ダルジール警視のシリーズ、最初は図書館のを数冊続けて読んだが、シリーズの途中から読んだのでもうひとつ理解が足りなかった。ここ数年は発行されるとすぐに読んで流れをつかみはじめた。新作を追って読むのはすごく楽しいし、最後まで素晴らしい作品を残してくれたものだ。
いま作者のレジナルド・ヒルが亡くなったので追悼読書をしているのだけれど、すごい体験をしている。なにも大きな声でいうようなことではないが、初期の作品でダルジールとパスコーが出会うところ、パスコーとエリーの出会い、そうだったなぁと微笑ましい。そしてゲイのウィールド部長刑事はパスコーより年上だし仕事ができるが、昇進することを断っている。警察署での軋轢を避けるためと、いっしょに暮らす書店主ディッグウィートとの暮らしを充実させたいから。彼らの出会いをおととい読んだところだ。いま読んでいる「ダルジールの死」では「完璧な絵画」で出会ったエンスクームの村の家でふたりが幸せに暮らしているのがわかる。ウィールドとパスコーとエリーの仲のよさは格別。ダルジールが本の最初で死にかけるが、最後でもどってくる。読んでいて幸せになる。なんか支離滅裂なラブレターのようなものね、これ。
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レジナルド・ヒル追悼読書『薔薇は死を夢見る』
レジナルド・ヒルがお亡くなりになって今日は葬儀だったそうだ。なんかしんとした気持ちになり追悼読書をした。選んだ本は5作目の「薔薇は死を夢見る」(1983)。ふっと手にしたときうろ覚えだったのでちょっと読んでみたらおもしろくて全部読んでしまった。おかげで他の用事がないがしろになってしまった。
全作品のタイトルを見ていたらダルジール警視シリーズは20冊全部読んでいる。好きなのはどれかと聞かれたら「武器と女たち」と答える。この本は図書館で3回借りている。「骨と沈黙」は最初に読んだのだがだれかに借りたような気がする。他にも数冊は持っていないのがあるので調べて買っておかねば。シリーズ外で「異人館」を図書館で借りた。これも持っていたい好きな作品だ。
静かな男パトリックに関連ある人間たちが、パトリックの利益になるようなかたちで死んでいる。彼は薔薇を愛し薔薇園と広い庭のある古い屋敷を愛している。雇い主の疑惑の訴えで調査をはじめたパスコーだが、妻のエリーとパトリックの妻ダフネはつい最近から仲良くなっている。
エリーはローズが生まれてから、大学講師を休んで家で採点の仕事をしている。そして私立校の前でこどもを背負い〈私立学校は社会の悪だ〉なんて書いたプラカードを持って立っている活動家だ。雨が降ってきたので、娘を私立学校に送ってきたダフネを車に乗せたことからつきあいがはじまる。
会議の出張先からダルジールがパスコーに電話で吠える。【いいか、よく聞け、こっちにはひとり大馬鹿もんのウェールズ人がいてな。そいつはテレビでやたらペラペラと偉そうにしゃべってるんだ。そいつがやりたがっているのは、つるし首と鞭打ちの刑と機関銃をぶっ放すことの他に、警官に令状もなしに昼でも夜でもどこにでも立ち入る権利を与えて、全部の所帯の家のスペアキーを管轄の警察署に預けさせようということなんだぞ! そいつにいわせりゃ、おれは感傷的なアカなんだと。だからおまえさんなんぞは、幸せな星のもとに生まれたことを感謝しろ】
ダルジール、パスコー、ウィールド、ええわ〜 エリー、ダフネもええわ〜
(嵯峨静江訳 ハヤカワポケットミステリ 1500円+税)
イアン・サンソム『蔵書まるごと消失事件』
「移動図書館貸出記録 I」というサブタイトルがついている。図書館司書としてロンドンから北アイルランド アントリム県タムドラムに着任したイスラエル・アームストロングが目にしたのは、図書館閉鎖のはり紙だった。家から遠く離れて見知らぬ国で失業そして今夜をどう過ごせばいいのか。
イスラエルの父方の一族は何世代にもわたってアイルランドからイングランドへ移転し、母方の一族は飢饉やユダヤ人大虐殺や迫害を逃れてロシアやポーランドからロンドン東部のユダヤ人街から最終的にはロンドン郊外やエセックスにおちついた。そして今回のイスラエルの船旅は自分としては文学者たちのさまざまな旅と比べられるものだ(スケールが違うが)。イスラエルは図書館で育ったようなもので、いつも本を手放さずに生きてきた。
彼はスーツケースを持ったまま町役場に行くと、係のリンダがポテトチップでべたべたした手を差し出した。リンダがいうには、イスラエルが司書に決まったあとに図書館は一時的に閉鎖されたという。そして移動図書館で働くようにいい、拒否するイスラエルをなだめる。
なんやかんやで留まることになるが、下宿として世話されたのは鶏小屋だし、田舎道やら田んぼで滑ったり転んだり。そして移動図書館のバスには蔵書が1冊もない!
