ヴェラ・ヒティロヴァ監督・脚本『ひなぎく』(1)

ツイッターでフォローし合っているmasumiさんがプロフィールに使っていらっしゃる写真が気になって仕方がなかった。すごくおしゃれなんだけど意味ありげ。かなり以前にそれが映画「ひなぎく」の1シーンだということを知って、見たいと思ったが1966年のチェコスロバキアの作品と知って諦めていた。
今回もmasumiさんがリツイートされていてわかったのだが、東京ほかで上映されることが決まり、大阪はシネ・ヌーヴォで今日3日まで上映(夕方の1日1回)。去年の1月に監督のヴェラさんがお亡くなりになって一周忌上映なのである。知ったのはおとといの夜で行けるのは今日だけ。すぐに相方に「行く宣言」をして今日行ってきたが、関西一円の女性ファンが来るようなら最後の上映だから混むかと思って1時間早く行き整理券をもらった。それからいつも税務署に行ったときに入る喫茶店でコーヒーを頼んで時間調整。

シネ・ヌーヴォへ行ったのはなんとまあ15年ぶりなのであった。2000年の3月に「ロルカ、暗殺の丘」を見てからだ。
咳ひとつ聞こえない静かな映画館の画面に二人のマリエがあばれる。
最初のシーン、下着姿で戯れている二人ともマリエという名の美しい姉妹は自分たちだけで充足している。姉のマリエはひなぎくの花の輪を髪にのせてカワイイ。妹のマリエも姉と色変わりのドレス姿でカワイイ。
二人はお腹がすくと中年男を色気で引っ掛けてご馳走させて逃走する常習犯である。妹が引っ掛けて食事をしていると姉がやってきて輪をかけたいたずらをするが、どんどん度が過ぎていき男たちは困惑する。度が過ぎて止まるところを知らないのがすごい。
行儀の悪いことはなんでもやってしまうし、部屋の中を燃やしたり危険なことも好んでやってのける。
終わりのほうでは準備が整ったパーティ会場に忍び込む。ご馳走に手をつけだしたら暴走し、ケーキの投げ合い、酒の掛け合い、カーテンを引っ張ってドレス代わりに、シャンデリアに座って空中ブランコ・・・。ここまでいくと、どしたらいいのよ、このわたし・・・

「踏み潰されたサラダだけを可哀相と思わない人々に捧げる」という言葉が最後のシーンに出て終わり。
これは女性による女性を描いた映画だ。「ひなぎく」を見るとヌーベルバーグは男性の映画だということがよく納得できた。
(製作:1966年 日本公開:1991年、リバイバル上映:2014年)

ジャン・コクトー監督『美女と野獣』

偶然古書アオツキ書店で手にしたジャン・コクトー「美女と野獣 ある映画の日記」を読んだらおもしろくて映画を見たくなった。たしかDVDを持っているはずと探したらお気に入りの数枚といっしょに大切にしまってあった。最初に見たのはかなり昔でNHKのテレビ画面に震え上がるほどに感動したのだった。いまもその場面は脳裏に焼き付いている。
ずっと後になってからレーザーディスクを買ったときはうれしかった。そしていまはDVDがある。

「美女と野獣」は大好きなおとぎ話である。「ろばの皮」とともにこどものころから大好きで、いま持っているのは澁澤龍彦が訳した本で美しい日本語で読めてしあわせだ。

土曜日の深夜にひとりウィスキーを手にパソコンの前に座り、70年の歳月を経た映画を山ほどの製作中の苦心を思いつつ見ていた。人間が美しく、風景が美しく、光と影が美しい。
美女ジョゼット・デーがなんともいえず美しい。野獣で王子そしてベルを愛する近所の男を演じるジャン・マレーは美しくて声が独特。
野獣の城で壁から突き出た人間の腕が支える燭台の数ある蠟燭のゆらめき、部屋のあちこちに置かれた胸像は向きを変えたり微笑んだりする。ドゥドゥ扮する狩りの女神ディアーヌの像は矢を射る。美しくてファンタスティック。
日記を読み映画を見たあとで検索したら、いろんな記事や解釈が出てきて勉強になった。
「La Belle et La Be^te」1946年フランス映画
監督・脚本;ジャン・コクトー 原作:ボーモン夫人 撮影:アンリ・アルカン 音楽:ジョルジュ・オーリック

