バーバラ・ヴァイン(ルース・レンデル)『運命の倒置法』

この本の前に読んだ「階段の家」はずいぶんと時間がかかったが、今回は前より長いのにわりと早く読み終わった。
イギリスの田園地帯サフォークのカントリーハウスに住む夫婦が、死んだ飼い犬を埋葬しようと広い庭園中の動物用の墓地へ行く。とにかく広い庭園で池があり林が三カ所ある。20エーカーもの土地を所有していると所有物の全容を見極めるのに時間がかかると記述がある。20エーカーってどのくらいなのかしら。最後に埋葬されたらしい犬塚の右側を掘っていくと小さな骨がいくつも出てきた。「見たまえ、こいつは犬の頭蓋骨ではないだろう? 猿のでもないな?」

犬でもない猿でもない頭蓋骨の出現で、当時その屋敷の持ち主だったアダムの現在になる。妻と娘のいるコンピュータ販売業者だ。そして産婦人科医のルーファスは妻マリゴールドがいる。薬局店員でインド人のシヴァはいまは妻のリリがいる。その他、アダムの元恋人のゾシー、家事をしきっていたヴィヴィアンもいた。
その屋敷はアダムの祖父のものだったが、遺言で父を通り越し孫の手にわたった。土地と屋敷はあっても現金がない彼らは家具や食器を売って一夏を過ごす。彼らの自堕落な暮らしぶりがしつこく描かれる。そして現在の彼らの姿と交差して息苦しい展開となる。そして事件が起こる。

彼らは事件直後に別れてそれぞれの人生を送ってきた。新聞記事で頭蓋骨の出現を知った彼らは連絡し合って対策を考える。過去は現在の生活を壊していく。
いまの持ち主は屋敷を売りに出し、最後は新しい住人がやってくる。不気味なうまい結末。
(大村美根子訳 角川文庫 680円)

バーバラ・ヴァイン(ルース・レンデル)『階段の家』

長いことかかってようやく読み終えた。終わったときはどんな出だしだか忘れていて読み返したくらい。ルース・レンデルが別の名前で本を書いていることは知っていたが、本書を読んでその理由がわかった。ルース・レンデルのしつこいところ、いやらしいところをますます強くした作品を別名で書いているんだ。そのしつこくていやらしいところが気持ちいいんだからすごい筆力だ。

ある日、タクシーからベルの姿を見たエリザベスは追いかけるが見失う。ベルは刑務所にいるはずだった。それから連絡がついて二人は再会する。
エリザベスの家族にはハンチントン病という遺伝的な病気があることを14歳のときに知った。それを話したのはベルだけである。

エリザベスは母の従兄の妻であるコゼットの世話になっている。コゼットは夫を亡くした後に、陽気な未亡人生活に入って〈階段の家〉を買い、たくさんの居候を置いて陽気に暮らしている。コゼットは気前がよく親切で〈階段の家〉の一室をエリザベスが小説を書くための書斎にしつらえてくれた。エリザベスはそこで売れる作品を書き不自由のない生活を送っている。
再会したベルを同じ家の別の階で暮らすように世話をするが、エリザベスの部屋で二人が抱き合うシーンは読む者の心を不安にする。カメオのブローチの肖像のような横顔を持つ美しいベル。

働くことをいっさいしないベルは本も読まないでテレビを見ているだけだが、エリザベスが読んでいるヘンリー・ジェイムズの「鳩の翼」に異常に興味をもち話をさせる。そして「鳩の翼」にならって遺産を狙う計画を立てる。

コゼットの恋が細かく描かれ、相手の謎っぽいマークとなかなか結ばれないのが、ついに結婚までいったとき、悲劇が起こる。
(山本俊子訳 角川文庫 680円)

ルース・レンデル『わが目の悪魔』

さきにウェクスフォード警部のシリーズを読んでよかった。本書を最初に読んだら「もうええわ」だったかもしれない。レンデルの短編をひとつ「ミステリマガジン」で読んで「もうええわ」と言ったわたしである。うまいという点では最高なのだが、どこかイケズな感じがするところがどうもいけない。2冊読んだウェクスフォード警部ものは警部の人柄が良くて、犯罪はえげつなくてもすっきりと読めた。

