A・S・A・ハリスン『妻の沈黙』(2)

しつこいくらいにジェラード教授によるジョディのセラピー場面がある。幼児体験を繰り返し質問される。父は薬剤師で薬局を経営していた。ジョディは年の離れた兄と弟の間の女の子で、親に可愛がられ兄はよく妹の面倒を見てくれた。ジョディは弟を可愛がった。しかしあるときから弟は変わり出して家族の手に負えなくなった。いまも常識人からみたら好き勝手な人生を送っている弟をジョディはいつも気にかけている。

入籍していなかったからトッドと別れると財産分与がないことを、相談した敏腕女性弁護士に指摘される。そのうちにトッドの弁護士から家からの退去命令書を送ってきた。30日以内に退去するように書いてある。ジョディは出て行く気持ちがない。ナターシャの父でトッドの友人のディーンから連絡がある。トッドのことを人の道を踏み外していると言い、会って話そうというのをジョディは断る。

結婚はしていなかったが、遺言状によって遺産はジョディのものになる。ナターシャと結婚したときに遺言書も書き換えられるだろう。
トッドが殺されたときは結婚式直前だった。当然、家も財産もジョディのものになる。しかも犯行時にはシカゴから離れたところにいた。警察はジョディに疑いの目を向ける。

A・S・A・ハリスンは2012年6月に本書が出版される前の4月に癌で亡くなった。デビュー作が遺作になった。
(山本やよい訳 ハヤカワ文庫 920円+税)

A・S・A・ハリスン『妻の沈黙』(1)

女性の横顔を描いた暗い色調の表紙と、「妻の沈黙」(原題 THE SILENT WIFF)というタイトルに惹かれた。

9月のはじめ、ジョディはキッチンで夕食の準備をしている。シカゴのコンドミニアムの27階で広い窓からは夕暮れの湖と空が見渡せる。夫のトッドが帰ってきて景色を眺めながら夕食。食前酒とワインとうまい料理と。
ジョディは45歳になったいまも若い女の気分で暮らしている。この瞬間に生きていて、いまの生活に満足している。トッドとの生活が20年も続いていてこれからも続いていくと信じている。足元にはゴールデン・レトリヴァーのフロイトがいる。

心理学を学ぶ大学生のジョディと、高校出で高い目的をもって不動産業で働いているトッド。二人は自動車事故で出会った。トッドは事業に成功しジョディは何不自由ない生活をしている。ジョディは自宅で午前中だけセラピーの仕事をしている。
大学卒業後ジョディはユング理論への疑念を消すことができず、実際的な見解を示すアドラーに興味を持った。そしてアドラー説の信奉者ジェラードのセラピーを受ける。子ども時代の話を聞きだされるうちにジョディの心のうちが現れる。

20年の間にトッドが何度も結婚を申し込んだのにジョディは受けなかった。子どもも生もうと思わなかった。最近はトッドは自分の子どもが欲しいと思っているようだ。
その夜、トッドは金曜日から釣りに行くから帰りは日曜日になると告げた。トッドはジョディを愛しているが、ときどき他の女性も好きになる。釣りには行かないとジョディにはわかっている。彼は高価な贈り物をくれた。
いままでは浮気されてもなにも知らないふりをしてきた。だが、今度の相手ナターシャは違う。ナターシャはトッドの友人ディーンの娘でまだ学生である。若い頃にトッドはディーンの両親にとても世話になった。そのナターシャが妊娠した。ナターシャは結婚式を挙げようと言い、子どもが生まれてから住む家をいっしょに探す。そして当然、離婚してくるよう要求する。

トッドが殺されたと警察から知らせの電話が入ったのは、ジョディがフロリダ州で開かれた学会に出ているときだった。
(山本やよい訳 ハヤカワ文庫 920円+税)

ヘニング・マンケル『北京から来た男 上下』(3)

