ミステリーとロマンス「アダムはコーデリアと結婚すべきか?」

友だちがP・D・ジェイムズが書いた「アダムはコーデリアと結婚すべきか?」という文章のコピーを送ってくれた。単行本の大きさで107ページから4ページ分、次のページには他の作家が他のことを書いている。女性ミステリ作家によるエッセイ集なのかな。まあそういうことは後ほど聞いたらわかるからおいといて。

「アダムはコーデリアと結婚すべきか?」というタイトルが気になる。それも作家本人の言葉だから。
いま読んでいる「黒い塔」の冒頭では、アダム・ダルグリッシュは病気で入院していて、最初の予想よりは早く退院できた。入院中に届いた見舞いの花束にとても気に入ったのがあって、メモを見たらコーデリア・グレイ(「女には向かない職業」の女性私立探偵)からのものだった。そのあと個人的な依頼に応えて出かけた海辺で事件があり、本の最後でダルグリッシュはまた入院するはめになる。そのときに他人が聞くと「リア王」のことをうわごとを言っていたそうで、それは「コーデリア」がリア王の娘だから。
まあ、そんなところを読んだものでよけいに気になりだした。

イギリスにもアダムとコーデリアのことを気にするファンがたくさんいるんだとうれしくなった。まだ未読本の中に、二人がロンドンのレストランで食事したりとか、アダムのアパートからテムズ川を眺めたのちベッドに入るとか、そんなシーンがないか待ち望んでいる。きちんとダルグリッシュのシリーズを読んでいればこんなことは20年も前にわかっていることなのに。
ミステリーを読んでいるのやら、ロマンスを読んでいるのやら。

堀江でランチ、心斎橋で午後のお茶

ヴィク・ファン・クラブの古い会員Yさんが福井県から朝早く大阪に子連れできた。子ども達はUSJに行き、Yちゃんは9時から1時まで大阪中央図書館で読書。そしてわたしは1時に図書館前で待ち合わせ、いっしょに堀江へ散歩した。
目指したジャマイカン?ジャークチキンのお店ベースは臨時休業していて残念だったが、近くのインド料理店でカレーランチを食べたのがおいしかったのでオーケー。ナンが大きくて全部食べられなくて残念だった。
ベースの並びにある洋品店ジョローナに寄っておしゃべりして、娘さんたちにお土産の石けんを買った。

アメリカ村三角公園前をきちんと通ってアップルストア前に出てから、話に聞いたブルックリンパーラーへ。ここなら道を間違えるはずがない。御堂筋に面した、昔は上のほうに美術館があったビルだ。正面に狛犬さんが2匹座っている。
階段を降りた地下がすごく広い。すぐにテーブルに案内してくれて気持ちよい応対。チョコレートケーキとコーヒーを頼んだら、でっかいケーキがきた。しゃべりながらケーキを攻略したが、最後はもうお腹いっぱいで苦しい(笑)。
おしゃべりにけりがついて外に出たら夕方の気配だ。
ぶらぶらとまだしゃべりながら、ハンズへ行ってそれぞれの買い物があるので別れた。
ハンズで台所用品を買ってちょっとよそを見たらピンクの小花もようのマグカップが目につき衝動買い。いま、それでコーヒー飲んでいる。

福井名産のお土産 雲丹醤(うにひしお)と和風ドレッシング、明日からの食卓が賑わうでしょう。
しかし、アメリカ流でっかいケーキの威力がすごくて、晩ご飯を食べられずに爆睡30分。目が覚めたけど今日はもう食べるのはやめて早めに寝よう。
(昨日14日に書いたのをアップするのを忘れてました。これからアップ15日)

P・D・ジェイムズ『ある殺意』

ダルグリッシュ警視もの長編第2作「ある殺意」(1963)を読んだ。もう50年も前の作品だけど、古びているはずはないという思いは裏切られなかった。することがいっぱいあるのに手放せなくて、なんかもう必死で読んでいた。
第1作の「女の顔を覆え」(1962)はロンドンに近い田舎のカントリーハウスでの事件だった。今回はロンドンの精神科診療所での事件である。

ダルグリッシュは出版社のパーティに招かれていた。ダルグリッシュは警察官であると同時に詩を書き詩集を出版している。1時間ほど経ったとき、「女の顔を覆え」の事件の現場であるカントリーハウスの住人だったデボラがいるのに気がつく。デボラは母の死のあとロンドンの出版社で働いていた。話していて食事に誘いたいと思っているうちに警視庁から事件だと電話がある。すでにマーティン部長刑事は現場のスティーン診療所に行っているという。

