〈冬ウツ〉から脱け出して捕物帳を読む

寒さ疲れで〈冬ウツ〉だと言ってるひとがいると、昨日の日記にミクシィでコメントしてくれた。そうね、わたしの〈なんとなくもの憂い〉も〈冬ウツ〉かもしれないと返事をしたら他にも自分もそうだというかたがおられた。〈なんとなく〉の正体がわかったから納得できて元気に(笑)。今日はよく家事をがんばった。エライエライと自分をほめる。

元気になったし今夜はエドワード・D・ホック「サイモン・アークの事件簿 V 」を読み終えたので感想を書くつもりだったが、選挙のこととかネットの書き込みに引っ張られるので明日にする。
ネットの合間に青空文庫で、林不忘「釘抜藤吉捕物覚書 のの字の刀痕」を読んでいるが、非常におもしろい。通りがかった家の前で勘次は「何だ、喧嘩か、勘弁ならねえ」と格子戸の前に立った。「勘弁ならねえ」というのが口癖で勘弁勘次というあだ名がついている。その家で血だらけの死体を見て、様子を見聞きした勘次は釘抜藤吉親分のところへまっしぐら。【秋の末、利鎌(とがま)のような月影が大川端の水面(みなも)に冴えて、河岸の柳も筑波颪に斜めに靡(なび)くころ】なんて美文にころりとまいってしまう。

今年最初のSUBで思ったこと

1月中はなかなか腰があがらなかったがようやく今日SUBへ行った。すっごくいい演奏が聞けて幸せな時間を過ごせてよかった。
今日は7時15分から3セットあったのだが、8時半の2セット目から聞いた。藤川幸恵さんのピアノと長谷川朗さんのテナーサックス。3セット目にアルトサックスの側島万友美さんが加わった。

聞きながらいろいろ考えていた。
演奏はいいが聞いてる人は年寄りが多い。若いときから聞いている人たちだ。なぜ演奏する若者たちがいるのに聞く若者がいないのかな。この知的な音、技術も感性も備わった演奏を聞く若い人が少ないのはもったいない。
まあ、わたし自身が楽しめてるからええか。

わたしがSUBにいる間に姉と妹から電話があったそうだ。どっちも夜に女が家にいないなんて考えられない人たちである。明日電話して弁明せなあかん(笑)。以前、わたしがVFCの例会に行ってたときに兄の連れ合いから電話がかかって、主婦が夜出かけるの?って絶句してたそうだ。
女性が夜遅くまで好きなことをして遊ぶのが普通になればいいな。

ダグラス・マクグラス監督・脚本『Emma エマ』

ジェーン・オースティンの「エマ」を読んだのはずっと昔だが、おせっかいなエマをあほらしく思いながら楽しく読んだ。「高慢と偏見」は10回以上は読んでいるが「エマ」は一度読んだだけで納得していた。
映画の「エマ」(1996)はわたし好みのリージェンシーロマンスで、相方が来週は忙しいから今夜は楽しいのを見て和もうと譲ってくれて(笑)、見ることができた。
大丸で買ってきたケーキとコーヒーを用意してさあはじまり。

エマ(グウィネス・パルトロー )は母の死後、姉が結婚してロンドンに行ったので、父とイギリス南部のハイベリーで暮らしている。その家によく訪れるのが姉の夫の兄のナイトリー(ジェレミー・ノーザム)で、兄さんらしくエマを叱ったり可愛がったり。
エマの家庭教師アナ(グレタ・スカッキ)がウェストン氏と結婚して出て行くが、その結婚をとりもったのがエマだった。アナはエマの唯一の相談相手だったがいまもエマはよく訪ねている。ウェストン氏の前妻の子フランク(ユアン・マクレガー)は美形の青年でアナはエマに紹介したいと思っている。
エマは友人のハリエットと牧師のエルトンを結婚させようと目論むが失敗。次はフランクと思うがフランクは別の女性と結婚する。

グウィネス・パルトローの魅力全開の映画でファンとして見ておくべき映画。
「セブン」が1995年で映画もよかったがグウィネスがよかった。「エマ」はその翌年で初主演なんだって。あの暗い刑事の奥さん役から明るいリージェンシーロマンスの役がきて楽しかっただろうな。細い首筋の美しいこと!
彼女の映画はわりと見ているほうだと思う。「抱擁」がいちばん好きだが、そのうちリストをつくってどれくらい見ているか調べよう。

