ナンシー・アサートン『ディミティおばさま現わる』

「優しい幽霊シリーズ」3冊をNさんに貸していただいた。「ディミティおばさま現わる」はその一冊目。冷える夜に暖かい膝掛けと毛糸のソックスで落ち着き、熱いお茶をいれてクッキーなんぞをつまみながら読むのにふさわしい。子どもっぽいが上品で、乙女チックではあるが芯が一本通っている。

ロリ・シェパードは父が早く亡くなり、教師として働く母と二人シカゴ北西部で貧しく暮らしてきた。レジナルドといううさぎのぬいぐるみだけが友だちだった。母はいつもさびしいロリに〈ディミティおばさま〉の話をしてくれた。地味な物語なのに惹かれるものがり、ロリはその物語を全部暗記している。

ボストンの大学を出て仕事に就き、結婚したが離婚。そこへ母が亡くなった知らせがきてシカゴへもどると葬式や没後のことは母が生前に決めてあった。葬儀には白いライラックの花束がとどき、ロリは自分の知らない母の生活があったのを知る。
ボストンへもどってただ一人の友だちメグの世話で派遣で仕事をはじめる。アパートに入った窃盗に、レジナルドをずたずたにされる。また引っ越して陰気に暮らしているとき、法律事務所から一通の手紙がとどいた。ディミティ・ウェストウッド嬢が亡くなったことを知らせ、事務所に来て欲しいとあった。ロリはディミティおばさまは生きていた人と知ってびっくりする。
雨の降る中びしょびしょに濡れながら事務所を訪ねるとボストンでも最高の場所にある大邸宅である。
立派な屋敷に入るところで「あしながおじさん」を思い出した。あれはニュ−ヨークだったけどジュディが訪ねて行って執事が出てきて立派な書斎に案内されると、おじさんがいた。
そんな感じでウィリアム・ウィリス(大ウィルス)が待っていた。その前に息子のビルにも会う。

そしてロリはビルと二人でイングランド南西部、グロスターシャー州のコッツウォルズに行くことになる。ディミティおばさまが住んでいた家で出合うさまざまな出来事、ディミティおばさまと会話するし、不可思議なことが持ち上がるし、レジナルドが元のような可愛いうさぎに修復されているし。
ディミティおばさまは第二次大戦中に飛行機乗りの恋人がいたのがわかり、ロリの母とも戦時中にロンドンで出会ったのがわかる。

コッツウォルズを検索したら、おいしそうなウサギのクッキーが出てきた。
(鎌田三平訳 ランダムハウス講談社文庫 820円+税)

「ミステリーズ!」12月号に木村二郎さんの私立探偵小説『永遠の恋人』

木村二郎さんからいただいた「ジロリンタン通信」にジョー・ヴェニスもの新作が東京創元社から出ている雑誌「ミステリーズ!」12月号に掲載されているとあった。
私立探偵ジョー・ヴェニスが主人公の単行本「ヴェニスを見て死ね」が出たのは1994年、日本人がニューヨーク在住のアメリカ人を主人公にして書いたユニークなミステリだった。その増補文庫版が創元推理文庫から2011年半ばに再刊される予定とのこと(単行本版の7編にその後の2編を加えたもの)である。
来年半ばには読めるとしてもいま読みたい。木村さんは書店で見つかりにくいとおっしゃっていたが、他の本を買うついでもあったのでジュンク堂へ買いに行った。たしかに雑誌のところにはなかったが、〈エンタテイメント-ミステリ評論〉というレジのすぐ後ろの棚に数冊あるのを見つけた。「永遠の恋人」は74ページにあった。

おれ(ジョー・ヴェニス)のところにハスキーな声の女性が訪ねてきてハガキを何枚か見せ、差出人を見つけてほしいと依頼する。差出人は〈あなたの永遠の恋人〉と名乗っている。おれは彼女を尾行するものはいないか調べ、勤務先の上司や同僚に話を聞く。そうこうするうちに殺人事件が・・・

翻訳小説を読んでいるような錯覚に陥るが、ちょっと違うと感じるところがある。街の名前とかていねいで、わたしがニューヨークに行ったとして、ここかしら、この通りかしらと確認しながら歩けそうと思った。久しぶりにニューヨークが舞台のミステリを読めてよかった。
(「ミステリーズ!」12月号 東京創元社 税込1260円)