マイケル・ウィンターボトム監督『スティーヴとロブのグルメトリップ』

「スティーヴとロブのグルメトリップ」(2010)は、とても変わっていておもしろい映画だった。イギリスの人気コメディ俳優のスティーブ・クーガンとロブ・ブライドンが本人の役で出ている。イギリスBBCで放映されたTVシリーズを再編集した映画化なんだって。

スティーブが受けた仕事は1週間北に向けて旅をし毎日その地の有名レストランで食事を味わうというものだった。
二人は四駆でロンドンを出発し湖水地方の美しい景色の中を美味を味わいながら1週間の旅をする。美しい景色の中を車は走っていく。二人がとにかくよくしゃべるので最初はなにを言ってるのかわからない。字幕を追って理解しようとがんばってせっかくの景色を楽しむ暇なし。途中からは諦めてわかる範囲でええわいという心境になった。マイケル・ケインの真似が多かったのはそれだけイギリスで人気がある俳優だからだろう。
イギリスの田舎を車は走り、ワーズワースやコールリッジの詩を暗唱することもありケイト・ブッシュの「嵐が丘」を歌うところもあった。この近くが嵐が丘だというセリフにここがヨークシャーかと感極まったわたし(笑)。

車を降りて岩山に登るところ、携帯電話は湖のそばでなら通じると言われて美しい湖水まで行くとかよいシーンがいっぱい。
帰りにマンチェスターのスティーブの両親の家に寄るところもよかった。
ずいぶんと変わったおもしろい映画だった。

ジャン・コクトー『美女と野獣 ある映画の日記』を読みながら

昨日アオツキ書店で買った本を他の本をおいて読んでいる。全部読むつむりはなく気がすむところまで読むつもり。そしたら読みかけのミステリにもどることにして読み続ける。
好きな映画の中でも飛び抜けて好きな映画の製作日記だ。どんな「美女と野獣」の映画が作られてもこれ以上の「美女と野獣」(1945)はないと思っているくらいに好きだから、どのようにして撮ったのか興味がわく。

ベル(美女)役のジョゼット・デーのことなんだけど、この映画でほれぼれしたのだけれど、他の映画に出ているのか気にしてなかった。いまわかったことは、コクトーの「美女と野獣」と「恐るべき親たち」に出演後、マルセル・パニョルと結婚して離婚。その後ベルギー人の実業家と結婚して映画・演劇界から去ったとのこと。それで以後の彼女の映画はないのだといまごろわかった。
もひとつわかってうれしかったのは、写真がたくさん収録されているんだけど、ベルが家にいて女中のように働いているところは、フェルメールの絵の中の少女にそっくりだ。コクトーが意識してフェルメールの感じにしたって書いてある。いまごろわかったんだけど、なんか楽しい。

はじめてテレビで見たときの感動を思い出す。それからだいぶ経ってからレーザーディスクを買い何度も何度も見ている。いまはDVDがあるんだけどちょっとご無沙汰している。いろんなシーンを覚えていて、本に入っている写真を見ると懐かしい。
スタッフの名前を見ると、ルネ・クレマンが技術助言〔技術顧問〕、美術指導がクリスチャン・ベラール、撮影指揮〔撮影技師〕アンリ・アルカンと知ってる名前があるので、本文を読み進めばいろんなことを知ることができるだろう。

ノーラ・エフロン監督『ユー・ガット・メール』

何回も見ている大好きな映画。好きな映画の20番目くらいにはいるかも。ラブ・コメディ大好きだが押し付けがましいのに当たるとがっかりする。なかなか難しいところをクリアしている映画を見るとうれしくなる。そういう映画である。

メグ・ライアンほどラブコメディに向いた女優はいない。美女ぶらない好ましい美人。相手役のトム・ハンクスは男前とは言えないが好ましい男ナンバーワン。二人がインターネットでメールを交わす。実際にも会っている仲だがお互いがわからないところから話がはじまり、だんだん惹かれあっていく。

