自炊より先に

ときどきiPadで本を読む。青空文庫のアプリを入れたのがとても読みやすいのだ。縦書きでめくりやすい。岡本綺堂の「半七捕物帳」は何度も読んで、半七の言葉を覚えているほどのをまた読めてるし、久生十蘭の「顎十郎捕物帳」は昔一度読んだだけだったのをまた読んでいる。横光利一や坂口安吾も再読できてありがたい。なんと、ロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」だってあるのだ。中学校のときに読んで感激したっけ。

〈本棚〉を見ていたらわたしの生涯愛読書のトップである「小公女」があった。小学校低学年に読んで以来、何百回も読んでいる本である。ずっと持っているのは岩波少年文庫で30年くらい前に買ったので赤茶けて汚い。青空文庫のほうは菊池寛訳というのがよい。岩波版を買う前は家にあった姉の本でその版を読んでいたかもしれない。これはよい。決断が早いので(笑)、古い本は即座にゴミ箱へ。
ゆっくり調べたら青空文庫に入っている汚い本がいろいろ出てきそう。自炊するより前に不用本を調べるほうが先だな。

翻訳ミステリ読書会とヴィク・ファン・クラブ例会

2日続けて西梅田へ。翻訳ミステリ読書会は某ビルの11階セミナールームで、ヴィク・ファン・クラブは毎度おなじみの大阪駅前第一ビルのシャーロック・ホームズである。

読書会のほうは2時間ジャストをジェイムズ・エルロイ「ブラック・ダリア」について語り合った。人前で話すのは苦手なので少し緊張したが、笑いをとりながらしゃべれたのでまあまあか。
若い人、団塊世代の人、翻訳を勉強している人や翻訳家など多彩なメンバー。女性が多かった。同じ本を読んでいるのに、立場や考えや受け取り方が違っているのもおもしろい。エルロイに入れこんでいる人もおり、かなわんかったという人もおり。

翻訳本の編集者による「ブラック・ダリア」のおしゃれなレジュメが配られた。エルロイと彼の作品について書かれている。エルロイ以外のブラック・ダリア(エリザベス・ショート)殺人事件を扱った作品の紹介が勉強になった。ノンフィクションと分類されたところに「ハリウッド・バビロン」(ケネス・アンガー)があるのがうれしい。長年のわたしの愛読書(最近あまり出してなかったが)だから。「エルロイの脳内にはこの本のようなあれこれが詰まっているのです。」という解説になるほどとうなづいた。
9時に終了して二次会は遠慮して帰宅。

ヴィク・ファン・クラブのほうは例のごとく雑談の3時間だった。会報の内容についてあれこれ。読書のこと、原発関連のこと、会員の活動のことなどいろいろ。ギネスとおいしい料理の楽しい時間。
例会に来てほしい人、原稿を書いてほしい人が仕事と家事・育児で忙しくて時間がとれないのが残念だ。

ジョセフ・メン『ナップスター狂騒曲』を途中まで読んだ

まだ半分に達してないがだいたい雰囲気がわかったのでこれで読むのをやめる。なにしろ500ページある分厚い本なのです。
映画「ソーシャル・ネットワーク」を見てからナップスターのショーン・パーカーが気になっていた。それまではナップスターという言葉と音楽関係のネット関連企業くらいのことしか知らなかったし、知る気だってなかった。それがえらく気になってしまって。

「ソーシャル・ネットワーク」のショーン・パーカーは「フェイスブック」の創業者マーク・ザッカーバーグに大きな影響を与えたが、結局は自分のまいた種というようなことでフェイスブックを去るはめになった。映画での印象では〈好いたらしいおとこ〉だけど、もうちょっとビジネスライクにやればいいのにと親身に思った(笑)。本書を読むとそここそがあの時代のドットコム業界の人間だったのだとわかる。
本文を半分読んだいま「プロローグ——レイヴパーティー」を読むと、最初はわからなかったナップスターとその時期のドットコム業界の姿がよく見えてきた。

