デビッド・フィンチャー監督『ドラゴン・タトゥーの女』

評判になった本も読んでないし、映画はどっちも見てなかった。ただデヴィット・フィンチャー監督が好きなのでいつか見たいなと思っていた。「セブン」と「エイリアン3」を映画館で見たときから気になる監督だったから。その系列の映画だったのですごく満足。
ダニエル・クレイグは犯人に捕まってあやういところを天才ハッカーのリスベットに助けられるなど007と違った演技力を見せていた。ドラゴンのタトゥーをいれたルーニー・マーラは「ソーシャルネットワーク」の学生だったのがわからない激しい演技力を発揮していた。昔ちょっとインテリ好みの映画に出ていて大好きだったロビン・ライト(そのころはロビン・ライト・ペンだった)が出ていた。

あまり評判なので敬遠していたが、これから原作小説スティーグ・ラーソン「ミレニアム」第1部「ドラゴン・タトゥーの女」第2部「火と戯れる女」第3部「眠れる女と狂卓の騎士」の三部作を買って読む。それからスウェーデン映画「ミレニアム」を見る。

アニエス・ジャウィ監督『みんな誰かの愛しい人』

今年初めて見る映画(DVDだが)はフランスの女性監督アニエス・ジャウィの「みんな誰かの愛しい人」(2004)にした。70年代までのフランス映画を語らせたらちょっとしたものと自負しているけど、最近はさっぱり見ていないので語るなんてとんでもない。
お借りしているDVDから1枚出して、タイトル見てもわからない。おもむろに検索して、これおもしろそうじゃんと見始めたら大当たりでよかった、よかった。

父親(ジャン=ピエール・バクリ)が有名な作家で、美人の若い奥さんと小さな女の子がいる。前妻の娘ロリータ(マルリー・ベリ)は肉付きがよすぎてコンプレックスいっぱい。若い男の子が側に寄ってきたら父への頼みごとがあるのだと経験からわかっている。いまの彼氏もそうだ。
ロリータは声楽を習っていて父に自分の歌をカセットテープに入れて聞いてもらおうと思うが、父はほったらかしたまま。声楽の先生(アニエス・ジャウィ)はロリータを持て余し気味だが、父親が作家だと知ると目をかける。そして彼女のつれあいの売れない作家を紹介する。
たまたまロリータの足元に酔っ払って倒れた青年セバスチャン(カイン・ボーヒーザ)に自分のコートをかけてやったのがきっかけで、二人はつきあうようになる。セバスチャンはロリータを好きになるが、ロリータの話題は父親のことばかり。
セバスチャンは友人といっしょに仕事をはじめるつもりだったが、父親が知り合いを紹介することになり、それを知ったロリータは「またか」と思う。セバスチャンは去っていく。しかし、セバスチャンが紹介を断ったことを父から聞いて暗闇の中を自転車で走る、走る。
たどり着くとセバスチャンはベンチに座っていた。セバスチャンのひとこと「疲れる子だよ」は実感がこもってた。

アニエス・ジャウィとジャン=ピエール・バクリ、素晴らしいカップルがいるのを今日知った。二人がアラン・レネ監督と組んだ作品「スモーキング / ノースモーキング」(1993)「恋するシャンソン 」(1997)を見たい。

アルバート・ヒューズ、アレン・ヒューズ監督『ザ・ウォーカー』

戦争で破壊され文明が崩壊した地球を一人の男イーライ(デンゼル・ワシントン)が世界にただ1冊残った本を抱えて30年ひたすら歩いて西へ向かう。ちょっと変わった近未来SF映画。
すごい武器を持っていて強盗くらいなら軽いもの、本に手を出そうとする者は即座に殺してしまう。
旅の途中で立ち寄った町は独裁者カーネギー(ゲイリー・オールドマン)によって支配されている。カーネギーは辺り一帯の支配拡大のために異常にその本を欲しがり、あの手この手で本を取り上げようとする。情婦の娘ソラーラ(ミラ・クニス)が誘惑しようとしても手を出さないイーライだが、ソラーラは本の内容の一端を聞き取りカーネギーに告げる。それはカーネギーが探している本だった。
出発したイーライを追いかけるソラーラ、二人をカーネギーの屈強な子分たちが追いかける。応戦するも多勢に無勢でイーライは最後に本を取り上がられ半殺しにされる。それでも起き上がって西を目指すイーライとソラーラは目的地に辿り着く。本の内容は何度も読んで覚えているから大丈夫。