主人公アーサー・ジョンソンの孤独な生活と性癖が、同じアパートに引っ越してきたもうひとりのジョンソン(アントニー・ジョンソン)の存在で狂っていく過程が描かれる。アーサーは厳しい伯母に育てられた。きちんとした服装でいること、室内を清潔にしておくことなどを躾けられた独身の中年男で、他の入居者とは一線を画している。アパートの地下室は荒れたままでだれも入って行かない。そこに置いてあるマネキン人形への行為がアーサーの隠し事である。上の窓から地下室への出入りを見られたらたいへんなことになる。

もうひとりのジョンソン、アントニーは大学の研究者だが人妻ヘレンと愛し合っている。アントニーへのヘレンからの手紙を間違って開封したアーサーは、それ以来ヘレンの手紙を開封して自分で書き直したのと入れ替えしたりする。アーサーの妄想がふくらんでいく。
アントニーはヘレン恋しさでいたたまれない。どうなるかと読み継いでいくと、最後はうまくまとまってほっとした。

スーザン・カンデル『少女探偵の肖像』

ずっと作者名を知らないままだった少女探偵ナンシー・ドルーの物語をなんで読んだのだろう。きっと家に子ども用の名作集みたいのがあったのだと思う。実はわたしはナンシーは好きでなかった。少女小説はたくさん読んだが、ミステリは早くから大人向けを読んでいたから。ドロシー・L・セイヤーズ!

ヴィク・ファン・クラブが発足したころ、フェミニストで有名な小倉千加子さんの友人だという女性が会員にいたのだが、彼女から電話があった。小倉さんが「朝日ジャーナル」に書く原稿のことで女性探偵について聞きたいとのことだった。いろいろ名前をあげたあとで、古いところではナンシー・ドルーがいましたよと教えたのを覚えている。パソコンがあれば一発でわかるまでに、あと10年もなかった時代、こうして人に電話で聞いたりしてたのね。雑誌が出てからみたら教えたとおりに書いていた。嘘教えてたらどうなんだろうといまも思う。お礼はもらってない。その彼女も最初の1年間だけの会員だった。もう19年も前の話。

さて、なぜか女性探偵の名前を聞かれたらその一人としてすぐにナンシー・ドルーが出てきたのだが、作者名も知らないなりにミステリ界に位置を占めてると思ったわけだ。いま創元推理文庫で新しく訳された本が5冊あり続けて出るような話なのでいつか読んでみよう。

さて、本書では、伝記作家シシー・カルーソーはナンシー・ドルーの伝記を書くべく下調べをしている。この分野にも強力なコレクターがいる。わたしには未知の世界だが、イギリスのA・S・バイアット「抱擁」を読んだときにコレクターの執念を知ってすごくおどろいた。ビクトリア時代の詩人の恋の話だった。

雑談ばかりで話が全然進まないが、本書ではナンシー・ドルーの初版本コレクターが殺され、彼の家に泊まるように鍵を受け取っていたシシーと友人のラエルとブリジットは大慌て。
しっかりしたファン・クラブ会長さんや会員が出てくるし、会合の様子を見ているとほんまにえらいもんである。うちのファン・クラブと大違いだ。また寄り道になるが、ヴィクのファン・クラブだからこうして哲学するファン・クラブなのさ。
前作ともにカバーイラストが森英二郎さんである。昔大阪にいた人だと思うが懐かしい名前に出合っておどろいた。
(青木純子訳 創元推理文庫 1000円+税)