グレタ・スカッキが元家庭教師の役だった。昔大好きだった女優でいっときはサラ・パレツキーのヴィクシリーズの主役に彼女が合うと書いたこともあった。ざっと出演作を見たが映画名が特定できない。そのうちゆっくり自分が書いたものを探そう。

ピーター・トレメイン『翳深き谷 上下』(3)

グレン・ゲイシュに着いた二人は来客棟へ案内される。他に客人がいるようなので係の女性クリーインに聞くと北の方の身分の高い方で、お二人と同じ神様を信じているとの答え。二人が食事を終えたときに客人ソリン修道士がもどってきた。ローマでしか見たことがない華美な法衣を着ている。噛み合ない会話をしているとき族長ラズラに面会にくるように迎えがくる。ここでラズラの妹オーラと夫で継承予定者のコーラ、ラズラの裁判官でもあるドルイドのムルガルを紹介される。
夜の宴の前に外で二人が話していると金髪の兵士ラドガルがやってきて、キリスト教徒であることを告げ、用事があれば手伝うと心強い申し出があった。

角笛による合図で宴会がはじまる。ソリン修道士と書記のディアナッハ修道士の席が隣である。エイダルフにとって気分のよくない会話になる。
音楽が始まると大胆にムルガルはキャシェル批判の歌をうたう。フィデルマは立ち上がってキャシェルの新しい歌を披露し、それはムルガルへの批判となり人々に感銘を与える。フィデルマは歌もうまいのである。

エイダルフは宴会のワインを飲み過ぎて気分が悪くそれがずっと続く。眠くて冴えないエイダルフであるが、フィデルマの危機に際してきりっと立ち上がる。
ソリン修道士が殺されているのを見つけたフィデルマが犯人とされてしまうのだ。法によりこれから9日間を隔離房で過ごしてもらうとムルガルは言う。エイダルフは法律書を読み理論でフィデルマの拘留を解く。そして二人で推理し行動する。驚くべき背景と矛盾が浮かび上がる。

ゆったりとした上巻から下巻はフィデルマの逮捕、そしてエイダルフの弁論と活躍でがぜんおもしろくなる。続く第二第三の殺人、恋あり活劇あり。そしてフィデルマの推理によりすべてが明らかになる。
(甲斐萬里江訳 創元推理文庫 上下とも 980円+税)

去年はマイコプラズマ肺炎で

去年は正月そうそう咳が出てたいへんだった。普通の風邪かと思って温かくしていたら治ると思ったのが間違いだった。このブログのアーカイブで去年の1月を読んだらわかる。クスリを飲まず医者にかからずだからゆっくり進行してゆっくり治るだろうなんて書いている。いま思い出すのもつらい咳だったのに。
ヴィク・ファン・クラブにはお医者様が二人いるのに病気の話はついぞしたことがなかったが、このときはメールで症状を伝えた。
返信は「その症状は高齢者にとって〈マイコプラズマ肺炎〉のおそれがあり、集中力の低下やしんどいのは危険信号だから、一度診療所で診てもらったほうがいい」とのことだった。〈マイコプラズマ肺炎〉て初めて聞いた。
20年ぶりくらいに診療所に行き、40年ぶりくらいにレントゲンを撮り(歯科をのぞく)、生まれて初めてCTを撮った。そして抗生物質を処方してもらって飲んだ。(その間も会報やってたから根性あるね。)

あれから1年経った。今シーズンはまだ風邪を引いていない。ちょっと引きかけたけど大事にいたらなかった。そういえば去年はそのあと〈マイコプラズマ肺炎〉って言葉をよく聞いたように思う。今年は流行ってないのかな。とにかく体を冷やさないよう無理しないように気をつけている。

今年は元旦の夕方に姉から熱があると電話があって2日に様子を見に行った。医者にも来てもらったが普通の風邪だが休養第一となり新年会もとりやめた。それからもぐずぐずと熱が上がったり下がったりしていて、わたしは結局1月中に3回行って肩もみと話し相手をした。毎日、熱と血圧で電話があったが、今日の電話は全快お知らせだった。
明日から2月だ。この時間もう2月になっているけど・・・木星とシリウスがきれいに輝いている。

ピーター・トレメイン『翳深き谷 上下』(2)

