んでいく。

作者は大阪生まれだが作品の舞台は東京である。大阪の人が描いた東京という感じがする。わたしは東京生まれだが、こどものころから大阪にいてちょっと出たことはあるが大阪人である。若いころ東京に住む友人宅によく遊びに行った。そのときの若い3カップルのアパート暮らしの雰囲気が「春の庭」に似ている。東京の人には書けない東京って思った。わたしの独断ですが。
(文藝春秋 1300円+税)

ピエール・ルメートル「死のドレスを花婿に」

なんかもう、すごい小説にぶちあたった。すぐ前に読んだ「その女アレックス」と「悲しみのイレーヌ」もすごかったが、「死のドレスを花婿に」には、もうなんていうか圧倒されてしまった。ルメートルすごい!
最初は女性主人公ソフィーの謎めいた存在と行動に引きずられて読んでいた。平穏な日々が壊れてソフィーを中心に転がるように事件が起き続ける。あれよあれよと驚きながら読んでいるうちに、ある男の作為でソフィーの人格や人生が否定されていく。

4つの章に分かれているのだが、読んでから意味がわかった。
内容について書いてしまうといけないので、すごくよかったとだけ書いておく。
ルメートルの作品は3冊読んだだけだけど、女性がものすごく強くて頑張るところが好き。3冊ともに内容について語ったらこれから読む人が困るというところがすごいです。
(吉田恒雄訳 文藝春秋 790円+税)

ピエール・ルメートル「悲しみのイレーヌ」を読んでいる

まだ出来上がらないVFCニュース、合間に本読みを入れるからできなくて当たり前だ。ピエール・ルメートル「悲しみのイレーヌ」(文春文庫)に惹きつけられてあと少し。
残酷な連続殺人を調べているカミーユ・ヴェルーヴェン警部のことは先日「その女アレックス」を読んで知っていた。だけど、本作は「その女アレックス」より前の作品である。カミーユの苦悩の原因を知らされてショックだった。翻訳されるだけでありがたいと思うが、あとの作品を読んでから前作というのはうれしくない。なんて言っていいのはちゃんと翻訳出版順に買って読んだ人が言うことで、いまごろ4作同時に買った者がいうたらあかんね。

「悲しみのイレーヌ」はミステリ小説が重要な要素になっていて、その中にわたしが大好きなウィリアム・マッキルヴァニー「夜を深く葬れ」(ハヤカワ・ポケットミステリ)があったので驚いた。しかもヴェルーヴェン警部は「夜を深く葬れ」を読んでグラスゴーに赴くのである。

グラスゴーの機動捜査班警部ジャック・レイドロウもカミーユ・ヴェルーヴェン警部も事件への入れ込み方がすごい。
もう一度「悲しみのイレーヌ」を読んで、そのあとに「夜を深く葬れ」を読もう。レイドロウのほうは読みはじめたらどんどん思い出していくはず。

「夜を深く葬れ」で検索したら1ページの3つめに【ウィリアム・マッキルヴァニー「夜を深く葬れ」 (kumiko 日記)】が出てきて感激。ハヤカワとアマゾンの次だからうれしい。

ピエール・ルメートル「その女アレックス」に心奪われ

「その女アレックス」の評判はいろいろと読んでいたのだけれど、フランスのミステリ苦手やからとためらっているうちに1年以上過ぎた。去年の9月発行の本である。
それが、読んだらすっごくおもしろい。
あれっ、なにがとっかかりになって読んだのかしら。

そうそう、ツイッターでフォローしている若い人がすごく好きでこれから3回目を読むと書いていたのを読んだのだった。ミステリファンが書いててもふーんと思うだけだけど、若い映画ファンの熱い言葉には動かされる(笑)。
そのツイートがミクシィの「つぶやき」にまわってマイミクYさんが読んだ。Yさんもすごくよかったと出ているもう1冊「死のドレスを花婿に」を教えてくれた。それでわたしは最近出たのを買うつもりと書き、マイミクYさんはそれは知らなかったと即注文というすごいスピード。
わたしも土曜日に「悲しみのイレーヌ」(文春文庫)「天国でまた会おう 上下」(ハヤカワ文庫)を本屋で見つけて購入したのだった。
そして用事がすむまで読まないと言ってたにもかかわらず手にとってしまい読み終えた。あとの3冊は用事が終わるまで読んだらあかん。

「その女アレックス」はフランスの警察官の物語である。主人公カミーユ警部について話したいが、ここをもし読んだ人が本を読むとき邪魔になる。本書は解説や他人のブログなど読まず、本を買ったら即読むこと。
二人の部下、気持ちも身だしなみも素敵なルイと貧乏丸出しだけど実直なアルマン、上司ル・グエンはカミーユと対照的な見かけで、交わす会話が楽しめる。いやみな予審判事さん。
事件は陰惨な連続殺人。日にちをおいて場所もまちまちに起こった事件をつなげて解明していくカミーユたち。哀しみと怒りの主人公アレックスが愛おしい。
(橘 明美訳 文春文庫 860円+税)