サンは結婚し子どもが生まれ大家族の家長となって周りの人たちから尊敬された。書くことをやめずに膨大な日記を遺した。それから150年経った2006年の中国は毛沢東の時代を経て資本主義の時代となっている。サンの子孫ヤ・ルーの両親は文化大革命で苦労したが、いま姉のホンクィは政府の仕事につき、ヤ・ルーは企業家として成功した。
北京の近代的なビルにあるオフィスで秘書や部下を支配し、自分の出世と金儲けの邪魔になるものを暴力で排除していく。姉だって容赦しない。そしてサンの子孫としてやるべきだと思ったことを、とんでもない手段で実現する。ネヴァダとヘッシューバレンで。

ヘルシングポリの裁判官ビルギッタは、母の養父母がヘッシューバレンで殺された一人であることから事件が気になり、アメリカでの似通った事件のことを警察に話すが無視される。健康チェックで休暇を取らされたので大学時代の友人が中国へ行くのに同行する。

すごい本だった。最初は警察小説かと思って読み進めると、150年前の中国の貧民たちがアメリカへ連れていかれ、アメリカの大陸横断鉄道を敷く仕事に携わる話が延々と続く。スウェーデンで起こったすさまじい大量殺人のもとはここにあった。
150年前の中国から、現代の中国へ話は続く。
女性裁判官ビルギッタが語り部のような存在になっていて読みやすかった。

ヘニング・マンケル『北京から来た男 上下』(2)

1863年の中国、サンと兄グオシーと弟ウーの3人兄弟が海へ向かって広東への長い道のりを歩いている。生まれた村の貧乏小作人の両親のところへ地主の雇い人がやってきて日々の責務を果たしていないと責めた。翌朝、両親は木の枝に首を吊って死んでいた。サンが見つけて降ろして寝かすと、長老のよろよろの老人がいますぐに逃げるように言う。彼らは必死で逃げ出した。3人の中ではサンがいちばんしっかりしている。
とうに食べるものがなく落ちている野菜屑を拾ったりしてしのいだ。犬がついてきたのをついに殺して食べる。町へ出てきても泊まるところがなく道ばたで眠ると、眠っているうちに水を入れている竹筒さえ盗まれる。仕事を探して歩き回るが3人を雇うものはいない。
結局、声をかけてきた男ズィにだまされて船に乗らされる。体調が悪かったウーは殺されて海へ投げ捨てられた。
1863年は何万人もの貧しい中国農民が攫われてアメリカへ連れて行かれた年だった。大きな海を渡っても貧しさはどこまでもついてきた。

アメリカの大陸横断鉄道を敷く仕事に携わった彼らの長い奴隷のような生活が描かれる。睨まれるとニトログリセリンを使って山を壊す危険な仕事ばかりやらされる。そこを逃げ出したこともあったが連れ戻されよけいに厳しい労働を強いられる。サンとグオシーはひたすら生き延びることだけ考えてきたが、とうとう奴隷労働が終る日が来た。
エイクソンという砂金で金持ちになった白人が馬車で東部へ向かうのに料理と洗濯のできるものを探しているのを知り応募する。ようやくニューヨークに着き賃金をもらった。

リバプールからの船客に2人のスウェーデン人がいた。宣教師で中国へキリスト教の布教に行くので中国語を教えてほしいという。途中で兄が亡くなりサンは2人のスウェーデン人とともに広東へもどった。
2人と縁が切れたのち、質素に暮らせば充分のお金を手にしているので、広東で小さな家を借りひっそりと暮らし始める。読書と書くことが彼の生活となった。両親が首をくくってからの日々を詳細に書いていく。

突然、150年前の中国の話になったが、アメリカでの奴隷のような労働と、スウェーデン人が登場して物語がつながる予感がする。

心斎橋大丸で『赤毛のアン展』を見て

「赤毛のアン展」の入場券をYさんが送ってくださった。わたしは「赤毛のアン」はあんまり好きでないのだが、長い間愛読している村岡花子訳のジーン・ポーター「リンバロストの乙女」と「そばかすの少年」に敬意を表して行くことにした。