西へ西へと歩いて30年、着いた先は〈西方浄土〉ではなくて、生き残った人たちが未来に届けようと人類の文化を伝えるために頑張っている場所だった。
デンゼル・ワシントンを久しぶりに見たが汚れっぱなしにも関わらず清潔な印象。
なつかしや、マルコム・マクダウェルが最後のほうで出てきた。

アレハンドロ・アメナーバル監督・脚本『アザーズ』

ようやく映画DVDを見る余裕ができた。T氏にお借りした中から選んだのはトム・クルーズが製作総指揮に加わっているアレハンドロ・アメナーバル監督・脚本「アザーズ」(2001)。
検索したら原作が「ねじの回転」で、原作者が アレハンドロ・アメナーバルとヘンリー・ジェイムズとなっている。「ねじの回転」が原作では見ないわけにはいかない。お屋敷にこどもたちの幽霊が現れるのかしら。ニコール・キッドマンは家庭教師かなと期待に胸がはずむ。さすが彼女は世間ずれしていない家庭教師ではなく、その屋敷に住むことになった美しい母親の役だった。

第二次大戦が終わりかけたころ、英国海峡に浮かぶチャンネル諸島のジャージー島を舞台にした物語。
広大なお屋敷に美しい母(ニコール・キッドマン)と二人のこども(女の子と男の子)が住んでいる。こどもたちは色素性乾皮症という難病を患っており、光があたると大変なことになるので、いつもカーテンを閉めっぱなしで明かりもランプである。
そこへ家政婦と女中と庭男の3人が面接にやってきて雇われ、常にドアに鍵を閉めておくようにきつく言われる。
閉ざされた暗い屋敷と、エキセントリックな母とこどもたちに優しい家政婦は救いのようだが、実は彼らも謎の存在だった。
雇人を信じられなくなった主人公は神父に会いに行くと門を出たが歩いているうちに霧に囲まれてしまう。そこへ戦争に行っていた夫が現れる。

ヘンリー・ジェイムズの世界をアメナーバル監督が映像で表現しているなあとため息して見終わった。

深作欣二監督「仁義なき戦い 代理戦争」「頂上作戦」「完結編」

天王寺のジャズ喫茶に入りびたっていたころ「仁義なき戦い」(1973)と「仁義なき戦い 広島死闘篇」(1973)を封切りで見た。40年も前のことだ。怖いもの見たさのような感じで見たのを覚えている。それまでも東映やくざ映画のファンだったが、「仁義なき戦い」最初の2本で満腹になりこのあとは東映映画を見なくなった。
菅原文太のその後の作品は見ていないが、強烈な印象を受けた「仁義なき戦い」の2本だけでずっとファンだと言ってきた。

その後の3本を、おととい昨日今日と三日連続で見た。「仁義なき戦い 代理戦争」(1973)「仁義なき戦い 頂上作戦」(1974)、「仁義なき戦い 完結篇」(1974)。時の流れのせいか、落ち着いてゆっくり見ることができた。すごい映画だ。俳優たちが若くてすさまじく役を演じていた。

おもしろかったので書き留めたセリフ、「知らん仏より知ってる鬼のほうがましや」(代理戦争)、「前向いても崖、後ろ向いても崖や」(頂上作戦)、「牛の糞にも段々がある」(完結編)。
広能組組長(菅原文太)の男の意地を持ったヤクザが殺されずに引退してホッとした。彼(美能幸三)が獄中で書いた手記からこの映画ができたのだ。