ボーラム事務長が地下の医療記録保管室で殺されているのが発見された。ダルグリッシュが到着すると、胸をノミで刺されたボーラム事務長の死体があった。ノミは用務員ネーグルのものだった。ダルグリッシュは事務長の部屋で全員の聴取をはじめる。
診療所で働いているいろんな立場の人たち、院長、医師たち、心理学者、ソーシャルワーカー、アートセラピスト、看護師、タイピスト、用務員、との会話がいい。特に雑用係のエイミー・ショートハウスさんにはすごく親しみを感じた(笑)。

聴取が地味で長いから飽きるかなと思ったが全然そんなことはなくおもしろく読んだ。殺された事務長の頑なところがだんだん明らかにされていき、枝葉末節みたいな話が重要になって絡んでいく。すごい創作力に圧倒された。
シリーズを読み終ったら再読しよう。
(青木久恵訳 ハヤカワ文庫 640円+税)

P・D・ジェイムズ『女の顔を覆え』

P・D・ジェイムズのアダム・ダルグリッシュ警視長ものが大好きだ。なのに読み残しがずいぶんある。最初に読んだのが2010年に友だちが貸してくれた「秘密」だった。それから図書館で見つけると読んできたが、先日調べたら初期の本で6冊も読み残しがあった。アマゾンで最初の2作を買い、次の2作を注文中。それが着いたら最後になる2冊を買うつもり。そしたら全部読了である。アマゾン中古本様々だ。

途中からダルグリッシュ警視長になるが、本書「女の顔を覆え」(1962)では警部で登場する。すでによくできる警察官と認められているようで、落ち着いて事件に向き合う。

ロンドンにほど近い田舎のカントリーハウスで暮らす一家は経済的に行き詰まって、いままでの生活を維持するのに苦労している。
寝たきりの当主を夫人のエリノアが看病している。息子のロンドンで医学の勉強をしているスティーヴン、結婚したが夫に死なれて家にもどっている妹のデボラの4人家族に、看護婦と料理人とメイドのサリー。
サリーは未婚の母で子ども連れで働いている。施設からの紹介で最初はおとなしかったが、最近は本性が出てきて、デボラや雇い人たちとも波風が立っている。

毎年行う園遊会が今年も催され、近隣の人たちがたくさん集まって盛況だ。そこへサリーがデボラと同じドレスを着て現れ、会場に波紋が起きる。
終わり近くにスティーヴンがメイドのサリーと婚約したと発表した。

その翌朝サリーがベッドで殺されているのが発見される。
ダルグリッシュ警部が担当者として出向き、家族に質問をはじめる。
(山室まりや訳 ハヤカワ文庫 640円+税)

アレハンドロ・アメナーバル監督・脚本・音楽・製作『海を飛ぶ夢』

実在の人物ラモン・サンペドロの手記「地獄からの手紙」(1996)をもとにした映画(2004)で、全身不随の主人公が尊厳死を求めて闘う姿を描いている。

ノルウェー船の船員だったラモン(ハビエル・バルデム)は25歳のとき事故で首から下が不随となった。それ以来、父と兄夫婦とその息子の世話になって25年にわたり寝たきり生活をしてきた。自分自身で死ぬこともできず尊厳死を望むだけの毎日。
尊厳死団体のジェネが弁護士のフリア(ベレン・ルエダ)を紹介する。フリアは杖をつきながらも住み込んでラモンに接し、彼が文章や詩を書いているのを知る。口に咥えた棒で操作するパソコンと甥の協力で清書やプリントアウトしたものを嫂が大切に保管してあった。フリアは読むなり感動し本にしようと勧める。
ふたりは話したり仕事したりしていて、フリアがタバコを吸うとラモンが一服吸わせてくれと頼む。なんとも言えない色気があふれるシーン。
ラモンがそろそろと立ち上がり窓辺へ行く、それから海へ飛ぶ。ラモンとフリアは海辺で抱き合う。

フリアはラモンの家の階段で倒れる。実は大病を患っていて最終的には痴呆症になるとわかる。彼女はラモンの尊厳死に協力すること、自分も尊厳死の道を選ぶことを決心し、実行はラモンの本を出版したときと約束する。