1時間に1台のなんば行きバスに乗って心斎橋へ。乗りさえすれば大丸の前が停留所なので便利だ。エレベーターでご希望の階はと聞かれて7階と答えたら他の人もみんないっしょに降りた。
午後の3時頃だからかあまり混んでなくてゆっくりと見られた。テレビを見てないしアンにあまり興味がなかったのだが、ガラスケースの中にアンの本と並んで「リンバロストの乙女」と「そばかすの少年」の初版が展示してあった。わたしがこどものときに父にもらったのはタイトルが「黄色い皇帝蛾」で訳者は男性で抄訳だった。全訳の初版を見るのははじめてなので感動した。

帰りにお土産売り場で姉と姪親子のお盆みやげにアンの手提げ袋とハンカチを買った。百貨店の地下でない売り場を見るのは久しぶり。エスカレーターで降りながらときどき売り場を見学した。
地下で食品を買ってから東急ハンズへ。台所用品と菊花線香を買って帰った。

ヘニング・マンケル『北京から来た男 上下』(1)

刑事クルト・ヴァランダーのシリーズ(創元推理文庫)を初めて読んだのは2005年で、それからずっと読んできた。シリーズは8作出ていてシリーズ外の「タンゴ・ステップ 上下」が同じ文庫に入っている。
「北京から来た男 上下」は文庫でなく単行本なので本屋で探すのに苦労した。

2006年のはじめ、降りしきる雪の中を一匹のオオカミがノルウェーとの国境を通り抜けてスウェーデン側に入ってきた。腹を空かせたオオカミは森の中を走り抜け小さな村ヘッシューバレンを通ると血の匂いを嗅いだ。近づいた家から死体を引っ張って道路まで運びがつがつ食べて姿を消した。

写真家のカルステンはヘッシューバレンの写真を撮るためにやってきてホテルに泊まり早朝出発した。山奥の村々や集落が過疎となって朽ちていく様子を写真に撮るための旅で、一人の老人が手紙で教えてくれた村に最後にやってきた。一軒の家でドアを叩くと返事がない。入ってみると人間の足が見えた。三軒目で裸の老人が死んでいた。カルステンは走って逃げた。もともと心臓が弱く車にもどって携帯電話をかけようとして胸に激痛が走った。声が出なくなってアクセルを思い切り踏み、対向車線に向かって行ってトラックと激突。トラックの運転手は瀕死の彼から村の名前だけを聞きとめた。
トラック運転手の聴取にあたったヒューディクスヴァル警察署の刑事ヒュッデンは、警察署への帰りに聞いた村を通ると雪道に斬り殺された片方の足のない死体があった。
警察署に連絡するとヴィヴィ・スンドベリが応じた。50代の体力のある優秀な女性警察官である。
最初の死体を調べると、大きな刃物かサーベルのようなものの傷が10カ所あるが、そのどれもが致命傷となり得た。村の家々からはだれも出てこない。
ヴィヴィはゆっくりと近い家まで歩き出した。このあとに3人の警察官が見たものはスウェーデンの犯罪史上類のないものだった。10軒の家にいたすべての人間が殺されていた。残った1軒から音楽が聞こえてカップルが応じた。周りの家で殺人があったと言うと「悪い冗談はやめてくれよ」という反応だったがヴィヴィは叱りつける。結局彼らだけ生き残ったのは、あとから村に入ってきたヒッピーだったから。二人は金融商品売買で生計を立てているという。

ビルギッタはヘルシングポリの裁判官で夫と4人の成人したこどもがいる。夫は弁護士だったが、性に合わないと辞めて鉄道の車掌をしている。
夫が持って帰ったタプロイド紙をふと見ると知った地名があった。彼女は亡くなった母親の書類を出して確かめた。母親はその村で養父母に育てられた。殺された村人の中に母の養父母がいるか知りたい。
年に一度の健康チェックの日、ビルギッタは血圧で引っかかり2週間の休暇をとることになった。
旧友の警官に電話してヴィヴィを紹介してもらう。ヴィヴィに連絡すると養父母の名前があるのがわかった。
さらに母親の書類を調べているとアメリカからの手紙が見つかった。パソコンで検索しているとアメリカのネヴァダ州と今回のヘッシューバレンとが似通っていることに気がついた。