要するに「高慢と偏見」現代ニューヨーク版である。実際にメグ・ライアン扮するキャスリーンはいつも「高慢と偏見」を抱えていて、待ち合わせのカフェで読んでいる。ちょうど映画が封切られたころ、わたしも「高慢と偏見」を20回くらい読んでいると言ってた。ここ数年はなぜか読んでなくて、コリン・ファース演じるダーシーさんのDVDもしまい込んだままである。暖かくなったら出番がくる予感がする。

ジョン・ マクティアナン監督『プレデター』

知人のブログを読んでいたら今日は映画の話だった。アーノルド・シュワルツェネッガーの「プレデター」が好きで100回くらい観ていると書いてあったのでびっくりした。わたしはその題名は知っていたけどどんな映画か知らないのだから。
1987年のアメリカ映画ということは28年前か、ブログの人は少年時代から見て感激しっぱなしだそうだから、どんなのか気になる。これは見なくては。

わたしが「エイリアン」を最初に見たのはまだ泉ヶ丘に住んでいたときで(35・6年前の話)、通勤電車が難波駅に入るときに看板が目の前にあった。毎日看板を見ているうちにだんだん見に行く気になったのを思い出す。終わってからうなぎを食べに行こうと言っていたが、うなぎの気分にならなかったことが忘れられない。

検索しているうちに〈映画『プロメテウス』『エイリアン』『プレデター』『エイリアンVSプレデター』のストーリー時系列まとめ〉というのがあって勉強になった。次は「プレデターズ」を見ることになりそうだ(笑)。そのあとにも続々とあるじゃん。あっ、「プロメテウス」は見ていたっけ。

アーノルド・シュワルツェネッガーは好きではないが、寡黙で強い軍人を演じてぐんぐん引き込むところはやっぱりすごい俳優だ。高度な技術を持つ地球外生命体・プレデターに襲われて戦う。腕の太さ、首のたくましさ、そして走り泳ぐ肉体の強さは好きではないがすごい。

フォレスト・ウィテカー監督『微笑みをもう一度』

日曜日だけどいつもと同じくパソコン相手にぼちぼちなんかやっている。今夜は日曜日らしく映画でも見ることにしよう。
ということで、フォレスト・ウィテカー監督3作目の「微笑みをもう一度」(1998)を見ることにした。サンドラ・ブロック主演でその母親役にジーナ・ローランズ(どういうことで出演することになったのか気になる)。
フォレスト・ウィテカーはクリント・イーストウッド監督・製作の「バード」(1988)でジャズサックス奏者のバードことチャーリー・パーカーを演じてすごくよかった。そのとききちんと名前を覚えた。評判になったニール・ジョーダン監督の「クライング・ゲーム」は映画館に行ったのだがあまり好きではなかった。
いま検索したらたくさん出演作があって、最初のほうのはかなり見ているがどの役とか覚えがない。わたしには「バード」のフォレスト・ウィテカーだ。

始まりはテレビの公開番組で親友が夫と愛し合っていると告白したのを夫も肯定し、なにも知らなかったバーディ(サンドラ・ブロック)はショックを受ける。
彼女は小学生の娘を連れてシカゴから出身地のテキサスの田舎町にもどる。母(ジーナ・ローランズ)は暖かく迎えて娘と孫の様子を見守る。
町の人はみんなテレビを見ていて事情は知れ渡っている。昔から好いてくれていたジャスティン(ハリー・コック・ジュニア)はいまも独身で大切に接してくれる。

ホットチョコレートのちラブコメ〜アン・フレッチャー監督『あなたは私の婿になる』

用事で四ツ橋まで行ったので帰りに堀江散歩してきた。お正月から散歩に行きたかったのが1月終わりにようやく実現。ベースでホットチョコレートを飲んで店主手作りのケーキをお土産に買った。次にセレクトショップ ジョローナで布カバンと贈り物用石鹸を買った。どっちも久しぶりなのでよくしゃべって楽しかった。
帰ったら晩御飯ができていた。根菜の煮物とけんちん汁と漬物の簡素なご飯だったけどうまかった。

