SUBの西山満さんが亡くなられた

8月31日午前6時16分、ジャズベーシスト西山満さんが心筋梗塞で亡くなられた。
夕方お別れに行ってきた。すでに多くの方が来られていたが、夕方からはとてもたくさんの方がお別れに来られたようだ。明朝11時まではSUBに安置され、お通夜、告別式はご親族でされる。

最後に聴いた西山 満 QUARTET[西山 満(cell) 歳森 彰(P) 財 盛紘(B) 弦牧 潔(D) ]が良かったので気持ちよい思い出を持っていられる 。毎月一度の彼らの演奏を欠かさずに行って31回目だった。そして毎週金曜日のギターの竹田一彦さんとのデュオにも毎月1回は行っていた。15年間続いたのが終わったんだ。竹田さんの気持ちを思いやるとせつない。

わたしが最初にSUBへ行ったのが2005年6月エディ・ヘンダーソンのときで、まだわたしは長い空白期間からジャズ復活をしていなかった。
それから間が空いたが2007年11月同じくエディ・ヘンダーソンを聴きにいった。そのときに西山さんがアート・ブレーキーを聴きにいった話をされていたので、わたしもそこ(1961年1月10日フェスティバルホール)にいましたと言ったのが始まりでSUBの仲間入りをさせてもらった。そして2008年1月からはずっと月に一回から三回は行っている。最初のころはうるさいくらいに、この彼女はアート・ブレーキーに行っとんたんやでと人に言いまくってくださった。そして、わたしはジャズに戻った。

わたしが西山さんにとってはとんでもないフリージャズやらなにやらを聴いていることで、ご機嫌を損ねたことはあったけれど、くみちゃんは妹(不肖の妹です)やとも言ってくださった。
あんたの文章は読みやすいと言ってブログとツイッターを愛読してくださっていた。

竹田さんがソロの日に聴きたい曲をリクエストされたとき、わたしは「グリーン・スリーブス」をお願いしたことがあった。単純な曲だけど文学的に好きなのである。その話を聞かれて西山QUARTETで何度も演奏してくれ、最後に聴いたのがよかった。それをもっと素晴らしいものにするとおっしゃっていたので楽しみにしたいたのに・・・

西山さんと竹田さんとわたしとが、1961年1月10日にそれぞれフェスティバルホールにいた。それをお互いに知ったのは47年後のことだった。なんかすごい。

西山満さんのご冥福をお祈りします。

マキノ雅弘監督『昭和残侠伝 血染めの唐獅子』

シリーズ中でこの一作「昭和残侠伝 血染めの唐獅子」(1967)だけが高倉健の役がかたぎである。
浅草の鳶職・火消しの鳶政(加藤嘉)の組は上野公園で行われる博覧会の仕事ができると喜んでいる。ところが仕事は建設業にも手を広げた阿久津組が役人を丸め込み一手にしようとしている。阿久津組の代貸し風間重吉(池部良)は異議をとなえるが押さえ込まれる。重吉の妹文代(藤純子)は花田秀次郎(高倉健)の恋人で戦役から秀次郎が帰るのを待っている。
秀次郎が帰ってきたら親方が亡くなっており、秀次郎はみんなに推されて鳶政の親方になる。芸者の染次は借金のために阿久津の妻になるところを音吉(山城新伍)が、まといを質に入れた金で助けようとする。まといを返してもらいに行った音吉は無惨に阿久津組に殺され、嫌がらせは増えるばかり。染次はは川に身を投げて死ぬ。
そこで立ち上がる秀次郎と重吉。前の3作と監督が代わって暗さがとれてわかりやすくなったが、つまらなくもなったという印象。藤純子はきれい過ぎて下町娘らしくない。

これでシリーズ9作のうち4作を見た。クーラーつけないで汗を拭きながら見ていたが、ふと気がつくと7月8日公開なのであった。あの頃は映画館も暑かったような気がするがどうだったろう。
「エンコ生まれの浅草育ち」という歌詞をいつも、エンコってどこのことやろと思っていたが、広くは浅草公園(公園を逆読みしてエンコ)、特に浅草六区界隈のみをエンコと呼ぶ説があるとか。