スーザン・カンデル『E・S・ガードナーへの手紙』続き

娘のアニーは21歳でヴィンセントとの間に小さい子どもがいるが別れたいという。アニーの家に行っての会話はこれが親子かって思うあけすけさ。「ママは何人の男と寝た?」「九人」なんて。
翌朝は有罪判決を受けた殺人者との面会に出かける。いつもなにを着るかが大問題である。この日は白の縁取りのある茶のシャネルスーツ。シシーはこれを着ると白い砂糖で縁取りされたチョコレート・カップケーキと自分で思うところがなんともかわゆい(笑)。
軽く読んでいるとチョコレート菓子のような甘い物語なのに、突然、深刻な内容になるのでおどろく。

1957年ジョゼフ・アルバッコは妻のジーンを殺害したとして逮捕された。第一級殺人罪で終身刑を受け現在も服役中。ジョゼフは椅子にかけると笑顔を向けてきた。シシーはその瞬間、今日は生涯でもっとも奇妙な面会になると気づく。
ジョゼフは警察がまるで捜査をしなかったので、教誨師と話したあとにアール・スタンリー・ガードナーに手紙を書いた。ミステリが好きだったから勝手にあの人なら無罪を証明してくれると思ったからだ。シシーはここにきたらガードナーについて知ることができると思ったのだが、目を合わせると、ひょっとするとお力になれるかもしれませんと言ってしまう。
教誨師に会いにいくとジョゼフは無実の罪で苦しんできた、あと3週間で流れを変えねばならぬという。
そこで奮闘するシシーだがいつもおしゃれを忘れない。おっちょこちょいで美味いもの好きで、男好き。今回は(これからもずっと出てくるのかな)ピーター・ガンビーノ刑事が元恋人として出てきていい感じだ。
(青木純子訳 創元推理文庫 900円+税)

スーザン・カンデル『E・S・ガードナーへの手紙』

横浜在住の妹とは去年の義兄の入院と死去があってから電話し合うようになった。それ以来、果物や海苔を歳暮と中元その他のときに送ってくれる。こちらから読み終わった軽いミステリ本を入れた荷物をたまに送る。
今回は反対に向こうからミステリがとどいた。スーザン・カンデル「E・S・ガードナーへの手紙」と「少女探偵の肖像」の2冊。全然知らない作家なので、タイトルと表紙のイラストからなんやコージーかなんて思ったが、1冊読んでみたらおもしろかった。これから2册目を読み始めるところ。

主人公のシシーはライターでミステリ作家の伝記を専門にしている。元ミスコンで優勝したことがあるおしゃれな女性。離婚してウエストハリウッドのバンガローに住んでおり、若くして生んだ娘アニーは結婚しているので、目下は一人暮らし。
仲の良い女友だちラエルは焼き菓子作りの名人で奇抜な菓子を焼く。いま焼いているのはストライキ決行中の港湾労働者とかをかたどったジンジャーブレッドを焼いているはずなんだって。
もうひとりのブリジットはヴィンテージファッション・ショップのオーナーで、往年のハリウッド女優風のドレスとかを扱っている。シシーは40年代の衣装をここで調達してパーティに出かける。

いまの仕事はE・S・ガードナーの伝記で、編集者にせっつかれながら資料を調べているところだ。わたしの最初のガードナー体験は家にあった「義眼殺人事件」の背表紙だった。ミステリが並んだ本棚の中でも目立っていた。それからだいぶ経ってペリー・メイスンものを読み始めた。思い込みで自分なりのペリー・メイスンとデラ・ストリートの姿があったので、テレビドラマを見たときはおどろいた。二人とも全然イメージがあわんやん。それでもけっこう見ていたけど。
風邪引いちゃって頭がまわらん。今日はここまで。
(青木純子訳 創元推理文庫 900円+税)

ルース・レンデル「ひとたび人を殺さば」続き

物語がおもしろく推理の過程もなるほどと感心するのだが、とっとと読んでしまったらもったいない。ロンドンの街の様子がよくわかるのだ。観光的には甥の妻がどこどこに行ってらっしゃればと、散歩と観光に適したところを教えてくれる。はじめはその言葉に従って名所を訪ねていたが、甥のハワードが関わっている事件を新聞で知ると、居ても立っても居られずという感じで下町の墓所まで行ってしまう。そこでハワードと鉢合わせし、バツが悪い思いをするが、ハワードはいっしょに捜査にあたってほしいと言ってくれる。

