エドマンド・クリスピン『消えた玩具屋』

ツイッターでエドマンド・クリスピン「消えた玩具屋」と書いているひとがいて、目にしたとたんに読みなくなり検索したらアマゾンで中古の文庫本(発行1978)があった。700円+送料というのを頼んだら、翌々日(おととい)とどいた。あらあら、この本読んだつもりだったがどうも思ってたのと話が違う。
クリスピンは大好きだが最近は読み返しをしていなかった。クラシックミステリのなかで、最愛の作家がドロシー・L・セイヤーズで、クリスピンとジョセフィン・テイは並んでその次。
「金蠅」「お楽しみの埋葬」の2册を読んでいないがポケミスで出てたんやな。古本があるだろうが高そうな気がしてまだ調べようと思わない。
まあ「白鳥の歌」「愛は血を流して横たわる」「大聖堂は大騒ぎ」「永久の別れのために」と4冊を単行本で持っているからいいとするか。本書は「金蠅」「大聖堂は大騒ぎ」に続く3作目。

詩人のキャドガンは出版社に苦労してお金を出させて旅に出る。アメリカへ講演旅行に行ってほしいというのを断ってオクスフォードへ。列車が遅れて乗換駅で今夜発の列車がないということで、街道へ出て歩き出す。途中からようやくトラックが停まって乗せてくれるが、文学好きの運転手で巡回文庫で借りたロレンスがよかったなんて話す。丘を降りて行けばオクスフォードだと言われてクルマを降り歩き出すと商店が軒を並べるところへ出た。なぜか気になった店をよく見ると玩具店で錠がかかっていないので中に入ってみた。2階へ上がってみると女の死体が横たわっていて、突っ立って見ているうちに殴られて失神する。気がついてようやく外に出て玩具店の場所を確かめ、歩いていくとやがてモーダリン橋に着きオクスフォード大学に到着。
キャドガンはすぐに警察に話す。だがその場所には玩具店はなくて食料品店があり取り上げてもらえない。次いで友人の大学教授ジャーヴァス・フェンを訪ねて話をする。フェンとキャドガンはいっしょに事件に取り組むことにする。

フェンの爽やかというか、おおらかというか、楽しい人柄。それに今回もサリーという若い活発な女性が重要な役柄で出てくる。学生たちがたくさん協力するし、酒場ではジェーン・オースティンのファンがしゃべりまくるし、楽し過ぎ(笑)。
(大久保康雄訳 ハヤカワ文庫 340円)

SUBで聞く

前半はギターの竹田一彦さんとベースの財盛紘さんのデュオ、後半はセッションでテナーサックスの長谷川朗さんとドラムの弦牧潔さんが加わった。
11月12日以来のSUBだ。元気な竹田さんと挨拶、今年はいろんなことがありましたねとしみじみと。若いミュージシャンとしゃべって、生の音にひたっていると幸せ感がじわじわとわいてきた。ちょっと聞いてなかったうちに財さんが竹田さんに添った演奏をしているのがわかった。後半では、久しぶりの弦牧さんのドラムと、はじめて聞く長谷川さんのサックスが入って、心地よかった。やっぱり生音が好きなんやな。わたしの最近のテーマソング「朝日のようにさわやかに」をリクエストした。

いままで「聴く」と書いていたのを「聞く」にする。聞くと書こうと思ったら気持ちが解放された。しっかり聴くんでなくて、自由に聞く。
この件今度ゆっくり書くつもり。

ホビット族の忘年会

会報が片付いたのでゆっくり外食することにして、まずはシャーロック・ホームズへ行った。12月はヴィク・ファン・クラブの例会はなしなので、早い目の年末の挨拶。相方はうまいギネスが飲めて満足。お腹いっぱい食べて、機嫌良くしゃべって女主人ともおしゃべりして、来年もよろしくを言った。