徳田秋声『あらくれ』と漱石の言葉

ふと徳田秋声の「あらくれ」をなんの関連もなく思い出した。関連があるとすればヤクザ映画とボディガードの荒っぽい小説のせいで、心があらくれてるんやないかと思ったから。
「あらくれ」は若いころに読んでついていけなかったことだけ覚えている。女主人公のあまりの男好きにおたおたした。いま検索したらいいページ(日本大百科全書)があった。おおよその筋書きがあって、〈みごとに客観化され、自然主義系の傑作となったが〉とあり、その次に、〈夏目漱石は「フィロソフィがない」と批判した。〉と結んでいる。秋声と漱石のことはかじっているだけだけど、この言葉どおりだと思った。そしてわたしは漱石寄り。
検索してよかった。夏目漱石の言葉を突然読めるとは思いもよらなんだ。

今夜はこれで気持ちが落ち着いたけど、昨夜なんか映画を見てカタルシスを得られなかったせいか、頭も体もどんよりしていた。お風呂に入ったら和むかと思ったら、よけいに原発事故のことを思ったり、今後の仕事や生活の不安がおそってきた。それでもすぐに熟睡したけど(笑)。

リドリー・スコット監督『ワールド・オブ・ライズ』

「デュエリスト/決闘者」 (1977) 、「エイリアン」 (1979)、「ブレードランナー」 (1982)、「レジェンド/光と闇の伝説」 (1985)、「誰かに見られてる」(1987)、「ブラック・レイン」(1989)、「テルマ&ルイーズ」 (1991)、「1492 コロンブス」(1992)。
リドリー・スコットの映画を検索したら、最初の8作をすべて見ていた。ほとんど映画館で見てあとでレーザーディスク(LD)を買って何度も見ている。「1492 コロンブス」でがっかりして以来、テレビで「グラディエーター」見ただけである。ほんまにがっかりしたのと、ほとんど映画を見なくなった時期が重なったんだけど。
「エイリアン」や「ブレードランナー」は優れた映画だと思うし好きだけど、いちばんのお気に入りは「誰かに見られてる」である。刑事のトム・ペレンジャーが大金持ちの令嬢ミミ・ロジャースの護衛をする。そうそう令嬢はヴェジタリアンだった。これと「テルマ&ルイーズ」はLDで何度も見ている。

前置きばかりだが、久しぶりのリドリー・スコット監督作品「ワールド・オブ・ライズ」(2008)は、はらはらしながら楽しめた。そういえば、ラッセル・クロウが体重を20キロ増やしてほしいと言われたという話が評判になっていたっけ。
CIAの敏腕工作員フェリス(レオナルド・ディカプリオ)は中東で活躍しているが、いつもアメリカからの上司ホフマン(ラッセル・クロウ)の指示を受けている。ホフマンはオフィスで仕事をしつつ、家庭で子どもの相手をしつつ指示を出し続ける。中東で仕事していてもワシントンから上司に衛星偵察システムで監視されているわけだ。太ったラッセル・クロウが不気味。
仕事中に犬に足を噛まれたフェリスは狂犬病の手当に行って看護士の女性と親しくなる。遊びではなくつきあいはじめるディカプリオ。彼女が誘拐されて救出に乗り出し捕まって拷問される。

楽しき雑談

「楽しき雑談」は中野重治の本のタイトルで、内容は忘れたがタイトルだけは覚えていて、この日記でもすでに使わせてもらっていると思う。このタイトル大好き。
今夜はヴィク・ファン・クラブの例会日だったが、大阪市観測史上最大の雨量だったくらいだから、だれも出てこないと思ったものの、そこは生真面目君のわたしのこと、ちゃんと6時にはシャーロック・ホームズに座っていた。
いつもギネスとなにかなのだが、今日はお腹を減らしておいてタイカレーとサラダとウーロン茶という食事メニュー。食べているさなかに京都からYさんが来た。京都は雨ではなかったそうだ。彼女はギネスとサンドイッチで遠出が楽しそう。わたしは食後にアップルサイダーをたのんでおしゃべりが止まらない。
先日ははずまない会話に、残り少ない人生の時間がもったいないと思っていらいらしたが、今日は雑談ほど楽しいものはないわと思いつつ笑い転げていた。
グループの男女がダーツを教えてもらって楽しそうにやっているのに、Yさんが「がんばって」と声をかける。次回は挑戦するかもね。そういえばOさんが去年来たときはダーツを楽しんだっけと思い出した。Oさんは12月に大阪でライブをやるのでまた会える。ダーツする時間あるかな。
最後はアイリッシュコーヒーで〆て機嫌良く帰ってきた。