コーヒーを淹れてケーキを食べながらラブコメディを見ることにした。先日見た「ミレニアム」で気持ちが煮詰まっているからほぐさないと・・・。で選んだのがこの映画なのだが、タイトルがナンギ、原題は「The Proposal」(2009)。
サンドラ・ブロックは好きな女優だ。宇宙で苦労するのもよかったが、どっちかというとラブコメに出ている彼女が好き。
ニューヨークの出版社の管理職マーガレットは孤独に育って猛烈に働き40歳でいまの地位にいる。カナダ生まれのためビザの申請がいるのを忘れていて国外退去を命じられる。部下のアンドリューは3年間彼女の部下として働いてきた。マーガレットは扱いやすい彼と擬装結婚して難を逃れようと企む。
二人はアンドリューの故郷アラスカに向かう。実家は大金持ちで大家族だった。祖母と母に暖かく迎えられ偽装の夫婦の間はだんだんと近づていく。
一波乱も二波乱もあってうまく落ち着いた。

ニールス・アルデン・オプレヴ監督『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』

2009年の作品だから5年前だ。そのころ評判はいっぱい見聞きしていたが、なんとなく見る気が起きなかった。口コミで推す人が周囲にいなかったのもわたしの弱点だけど、みんなが騒ぐものは見ないという天邪鬼、これも弱点やね。
スウェーデンのミステリはたくさん読んでいるが、その中でもいちばん読まれている本を読んでいなかったと反省しきり。いまは映画でお腹がいっぱいになったので、落ち着いたら全巻買って読もう。

「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」ではジャーナリストのミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)が主人公で、彼が苦闘しているのをネットで知った天才ハッカーのリスベット(ノオミ・ラパス)が連絡してきて、ミカエルが命がけでやっている仕事に協力する。命を賭けて得た信頼と愛で事件を解決したが、ミカエルにはジャーナリストの恋人がいた。リスベットは大金を手にして国外に出る。

「ミレニアム2 火と戯れる女」「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」を昨日と今日とで見てようやく落ち着いた。
リスベットは外国から戻ってきた。
ミカエルはリスベットのあまりにもひどい生い立ちや不運を知り巨悪を暴こうと立ち上がる。その悪は現在にもつながっていて、ミカエルや雑誌社を脅かす。
ミカエルの妹が弁護士でしっかりとフォローして裁判闘争を進める。
リスベットの父親と腹違いの兄があまりにもひどい。そして後見人の弁護士のリスベットへの強姦がひどい。特殊機関の老人たちがリスベットを殺そうと襲いかかる。そして真実を知ったミカエルと雑誌社にも襲いかかる。
瀕死の重傷を負ったリスベットが病院で回復していく。担当医の毅然とした態度と善意とユーモアにほっとした。このお医者さんまでやられたら救いがないところだ。
リスベットは150センチ40キロという小柄である。わたしとたいして変わらないからスウェーデンではほんまに小さいやろな。
小柄な体で大男どもの暴力に挑むリスベットが素晴らしい映画だった。

ニールス・アルデン・オプレヴ監督『ドラゴン・タトゥーの女 ミレニアム 完全版』

デビッド・フィンチャー監督が好きだから彼が監督した「ドラゴン・タトゥーの女」(2011)を見たのだが、見ると欲が出てスウェーデン版も見たくなった。ところが3部作があって、他に「完全版」(2010)がある。どうなっているのと調べたら最初の1作目は153分で、完全版は27分の追加があって186分あるって。もちろん完全版を見るっきゃない。見終わったらこんな時間になった。
スタイリッシュなアメリカ版に比べてぐっと地味だけど真実味のあるスウェーデン版だった。
リスベット役はアメリカ版(ルーニー・マーラ)はちょっと美貌すぎて、スウェーデン(ノオミ・ラパス)のほうが現実味があった。
40年前に失踪したハリエットが見つかるところが全然違うが、どっちもうまい脚本だ。
主人公のミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)はお腹が出ているし美男子ではないが誠実さがあった。この役でダニエル・クレイグとどっちがいいいかと聞かれたらこっちだな。
世界中に男性による暴力にあふれているんじゃないかと思ってしまう展開だが、スウェーデンの女性たちはそれぞれが強く生きている。
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