娘の死体が見つかった墓地に面した建物は1870年頃に建てられた醜悪なものだ。娘の住んでいたガーミッシュ・テラスは不潔で耐えられないところだが、管理人は若いころの美貌の面影が残り、今回ロンドンへ来ていちばん美しい女性に会ったと思う。ウェクスフォードの美女とはハリウッド女優のキャロル・ロンバートやロレッタ・ヤングというのに微笑を誘われた。ガーミッシュ・テラスはいずれも不潔な部屋ばかりなのに、上階に住むゲイの男の部屋を訪ねると清潔で素晴らしいインテリアである。そして上流階級の言葉遣い。こんなことも実際ありそうで興味を持って読めた。

ウェクスフォードの滞在中はいつも雨でさむざむとした感じがロンドンって感じ。帰る日にようやく晴れる。それとパブの描写がいい。食べ物や酒やそこに居る人たち。
(深町真理子訳 角川文庫 544円+税)

ルース・レンデル『ひとたび人を殺さば』

ウェクスフォード警部ものが18冊も翻訳されているのにおどろいた。本書は7作目だがなぜか最初に訳されている。ウェクスフォード警部が病気休暇して転地療養の要ありということで甥のいるロンドンへ行く話である。次に訳されたのが、第一作で先日読んだ「薔薇の殺意」。
医師のクロッカーはウェクスフォードの目に血栓症の兆候を見て、転地療養するようにすすめる。「田舎に行くってわけにもいかん。げんに田舎に住んでいるのだからな」。そしてロンドンに住まう甥のハワードのところへ妻のドーラとともに行って世話になる。

ハワードはスコットランドヤードの警視で、管轄地のケンボーン・ベールはロンドンでもひどいところらしい。そこで甥御さんと商売の話をするのではないぞとクロッカーに釘をさされる。しかもクロッカーは甥宛に手紙を書いていた。そのため甥夫妻は病人として叔父を扱い、犯罪の話はせずに文学についてなど堅苦しい話題でもてなす。
ウェクスフォードは病院にいるような手厚い介護と食事生活でまいってしまう。散歩の帰りに買った夕刊を見ると第一面の写真が目をひいた。若い女性の死体発見現場の墓地に立つ甥のハワード・フォーチューン警視の痩せた姿である。しかし帰宅したハワードは相変わらず「ユートピア」の話をしている。そこへ部下から電話がかかるがウェクスフォードには関係のない話。
もんもんとした彼は翌朝家族に黙って墓地へ出かける。
その墓地でハワードに会い話をすると一転、ウェクスフォードは甥に協力して捜査を手伝うことになる。狭いながら事務室もあてがわれる。当然甥の部下たちにはけむたがられ、田舎者がという態度であしらわれたりする。そして一度は見込み違いで恥をかき、そして立ち直る。地道な聞き込みと老練な推理で犯人を割り出す。
(深町真理子訳 角川文庫 544円+税)

ルース・レンデル「薔薇の殺意」

ルース・レンデルを読んだことがないなんてミステリファンと言われへんね。
「ミステリマガジン」に載った短編を読んで、肌に合わないというかいけずっぽい人だという印象を持った。今回、ディケンズをお貸しした友人がイギリスつながりということで、5冊どばっと貸してくださった。彼女はちょっと前にP・D・ジェイムズの新刊を貸してくれた人だ。わたしはダルグリッシュ警視に夢中になって図書館へ行き、全部で6冊読んだ。まだ読んでない本をいつか読むつもり。

さて、ルース・レンデル、まず「薔薇の殺意」(1964)を読んだ。タイトルが気に入ったのとレジナルド・ウェクスフォード警部ものの最初の作品なので、ちょうどいいと思って。「薔薇の殺意」というタイトルは原題とはかけはなれているが、中に出てくるスウィンバーンの詩「愛が薔薇の花ならば」にしたら恋愛小説みたいなので、こういうことになったと解説にあった。たいていは原題のほうがいいと思うけど、今回はこれがいい。

