「大阪市主催ガレキ説明会」に行かなかったけど

【8/30(木)<大阪市主催ガレキ説明会>に大阪市民は参加して下さい。中之島の中央公会堂。開場が18時から先着750名。大阪市民限定。 身分証明または自宅に届いた郵便物必要。】というツイートがいろんな人から流されていて、わたしも行くつもりだったのだが、おととい姉の家に行ってから調子がもうひとつなので自重した。集会中に気分悪くなったりしたら大迷惑をかける。相方はちゃんとガレキについて本やパンフレットを読んでから出発。

相方が出かけてすぐにツイッターを見たらユーストにつながった。
市役所前の御堂筋のところで老若男女10人ほどが警察と押し問答している。警察が言うには「たくさんの人が歩いて叫んでいるのは〈デモ〉である。デモは届け出しないといけないから、あなた方のは不法デモである」。歩いているほうは「でかい声でしゃべりながら歩いてるだけやん。デモってどういうものか説明してちょうだい」と答えている。「プラカードを掲げているのがいかん、胸の高さに持って」とかなんとか言い合っているが、かなり威丈高な警察官たちと負けていない〈大阪のおばちゃん〉たち。

中央公会堂のホールで説明会が始まった。今日の説明会には、ガレキ受け入れ反対の立場の人が多かったようで、橋下さんが出てきても拍手はなく、怒号の中でそれぞれの官僚たちは話すことになった。橋下さんは、今日は説明会だからこちらから説明して一応市民の意見は聞くが、市の方針は変えないと言った。
お役人の言葉がだるくてじっと聞いていられない。用事をしながらちょいちょい見ることにした。
質問のほうは長過ぎる人もいたが、みんなよく勉強して質問しているのがわかった。指名された女性が自分よりもとモジモジさんにマイクを譲った。モジモジさんの実に胸のすくような論理的な質問に答えを待ったが、橋下さんは返事ができなくて即閉会にした。<a href=”http://www.at-douga.com/?p=5845″_blank”>画像とモジモジさんの質問の文字起こし</a>

さあ、それからすぐに帰る人もいたが、残っている人も多数。カメラは一時は外に出て、ちょうど山本太郎さんがスピーチしている。

また公会堂にカメラがもどると、官僚たちは早くホールから出ろと言い、残った人たちは出ないと言い、押し合いになっている。エントランスではジャンベや太鼓を叩く人もいて、怒号の掛け合いに情緒(?)を添えている。デモや勉強会などで声を知っている女性が官僚とやりあっている。その猛烈な大阪弁に笑いながら感心した。

わたしは去年の12月の末に西区民センターで開かれた「放射能燃やしていいのか 住民説明会」に行った。そこで女性たちの活発さに圧倒され、モジモジさんの迫力にも圧倒された。それが最初で、「木下黄太講演会 7月17日 此花」に参加したときには、さらに成長した女性たちの行動力にびっくりした。彼女らの活発さ行動力は、放射能という現実を見据えて自分はどう生きるかを考えているところからきているのだと思う。
そういう身銭を切って得た勉強や経験が、橋下市長が唐突に終わらせた説明会の場所から退去せずという行動に結びついたと思う。ずっとユーストで報道されているから、官僚も帰ってくださいを繰り返すだけだった。それでも11時過ぎたら「11時何分、最終電車が出ますよ」とだんだん高圧的になり、ついには警官隊が導入された。

ジョン・マッデン監督『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』

最近は存在さえも知らない映画が多くて困ったことだ。先日からずっとダークなのが多かったからちょっと洒落たの見ようということで選んだ。とはいえ、さきに検索しなくてはどんなんかもわからんという情けなさ。
ジョン・マッデン監督は「主任警部モース」「第一容疑者」などテレビドラマを演出している人なんだって。最近読んだ「ウッドストック行最終バス」のモース主任警部ものが映像になっているのか。「第一容疑者」は友だちに貸してもらってかなり見たっけ。
「恋におちたシェイクスピア」(1998)を映画館で見ている。「セブン」(1995)でファンになったグウィネス・パルトロー(「抱擁」が最高)と「高慢と偏見」のコリン・ファースが出てるというので行ったのだが、もうひとつだった。期待大きすぎたのだろう。

「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」(2006)は、だれが出ているかも監督の名前も気にせずに見たらアタリだった。おっ、グウィネス・パルトローやんと喜ぶ(笑)。もともと演劇なので部屋の中のシーンが多く、せっかくのシカゴの景色が少なくて残念。