まずは本を探すのが仕事になったイスラエル、あちこちで失敗を重ねながら村の人々とわかり合って行く。
だーっと読んだので読み落しがあるかもしれないけど、アイルランド紛争にふれた箇所があった。図書館の謎を探ろうとイスラエルに近寄ってきた女性記者の話で彼がここで知り合った男の両親が〈おもちゃ屋爆弾〉で亡くなったと知る。
【「1986年に、かれらはメイン・ストリートのおもちゃ屋のまえにあるくずかごに爆弾を仕掛けたの」「かれら? アイルランド共和軍(IRA)のことかい?」「・・・とにかく彼は生きのびたわ。乳母車ごと爆風で通路の反対側にふき飛ばされたの。ご両親はどちらも即死だった」】
北アイルランドを舞台にしたミステリははじめてなので興味深く読めた。
(玉木亨訳 創元推理文庫 1200円+税)
レジナルド・ヒル『幸運を招く男』
今日の午後にレジナルド・ヒルさんが亡くなられたことを知った。昨夜も寝る前に「完璧な絵画」を読んで気持ちよく眠った。彼の本を読み始めたのは遅かったけどいま最高に好きな作家だ。
本書はSさんがわたしがダルジール警視シリーズだけを読んでいるので、これもおもしろいと貸してくださったもの。〈私立探偵ジョー・シックススミス〉のシリーズで翻訳は3册出ている。「幸運を招く男」(1993)、「誰の罪でもなく」(1995)、「探偵稼業は運しだい」(2008)、1冊目がおもしろかったからあと2册もぼちぼち読むつもり(貸してもらえたらええんやけど-笑)。
ジョー・シックススミスはイギリスのベッドフォードシャーの工場町ルートンに住む私立探偵。40歳に近いが不況で工場をクビになり探偵をやってみることにする。背が低くて黒人で禿げかけた失業中の旋盤工だから、これくらいはとクライアントの期待にこたえる気持ちで私立探偵らしくデスクに足を乗せている。アメリカの冴えない私立探偵ストーリーをまるごと移したような出だし。机の引き出しには相棒の猫のホワイティがいる。
伯母さんのミラベルはいつもジョーにお節介をやいて女性を紹介する。今回は看護婦のベリルで仕事中のシックススミスと出会ったりするが、だんだんお互いに好意を持つ。ふたりはベリルの息子と猫と4人(?)でクルマで遊びに行く途中に事件で知り合った人を訪ね、そこからひと騒動のあとに事件は解決する。
ベリルは言う「あなたは他人に対する思いやりがあるわ。それに、あなたにはある能力がある。たとえ最初は間違っていても、正しい方向に進んでいく能力が。・・・」
またミラベル伯母について「彼女は公平な人だから、あたしが無能で収入のない私立探偵と結婚することに責任を感じたくないのよ」と言ってシックススミスに衝撃を与える。
(羽田詩津子訳 ハヤカワポケットミステリ 1100円+税)
キャロル・リーア・ベンジャミン『バセンジーは哀しみの犬』
レイチェル・アレグザンダーはニューヨークの女性探偵で愛犬ダシール(アメリカン・スタッフォードシャー・テリア)と暮らしと仕事をともにしている。ユダヤ系で離婚歴あり。結婚した相手の姓であるアレグザンダーをそのままにしている。性格の違う姉は結婚して夫とこどもたちと楽しい家庭を持っている。
仕事がなくてどうしようと思っているときに児童本作家のデニスから電話があった。友人の画家クリフォードが殺されて愛犬のマグリット(バセンジー)が行方不明だという。クリフォードはゲイの画家で警察は同性愛者への虐待事件として調べている。クリフォードには恋人のルイスがいるから夜中に街をうろつくはずはない。