ロンドン近郊の町に住む人妻マーガレットが行方不明になる。〈ヒールの低い靴、お化粧っ気なし、きちんとパーマをかけて、ボビーピンで髪を留めて〉という平凡な女性である。ウェクスフォード警部とバーデン刑事が捜査にあたり地味な聞き込みを続けているとき、森の中でマーガレットの死体が見つかる。調べていくうちに上流家庭間の不倫が浮かび上がったりする。
マーガレットの家を調べると立派な装丁の本が何冊もあった。本にはドゥーンという署名があり活字体でミナ宛に献辞が書いてある。彼と彼女と想定して、学校時代の仲間たちから過去の事情を聞き出していくとおどろくべき事実が・・・。
(深町真理子訳 角川文庫 420円)

ヘニング・マンケル「五番目の女 上下」(2)

二つの殺人は残忍さからいって男だと思い込んでいたが、もしかして女かもしれないとルーンフェルドが会話のなかでいう。
その後すぐに第三の殺人事件が起こる。大学の研究助手ブロムベリが袋に入れられて海に浮かんでいるのが発見される。妻はヴァランダーの質問に答えて私は殺していないという。殺す理由があるのかと問うとブラウスを破って虐待された肌を見せる。「あの人はこういうことをした人です」そして「あなたがたの力になることはできません」と答えるのだが、ヴァランダーはすでに力を貸してくれたと思う。犯人は女だ。そして殺人はまだ終わっていない。

捜査中に自警団の動きがある。自警団のメンバーが道で迷った運転者を泥棒と決めつけて暴行する事件が起こり、ヴァランダーは強い態度で捜査に当る。その事件の連鎖反応のようにマーティンソン刑事の娘が中学生たちに襲われ、マーティンソンは警察官を辞めようと悩む。

ヴァランダーはリガにいる恋人バイバに電話で話しているとき、詰問されて受話器を電話台に叩きつけてしまう。彼は殺された男たちのことを思った。自分のまわりを囲む残酷性が彼の中にも潜んでいる。程度がちがうだけだ。

警官たちそれぞれの資質を生かした緻密な捜査が続く。最初の被害者エリクソンについての調査でポーランド女性ハーベルマンを殺して埋めたと推理して、警官たちは庭を掘り26年前に埋められた骨を見つける。これで被害者は女性を虐待してきた男たちだとはっきりする。
犯人はまだまだ沢山の男を殺す計画を立てていた。警官たちはこれ以上の犠牲者を出さないように必死の捜査で犯人に追いつく。
犯人の彼女の言葉は「そして夜になると壕を掘った」。

アルジェリアでイスラム原理主義者が起こした事件に母親が巻き込まれ、抹殺されていた真相が女性捜査官によってスウェーデンにいる娘に知らされる。今回もいま現在の広い世界のどこかで起きた悲劇がスウェーデンの地方都市で働くヴァランダー警部の事件となる。

【「もしかすると、われわれはいま永遠に続く連続殺人に立ち会っているのではないか? 動機が女をひどい目に遭わせる男たちに復習をすることなら、これは永遠に終わらないのでないかと自分は思います」ヴァランダーはスヴェードベリの言うことは正しいという気がした。彼自身、この間ずっとその思いに悩まされてきた。】
男性の攻撃性についてこんなに深く切り込んだ小説は読んだことがない。しかもヴァランダー自身が恋人への怒りを表すのに受話器を投げつけるという暴力行為をしてしまう。

読み終わったら脱力してしまった。この暴力に満ちた世界はどうなっていくんだろう。でも深く自省するヴァランダー、部下の女性刑事に重傷を負わせた自責の念にかられて嘆くヴァランダー、彼の存在に力をもらった。
(柳沢由美子訳 創元推理文庫 上下とも1160円+税)