キャサリンは学生生活を中断してシカゴ大学の教授だった父親ロバート(アンソニー・ホプキンス)を介護して5年間暮らしてきた。ロバートは20代で天才ぶりを発揮したが精神を病んで、厖大な量のノートになにか書いている生活である。キャサリンは父にすすめられて数学のノートを書くようになる。
父が亡くなったあと教え子のハルがロバートが遺したノートを見たいとやってくる。父の不安定な精神傾向と数学の才能を受けついでいるキャサリンの心は揺れる。葬儀には実際的な姉がニューヨークからやってきて世話を焼く。葬儀の後のパーティでキャサリンとハルは気持ちが通じて一夜を共にする。父でなく自分が書いたとノートを渡すがハルはキャサリンが書いたはずがないと思い込んでいるのがわかり、キャサリンは絶望する。
それなりに妹を思っている姉は家を売りキャサリンをニューヨークへ連れて行こうとする。キャサリンは部屋を探すという姉に病院の一室ではないのかと反発。
シカゴを出るときにハルが大学のチームがノートの数学の証明はキャサリンがしたものと認めたと言いにくるが、車は停まらない。飛行場で待っているとき、キャサリンは空港を後にして大学へ。大学のベンチでハルに会えてよかった!

ギレルモ・デル・トロ脚本/監督『パンズ・ラビリンス』

毎晩のように映画を見てご機嫌生活をしているがええんかな。
子どものときから映画好き。父親や姉に新世界や十三の映画館に連れて行ってもらった。自分で稼ぐようになったら日曜ごとに映画館を3館くらい巡って、ハリウッド映画やフランス映画を見た。小さな上映会に行ってドイツ表現派やドキュメンタリー映画や古いフランス映画を見た。その後も見続けてヌーベルヴァーグもイタリア映画もいっぱい見てきた。「スクリーン」「キネマ旬報」は発売日に買ってた。
レーザーディスクを買ってからは、いままで見られなかった実験的な映画やアステアのダンス映画をたくさん買い込んで、頑張って買った29インチのテレビで毎晩見ていた。映画館もよく行ってた。「エイリアン」の3作目の先行ロードショーに並んでいるのを友人に見つかって冷やかされたこともある。

ところが、もう20年くらいはそんなに映画館に行っていない。家でビデオさえあんまり見ていない。パソコンのほうがおもしろくなったのが第一の理由かな。本はまあまあ空き時間を工面して読んでる。映画は集中する時間が2時間となるとまあいいやと思ってしまう。
最近、すこしは映画を見ようということになった。それでレンタルDVDを借りに行くのだが、お金を払うと思うと、借りるのは話題作とかこじゃれたのとか(笑)。

今回T氏にたくさん映画のDVDを貸していただいて見続けている。
前書きが長くなったが今日はギレルモ・デル・トロ脚本/監督「パンズ・ラビリンス」を見た。映画情報からして知らないので白紙で見たのだがとても気に入った。

第二次世界大戦の終盤のころのスペイン。内戦で父を亡くした少女オフェリア(イヴァナ・バケロ)はフランコ軍が進駐している村へ妊娠中の母とともに着く。母は夫亡きあと大尉と結婚した。子どもは父親がいる場所で産むものだという大尉の意向にそってやってきたのだ。
本の束を抱きしめた少女は森で母が気分が悪くなり自動車を止めて休んだとき、森の奥に吸い込まれるように入って行く。次は夜中に目が覚めて茶色いカマキリのような虫(妖精)が案内役になり、迷宮(ラビリンス)に入るとパン(羊の姿をした神)がいて、あなたは魔法の国の王女だとささやく。
外の世界はフランコ軍の支配する独裁社会。村の人たちはレジスタンスグループを組織して戦うべく森に集まっている。村から徴集された小間使いのメルセデス(アリアドナ・ヒル)はオフェリアにやさしい。

いろんなレジスタンスの映画を見てきたが、今回ほど時代の移り変わりを感じたことはない。リアルな場面であってもいまの映画である。「バットマン」と通じた暗さがある。
この映画は少女オフェリアがいるから成り立った。本を読む少女♪

「リーバス警部」との4日間

ほぼ毎夜「リーバス警部」とつきあい4日間で4本のシリーズドラマを見終わった。心はエジンバラに飛んでいる。観光客の入っていけない暗黒街や貧しい人たちの住む団地やクラブのシーンに、これがエジンバラ?と小説を読んでない人は驚くだろう。リーバスが行くバーも見られてよかった。これがほんとのスコットランドのバーかと感激(笑)。