マグリットはドッグショーで優勝したことのある名犬なので、その方面も調べたほうがよいと元ドッグトレーナーのレイチェルは考える。犬好きのひとならアメリカのドッグショーのことがよくわかって楽しいに違いない。わたしはアメリカン・スタッフォードシャー・テリアとバセンジーという犬の種類があるのをはじめて知った。バセンジーは吠えない犬だって。そしてマグリットは素晴らしく美しい。
ギャラリーのオーナーはクリフォードの死を利用して高値をつけて個展を開こうとしている。
レイチェルは電話と足で調査を続ける。
(阿部里美訳 創元推理文庫 980円+税)
エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿 III』
「サイモン・アークの事件簿 I」では、語り手の〈わたし〉は第一作「死者の村」のときは若い新聞記者だった。七十三人の村民すべてが崖から飛び降りて死亡、という事件の村に取材に行き、そこで出会ったシェリーと結婚する。その後、ニューヨークで〈ネプチューン・ブックス〉の編集者になり、編集部長から発行人まで出世して退職している。〈わたし〉は作品毎に年を取っていくがサイモン・アークは相変わらずの姿で〈わたし〉を事件現場に誘う。(ここまでは「サイモン・アークの事件簿 II」に書いたのと同じ)
「サイモン・アークの事件簿 II」を読んでからちょうど1年経った。ふと3冊目は出るんだろうかと思ったことがあったが手にすることができてうれしい。
今回も最初の作品「焼け死んだ魔女」は〈わたし〉がサイモンと最初に出会ってから数年後の話である。
原子力時代が始まって10年以上経ったが、ニューヨーク州ウェストチェスター郡にはまだ占い師のマザー・フォーチューン(運勢の母)の言葉が通用する人たちがたくさんいる。そして彼女のことを魔女と非難する人たちもいる。
今回の事件では、現代の〈魔女〉は数世紀前の魔女裁判の審問官たちに羨望の叫びをあげさせるほどさかんに燃え上がる炎の中で死ぬ。サイモンと〈わたし〉はその事件に係わる。
仕事帰りにニューヨーク発の電車に乗っていた〈わたし〉がハドスンヴィル駅で電車を降りてからサイモンもこの電車に乗っていたと気づき声をかける。「きみはサイモン・アークだろう?」「もちろんだよ。数年ぶりだね」とサイモンは答えるが、電車から降りて〈わたし〉が見つけるのをわかっていたのでしょう。
サイモンはこれからハドスンヴィル女子大学へ行くという。公表されていないが、魔女を自称するマザー・フォーチューンが学生たちにある種の魔法をかけたため、3人の学生は死にそうだし40人ほどが病気にかかっている。それを解明するというのだ。もちろん〈わたし〉は同行する。大学へ行ったふたりは学長に話を聞く。マザー・フォーチューンは50年前に在学していたが喫煙のせいで退学になった。その恨みをはらすという手紙がきている。
魔女というテーマにとらわれて読んでいたら、最後に本当のテーマが現れる。それも最初にふれられていた「原子力時代が始まって10年以上経った」ことに関連があるのに驚いた。エドワード・D・ホックは新しい。
(木村二郎訳 創元推理文庫 920円+税)
エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿 III』続き
3冊目は出るかしらと心配したけど、ホックは短編集3巻分の作品を選んであったのだ。じゃあこれで終わりなのかしらと思ったら、続いて「それ以外にも訳者が好む作品があるので、第四巻は訳者が厳選した作品を集めてみるつもりである。」とあった。あと1冊出るのがわかってうれしい。