7月26日の夜シャーロック・ホームズの隅っこの椅子に座って読み出して、以上の物語導入部まで一気に読んだ。
帰ってからすぐに続きを読めなかったが、数日後に読み出したらまた一気に寝食を忘れてというくらいに熱中した。おかげで目が疲れて体調悪し。これから一転して1863年の中国からアメリカの物語になる。
(柳沢由実子訳 東京創元社 上下とも1600円+税)

あんなに夢中で本を読めば

日曜日から喉がいがらっぽくてときどきエヘンとやっている。風邪を引いたというほどでもないのだが、たまに咳で目が覚める。今日はつるかめ整体さんへ行っていつも通りの治療を受けた。終ってから目の使い過ぎで目のまわりの筋肉が疲れていると指摘された。しんどいのはこのせいや。
実は先週の土曜日に買ったヘニング・マンケルの「北京から来た男 上下」がおもしろすぎる。上巻の半分を読み終えたところで、とにかくそのとき抱えている本を片付けようと、読みかけのマイクル・イネス「ハムレット復讐せよ」を読み終えて感想を書いた。そしたらツイッターで村岡花子訳の「リンバロストの乙女」が話題で、その前作の「そばかすの少年」もさっと読み直して紹介のようなものを書いた。本を持ってるジマンに過ぎないかもね。

ようやく読みかけの「北京から来た男」をものすごいスピードで読み終えた。ほんとにすごい作品で目の疲れなんかかまっていられなかった。その上にこの暑さと湿度の高さでは疲れて当然。今日は整体から帰って昼寝。自分では30分のつもりが2時間も爆睡してた。
今日は早寝して明日はいろいろ頑張ろう。今日も夜食はなし。明日の昼までは断食。

ジーン・ポーター『リンバロストの乙女 上下』と『そばかすの少年』

昨日ツイッターに「リンバロストの乙女」が河出文庫で出るというツイートがあった。ありがたくリツイートさせてもらったが、テレビドラマで村岡花子が人気になっているおかげらしい。うちはテレビがないが姉のところで土曜の昼に全部で3回くらい見たかな。母の故郷の山梨弁がなつかしいが、村岡さんは山梨出身なんやね。

わたしは「赤毛のアン」の良さがあんまりわからなくて、村岡花子訳というと「リンバロストの乙女」と「そばかすの少年」(1904)なのである。何度も書いているけど、誕生日プレゼントに父からもらった「黄色い皇帝蛾」(イエロー・エンペラー)をなくしてしまい、何十年か経って「イギリス児童文学研究会 ホビットの会」でこの本の内容(お弁当の話)が話題になったとき図書館勤務の会員に調べてもらった。千里の児童図書館にその本があるというので行って本を手に取りその場で読んだ。そしてお願いしてコピーしてもらった。2回に分けて受け取りに行ったっけ。コピー代が6000円かかったのも思い出である。

そのあとでに小さな本屋で見つけたのが赤いギンガムチェック柄のカバーがついた角川文庫のマイディアストーリーで、前作の「そばかすの少年」も手に入った。それからはこの3冊を大切に持っている。「黄色い皇帝蛾」は「リンバロストの乙女」の抄訳だとそのときにわかった。
今回復刊されるのは「リンバロスト」だけのようだ。「そばかす」を読めば「リンバロスト」が「そばかす」に続く物語ということがわかる。登場人物のその後とか。
そして「そばかす」の〈あとがき〉が詳しくて作者ジーン・ポーター(1868-1924)とその時代のこともよくわかる。
3冊出してきて昨日から読んでいるが乙女心を揺さぶる本だ。何度読んでもいい。

