サラ・パレツキー「セプテンバー・ラプソディ」(3)

後半455ページに出てきたエイダ・バイロンという名前にびっくりした。わたしは以前バイロン卿の娘エイダのことをコンピュータの歴史の本で読んで覚えていたから。2008年2月16日の日記だからきっちり7年前のこと。なんか因縁を感じてしまった。
本書はミステリなのでなぜかは明かせないが、読み進むにつれてなぜこの名前が使われたのかわかってくる。

「バイロンの頌歌」という章で、図書館にあった資料でエイダ・バイロンの名前を見つけたヴィクが検索すると、エイダはずっと前の時代の人だったとわかる。そしてヴィクは考える。マーティンはそれが誰かわかったのだと。ヴィクは独り言で文句を言う。「マーティン、どうしてわたしのためにパン屑を落としていってくれなかったの?」

本書はヴィクが調べて明らかにしていくロティとその幼年時代と成長の物語であるが、第二次大戦の前にヨーロッパで学び研究に励んだ女性科学者の物語でもある。その先駆者がエイダ・バイロンなんだなあとサラ・パレツキーにまた教えられた。
(山本やよい訳 ハヤカワ文庫 1300円+税)

サラ・パレツキー『セプテンバー・ラプソディ』(2)

はじまりは1913年のウィーン、6歳の少女マルティナとゾフィーはイタリア人の音楽教師につくことになった。ゾフィーはブルジョワ階級のお嬢様でマルティナはお針子の娘である。ゾフィーの相手をしてあくびをしていた教師はマルティナのフルートを聞いて、きみはまだ小さいのに早くも音楽に恋をしている、という。のちのちマルティナはこんなことがあったのを忘れてしまうが、フルートだけは生涯にわたって彼女のこころを癒してくれるものとなる。

ロティの診療所の事務担当者コルトレーンさんからヴィクに連絡があった。ロティ宛にジュディという女性から助けを求める電話があったが、ロティは大手術があるのでヴィクに伝えたという。
ヴィクがジュディの住まいに行くと本人はおらず、農地に倒れた男性の死体がありカラスが群がっていた。ヴィクは犬を助けて病院へ連れていく。
仕事が終わったロティに聞くと、ジュディは子供時代からの知り合いであるキティの娘だという。オーストリアがナチスドイツに併合されたあと、ユダヤ人たちはフラットを追い出されみじめな生活を強いられたが、ロティの祖父は戦争の始まる前にロティだけでなくキティもロンドンへ送り出した。

キティの母であるマルティナは物理学に魅せられていて、子供を産んだものの子育てには無関心だった。マルティナの愛は学問だけに向かっていた。
ロティに頼まれてヴィクはキティに会いに行く。キティはずっとお嬢様であるロティを嫌ってきていまもなお反発している。それでも孫のマーティンの行方がわからないので探してほしいとヴィクに頼む。
マーティンはキティとジュディに続くマルティナのひ孫にあたる。彼の天才的頭脳はマルティナから受け継いだもののようだ。
ヴィクの物語であると同時にマルティナの物語でもある大作。
(山本やよい訳 ハヤカワ文庫 1300円+税)

サラ・パレツキー『セプテンバー・ラプソディ』(1)