高倉健と菅原文太に夢中だったころがあった

高倉健さんに続いて菅原文太さんが亡くなられた。好きな人が去って行ってさびしい。
わたしが最初に東映任侠映画を見たのは60年代で、鶴田浩二の「日本暴力団組長」だった。すごい映画でめっちゃくちゃ思い入れして同じ系統の作品をかなり見た。
それから健さんの時代になる。「網走番外地」シリーズをかなり封切りで見ているが、それよりもなによりも好きだったのは「唐獅子牡丹」のシリーズだった。健さんと池部良が殴り込みに行くときの姿が大好きで、そこに主題歌がかぶさる。新世界の映画館で大勢の若者といっしょに「意義なーし」と叫んでいた。
そういう時代のあとに菅原文太の「仁義なき戦い」のシリーズが始まった。健さんの映画には様式美があったが、「仁義なき戦い」は暴力あるのみ。でもユーモアはあった。「明日がないんじゃけん、明日が」と明日捕まる菅原文太演じる広能昌三が女に抱きつく場面をいまだに覚えている。

さっきまでシリーズ3本目の「仁義なき戦い 代理戦争」を見ていた。文太兄いの苦笑いする顔が好き。

シェーン・メドウス監督『THIS IS ENGLAND』

なんの予備知識もなくTさんに貸していただいたDVDから選んだのは、ものすごく真面目なイギリス映画だった。シェーン・メドウス監督の「THIS IS ENGLAND」(2006)。監督が少年時代の実体験をもとにした作品だそうだ。サッチャー政権下の1983年のイングランド中部に住む少年ショーンを中心にイギリスの労働者階級の現状を描いている。

ショーンは父親をフォークランド紛争で亡くし母と二人暮らし。学校ではいじめらて疎外感を味わっている。学校の帰りに知り合ったスキンヘッズのグループに関心をもたれて彼らの仲間になる。服装がださいので、まず母に靴をねだるが、ドクター・マーチンの赤いブーツは大き過ぎる。しかたなくよく似た黒い靴にする。グループリーダーのウディの彼女ロルがチェックのシャツとGパンとサスペンダーを整えてくれ、髪も刈ってくれた。そして不良らしく遊び歩いているところへ、刑務所からもどったコンボが子分たちとやってくる。コンボは国粋主義者で移民排斥を唱え、ウディのグループから何人か引き連れて行く。ショーンはコンボに立ち向かうが、反対にコンボに惹き付けられる。
そしてコンボについてナショナルフロント(英国国民戦線)の一員となり、パキスタン人の子どもたちの遊びを妨害し、食料品店では店主を脅し商品を略奪する。
コンボは刑務所に入る前に一晩つきあったロルに気持ちを打ち明けるが、さっぱり拒否される。そのあと大荒れし仲間に暴力をふるいショーンにも当たりちらす。

ショーンは家に帰り母親と父のことをしみじみと話す。
最初のほうで一人歩いていた荒れた海辺の廃船のところまできて、カバンから出したのはナショナルフロントの旗。海辺で旗をまるめて力いっぱい投げる。旗は海に吸い込まれた。
いい曲が聞こえてきたと思ったらザ・スミスの曲だそうだ。最後のところをもう一度見なくては。

「リトル・ダンサー」の少年がすごかったが、「THIS IS ENGLAND」のショーンをやった少年もすごい。そういえば同じ時代の労働者階級の少年だ。

ダグ・リーマン監督『オール・ユー・ニード・イズ・キル』

トム・クルーズの最新の映画。テレビの予告も新聞広告も見ないし、ネットも気にしてなかったからほんまに初体験。わあわあと圧倒されて見入ってしまった。
桜坂洋によるライトノベル「All You Need Is Kill」の映画化というのもはじめて知った。

【近未来。地球は「ギタイ(Mimics)」と呼ばれる宇宙からの侵略者により、滅亡の危機に晒されていた。】という背景があって、トム・クルーズ扮するケイジ少佐が登場する。ロンドンの中枢部で将軍に面会したケイジは報道官という立場を乱用したのをとがめられ、歩兵として最前線にとばされてしまう。
最前線でギタイ殲滅作戦に出陣したものの次々に隊員はやられていき、英雄のリタも戦死する。死んだはずのケイジは出撃前の自分にもどって目が覚める。