小説と同じく映像のほうも暗い。ひたすらストーリーを追っていたのでもう一度見たいと言ったら相方に「こんなに暗いのは当分ええわ」と拒否されてしまった(笑)。しゃあない、翻訳のある3冊を読み返そう。
イアン・ランキンの作品はみんな長い。その1冊を2時間くらいのドラマに仕上げてあってモンクの言えない仕上がりなのがすごい。

リーバスのジョン・ハナーは見るごとに好きになっていった。シボーン警部は最初は違和感があったけど、だんだん頼りになるシボーン警部だと思えてきた。

「死せる魂」ではリーバスは悪夢に悩まされて眠れない夜が続いている。
忙しくしているところへ若いときの知り合い夫妻が訪ねてきて、行方不明になった息子を捜してほしいと頼む。リーバスは若いときにその彼女を愛していたが、母親から好かれていなかった。それで伝言を伝えてもらえなくて、待ちぼうけをくらう。それ以来の彼女なのである。
いっしょにエジンバラの街を情報を追って捜し歩き、ついに見つけたらえらいこっちゃで。二人の間も狭まっていき、リーバスは彼女の夫にバーで殴られる。

テレビドラマの「リーバス警部」をDVDで

イアン・ランキンの「黒と青」がハヤカワポケットミステリで出たのは1998年7月、すぐに買って読んでいた。すごく熱中してそれから出るたびに全部買って読んでいる。リーバス警部シリーズの8作目というのが残念だった。デビュー作から読みたかった。14と15册目が単行本になり、最後の2作はまたポケミスにもどっている。その間に1作目と2作目が文庫で出ている。訳されていないのが3〜6の4冊ある。

ブログを書き始めるよりずっと前のことで、2003年に「ミステリマガジン」で短編「貧者の晩餐会」を読んだ感想が書いてある。その後が14冊目の単行本の「血に問えば」である。すごく熱中していたポケミス時代の感想がないのは残念だ。
最後のリーバス警部の事件「最後の音楽」と退職してからの短編「最後の一滴」の感想はある。だが、最後の一つ前の「死者の名を読み上げよ」は2010年3月から未読のまま置いてある。なんだか読むのがもったいなくて。
いま読みかけのリーバスよりちょっと古いモース警部やダルグリッシュ警視ものを読み終り感想を書いたら読むことに決めた。

ドラマは4本(「黒と青」「ゆれる愛」「死せる魂」「死の理由」)あり、リーバス警部をジョン・ハナーが演じている。ジョン・ハナーは「スライディング・ドア」を見ているのだが、覚えていない。「フォー・ウェディング」でゲイの青年をやってるそうなのでそのうち見たい。
ぱっと見た感じがちょっとイメージ(どんなイメージやねん-笑)と合わなかったが、見ているうちに納得。強面の中に繊細さがあるという感じがうまく出ている。

イアン・ランキン「リーバス警部シリーズ」作品名
1 紐と十字架
2 影と陰
3 翻訳なし
4 翻訳なし
5 翻訳なし
6 翻訳なし(ドラマでは「死の理由」)
7 血の流れるままに
8 黒と青
9 首吊りの庭(ドラマでは「ゆれる愛」)
10 死せる魂
11 蹲る骨
12 滝
13 甦る男
14 血に問えば
15 獣と肉
16 死者の名を読み上げよ
17 最後の音楽

クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』(バットマン 2)

「ダークナイト」を見たら「バットマン ビギンズ」はこの映画の前編なんだなとわかった。ものすごくおもしろくて熱中してしまった。地方検事ハービー・デントが見たことのあるいい男だなと見つめているうちにわかった。「抱擁」のアーロン・エッカートではないか。ジョーカーにやられて命は助かるが顔半分大やけどを負う。美しい半分と皮が焼けただれて骨や歯や目がむき出しになった顔で、レイチェルを誘拐した者たちを追う彼が哀しい。

ゴッサムの街角にピエロのマスクをして男たちが集まり銀行を襲撃する。それぞれの仕事が完了するたびに仲間に射殺される。ボスであるジョーカーの指令は「用済みは殺せ」である。最後の一人が仮面を外すとその顔は隈取りされてピエロの顔である。赤く塗られ広く避けた口が笑っているよう。彼がジョーカー。