ヴィクシリーズ長編16冊目。
「VFC会員サイト」のために本の整理をしたのでここにも書名を入れておく。

サラ・パレツキーの長編小説 山本やよい訳
1 サマータイム・ブルース(ハヤカワミステリ文庫 1985年)
2 レイクサイド・ストーリー(ハヤカワミステリ文庫 1986年)
3 センチメンタル・シカゴ(ハヤカワミステリ文庫 1986年)
4 レディ・ハートブレイク(ハヤカワミステリ文庫 1988年)
5 ダウンタウン・シスター(ハヤカワミステリ文庫 1989年)
6 バーニング・シーズン(ハヤカワミステリ文庫 1991年)
7 ガーディアン・エンジェル(ハヤカワノヴェルズ 1992年)
※現在はハヤカワミステリ文庫から刊行
8 バースデイ・ブルー(ハヤカワノヴェルズ 1994年)
※現在はハヤカワミステリ文庫から刊行
9 ハード・タイム(ハヤカワノヴェルズ 2000年)
※現在はハヤカワミステリ文庫から刊行
10 ビター・メモリー(上下)(ハヤカワミステリ文庫 2002年)
11 ブラック・リスト(ハヤカワミステリ文庫 2004年)
12 ウィンディ・ストリート(ハヤカワミステリ文庫 2006年)
13 ミッドナイト・ララバイ(ハヤカワミステリ文庫 2010年)
14 ウィンター・ビート(ハヤカワミステリ文庫 2010年)
15 ナイト・ストーム(ハヤカワミステリ文庫 2012年)
16 セプテンバー・ラプソディ(ハヤカワミステリ文庫 2015年)

翻訳ミステリが低調なときに全作品が訳されていて読めることに感謝でいっぱい。
早川書房さまありがとうございます。素晴らしい翻訳をしてくださっている山本やよいさんありがとうございます。

わたしはもともとミステリファンで、そのころは特にハードボイルドミステリが好きだった。「サマータイム・ブルース」が出版されたときにすぐに買って読んでいるから30年にわたる読者である。

数冊読んだころ、ヴィクもわたしら読者も年を取ったのに気がついた。「バースデイ・ブルー」くらいからだったと思うが、ヴィクの言葉に疲れを感じるようになった。これからどうするんだろうと考えていたとき、若い女性警官が警察を辞めてヴィクを手伝うといってきた。そのときわたしは体力を使う仕事は彼女に任せてヴィクは頭を使ったらいいんじゃないかと真剣に思った。その彼女ものちに出てきた従姉妹のペトラもヴィクの行動力には追いつけなかった。
最近のヴィクは疲れたと言いながら活動していて昔と変わらず一直線だ。年を取ったとは言いながら作品では実年よりも年をとるのが遅いからいいよね。
わたしもそのくらいの遅さで年をとっていたらもうちょっと行動できるんだけど、実年齢に合わせて年をとっているので疲れるし遅れをとるしである(笑)。
(山本やよい訳 ハヤカワ文庫 1300円+税)

フォレスト・ウィテカー監督『微笑みをもう一度』

日曜日だけどいつもと同じくパソコン相手にぼちぼちなんかやっている。今夜は日曜日らしく映画でも見ることにしよう。
ということで、フォレスト・ウィテカー監督3作目の「微笑みをもう一度」(1998)を見ることにした。サンドラ・ブロック主演でその母親役にジーナ・ローランズ(どういうことで出演することになったのか気になる)。
フォレスト・ウィテカーはクリント・イーストウッド監督・製作の「バード」(1988)でジャズサックス奏者のバードことチャーリー・パーカーを演じてすごくよかった。そのとききちんと名前を覚えた。評判になったニール・ジョーダン監督の「クライング・ゲーム」は映画館に行ったのだがあまり好きではなかった。
いま検索したらたくさん出演作があって、最初のほうのはかなり見ているがどの役とか覚えがない。わたしには「バード」のフォレスト・ウィテカーだ。

始まりはテレビの公開番組で親友が夫と愛し合っていると告白したのを夫も肯定し、なにも知らなかったバーディ(サンドラ・ブロック)はショックを受ける。
彼女は小学生の娘を連れてシカゴから出身地のテキサスの田舎町にもどる。母(ジーナ・ローランズ)は暖かく迎えて娘と孫の様子を見守る。
町の人はみんなテレビを見ていて事情は知れ渡っている。昔から好いてくれていたジャスティン(ハリー・コック・ジュニア)はいまも独身で大切に接してくれる。