フィデルマはモアン国王である兄コルグーに呼ばれて王の私室に行った。フィデルマによく似た長身、赤毛、色がさっと変わる緑色の瞳だけでなく身のこなしもよく似ている。兄は修道院を出てきた妹にここに住むようにすすめる。そしてサクソン人のエイダルフ修道士との結婚を口にする。フィデルマとエイダルフの仲を知っていての言葉だが、フィデルマはうなづかない。
和やかな話し合いのあとで王は肝心な用件を口にする。フィデルマに属領のグレン・ゲイシュに行ってほしい。その領地ではまだ古の神々を信奉している領民が多い。今回族長のラズラは当地でのキリスト教の教会設立などについて話し合ってもよいと言ってきた。そのための折衝の機会を持ちたいとのことで、王はフィデルマに自分の代理として行くように頼む。
戦士団を率いて行けという王に話し合いに兵隊を連れて行けないと断ると、せめて〈お前のサクソン人〉を連れて行けと兄王は言う。

ということで、フィデルマとエイダルフは険しい山道をたどっている。
グレン・ゲイシュに近づくと誰かに見張られている感じだ。そこへ大鴉の大群が旋回の高度を下げながら空に円を描いているのが見えた。その原因を見たいとフィデルマが言い、彼らは谷間を下っていった。そこには30体くらいの全裸の若者の死体が太陽回りに並べられていた。フィデルマは1体ずつ調べていく。エイダルフはどこかで殺されてからここに運ばれてきたと推定した。エイダルフの嫌悪の表情を見てフィデルマは「大鴉も、主の大いなる創造物ですよ。この“掃除屋”たちも、創造主によって定められた役割を担っている者たちではありませんか?」エイダルフは彼らは悪魔の創造物だと思うと反論するが、フィデルマに論破されてしまう。

途中やってきた騎馬団に無礼な扱いをされるが、「この国の王は、私がここで歓迎されなかったとお知りになれば、ご立腹になりましょう」と冷静に返して、いよいよ二人はグレン・ゲイシュに到着する。
(甲斐萬里江訳 創元推理文庫 上下とも 980円+税)

ピーター・トレメイン『翳深き谷 上下』(1)

修道女フィデルマ シリーズの長編6冊目、当ブログには「蜘蛛の巣」、「幼き子らよ、我がもとへ」、「死をもちて赦されん」、「サクソンの司教冠」の4冊の感想を書いている。
なぜか書いていない「蛇、もっとも禍し」はここにあるので、もう一度読んでから書くことにする。
短編集は「修道女フィデルマの叡智」、「修道女フィデルマの洞察」、「修道女フィデルマの探求」と3冊出ているが感想を書いてない。どこかにあるだろうし読んでいると思うので、いづれ調べて書くつもり。
アーカイブにある「アイルランド幻想」、「自分の殺害を予言した占星術師」はシリーズではないが、トレメインの著書である。

久しぶりのフィデルマシリーズ、出だしは上々だったが途中でしんどくなった。でも読み進むと下巻がすっごくおもしろくなった。フィデルマが殺人容疑者とされて拘留され、エイダルフ修道士が弁護にあたる。
下巻を二度読んで7世紀アイルランドの世界にひたった。上巻ももう一度読んで感想を書くことにして今日はおしまい。

サム・メンデス監督『007 スカイフォール』

007の映画をはじめて見たのはいつかと調べたら1962年に「007 ドクター・ノオ」、63年に「007 ロシアより愛をこめて」、64年に「007 ゴールドフィンガー」を見ていた。そのときのジェイムズ・ボンドはショーン・コネリー。父親と弟が騒いでいたのでわたしも見に行ったのだ。本も読んだけどあまり好きではなかった。
それから間が開いて、ロジャー・ムーアのファンの小学生の姪を連れて「007 ムーンレイカー」を見たらアホらしくてボンドとの縁はきれていた。

そして去年のこと、T氏にお借りしたDVDの中に「007 カジノ・ロワイヤル」(2006)が入っていて見たのだが、いま検索したら感想を書いてなかった。見た映画一覧表には入っているんだけど。それでもうジェイムズ・ボンドはええわという気持ちだった。
そこへ「スカイフォール」より先に見よというT氏のお言葉に従って先日見た「ビューティフル」でハビエル・バルデムが気に入った。そうなると、やっぱり「007 スカイフォール」(2012)を見ようと思った。どんな悪い奴やろと空想がふくらむ。