ジム・ゴードン警部補はバットマンにジョーカーの映像を見せる。最後まで争うことになる仮面の二人。
新任検事ハーヴェイ・デントが着任する。若くて正義感あふれた彼はゴッサム・シティの治安回復を目指して活躍をはじめる。元気いっぱいの彼にレイチェルは惹かれる。二人がレストランで食事をしていると、ウェインがボリショイ劇場のプリマとともにくる。そしてデントの地方検事への資金援助を約束する。

ウェインの会社と中国の企業との合弁事業計画があるのだが、ウェインが会社内容を調べた結果中止させる。ラウ社長は香港へ逃亡する。
ウェインは船に乗りクルーズを楽しんでいるように見せて、途中で海へ飛び込み水上着陸した飛行機に乗って香港へ向かう。
それからの香港での行動はあれよあれよと言ってる間にどんどん進んでいってよくわからなかったです。携帯電話がカギになってた。
なんだかだあってラウ社長は「ゴードン警部補まで配達」と納付書がついてゴードンのところへ。

このあたりからストーリーと映像を追いかけて無我夢中(笑)。仕掛けが大き過ぎる。
猛スピードの暴力シーンと爆音がいっぱい。はらはらどきどき。

すごーく暗くて重くて気持ちよい映画だった。

クリストファー・ノーラン監督『バットマン ビギンズ』

昨夜は遅くまで「バットマン ビギンズ」(2005)を見た。今夜もさっきまで「ダークナイト」(2008)を見ていた。評判はネットで読んでいたのでいつかは借りてきて見ようとは思っていたんだけど、なかなか先の長い話なのであった(笑)。正直うれしくありがたい。

「バットマン ビギンズ」はバットマン(クリスチャン・ベール)になるブルース・ウェインの子ども時代からはじまる。ゴッサムの立派なお屋敷のぼっちゃんだが、自分が原因で両親が強盗に殺されたというトラウマに悩む。大人になって武者修行にヒマラヤのようなところまで行って体を鍛えあげる。ゴッサムにもどってきたブルースは屋敷の地下の大洞窟を秘密基地として、執事のペニーワース(マイケル・ケイン)を助手に、バットマンとしての自分をつくっていく。
父親の残した会社ではフォックス(モーガン・フリーマン)が閑職に追いやられていたが、彼が開発した布や金属を使って小道具ができあがっていく。神秘的とか魔法とか全然なくて合理的なのだ。
悪い奴らに支配されている市の警官の中でただ一人清廉なジム・ゴードン警部補が涼しい風を入れてくれる。

執事をやっているマイケル・ケインは息の長い俳優やな。「探偵スルース」(1972)「殺しのドレス」(1980)が忘れられない。イギリスの映画や小説に欠かせない〈執事〉だが、これこそ本当の執事やな。

熊本一規先生講演会「がれき処理、除染はこれでいいのか」に行った

先日チラシをもらって行く気が起こった。がれき処理も除染も言葉を知っているだけだから、ちょっとは勉強しておかねば。午後2時から4時までの2時間、大阪市立すまい情報センターのホールにて。

地下鉄天六で降りて上がったら大阪市立すまい情報センターがあって、そこの3階のホールは清潔で冷房がよく効いていた。受付で資料をもらい開始時間きっちりに着席。すぐに熊本先生(明治学院大学教授)の話がはじまった。熊本先生は大阪での講演ははじめてだそうだが、諄々と説くという感じでとてもわかりやすかった。
熊本先生はゴミ問題研究で30年だそうだ。緑風出版から「脱原発の経済学」に続いて「がれき処理.除染これでいいのか」(この本会場で買った)が出ている。

まず「がれき広域処理とその仕組みづくり」からはじまった。〈広域処理の遅れが復興を妨げているのか?〉「岩手11年分、宮城19年分」は嘘、と明確な答え。「地元処理のほうが復興につながる」との首長の見解がある。

日本は汚染循環型社会だとのこと。昭和電工は水銀を大気中に放出している。逃げ道を用意した規制だからだって。また汚泥の処理施設では汚染の先送りをしている。汚泥が掃除機のゴミ袋と同じ状態で、土壌汚染地域をどんどん作って汚染地帯を広げている。大阪市の護岸は潮の干満でぐらつき、汚濁物質は海へと続いている。護岸では防げない。

広域処理について、5月8日仙谷発言「県は産廃処理の経験がないから国が直轄で」が「全国的広域処理」の契機となった。「県の代行」による「地元処理」は大手ゼネコンへの丸投げである。仙台市だけが自区内処理で成功した。被災市町村が仙台方式を採っていればがれき利権は生じなかった。