海外ドラマ「ヴァイキング〜海の覇者たち〜」

製作年は2013年、アイルランド・カナダ国際共同制作で全9話。先日から毎日1回見ているがおもしろいので続けて全部見る予定。
ヴァイキングって名前は知っているが、いつのことかも知らなかった。いま解説を読んでいるところだが、8世紀末のことだって。そのころはどんな時代だったか調べねば。
海への船出の場面では木の船に一枚の大きな帆が張ってあり、大海に豪快に出て行く。

ヴァイキングの勇者ラグナルは毎年東国へ出かける略奪遠征が不満で西へ行こうと計画する。部族の首長は反対するが、ラグナルは船を造り仲間を募って西へ出発する。
嵐にあったり苦労の末に陸地が見える。イングランドだ。陸地に上がると修道院があったので聖具などを略奪する。そして、ただ一人言葉が通じた若い僧を奴隷として連れて帰る。
ラグナルの妻は元女性兵士だったので、2度目の遠征にはいっしょに行って戦う。
昨日見たのは第4回だったからあと5回見る予定。

スチュワート・マクブライド「花崗岩の街」

作者のマクブライドという名前なんだけど、スコットランドの人かなと思ったのは「あしながおじさん」のジュディの友だちサリー・マクブライドがスコットランド人だったから。アタリだった(笑)。帯に「イアン・ランキンに好敵手誕生」とある。喜んで読み出したが、うーん、イアン・ランキンと比べたらかなり落ちる。だがイアン・ランキンのリーバス警部が最初に紹介されたのは脂ののり切った8冊目の「黒と青」だったから、第1作の「花崗岩の街」と比べたらマクブライドが気の毒だ。

リーバスのエディンバラに対して「花崗岩の街」のローガン・マクレイ部長刑事はアバディーンの警察官である。首都エディンバラ、人口の集中する大都市グラスゴーに次ぐ第三の都市がアバディーンで、北海油田の石油基地として発展した。たしかリーバス警部が北海油田へ捜査に行く物語があった。
でも、この本に出てくるのは貧しい地帯に住む人たちやその人たちの中の犯罪者によって起きた事件である。雨が降り続くアバディーンの街に起こった連続幼児誘拐殺人の捜査に病み上がりの疲れた体で立ち向かうローガン部長刑事。
(北野寿美枝訳 早川ポケットミステリ 1700円+税)
※第2作「獣狩り」が11月にハーパーBOOKSから出版予定。

スティーブン・チョボスキー原作・監督「ウォールフラワー」

良さげな感じのタイトルだなと期待して見たアマゾンプライムの映画。原作は「ライ麦畑でつかまえて」の再来といわれたスティーブン・チョボスキーの小説で、映画化にあたって監督もしている。製作者の一人にジョン・マルコヴィッチの名前があった。公開2013年。
年代は主人公チャーリー(ローガン・ラーマン)がタイプライターを使っていることからパソコン以前のことだと大雑把にわかったが、検索したら小説の解説が出てきて1991年に高校に入学した少年の物語とわかった。

ピッツバークの郊外の高校に入学したチャーリーは存在を誰からも気づかれない「ウォールフラワー」である。兄はフットボール選手で姉は最上級生。親友が自殺したので一人ぼっちである。
チャーリーは学校で美しいサム(エマ・ワトソン)と彼女の義理の兄弟のゲイのパトリックと出会う。二人はチャーリーと付き合ってくれる。また国語教師が認めてくれて本を貸してくれ、だんだん学校生活になじんでいった。
でも、どことなく他の生徒と馴染めないものを持つチャーリーの秘密が最後にわかる。
(この後ネタバレ)命が危ういチャーリーを姉の機転が救い、精神科医が助けてチャーリーに希望が生まれてくる。

スティーブン・チョボスキー原作・監督「ウォールフラワー」続き

昨日は遅くなって骨組みだけしか書けなかった。パソコン画面で映画を見て、そのままパソコンに向かって感想を書くのは余裕がなさすぎる。その上に下調べなしで見ているから映画が終わってから何年の映画かしらとか俳優の名前を検索したりと忙しい。昨日の感想でわかるように筋道だけしか書いてない。友だちに「感想を書いてくださいよ」と前から言われてるんやけど。
映画館からの帰り道や立ち寄った居酒屋でしゃべったりしていた時代が懐かしい。
そうはいっても、こうして会費は払っているものの無料で映画を見られるってすごくありがたいことだ。

昨日のブログを読んだ人に「昨日見はった映画ではエマ・ワトソンはもう大人になっているんですか」と聞かれた。そうなんだ、エマ・ワトソンは「ハリー・ポッター シリーズ」のハーマイオニー役をやってたんだっけ。わたしは見てない(一度だけ最初のをテレビで見ただけ)から全然気にしてなくて若い女優さんと思ってただけだけど、有名な女優さんなのであった(笑)。
「ウォールフラワー」では、美しく優しく奔放な役を楽しそうに演じていて好感を持った。
主人公のチャーリー役をしたローガン・ラーマンは好きなタイプではないが、青春の不安をうまく演じていてよかった。
昔いろいろ見た青春映画を思い出したが、ハイスクールのロッカーって昔と変わってないんだとヘンなことで感心した。
貫禄がある精神科医をジョーン・キューザックがやっていた。ジョン・キューザックのお姉さんでわりと好きだった。「セイ・エニシング」(ジョン・キューザックが主演でいい映画だった)に出ていたのを思い出したがその他は忘れてしまった。