この短編集のおもしろいところは、1冊目から順に時代が新しくなっているのではなくて1冊ごとに時代順になっていること。だから3冊目の本書も最初のほうの語り手は若い〈わたし〉である。サイモン・アークは二千年も悪魔を追っているだから最初からあんまり変わらない。ずいぶんヘンな設定だけどすんなり受け止めて読めるのがすごい。
昨日紹介した「焼け死んだ魔女」の他に7つの作品が収められている。いずれも悪魔的な匂いのする怪しい事件だがサイモン・アークが合理的に解決する。ある作品の最後のほうに〈わたし〉の言葉がある。「悪魔との関係もなく、魂の取り立て人もなく、不変の三角関係があり、夫の死を望む女がいただけだ」、サイモンは答える「・・・悪魔の仕事を実行する魂の取り立て人だったんだ」。
(木村二郎訳 創元推理文庫 920円+税)
エドマンド・クリスピン『消えた玩具屋』
ツイッターでエドマンド・クリスピン「消えた玩具屋」と書いているひとがいて、目にしたとたんに読みなくなり検索したらアマゾンで中古の文庫本(発行1978)があった。700円+送料というのを頼んだら、翌々日(おととい)とどいた。あらあら、この本読んだつもりだったがどうも思ってたのと話が違う。
クリスピンは大好きだが最近は読み返しをしていなかった。クラシックミステリのなかで、最愛の作家がドロシー・L・セイヤーズで、クリスピンとジョセフィン・テイは並んでその次。
「金蠅」「お楽しみの埋葬」の2册を読んでいないがポケミスで出てたんやな。古本があるだろうが高そうな気がしてまだ調べようと思わない。
まあ「白鳥の歌」「愛は血を流して横たわる」「大聖堂は大騒ぎ」「永久の別れのために」と4冊を単行本で持っているからいいとするか。本書は「金蠅」「大聖堂は大騒ぎ」に続く3作目。
詩人のキャドガンは出版社に苦労してお金を出させて旅に出る。アメリカへ講演旅行に行ってほしいというのを断ってオクスフォードへ。列車が遅れて乗換駅で今夜発の列車がないということで、街道へ出て歩き出す。途中からようやくトラックが停まって乗せてくれるが、文学好きの運転手で巡回文庫で借りたロレンスがよかったなんて話す。丘を降りて行けばオクスフォードだと言われてクルマを降り歩き出すと商店が軒を並べるところへ出た。なぜか気になった店をよく見ると玩具店で錠がかかっていないので中に入ってみた。2階へ上がってみると女の死体が横たわっていて、突っ立って見ているうちに殴られて失神する。気がついてようやく外に出て玩具店の場所を確かめ、歩いていくとやがてモーダリン橋に着きオクスフォード大学に到着。
キャドガンはすぐに警察に話す。だがその場所には玩具店はなくて食料品店があり取り上げてもらえない。次いで友人の大学教授ジャーヴァス・フェンを訪ねて話をする。フェンとキャドガンはいっしょに事件に取り組むことにする。
フェンの爽やかというか、おおらかというか、楽しい人柄。それに今回もサリーという若い活発な女性が重要な役柄で出てくる。学生たちがたくさん協力するし、酒場ではジェーン・オースティンのファンがしゃべりまくるし、楽し過ぎ(笑)。
(大久保康雄訳 ハヤカワ文庫 340円)
「ミステリーズ!」10月号に木村二郎さんの『残酷なチョコレート』
創元推理文庫から発売された2冊「ヴェニスを見て死ね」と「予期せぬ来訪者」について、きのうとおととい感想を書いた。続いて今日は雑誌掲載の新作である。