ホットチョコレートのちラブコメ〜アン・フレッチャー監督『あなたは私の婿になる』

用事で四ツ橋まで行ったので帰りに堀江散歩してきた。お正月から散歩に行きたかったのが1月終わりにようやく実現。ベースでホットチョコレートを飲んで店主手作りのケーキをお土産に買った。次にセレクトショップ ジョローナで布カバンと贈り物用石鹸を買った。どっちも久しぶりなのでよくしゃべって楽しかった。
帰ったら晩御飯ができていた。根菜の煮物とけんちん汁と漬物の簡素なご飯だったけどうまかった。

コーヒーを淹れてケーキを食べながらラブコメディを見ることにした。先日見た「ミレニアム」で気持ちが煮詰まっているからほぐさないと・・・。で選んだのがこの映画なのだが、タイトルがナンギ、原題は「The Proposal」(2009)。
サンドラ・ブロックは好きな女優だ。宇宙で苦労するのもよかったが、どっちかというとラブコメに出ている彼女が好き。
ニューヨークの出版社の管理職マーガレットは孤独に育って猛烈に働き40歳でいまの地位にいる。カナダ生まれのためビザの申請がいるのを忘れていて国外退去を命じられる。部下のアンドリューは3年間彼女の部下として働いてきた。マーガレットは扱いやすい彼と擬装結婚して難を逃れようと企む。
二人はアンドリューの故郷アラスカに向かう。実家は大金持ちで大家族だった。祖母と母に暖かく迎えられ偽装の夫婦の間はだんだんと近づていく。
一波乱も二波乱もあってうまく落ち着いた。

沖縄料理にんじんしりしり

こんなうまいものをいままで知らなかったなんて〜
相方が毎週水曜日に開いている淀屋橋マルシェで教えてもらった沖縄のにんじん料理である。検索したら「にんじんハリハリ」と言っている人もいる。
レシピには、にんじんを千六本に切ってツナ缶を入れてごま油で炒め卵でとじる。調味料は塩こしょうと酒とあった。
うちはツナ缶なしで卵だけだがじゅうぶんうまい。教えてもらってからしょっちゅう食卓に上ってるが、パンにもご飯にも合う。

同じようにじゃがいもと玉ねぎを細く切って炒めて卵とじにする料理を、50年くらい前にニューイングランドの料理という本で覚えたのを思い出した。たしかベーコンを入れていた。このベーコンのダシがおいしかったのだ。いまは家で肉類を食べるのを控えているので、そばにあったカマンベールチーズを入れてみた。まあまあいけるけどベーコンほどうまくはない。この料理に合うのはベーコンだ。チーズなしで野菜だけのほうが思い切りよくていいかも。今度はじゃがいも、玉ねぎ、にんじんと根菜炒めの卵とじにしよう。

ニールス・アルデン・オプレヴ監督『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』

2009年の作品だから5年前だ。そのころ評判はいっぱい見聞きしていたが、なんとなく見る気が起きなかった。口コミで推す人が周囲にいなかったのもわたしの弱点だけど、みんなが騒ぐものは見ないという天邪鬼、これも弱点やね。
スウェーデンのミステリはたくさん読んでいるが、その中でもいちばん読まれている本を読んでいなかったと反省しきり。いまは映画でお腹がいっぱいになったので、落ち着いたら全巻買って読もう。

「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」ではジャーナリストのミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)が主人公で、彼が苦闘しているのをネットで知った天才ハッカーのリスベット(ノオミ・ラパス)が連絡してきて、ミカエルが命がけでやっている仕事に協力する。命を賭けて得た信頼と愛で事件を解決したが、ミカエルにはジャーナリストの恋人がいた。リスベットは大金を手にして国外に出る。

「ミレニアム2 火と戯れる女」「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」を昨日と今日とで見てようやく落ち着いた。
リスベットは外国から戻ってきた。
ミカエルはリスベットのあまりにもひどい生い立ちや不運を知り巨悪を暴こうと立ち上がる。その悪は現在にもつながっていて、ミカエルや雑誌社を脅かす。
ミカエルの妹が弁護士でしっかりとフォローして裁判闘争を進める。
リスベットの父親と腹違いの兄があまりにもひどい。そして後見人の弁護士のリスベットへの強姦がひどい。特殊機関の老人たちがリスベットを殺そうと襲いかかる。そして真実を知ったミカエルと雑誌社にも襲いかかる。
瀕死の重傷を負ったリスベットが病院で回復していく。担当医の毅然とした態度と善意とユーモアにほっとした。このお医者さんまでやられたら救いがないところだ。
リスベットは150センチ40キロという小柄である。わたしとたいして変わらないからスウェーデンではほんまに小さいやろな。
小柄な体で大男どもの暴力に挑むリスベットが素晴らしい映画だった。