フリア役のベレン・ルエダがすごく美しくて彼女を見ただけで満足だった。目尻に皺もあるのだけど上品な昔のハリウッド女優のような。

アレハンドロ・アメナーバル監督の作品は「オープン・ユア・アイズ」とショートフィルム「ルナ 月は見ていた」だけしか見ていない。もっと見たい。

誕生日、堀江を経てアメ村あちこち

午後シュリットで今日は誕生日やねんと話がはじまった。「晩ご飯でも食べに行こうかと言うてるねん」「どこへ行くの?」「アブサンはどうかな」「アブサンええやん。ご飯食べた後に、チョコレートケーキにロウソク立ててもろたらええねん。あそこのケーキはうまいで」という具合に話が進んだ。「ろうそくの本数が多すぎて立てられへんし、立っても消されへんで〜」と口が悪いけど真実(笑)。

夕方早めに家を出て歩いて堀江を通りアメ村、開店そうそうのアブサンへ。ビール、サラダ、ハム盛り合わせ、ピクルス、ひよこ豆のコロッケのピタパンサンド、そしてガトーショコラとコーヒー。とってもうまかった。もちろん、ろうそくはなし(笑)。

次にすぐ近くにあるコンピューファンクは木曜日はバー営業しているはず。店主とお客さんとしゃべって1時間ほど。それからミナミに向かってバー カリフラワーに歩いて行った。若い人たちと出会えてよかった。
カリフラワーはアメリカ村スクエア 大阪センタービル 地下1階にある。
同じビルの地上1階にあるのがいつも混んでて大繁盛の大阪の味 味穂(あじほ)。ここで、ドテ焼き、タコ焼き、焼きそば、そしてビール。
お腹いっぱいで帰ってきた。いい誕生日だった。さあ、また明日からがんばろ。

クリストファー・マンガー監督『ウェールズの山 』

8月29日の大阪翻訳ミステリ読書会の課題本ベリンダ・バウアーの「ラバーネッカー」はウェールズに住む少年パトリックの成長物語でもあった。作者のベリンダさんもウェールズに住んでおられる。そのせいか、なんとなく背景にウェールズの風景を感じた。ほんまに、なんとなくウェールズ(笑)。

25年くらい前のことだが「イギリス児童文学研究会 ホビットの会」というのに月に一度参加していた。ひと月に一人の作家を取り上げるので多作の作家だと大変だった。ウェールズを舞台にした作品はどのくらいあったのか、思い出すこともできないが、好きな作家もいた。会員の一人がウェールズ協会に入っていろいろと話してくれたことも忘れてしまったが、なんとなくウェールズ恋しい気分になって映画「ウェールズの山」(1995)を見ることにした。以前見てから20年近く経ってる。
おじいさんが孫の少年に話す物語になっているが、クリストファー・マンガー監督がその少年のように思えた。大人になって祖父に聞いた話を映画にしたって感じ。

1917年のある日、イングランド人が2人(若者アンソンがヒュー・グラント)南ウェールズの村にやってきた。彼らは地図作成のためファノン・ガルーの山の高さを測る。みんなが固唾を吞んで待つが、5メートルの差で「山」でなく「丘」とされたウェールズの「山」。
村の人たちは技師たちを村から出さないように頑張り(大人げないおもしろさ)、山上に土を運ぶ。途中で雷雨になるがめげずに、最後にはベティがアンソンを色仕掛けまでするが真面目なアンソン。日曜日は安息日だが牧師を中心に作業をする。アンソンは村人に合流する。
高齢の牧師が最後に倒れ亡くなり、積み上げた土の中に埋葬する。
日が沈みみんなは帰って行き、愛し合うアンソンとベテイはふたりで山に留まる。日が昇るのを待ち測量すると、ファノン・ガルーははっきりと山であった。

P・D・ジェイムズ『皮膚の下の頭蓋骨』

女性私立探偵コーデリア・グレイが主人公の作品は「女には向かない職業」と、この「皮膚の下の頭蓋骨」(1982)の2冊だ。20年以上前に2冊とも読んでいたが内容はすっかり忘れていた。先日ジュンク堂へ行ったとき本棚の間を散歩していたら目に飛び込んできたので買った。それがね、読み出したらおもしろいのなんのって、目が疲れるのもかまわずに読みふけった。昨日読了。
「女には向かない職業」の最後でニュー・スコットランド・ヤードのダルグリッシュ警部に呼び出されたコーデリアは秘密を抱えたまましっかりと耐え、もう帰っていいと言われるまで頑張った。