20年近くになるつきあいの店を出て、次ははじめてのお店。ツイッターで知り合ったFさんに教えてもらった文学バー「リズール」は四ツ橋と心斎橋の間にある。うちからは歩いていける距離だ。地下へ降りると広い空間で壁ぎわには本棚があって、長いカウンターがあり、ソファがある一画も広い。女性がカウンターにおり注文したら店主らしきひとが出てきた。ツイッターでフォローしていただいた礼を言い、Fさんの紹介だと言ったら話が通じた。それにしても先日のツイッターからはじまってこうしてリアルに言葉を交わしているからすごい。男性が向こうの客のほうへ行ったとき、女性に尋ねたら彼は作家の玄月さんだった。
へええ、いままでこんなバーがあることすら知らなかった。知らない者の強さで作家さんとおしゃべりしてた。

次はそこから歩いて5分くらいのコンピュファンクのバーへ。レミちゃんと来合わせたNさんと3時間近くなんやかんやとおしゃべり。文学バーでちょい緊張したあとなので口がよく動いた(笑)。よく笑うこと、笑うこと。

リドリー・スコット監督『マッチスティック・メン』

リドリー・スコットの作品を見たいということで相方が借りてきたDVD「マッチスティック・メン」(2003)を見た。わたしはニコラス・ケージが出ているというだけで見たい。長いこと見ていないが実はニコラス・ケージ大好き。「初体験/リッジモント・ハイ」「コットンクラブ 」は見たというだけでどんな役かも知らない。ええなあと思ったのが「月の輝く夜に」で、この作品でケージファンになった。「赤ちゃん泥棒」についで「バンパイア・キス」ではゴキブリを食べるところがあったっけ。あとはテレビで見たので作品名も覚えていないのだが、すいたらしい男の代表みたいなところが好き。

詐欺アーティスト(と自分で称している)のロイ(ニコラス・ケージ)は頭を使ってしっかりと稼ぎ、貸金庫には現金がたくさんしまわれている。しゃれた家に住んでいるが、めちゃくちゃな潔癖性で靴を脱いで床を掃除しまくる。クスリが手放せないで流しにこぼしてしまって半狂乱となる。
格下の相棒フランクは精神分析医クレインを紹介する。クレインは話を聞くうちに14年前に妻が妊娠中に家を出たままなのを聞き、娘に会うことをすすめる。娘とつきあううちにロイの心はほぐれていく。つきまとう娘は詐欺の手伝いもするようになる。
そこへフランクが大きな仕事を持ち込み、ロイは娘も一役買うように仕掛けるのだが・・・詐欺のどんでん返しには「スティング」を思い出してしまった。
愛ある最後がよかった。ニコラス・ケージすてき。

「ミステリーズ!」10月号に木村二郎さんの『残酷なチョコレート』

創元推理文庫から発売された2冊「ヴェニスを見て死ね」と「予期せぬ来訪者」について、きのうとおととい感想を書いた。続いて今日は雑誌掲載の新作である。

ニューヨークは昨晩の雪が5インチも積もっている。オフィスで椅子に座っているヴェニスの前に現れたのは35年前にオクラハマ・シティーでつきあっていたメリンダだった。すぐ彼女とわかったことについて「きみは35年前とちっとも変わっていないからだよ」と答えるが、彼女の顔が母親と似てたから(笑)。
ということは今回のヴェニスは55歳を越えている。ずっとニューヨークで仕事してたんだなぁ。「タイガー・タトゥーの女」のときは1995年だから46歳だったのか。それからでも10年経つ。今回、アパートでヴェニスを出迎えたグウェンの言葉やしぐさが長い年月を共にしてきた夫婦って感じがした。ふたりはなぜか結婚はしないで同居している。

メリンダは次女のメレディスが置き手紙をして出て行ったので調べてほしいと頼む。ちなみにふたりの娘はヴェニスの子どもではないという。
長女のメラニーはニューヨークで働いているので連絡して会うと、昔ヴェニスと親しかったグレンと出会ったというので、グレンの家に行くことにする。グレンは酒で仕事をしくじり、いまは夜警をして汚いアパートに住んでいる。そこの階段を6階まで登るのにヴェニスは息切れする。鍵のかかっていないドアを開けるとグレンが銃で撃たれて死んでいた。
ヴェニスの電話でやってきた、マンハッタン・サウス署殺人課のマーク・マクレイン警部補が「おまえが第一発見者か?」と訊ねる。
(「ミステリーズ!」2011年10月号 東京創元社 1200円+税)