ニューヨークは昨晩の雪が5インチも積もっている。オフィスで椅子に座っているヴェニスの前に現れたのは35年前にオクラハマ・シティーでつきあっていたメリンダだった。すぐ彼女とわかったことについて「きみは35年前とちっとも変わっていないからだよ」と答えるが、彼女の顔が母親と似てたから(笑)。
ということは今回のヴェニスは55歳を越えている。ずっとニューヨークで仕事してたんだなぁ。「タイガー・タトゥーの女」のときは1995年だから46歳だったのか。それからでも10年経つ。今回、アパートでヴェニスを出迎えたグウェンの言葉やしぐさが長い年月を共にしてきた夫婦って感じがした。ふたりはなぜか結婚はしないで同居している。
メリンダは次女のメレディスが置き手紙をして出て行ったので調べてほしいと頼む。ちなみにふたりの娘はヴェニスの子どもではないという。
長女のメラニーはニューヨークで働いているので連絡して会うと、昔ヴェニスと親しかったグレンと出会ったというので、グレンの家に行くことにする。グレンは酒で仕事をしくじり、いまは夜警をして汚いアパートに住んでいる。そこの階段を6階まで登るのにヴェニスは息切れする。鍵のかかっていないドアを開けるとグレンが銃で撃たれて死んでいた。
ヴェニスの電話でやってきた、マンハッタン・サウス署殺人課のマーク・マクレイン警部補が「おまえが第一発見者か?」と訊ねる。
(「ミステリーズ!」2011年10月号 東京創元社 1200円+税)
木村二郎『予期せぬ来訪者』
「ヴェニスを見て死ね」に入っている作品
[プロローグ、ヴェニスを見て死ね、長い失踪、過去を捨てた女、秋の絞殺魔、バンバン]
「予期せぬ来訪者」に入っている作品
[秘密の崇拝者、ダイナマイト・ガイ、東は東、予期せぬ来訪者、孤独な逃亡者]
ジョー・ヴェニスは1949年に大阪府堺市にあった米軍基地で生まれた。父親がアメリカ人で母親は日本人である。日本語はほんの少ししか話せないが、聞き取ることはできる。白い肌と頑丈な体格は父から、黒髪と茶色い目は母から受け継いだ。オクラハマ・シティーで育ち、オクラハマ大学を出て、20年以上前にニューヨークに出てきて10年ほど探査事務所で働いてから独立した。拳銃を所持し失踪人探しなどの仕事をしている。一人だけの事務所で電話応答サービスとポケベルでなんとかやっている。依頼人が来ると事情を聞きたんたんと仕事にとりかかる。
独身だが事件で知り合った恋人イラストレーターのグウェンとけっこう長いつきあいだ。グウェンはいっときヴェニスとアンジェラ・バランボ警部補との間を邪推したりしたが、考える時間がほしいとボストンの母親のところへ帰ってしまう。ヴェニスはもどってきた彼女をクールにむかえる。
いつもミルク・ティーとアップル・ターンオーヴァーをコーヒーショップで買って事務所に持って行く。なんか健康に良さげなものを食べているなと気になった。検索したら「アップルパイみたいだけど、パイじゃないよ。パイよりもずーと軽くて、ローカロリー」とあった。食べてみたい。
読んでいて皆川博子の「開かせていただき光栄です」を思い出した。両方ともほとんど翻訳ものといっても通用する。昔のロンドンといまのニューヨーク、どちらも地域の説明がていねいである。皆川さんはディケンズ、木村さんはロバート・B・パーカーを思い起こさせる。
こんなところがあった。「いや、スペンサーより料理は下手だし、イギリスの詩なんか暗唱できない。それに、ジョーというファースト・ネームがある」にやっとした。
(創元推理文庫 680円+税)