カレン・キエフスキー『キャット・ウォーク』

女性探偵ものをT氏に貸していただいた3冊目。1989年発表で1996年に翻訳発行されたもの。わたしはまるで知らなかったが、「カタパルト」(1997)、「浮遊死体」(1998)、「焦がれる女」(1998)、「デッド・エンド」(1998)と「キャット・コロラド事件簿シリーズ」として続けて福武文庫から出ている。(※カッコ内は日本での出版年)
訳者あとがきによると、キャット・コロラドはサクラメントの私立探偵で、サクラメントはカリフォルニア州のほぼ中央、「東京から見た浦和みたいなところ」だそうである。

親友チャリティが夫サムと離婚するつもりだが、サムは20万ドルをギャンブルですってしまったという。調べてほしいと頼まれたキャットは友だちの仕事はしたくないのにと思いながら腰を上げる。ラスベガスへ飛んだ彼女は幼なじみのデックに偶然出会う。デックはどうも危ない仕事をしているらしい。
ホテルのトイレで女性の死体と出くわすが、調べると女性はサムとつきあっていた。キャットはサムに会いにいく。その後、サムが建築現場で落下し死亡する。
新聞記者のジョーと知りあい意気投合し食事によばれて妻のベティと知りあう。そこには刑事のハンクがいた。ハンクは自分が乗る車に妻が乗って殺されてから独り身を通しているが、ようやくキャットを見て新しい人生を生きようと思う。

キャット「あたしは5マイル走れるし、2マイル泳げるし、玉突き台を自分で動かすし、荒っぽい言葉もしゃべれば、ワイルド・ターキーもあおるし、激辛メキシコ料理だって食べるわよ」
ハンク「いいね、まさにぼくの理想のタイプだ」
(柿沼瑛子訳 福武文庫 800円)

深作欣二監督「仁義なき戦い 広島死闘篇」

「仁義なき戦い」を順番に見るつもりでレンタル屋にあれば借りることにしている。2作目「広島死闘篇」(1973)があった。
前回活躍した広能昌三(菅原文太)は呉に広能組をもったが、今回は主役を助ける役。刑務所にいるとき、暴れて独房に入れられた山中正治(北大路欣也)にそっとご飯を差し入れてやる。
刑務所から出た山中は無銭飲食して大友勝利(千葉真一)らに叩きのめされるが、村岡組組長の姪で戦争未亡人の靖子(梶芽衣子)に助けられ恋仲になり村岡組組員となる。姪との間が組長の知るところとなり、若頭松永(成田三樹夫)の指示で九州へ逃れる。そこで組長を射殺し広島へ帰ることを許される。
大友勝利は実父の大友長次(加藤嘉)から破門され、新たに大友組を作って派手に抗争を続ける。最後まで不気味ですごい。

とにかく俳優が若くてぎらぎらしていて、生きることは暴力を振るうこととばかりに生き生きしている。
わたしは「仁義なき戦い」1作目を見てから、ヤクザ映画を見なくなったが、成田三樹夫が大好きだったのを思い出した。金子信雄、加藤嘉、素晴らしい役者が生きていたころ。成田三樹夫ももう亡くなったんだ。

オフ会で手渡しした会報の反響がうれしい

いったん涼しかったのも昨日で終わり今日は蒸し暑い。涼しい数日があっただけによけいに暑い。
今度大阪へ行くときに会いたいと春から言っていたHさんと、彼とはずっと前からネットで親しくしているヴィク・ファン・クラブ会員のNさんと、3人でシャーロック・ホームズでオフ会。