最初はわけがわからず見ていたがわけがわかってくるとほんまにおもしろい。わけがわからなかったときもおもしろかったけど(笑)。
最後のトムのニッコリは何度見てもいい。「トップガン」の笑顔を思い出した。

ピーター・ジャクソン監督・製作・共同脚本「ホビット 竜に奪われた王国」

去年の8月に1作目の「ホビット 思いがけない冒険」を、今回もまたご厚意に甘えて見せてもらった。
【邪悪なドラゴンにスマウグに王国エレボールを奪われたドワーフの王子トーリンはスマウグを退治し、王国を奪い返そうと13人の仲間と、灰色の魔術師ガンダルフ、そしてホビットのビルボ・バギンズらとエレボールを目指して旅を続けている。】(ウキペディアより)という物語。
今回も長くて161分あった。竜との戦いのシーンがちょっと、いやかなり長かったが、ぎくっとするおそろしい場面が何度かあって、退屈しないようにできている。最初のほうででっかい毒蜘蛛がいっぱい出てくるところで「ああっ!」と叫んでしまったし(笑)。

旅の途中で出会うエルフの王子レゴラス(オーランド・ブルーム)、その妹で闇の森の守備隊長タウリエル(エヴァンジェリン・リリー)と二人とも美しくて強い。ドワーフのキーリが毒矢で負傷して旅を続けられなくなって寝ているところへ、タウリエルが薬草を持って行き呪文を唱えて治す。タウリエルは兄が来いと言っているのに逆らって残ったから、兄は苦戦する。

ビルボ(マーティン・フリーマン)は出演場面は多いがちょっと地味な印象、ガンダルフ(イアン・マッケラン)の出番が少なかったのがちょっと残念。
1作目を受けて3作目につなぐ役目の2作目という感じ。風景が美しくて大画面で見たらさぞ雄大だろうと思いました。3作目「ホビット 決戦のゆくえ」が待ち遠しい。

 

オードリー・ウェルズ監督・脚本『トスカーナの休日』

今日もばたばたと過ごした。すこし落ち着きたい、心温まる映画が見たい、と思って選んだが、もし大甘の映画だったらどないしょう。解説読んだらなんかよさそう。アメリカのベストセラー小説を女性監督オードリー・ウェルズが監督したもの。ウィスキーとパンとチーズ、オリーブも用意して楽しむ姿勢をとって見た。

作家で厳しい批評で知られるフランシス(ダイアン・レイン)はある日突然夫から離婚を迫られ家を出る。レズビアンの友人パティは妊娠中で取りやめたゲイ仲間とのツアーを譲ってくれる。楽しいイタリア旅行中にフランシスは築300年の家を衝動買いし、イタリア トスカーナに住むことにする。
古い建物の修繕をするのは親切な不動産屋が紹介してくれたポーランド人の労働者一家で、話しているうちに彼らが知識階級出身であることがわかる。
明るく楽観的にふるまっているが、孤独に悩まされる。うまく知り合った男前の男性といい仲になるのにパティがやってきたためにデートを断る。パティの出産を手伝ったりして、日にちが開いたせいで男には他に女性がいるのがわかりサヨナラ。散歩で出会った子猫は連れて帰っている。
失意のフランシスだが、仲を取り持ったポーランドの若者と地元の少女との結婚パーティをわが家の庭で開く。
パーティの場のフランシスのところに若いアメリカ人がやってきて、以前自分が書いた作品をフランシスに辛口批評されたと言う。その的を得た批判のおかげで前に進めたと言った彼と、その後は楽しく暮らすようになった。めでたしめでたし。

いかにもイタリア的な大胆な美貌の女性の存在がフランシスの生き方に影響を与える。
最後のほうでトレビの泉にドレスのまま入って水と戯れるシーンは、フェデリコ・フェリーニ監督の「甘い生活」のアニタ・エクバーグそのまま。フランシスに背中を押されて泉に入って行く紳士はマルチェロ・マストロヤンニそのまま。