最初のほうはいままでどおりの「007」ぽかったけど、途中からは地味な映画だった。ボンドガールらしき美人は出てくるが、ベッドシーンはなし。
なせかボンドはMといっしょにアストンマーティンに乗って生まれ故郷のスコットランドへ行く。生家はボンドが死んだということで、家は売りに出し兵器庫の銃も売り払われていた。そこでハビエル・バルデム扮する悪漢と対決する。
スコットランドの荒れ果てたような風景がよかった。石でできた家には地下に秘密の通路があって礼拝堂に続く。カトリック迫害の時代のもの。

ダニエル・クレイグの青い瞳が美しい。すごく好きではないがええ感じ。
ハビエル・バルデムは金髪にしてすごみを出していた。悪役を演じるにあたって工夫しているなと思った。
Mのジュディ・デンチは貫禄があった。気がつかなかったけどずっとMをやり続けていたんだ。7本もあるらしいけど、スコットランドで死す。

つながる!映画

「007スカイフォール」より先に見るように言われて見たアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督・製作・脚本の映画「ビューティフル」がいたく気に入った。主演のハビエル・バルデムがよかったことを熱く日記に書いた。
その勢いで昨夜「007スカイフォール」を見たのだが、思っていたようなボンド映画ではなかった。ふと〈ボーンシリーズ〉っぽいなと思った。

ブログにアップし終わるとミクシィの日記に同じものをアップすることにしている。ミクシィにはコメント欄があって少数ながら知り合いがコメントを書いてくれるので返信する。そこで今日はKさんが書いてくれたコメント「奥さんがレイチェル・ワイズ、二人とも素敵ですね。」。ありゃ、わたしはレイチェル・ワイズを知らんがなと調べたら「ボーン・レガシー」に出てた科学者だった。これ1本だけ見ていた。そして彼女がダニエル・クレイグと2011年に結婚したことを知った。あちこち記事を読んでいたら、とてもしっくりとした英国人らしい夫婦のようだ。

そして、レイチェル・ワイズが出ている作品、アレハンドロ・アメナーバル監督「アレキサンドリア」が見たい!! 4世紀のアレキサンドリアの天文学者をやっている。天動説に疑問を持って学ぶ彼女を人々は魔女とみなした。
アメナーバル監督の諸作品、ニコール・キッドマンが出ている「アザーズ」も見たい。「オープン・ユア・アイズ」も見たい!!

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督・製作・脚本『ビューティフル』

今日見たDVDはアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督・製作・脚本の「ビューティフル」(2010)。いっしょに貸してくれた「007スカイフォール」を見る前に見よとのこと。「スカイフォール」で悪役をやっているハビエル・バルデムが主演しているから。いつものように先入観なしで見出したら、すごく熱い映画でまさに好み。上映時間148分をものともせず、メイキングまで見てしまった。

最初の森のシーンがよかった。いい男ふたりが静かに話をしていて、タバコの火をつけに接近するところでゲイの映画かといっしゅん喜んだ(笑)。最後に同じシーンがあってこういうことだったのかと理解した。

ウスバル(ハビエル・バルデム)はスペインのバルセロに住むちょっといかがわしい感じの男。中国やセネガルからの違法移民に仕事を世話してさやを稼いでいる。躁鬱病の妻とは別れて二人の子どもと暮らしている。血尿が出たり体調が悪いので病院へ行くと、末期癌であと2カ月の命と診断される。
その2カ月の間の男のあがき。二人の子どもをどうするか。別れた妻とまた暮らすものの彼女は病気がが治っておらず、こどもたちを任せられない。
工場で働かせている中国人たちの宿舎では一部屋に10数人がごろ寝している。せめて部屋を温かくと中古のストーブを入れたのがあだになり不完全燃焼で全員が死亡する。気をかけていた女性と赤ん坊も死んでしまった。
赤ん坊のいるセネガル人女性イヘにこの家で暮らしていいからと自分の家に連れて行く。イヘが子どもの面倒をみてくれるのを見て、持っているお金を全部渡して子どもたちを頼む。イヘはお金を持って荷物をまとめ空港へ行くがもどってくる。
ベッドに死を待つウスパルが横たわっている。イヘは戻ってきたよと言う。

ハビエル・バルデムは「007スカイフォール」の悪役だけでなく、「ノーカントリー」にも出ていると知った。原作のコーマック・マッカーシー「血と暴力の国」(扶桑社ミステリー)を買ったことは書いてあるが、なぜか感想は書いてなかった。読んだのは確かなんだけど。