○がれき利権と除染利権と帰還推進はセットになっている。

お話は90分あり、そのあと司会者の下地さんが加わって30分の質疑応答があった。質問に答えて、中国電力上関原発のときの経験を語られ「からだをはって止めることも必要」とおっしゃった言葉に感銘を受けた。

これから「がれき処理.除染これでいいのか」を読んで勉強する。
(熊本一規、辻芳徳 共著 緑風出版 1900円+税)

コリン・デクスター『ウッドストック行最終バス』

2010年になって読んだ「森を抜ける道」(1992)の感想に「ウッドストック行最終バス」(1976)をアメリカのウッドストックと間違えて買って読んだと書いてある。ハードボイルドミステリを追いかけていて、イギリスの本格ものは受け付けていなかったころだ。知り合いの青年に言ったら「ぼくも音楽祭のウッドストックと思い込んで買った」と苦笑いしてた。あれから30数年か、どうしているかしら彼。

コリン・デクスターのモース警部シリーズ第1作である。
ジャーマン夫人はオクスフォードの中心へ向かう道路のバス停で自分の乗るバスを待っていた。若い娘につぎのバスはウッドストックへ行くかと聞かれて行かないと答えると、二人の娘はヒッチハイクしようと歩き出した。
夫人はバスで帰宅し食事をしてテレビのニュースを見て、10時30分にはぐっすり眠っていた。同じ時間にウッドストックのある中庭で若い娘が倒れているのが発見された。娘は惨殺されていた。

オクスフォードからウッドストックへ向かってあと半マイルほどのところに、むかし玉石の上に馬蹄がひびいた古い中庭がある〈ブラック・プリンス〉があり繁盛している。酔った若い客が中庭で車の横の死体を発見しはげしく嘔吐した。

ルイス巡査部長とモース主任警部の登場である。モースはルイスに新聞のクロスワードの解答を見せて自慢する。
【「ルイス、時間の浪費だと思っているのかね?」/ルイスは利口だし、かなり正直で誠実な男だった。/「はい」/人なつっこい微笑がモースの口元に浮かんだ。彼は二人はうまくやっていけそうだと思った。】
そしてモースはダブルのウィスキーをたのむが、ルイスには勤務中だよと飲まさない。そして店にいた全員から話を聞きはじめる。

殺されたシルヴイアの日記に「ライアンの娘」を見に行ったと書かれている。「ライアンの娘」よかった。大好きな映画だ。この映画のころの事件なのか。

ジャーマン夫人はモースの質問に必死で記憶を呼びさます。娘の一人の言葉、「大丈夫よ、明日の朝は笑い話になるわ」それで二人の娘は同じ職場で働いていると推定できる。
(大場忠男訳 ハヤカワポケットミステリ)

P・D・ジェイムズ『ナイチンゲールの屍衣』(2)

それぞれの看護婦たちの生活や過去が調べられる。みんな個性的で恋人のいる人や女性どうしで仲良くしている人たちもいる。
主任教官ミス・ロルフは医者になりたかったが父親が女が教育を受けることを良しとしなかった。ダルグリッシュとの会話で父親の話をし男性の医師たちを鋭く批判するが、ダルグリッシュはふさわしい返答が思い浮かばない。
いま気がついた。ダルグリッシュの魅力ある独身女性たちとの丁々発止の会話がこの本の魅力かもしれない。

ダルグリッシュは事件をほとんど解明しかけたと思う。あと一日二日で解決できる。
ダルグリッシュがナイチンゲール・ハウスからホテルへ帰ろうと歩いているとき、突然、背後から襲われる。向かい合おうとした瞬間に強烈な一撃が左のこめかみから肩へそれて、彼は前のめりに倒れた。しばらくして看護婦の一人が通りかかり助け起こして実技室へ連れて行く。外科医が処置しようとするが、ダルグリッシュは麻酔を拒んで痛みをこらえつつ縫ってもらう。

マスターソン巡査部長は捜査中に話を聞くため一人の女性と一夜をダンス場で過ごす。その報告を聞いたダルグリッシュの言葉。
【警官でいながら、常に思いやりを失わないでいるということは、できそうもないことだと思う。しかしもしきみがそういう無慈悲な行いそのものを愉快に思うようになったら、多分それは警官をやめるべき時だよ。】
(隅田たけ子訳 ハヤカワポケットミステリ)