今年最後のSUBはピアノの歳森さんのツイートで

24日に今年最後のSUBと書いたが、今日また行くことになった。ピアノの歳森彰さんがツイッターに「無音ストリート。今日(水)は、大阪、SUBでの、ライブのため休みます。」とツイートされていた。歳森さんはいま毎日のように〈京都市地下鉄市役所前駅改札脇〉で演奏(無音ストリート)されている。それに行きたいと思っているうちに年末になってしまった。来年は行きたいな。
いまはセッションやライブをやめて専心されているが、大阪のSUBだけには出るとのことだった。今月はどうなのかと思っていたら、突然今日ということであわてて出かけた。

今日のメンバーは、西山 満 TRIO+1[西山 満(cell) 歳森 彰(P) 財 盛紘(B) 春田久仁子(Vo)] 。ピアノとベースとチェロという変わったトリオにヴォーカルが入った。客は少なかったけどそれぞれ楽しんでいてよかった。
春田さんのヴォーカルを聴くのは三回目だけど気持ち良かった。だんだん良くなっていく感じでこれからが楽しみ。
SUBがあるおかげでこんな素晴らしい音楽が生で聴ける。これを幸せと言わずしてなんと言う。

エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿 II』

サイモン・アークの事件簿Ⅱ (創元推理文庫)「サイモン・アークの事件簿 I」では、語り手の〈わたし〉は第一作「死者の村」のときは若い新聞記者だった。七十三人の村民すべてが崖から飛び降りて死亡、という事件の村に取材に行き、そこで出会ったシェリーと結婚する。その後、ニューヨークで〈ネプチューン・ブックス〉の編集者になり、編集部長から発行人まで出世して退職している。〈わたし〉は作品毎に年を取っていくがサイモン・アークは相変わらずの姿で〈わたし〉を事件現場に誘う。

今回もエドワード・D・ホックが自分で選んだ作品による短編集で、50年代が2編、70年代が1編、80年代と90年代が2編ずつ、2000年代が1編で合計8編が納められている。中心に読み応えのある中編「真鍮の街」が入っている。
最初から何気なく読んでいくと時代が違ってくるのがわかる。それは語り手の妻シェリーの態度で、はじめは夫がサイモン・アークに誘われて犯罪の現地へ行くのを応援していた。帰ってから冒険談を聞くのを楽しみにしていたようだ。年を経るにつけだんだん夫が誘われるのをいやがるようになる。
【わたしは妻のシェリーとの一悶着を覚悟しながら、彼と一緒に来たのだ。シェリーはサイモンのことをあまりよく思ってはいない。二千年のあいだ悪魔との対決を求めるために、地球をさまよい歩いていたという彼の主張を、若い頃のシェリーは冗談のネタにしていた。わたしと彼女が中年になり、サイモンが以前とほとんど同じに見える現在、その冗談は冗談でなくなってしまった。】(吸血鬼に向かない血)

最初の作品「過去のない男」はアークに誘われてメイン州へ出向く。まだ若い書き手の妻は気持ちよく送り出す。忘れていた「事件簿 I」を思い出させ物語にはまらせる心憎い出だしだ。
中編「真鍮の街」は〈わたし〉の友人ヘンリー・マーンのことを語るところからはじまる。仕事で出かけた〈わたし〉はニューヨーク州北部のバッファローから州南部のニューヨーク・シティへ戻る途中、通りかかったマーンの住むベイン・シティに立ち寄ることにした。裕福そうな家でマーンは歓待し、サイモン・アークに助けてもらいたいことがあるという。
行けないままに日が経ち、夫妻はロング・アイランドの浜辺で暖かい日射しを浴びているとラジオがベイン・シティで若い女性の死体が発見されたと告げた。〈わたし〉とサイモン・アークはベイン・シティへ飛ぶ。
その街は真鍮工場を持つベイン一族の街だった。ふっと昔見た映画「陽のあたる場所」を思い出した。アメリカの地方都市でその街を工場主の家族が支配している。この作品はエキゾチックな土地ではなくアメリカの地方都市の物語という点でも異色な感じがした。

その後は、テキサス州、インドのボンベイ、ロンドン、マダガスカル島、ニューヨーク州ダッチェス郡、イギリス南東部グレイヴズエンドとさまざまな土地でさまざまな不思議な事件を追う。オカルト探偵サイモン・アークだから不可思議な事件の調査を依頼されるのだが、解いてみればみんな科学的な結論に達する。
続編を早く読みたい。
(木村二郎訳 創元推理文庫 1000円+税)

エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿 II』で、ポカホンタスを知る

サイモン・アークの事件簿Ⅱ (創元推理文庫) 訳者の木村二郎さんにいただいた「サイモン・アークの事件簿 II」を読んでいる。オカルト探偵サイモン・アークが活躍する短編が8作あって、いま読んでいるのが「死を招く喇叭」。語り手とサイモン・アークはイギリス南東部のグレイヴズエンド(テムズ川の河口あたりの地域)で老司祭と地元の伝説について話し合っている。この町の歴史を知っているかと聞かれて語り手は「ポカホンタスはここで埋葬されたんですよね」と答える。イギリス人男性ジョン・スミスの命を救ってからほかの男性と結婚したアメリカ先住民の女性、夫とともにイギリスへ移って、1617年にここで亡くなった。
ええーっ、ポカホンタスって聞いたことがあるような気がするが、なんのことか全然わからない。あわてて検索したら長文の解説があった。
ポカホンタス(Pocahontas、1595年頃 – 1617年)はいまもセント・ジョージ教会の墓地に彼女の墓がある。ディズニー映画にもなっているそうだ。

音色と色気 SUBにて

今夜のSUBは、ベース西山満さん(78歳)、ギター竹田一彦さん(74歳)、ドラム海老沢一博さん(66歳)というトリオによる演奏。お店に入ったら「ここに座り」と一番前の席。ドラムの真ん前だったが、肝心のドラムの海老沢さんを知らないのであった。今夜行ったのは今年最後の西山さん&竹田さんの日だからなのでドラムが入るのねと軽く考えていた。それが大間違い、たいへんなドラムを聴くことになった。

演奏前に西山さんが42年前からの知り合いだと紹介されて演奏が始まった。うわっ、すごい! ものすごい!! 特にブラシの動きが変幻自在の音を奏でるのにはまいった。何十年ぶりかでこんな音を聴いた。70代、60代だからシブイなんてとんでもない。今夜の3人はみずみずしく色気のある演奏だった。ほんまに良かった。

終わってから海老沢さんとお話させてもらったのだが、「ドラム一筋でこられたんですか」なんて冷や汗ものの質問をしてしまった。帰って検索したらすごい方だったんでびっくり。バカな女なんて顔をせずに「これしかできない人間なんですよ」と答えてくださったが、ほんまに冷や汗もの。先に調べていけばよかったが後の祭り。でも衝撃が大きかったぶん感激も大きかった(笑)。

三郷市特産品 小松菜煎餅

埼玉県三郷市に住む友人から煎餅をいただいた。三郷煎餅と小松菜煎餅のセットである。煎餅といっても丸い平たいものでなく細長く、2本ずつ袋に入っている。約1×1×10cmの棒状のもので、見かけは煎餅というよりも〈おかき〉だと思った。なんで煎餅なんかな。
〈おかき〉を検索したら〈「せんべい」と「おかき」と「あられ」の見分け方〉という記事があった。
【せんべい」は原料で簡単に区別ができる。「せんべい」はうるち米、「おかき」と「あられ」はもち米からできている点で大きく違うのだ。】
そうなんだ、かたちはどうであれ、三郷煎餅&小松菜煎餅はうるち米でつくられているから煎餅なんだ。
そして、三郷市は小松菜の産地なんだって。だけど原料表示を見たら小松菜煎餅には小松菜は入っていない。食べたらおいしいけど小松菜の味はしないよ。袋には小松菜の絵が描いてある。
夜中の煎餅と番茶はおいしい。あとのことは考えないでおこう。ブログ書くために食べたんだもんね。

アガサ・クリスティー『五匹の子豚』

エルキュール・ポワロが主人公の作品を読んだのはほんまに若いころで、なにを読んだかも覚えていない。アガサ・クリスティーの本を数冊読んでいてそのうちにあったのはたしかなんだけど。
「五匹の子豚」というタイトルを見て「マザー・グース」やなと思ったけど、あれは「三匹の子豚」だったなと思う。で、軽い作品だと思って読み出したら軽くなかった。タイトルは軽く内容は重く。
ポワロは若くて美しい女性カーラの訪問を受ける。16年前、彼女が5歳のときに母親が父親を殺したとして逮捕され有罪判決を受けた後に病死した。カーラが21歳になったときに見せるようにと遺言された母からの手紙には私は無罪と書いてあった。愛する人と結婚しようとしているいま、なによりも真実を知りたいと思う。ポワロは引き受ける。

まず弁護士や警察官や裁判官を訪ねて状況を聞いていく。弁護人の言葉「・・・田舎の大地主で家に引きこもっている」ポワロの頭の中には伝承童謡の一節が響き渡った。 “この子豚はマーケットへ行った、この子豚は家にいた” ポワロはつぶやいた。「兄さんのほうは家にいた・・・」。事件の中心になった娘のことは「この子豚はローストビーフを食べた・・・」。
すべて母親キャロラインの犯行としか考えられない状況である。