Nさんに会報を手渡したほうが早いと思って持って行ったのがすごく喜ばれた。1ページ1ページを丁寧に見て、それぞれの原稿についてコメントするのに返事をして、書いている人の説明をした。この会にはパンクロッカー、クラシック指揮者、テクノDJがいることや、いま福島のこどもたちのために頑張っている医師、モンゴルに核廃棄物処分場を作ることに対して反対運動をしている医師。そして翻訳家と多彩な人たちがいる。そしてさまざまな場所でそれぞれの生活している会員たち。改めて会報を続けて出そうと決意した。それだけどうしようかなと思っていたってことだが(笑)。

行きしにジュンク堂へ寄って、ロバート・クレイス「天使の護衛」とベンジャミン・ブラック「溺れる白鳥」を買った。両方ともRHブックスプラス発行。早く読みたい。

佐伯清監督『昭和残侠伝 一匹狼』

引き続いて第3作「昭和残侠伝 一匹狼」(1966)を見た。
古くからの銚子の漁港の網元浜徳と彼を助ける潮政(島田正吾)一家に対して、新興の川鉄一家は暴力と札束で、漁師らを自分の手中にしていく。武井繁次郎(高倉健)が病気の潮政の娘を助けてきたのはちょうどその最中だった。勘当した娘だからと会おうとしない潮政だったが、娘の墓前で義理を立てて会わなかったことを繁次郎に話し、繁次郎はここでやっかいになることになる。
一方、桂木竜三(池部良)は川鉄一家の世話になっている。近くで小料理屋をしているのが妹の美枝(富司純子)で、繁次郎に惹かれていく。
そして、川鉄一家の横暴が極まっていき、竜三は繁次郎と勝負するはめになるが・・・そして最後はふたりの斬り込みとなる。

最初のシーンでさしていた傘を投げ捨て警察署に入って行く池部良がいい。高倉健と池部良がストイックでひときわ美しい。そして古風な折り目正しい生き方を貫く潮政の島田正吾が絶品だった。

暗いつらい映画だ。昭和初期という時代設定と製作された60年代と原発事故の現在とが重なる。

アン・クリーヴス『野兎を悼む春』(2)

「野兎を悼む春」(1)を書いてから1週間経ってしまった。もちろん読み終えて、もう一度味わいつつ読んだ。ジミー・ペレス警部が穏やかにいろんな人と話しながら核心に迫っていくところがいい。そしてこの巻はペレスの部下サンディ・ウィルソン刑事の成長物語でもある。

サンディの祖母ミマの小農場の敷地内には遺跡があるということで大学生のハティとソフィが発掘作業をしている。ハティは鬱病で入院したこともある繊細な女性で、考古学という自分にあった仕事に生き甲斐を見いだし打ち込んでいる。

ミマに電話で誘われたサンディが小農場へ行くと銃弾に撃たれたミマが倒れていた。捜査の結果、サンディの従兄弟のロナルドが野兎を狙った銃弾がミマに当ったとわかる。ペレスは起訴に相当しないと考えつつ腑に落ちない点があることで迷い調べようと思う。
次にハティの死体が見つかり自殺とされるが、ペレスにはどこかおかしく思われ、地方検察官の捜査許可をとる。

ロナルドの妻アンナはイングランド人だが、この島で伝統工芸品をつくっていこうと考えている。紡いだり、機織りしたり、編んだりしたものをインターネットで売り、滞在式講習会も開きたいと、赤ん坊が生まれて張り切っている。
サンディの母イヴリンは地域評議会の議長とか地元のプロジェクトに熱心に関わっている。でも農場の収入が少ないからやり繰りに追われている。
昔ながらの島でありながら、少しずつ変わっていこうとする島の人たちだが、船を持って漁業に従事している者は恵まれていて、農業者はいまも貧しい。

ペレスは画家のフランと結婚したいと思っているが切り出せないでいる。今回は本人はなかなか出てこずにペレスの心の中にいるのと電話で話すぐらいだ。それも電話を娘のキャシーがとってしゃべり続けたり。それだけペレスと母子の間に親密さがあるということだが。でも最後にはちゃんと島にくる。
(玉木亨訳 創元推理文庫 1300円+税)