新しい洗濯機と冷蔵庫

先週の金曜日に運ばれてきた新しい洗濯機の使い勝手がよくて気分がよい。前のは10年近く使っていたから10年分の進歩があるのがわかる。普通の縦型の5キロ用でどうってことのない普及型なんだけど、気持ちよく使えてありがたい。
前のは選択するものがたくさんあったが、結局は決まったボタンしか押さなかった。今回は単純明快で、わたしの単純頭にぴったり。
冷蔵庫も新しくなって新年そうそうもの入りだったけど、どっちもこれから10年近く使うのだからいいとせねば。いろんな物がうまく入るように気配りした設計だと思うが、うちはほとんど野菜でいっぱいで愛想がない(笑)。

冷蔵庫のドアを開けると野菜とピクルスや酢漬けの瓶がいっぱい入っていて幸せ。ベランダに洗濯物がいっぱいぶら下がっているのを見るのも幸せ。

ニールス・アルデン・オプレヴ監督『ドラゴン・タトゥーの女 ミレニアム 完全版』

デビッド・フィンチャー監督が好きだから彼が監督した「ドラゴン・タトゥーの女」(2011)を見たのだが、見ると欲が出てスウェーデン版も見たくなった。ところが3部作があって、他に「完全版」(2010)がある。どうなっているのと調べたら最初の1作目は153分で、完全版は27分の追加があって186分あるって。もちろん完全版を見るっきゃない。見終わったらこんな時間になった。
スタイリッシュなアメリカ版に比べてぐっと地味だけど真実味のあるスウェーデン版だった。
リスベット役はアメリカ版(ルーニー・マーラ)はちょっと美貌すぎて、スウェーデン(ノオミ・ラパス)のほうが現実味があった。
40年前に失踪したハリエットが見つかるところが全然違うが、どっちもうまい脚本だ。
主人公のミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)はお腹が出ているし美男子ではないが誠実さがあった。この役でダニエル・クレイグとどっちがいいいかと聞かれたらこっちだな。
世界中に男性による暴力にあふれているんじゃないかと思ってしまう展開だが、スウェーデンの女性たちはそれぞれが強く生きている。
続きが見たい。

こころとからだのメンテナンス

元旦からの風邪引きが去っていってやる気はまんまんなれど、そこまでの元気がない。昨夜のように3時間をこえる映画DVDを見たら疲れるはず。長いだけではなく内容がハードだからよけいに疲れて当たりまえだ。
その上に読書しなければ本がたまる一方である。ディケンズ「大いなる遺産 上下」いつ読めるんだろう。P・D・ジェイムズも再読すべき本が2冊まだ残っている。その他いろいろが積み重なっている。

いま読んでいるのはサラ・パレツキー「セプテンバー・ラプソディ」(ハヤカワ文庫)、これが分厚くて内容が濃い。
昨日見た映画「ドラゴン・タトゥーの女 ミレニアム 完全版」の女性主人公は天才ハッカーで、Macの画面が絶えず出ていたが、「セプテンバー・ラプソディ」で私立探偵ヴィクが捜す青年マーティンも最先端IT企業で働いていて注目されている。

そういう映画や本だから目が疲れアタマが疲れる(笑)。
でもって、火曜日は整体に行って体をほぐしてもらい、水曜日は美容院で髪をいじってもらって、おしゃべりでアタマの洗濯。今日は歯科に行って糸切り歯が虫歯になっているので手入れ。
からだのメンテナンスができたのでちょっとやれやれ。