木村二郎『予期せぬ来訪者』

「ヴェニスを見て死ね」に入っている作品
[プロローグ、ヴェニスを見て死ね、長い失踪、過去を捨てた女、秋の絞殺魔、バンバン]
「予期せぬ来訪者」に入っている作品
[秘密の崇拝者、ダイナマイト・ガイ、東は東、予期せぬ来訪者、孤独な逃亡者]

ジョー・ヴェニスは1949年に大阪府堺市にあった米軍基地で生まれた。父親がアメリカ人で母親は日本人である。日本語はほんの少ししか話せないが、聞き取ることはできる。白い肌と頑丈な体格は父から、黒髪と茶色い目は母から受け継いだ。オクラハマ・シティーで育ち、オクラハマ大学を出て、20年以上前にニューヨークに出てきて10年ほど探査事務所で働いてから独立した。拳銃を所持し失踪人探しなどの仕事をしている。一人だけの事務所で電話応答サービスとポケベルでなんとかやっている。依頼人が来ると事情を聞きたんたんと仕事にとりかかる。
独身だが事件で知り合った恋人イラストレーターのグウェンとけっこう長いつきあいだ。グウェンはいっときヴェニスとアンジェラ・バランボ警部補との間を邪推したりしたが、考える時間がほしいとボストンの母親のところへ帰ってしまう。ヴェニスはもどってきた彼女をクールにむかえる。
いつもミルク・ティーとアップル・ターンオーヴァーをコーヒーショップで買って事務所に持って行く。なんか健康に良さげなものを食べているなと気になった。検索したら「アップルパイみたいだけど、パイじゃないよ。パイよりもずーと軽くて、ローカロリー」とあった。食べてみたい。

読んでいて皆川博子の「開かせていただき光栄です」を思い出した。両方ともほとんど翻訳ものといっても通用する。昔のロンドンといまのニューヨーク、どちらも地域の説明がていねいである。皆川さんはディケンズ、木村さんはロバート・B・パーカーを思い起こさせる。
こんなところがあった。「いや、スペンサーより料理は下手だし、イギリスの詩なんか暗唱できない。それに、ジョーというファースト・ネームがある」にやっとした。
(創元推理文庫 680円+税)

木村二郎『ヴェニスを見て死ね』

1994年に早川書房から単行本で出たのを持っているのだが、押し入れの箱の中にしまい込んだままで長いこと読んでいなかった。去年、17年ぶりに雑誌「ミステリーズ!」2010年12月号に新作「永遠の恋人」が、次いで今年の4月号に「タイガー・タトゥーの女」が掲載されたのをすごく懐かしく読んだ。そのときに「ヴェニスを見て死ね」が創元推理文庫から出るということを知って、押し入れを探さずに待っていた。

待ってはいたものの、いま読んだらどうかなと思う気持ちもあったが、読み出したらすこしも古びていない。10数年〜20年前のことを書いた新しい小説という感じで読めた。
ニューヨークで暮らす私立探偵のストイックな生活ぶりがいい。恋人のグウェンと食事したあと行くジャズクラブの出演者名をさりげなく書いてあったり、家に帰ってかけるジャズの好みもわたしと合うのでうれしくなった。
グウェンとはじめて会ったのは「過去を捨てた女」で、彼女のむかえの部屋の捜査中だった。彼女はミステリファンらしく、ジョー・ヴェニスのことをハメットの作中人物名で呼んだり、「ねえ、マーロウ」と呼んだり、スペンサーと言ったりする。彼女のほうがさきに惚れてヴェニスは受け身ぽかったけど、それからは恋人どうしになった。

ジャズといい、ミステリといい、食事といい、とても柔らかいのだが、事件の真相は違う。依頼人から受けた仕事を的確に精密にこなしていく私立探偵は、不在の部屋を合鍵で開けて、死体を発見する。
(創元推理文庫 680円+税)