マイクル・イネス『ハムレット復讐せよ』(2)

登場人物にスカムナム・コートの所有者ホートン公爵の従兄弟で、財閥の大物ジャーヴァス・クリスピンがいる。この名前ヘンやな、ジャーヴァスもクリスピンも知った名前やと思いつつ読んでいたら、あとがきに説明があった。わたしの最も愛する作家エドマンド・クリスピンの作家名と素人探偵ジャーヴァス・フェンの名前は「ハムレット復讐せよ」のジャーヴァス・クリスピンからとったものだった。
ふたりとも良質なユーモアがある作家だと改めて思った。クリスピンの「白鳥の歌」と「愛は血を流して横たわる」をまた読もう。そして、ジョン・アプルビィ警部が結婚してからの物語は読むのは可能かしら。

いま翻訳小説読者の中で執事の人気が上がっているが、この作品に出てくつ執事たちも個性がある。
館の裏社会で別格扱いの地位にいる執事長ラウスの鬼気迫る働きにアプルビィ警部は助けられる。
園庭頭のマクドナルドは饗宴の間のバラ、大応接間のスイートピー、大回廊にはカーネーションと公爵に言われて、それでは自分の温室の花を見にくる客がいるからとカーネーションはやめてシェークスピアにちなんだ野の花を勧める。

未来は外交官のノウエルは広告業界で働くダイアナに気がある。散歩に誘い出して話しているうちに殺人の話になる。どんな野郎がと言ってダイアナに指摘される。女性蔑視の発言したかなとノウエルが聞くと「・・・ちょっとばかりおめでたいんじゃないかしら。あの警部さんだっておんなじよ。この事件はよほどの度胸がないとできないから、女性の仕業だとは思いつかないんだわ」「・・・あなたとわたしで女性陣を洗ってみましょうよ」と男の弱みにつけこみ女の手管を使ってノウエルをくどく。
公爵令嬢エリザベスも広告業界で働くダイアナも賢くて気働きできて腐女子ぽくていい感じ。
(滝口達也訳 国書刊行会 世界探偵小説全集16 2500円+税)

マイクル・イネス『ハムレット復讐せよ』(1)

物語はこの大邸宅の紹介からはじまる。シェイクスピアが生まれる30年前のロンドンにクリペンという男がいた。悪いことにも手を染めながらのし上がっていき孫の代では財界でひとかどの一族になり上がっていた。130年後に王政復古がなされるとクリスピン姓を名乗る。財閥として通るようになり、パリで名画の競売、シベリヤで毛皮のせりがあれば当主クリスピンが儲かる。ロンドンでバスに乗っても芝居を見てもなぜかクリスピンの懐にお金がころがりこむ。
クリスピン家はホートン地方ににおどろくべき広大な大邸宅スカムナム・コートをかまえた。

時代は第二次大戦前。その邸宅にたくさんの来客が訪れはじめた。当代を代表する人たちが滞在して、「スカムナム・コートにて上演されたる悲劇ハムレット」に出演する者あり、観客として来た者もあり。
ホートン公爵家の令嬢エリザベス・クリスピンがオフェリアを演じる。ハムレットは俳優クレイが演じることになった。
何日もかけた準備と稽古が終わり、芝居が始まる。第三幕第四場、ハムレットと王妃が口論するところで銃声が・・・。

かたや、ロンドンのスコットランドヤードの敏腕警部ジョン・アプルビィは、その夜はバレエ「プレサージュ」を見に行っていた。独身でつましいアパート住まい。心地よく戻って来ると見慣れない高級車が停まっていた。来客は首相で、スカムナム・コートで事件が起こったのですぐに行くように自ら言いにきたのだ。

ちょっと堅苦しいが、ユーモアもあるし、恋もある。
(滝口達也訳 国書刊行会 世界探偵小説全集16 2500円+税)