次に関係者5人(五匹の子豚)を訪ねる。話を聞いたあとで5人に思い出したことを手記にしてもらう。そこからポワロの灰色の脳細胞(本書にはこの言葉はでてこなかったが)が活躍し出す。ポワロは私立探偵である。彼が言うには、私立探偵が訪ねていくと、男性は「失せろ!」といい、女性は探偵に必ず会うけど、会ったあとに「失せろ!」というんだって。

キャロラインの妹のアンジェラは冒険家として学者として名を挙げている。彼女がポワロの頼みにたいして「うん」と言わなかったとき、ポワロは小さな質問をひとつさせてくれといって聞く。事件のあった日に「月と六ペンス」を読んでいませんでしたか。なぜかと聞かれて「あなたにお伝えしたかったのです、マドモアゼル。ほんの小さな、つまらないことに関しても、わたしが魔術師のような力をもっていることを。・・・」

そして最後のシーンは五匹の子豚たちを一堂に集めて真犯人を指名する。
1942年に発表されたポワロもの長編の21冊目で、“回想の殺人” テーマの最初の作品だそうだ。昨日、雨の降る午後コーヒーとチョコレートをかたわらに用事をさしおいて読みふけった。今日はもう一度ゆっくりと味わった。渋い〜
(山本やよい訳 ハヤカワ文庫 860円+税)

雑貨店OMIYAGEはザ・テーチャーズの新作がいっぱい

今年のはじめにOMIYAGEではじめて見たハンドメイド小物ブランド「the teachers(ザ・テーチャーズ)」の雑貨たち。会期中に何度か行って手提げ袋、ペンケース、印鑑入れなんかを買った。印鑑入れはがま口型で布の柄がみんな違っていて素敵だ。結局1050円のを8個買って、義兄の葬儀のときに参列していた女組に配った。中元歳暮もクリスマスお年玉もしたことないので罪滅ぼし。
手提げ袋は見る人に衝撃を与える可愛らしさで、女子はみんな欲しがる。ペンケースもiPhoneを出すときにちらりと見せると、かわいい〜と言ってくれる。で、おもむろにOMIYAGEの場所を教える。

先日のパノラマで、あとから来たはしもっちゃんとお友だちが興奮してOMIYAGEに行ってきたと言う。そして一財産使ったって買い物を見せてくれた。可愛らしものがいっぱい。見てたらガマンできません。ハガキをもらってたのを思い出し今日行ってきた。
結局緊縮財政だから自分のものはなし。お世話になっている方にぴったりのセカンドバッグ、その他細々と妹や姪たちへのプレゼントを買った。来年そうそうはまだやっているそうだからお年玉もらったら行こう(笑)。

バーバラ・ヴァイン(ルース・レンデル)『運命の倒置法』

この本の前に読んだ「階段の家」はずいぶんと時間がかかったが、今回は前より長いのにわりと早く読み終わった。
イギリスの田園地帯サフォークのカントリーハウスに住む夫婦が、死んだ飼い犬を埋葬しようと広い庭園中の動物用の墓地へ行く。とにかく広い庭園で池があり林が三カ所ある。20エーカーもの土地を所有していると所有物の全容を見極めるのに時間がかかると記述がある。20エーカーってどのくらいなのかしら。最後に埋葬されたらしい犬塚の右側を掘っていくと小さな骨がいくつも出てきた。「見たまえ、こいつは犬の頭蓋骨ではないだろう? 猿のでもないな?」

犬でもない猿でもない頭蓋骨の出現で、当時その屋敷の持ち主だったアダムの現在になる。妻と娘のいるコンピュータ販売業者だ。そして産婦人科医のルーファスは妻マリゴールドがいる。薬局店員でインド人のシヴァはいまは妻のリリがいる。その他、アダムの元恋人のゾシー、家事をしきっていたヴィヴィアンもいた。
その屋敷はアダムの祖父のものだったが、遺言で父を通り越し孫の手にわたった。土地と屋敷はあっても現金がない彼らは家具や食器を売って一夏を過ごす。彼らの自堕落な暮らしぶりがしつこく描かれる。そして現在の彼らの姿と交差して息苦しい展開となる。そして事件が起こる。

彼らは事件直後に別れてそれぞれの人生を送ってきた。新聞記事で頭蓋骨の出現を知った彼らは連絡し合って対策を考える。過去は現在の生活を壊していく。
いまの持ち主は屋敷を売りに出し、最後は新しい住人がやってくる。不気味なうまい結末。
(大村美根子訳 角川文庫 680円)