原節子が最後に出演した映画 稲垣浩監督『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』

何度も書いているが「忠臣蔵」が好きといって笑われたり呆れられたりする。新暦だけど12月14日になると、あっ討ち入りの日やと思う。今夜はよく冷えて都市部でも雪が積もると予想されているので、「忠臣蔵」を見るのにぴったりだ。
相方が出かけたついでにレンタルビデオを借りてきてくれた。うちに大事にしまってあるのは溝口健二監督の「元禄忠臣蔵」で大石内蔵助を河原崎長十郎がやっている。ちょっと荘重すぎるので、今夜はこっち。
「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」(1962 東宝 稲垣浩監督)大石内蔵助が八代目松本幸四郎、吉良上野介が八代目市川中車、大石りくが原節子、俵星玄蕃が三船敏郎、吉良邸の隣人に池部良、浅野内匠頭が加山雄三という東宝俳優の豪華キャスト。

物語はわかっているから、エピソードのどれを使っているかなと楽しむ。もともとは講談本を愛読したのからはじまっているから、「徳利の別れ」「するが堪忍」「あしたまたるるその宝船」が好きなのになくて残念。好きな人は不破数右衛門、堀部安兵衛・・・

そんなことより、原節子の最後の出演映画というのにびっくり。ツイッターでも話題になっていたが、姉が「安城家の舞踏会」をテレビで見たといい、原節子はきれいやったねと話していたところ。大石内蔵助の妻りくの上品な美しさにうたれた。その他、なつかしい女優がたくさん出ていて顔や声で思い出すのを楽しんだ。新珠三千代(浮雲太夫)がわからなかったがあとで調べてなるほどだった。

日本で最初の女子デモは大阪 井上理津子『さいごの色街 飛田』から

デモの帰りに寄ったジュンク堂難波店で気になっていた、井上理津子「さいごの色街 飛田」が見つかったので買った。帰りの電車で読み出したのだが、すごくとっつきやすい。帰ってから着替えもそこそこに読んでいて、ご飯が終わったらすぐに読んでいた。井上さんは大阪在住の女性ライターである。

全部読み終わったらきちんと感想を書くことにして、今日は〈日本で最初の女子デモは大阪〉という記載があったことについて。
「原発いらん!女子デモ!? だれデモ!@大阪」の帰りに買った本で、日本で最初の女子デモが大阪であったことを知るとは!

大阪には江戸時代から続く南地五花街があった。その後にも新設されたところもあり、芸者が中心の「甲部」と娼妓が中心の「乙部」に分けられていた。飛田新地は「乙部」として、近代大阪における、松島遊郭に次ぐ二つ目の遊郭新設になった。
飛田遊郭設置反対同盟会が綴った反対意見の冊子にはレベルの高い女性の人権に立脚した反対意見が見られるそうだ。
1916年10月21日には、矯風会(日本キリスト教婦人矯風会)によって日本最初の女性だけのデモが行われた。
【矢島楫子、林歌子を先頭に、二列縦隊で、百数十人の和服姿の女性が静かに祈りながら、川向こうの江之子島(現西区)の大阪府庁まで歩いたのだ。反対署名と「請願書」を大久保知事に届けようとしたのだが、大阪府庁は大騒ぎとなり、知事は居留守を使った。】
(井上理津子著 筑摩書房 2000円+税)

もっとサボっておおらかに

サブタイトル:ああ、楽しや、ツイッター。
ツイッターを読みながらそろそろお風呂に入ろうと思っていたところで、Oちゃんのツイートを読んだ。「黒い咳が止まらん」とある。それでRTを入れた。「活動しすぎのせいね。わたしもこれからお風呂に入ろうと思ってたとこ。体を休めましょ。体も気持ちもあせったらあかん。 」お風呂から出たら返信が入っていた。「遊びを真剣にやり過ぎるせいですね。(笑)」それへの返信は「言いたかったのはそれ笑 」、続けて「 Oちゃんのツイートのおかげでいま風呂で考えがまとまったよ。もっとええかげんになろう、もっとさぼろう って。昔の写真見たらみんな大口開けて笑ってる。最近は愛想もクソもないむっつり顔が多い。もっとサボっておおらかになろう笑」。

いま会報作り中だが、いつまでに送ろうとせくことはなにもないのに自分で決めて自分を縛っている。だから20年続けられたんだけど、これからはええかげんにしよう。といいつつできたところから丑三つ時にコピーをとっているのだが(笑)。もうやめてミクシィにいって、少々読書して寝よう。