本書を読んだら、3回もダルグリッシュ警視の名前が出てきた! コーデリアはテームズ川に面した部屋の狭いベッドに独り寝だが、そこに姿を描く相手はただ一人、ダルグリッシュなのである。かりそめの狂おしい情熱はすでに終ったのだが。ひとりうなづくコーデリア・・・。
いまダルグリッシュ警視長はずっと上のほうにいる。「青い目の好男子で本庁のアイドルだ」と当事件を担当するグローガン警部が嫌みをこめて言うくらいの。

コーデリアは探偵事務所を続けていて依頼された仕事には誠意を持って取り組む。2人の助手がいて、仕事の中心は迷い猫の捜索である。
迷い猫を連れて依頼主の家に届けに行ったとき、居合わせた客(舞台女優のクラリッサ)がコーデリアの態度が気に入った。それでクラリッサの夫が仕事を依頼にコーデリアの事務所を訪れる。女優の妻に脅迫状が何通も届いていること、妻はこれからコーシー城の舞台に立つので、秘書・付き人として同行してほしいという依頼である。

ロンドンからスパイマスへ列車で、それからタクシーで波止場へ行ってランチに乗りコーシー島へ。コーシー城は濃い薔薇色煉瓦作りの重厚でしかも軽やかな城でコーデリアは一目で魅せられてしまった。
島を遺産相続したゴリンジは作家で1作目でベストセラー作家となり、その金で城を改修し劇場を作った。クラリッサはここの舞台に立つ予定である。クラリッサは勝手な女でコーデリアにも好き勝手を言う。
翌朝コーデリアはベッドの上で死んでいるクラリッサを見つけた。

SUBの西山さんが亡くなられて3年

ベーシストの西山満さんが亡くなられてはや3年。月日の経つのが早過ぎる。西山さんに妹とまで言うていただいたのに、最近はジャズから遠ざかりSUBへも行ってない。でも、西山さんは怒ってはれへんと思うのである。「好きなことをやってたらええねん、それがジャズ的生き方や」と言うてくれはると確信しているから。「顔を見せにおいでや」と言われてSUBへ行ったのと同じように、本やパソコンやKindle画面を読んでいるから。

1961年1月10日にアート・ブレーキーとジャズメッセンジャーズが来日公演したときにフェスティバルホールに行った。同じ場所に西山さんと竹田一彦さんがおられたのを40年を過ぎて知った。
わたしはその後、フリージャズにいき、パンクに走り、その後はクラシックなどを聞きつつ文学の世界にいた。
10年ほど前に30数年ぶりにジャズを聞きたくなりSUBへ行った。わたしが天王寺のマントヒヒにたむろしていたころに谷町9丁目にできたのがSUBだった。

2000年代になってSUBでジャズを味わって、しかも西山さんに可愛がっていただいた。くみちゃんと呼んでくれたときの笑顔を思い出す。

いまなにが好きと聞かれたら映画「 ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン」で知ったヒップホップの50 Cent (フィフティセント)と言うかな。YouTubeでたまに見聞きするだけだけど。

大阪翻訳ミステリー読書会 ベリンダ・バウアー『ラバーネッカー』

夕方から西梅田で開かれた読書会に参加してきた。翻訳者の満園真木さん、翻訳家のニキ リンコさんが加わった豪華な読書会であった。
「ラバーネッカー」の主人公の少年パトリックがアスペルガー症候群であることで、アスペルガー症候群の専門家のニキさんから、すごく勉強になる話をいろいろ聞けた。
ニキさんのことは心理学を勉強していた友だちがよく話題にしていたから、お名前は知っていたが本を読んだこともなかった。すぐ近くに座ってお話を聞けてよかった。本を読まなくっちゃ。
翻訳者の満園真木さんは若くてきれいで真面目な方だった。細かいミステリファンの質問にも快く答えておられた。
わたしはミステリ部分が苦手なので、もっぱら聞いていたが、いろんな質問があった。わたしが好きなのは、ミステリの中のロマンスである(笑)。この本でもパトリックと同級で好意を向けてきたメグという女の子がいてよかったと思ったので、そう言った(笑)。
(満園真木訳 小学館文庫 830円+税)