ショーン・ファニングはマサチューセッツの高校に通っているときにコンピュータのプログラミングを学んで、ネット上にあるデジタル音楽ファイルを高速検索するプログラムを作りはじめた。やがてショーン・ファニングと友人のショーン・パーカーはカリフォルニアに引っ越す。ふたりは高校生のときに野心的なハッカーたちが集まるチャット・チャンネルで知り合った。この時代の天才少年たちのプログラミングへののめり込みはすさまじい。
ショーン・ファニングは貧しい少年時代におじのジョン・ファニングに世話になったからと、会社をいいようにされても縁を切ることはしない。おかげで起業して以来ナップスター社は問題をいっぱい抱えることになる。

もうひとり印象に残ったのは女性のナップスターCEOアイリーン・リチャードソンだ。クラブディーヴァーのような雰囲気を漂わせ大音量の音楽が大好きでレイヴに積極的だった。彼女の経歴もすごい。転職を重ねていく過程を読むだけでも圧倒される。
(合原弘子+ガリレオ翻訳チーム訳 ソフトバンクパブリッシング 1900円+税)

『吉田健一』(道の手帖)を買った

昨日ジュンク堂でぶらぶらしていたら「吉田健一」という文字が目についてすぐに買った。2012年2月28日 河出書房新社発行〈KAWADE 道の手帖 生誕100年 最後の文士〉。このシリーズの本を買ったのははじめてだ。
60年代には吉田健一の本をかなり持っていたが、震災のときに処分したからいま持っているのは「金沢」と「東京の昔」で、この2冊は絶対手放せない。ときどき出しては気に入ったところを読んでいる。
翻訳書はシャーロット・ブロンテ「ジェイン・エア」(集英社文庫)が手元にある。「ジェイン・エア」を最初に読んだのは中学1年で姉の友人に借りた阿部知二訳だったが、そのときはひたすら物語に圧倒されていた。その後に自分で買った集英社文庫の吉田健一訳でその文体に惹かれた。ジェインとロチェスターさんとの話しぶりがイギリス人の会話だなーみたいに思えたりして。だからこれから「ジェイン・エア」を読むという人には集英社文庫の吉田健一訳を買えとうるさくいう(笑)。
検索したら吉田健一訳の本はたくさんあって、ミステリもいろいろ訳されているのがわかった。わたしはそれらの本を読んできた。

昨日はシャーロック・ホームズで2時間も本を読む時間があったので、ひたすら吉田健一を味わっていた。本を読むときはいつも夢中だが、昨日は格別に夢中になっていろんな人が書いている吉田健一の思い出にひたっていた。

17日は坂口安吾の命日

ツイッターは便利というかなんというか、有名人の誕生日と命日は絶対というくらいにだれかのツイートがある。今日も17日は坂口安吾の命日だとわかった。
若いときは坂口安吾がめちゃくちゃ好きで全集を2回買っている。最初のは同人誌の仲間に持って行かれていくら言ってももう少しということで結局帰ってこなかった。わたしは懲りずにいまだに本を貸しているが、本って返さない人が多いようだ。

そんなに経たないうちに2回目を買った。また買うくらいに好きだったのね、「吹雪物語」が。この全集はかなり読んでいる。年を取るにつれだんだん深刻なものよりも「不連続殺人事件」や「安吾捕物帳」が好きになった。

6畳の和室の壁に沿って天井までの本棚を作り、その下で寝ていたのだが、阪神大震災のときに本棚の上段からばんばん本が飛び出した。安吾全集、泉鏡花全集、南方熊楠全集がふとんの上に散乱していた。頭にでも当ったら大変なことになったろう。すぐにその本棚を取り払って、もう読むことはないと思う本を捨てた。だから安吾全集も数冊しか残っていない。まあそれでいいのだと思う。わたしの遊びは本と雑貨を買うくらいで弊衣破帽生活であるから、読みたくなったらまた買う。

頭の中の過去を発掘

おとといは花田清輝のことを思い出しつつ60年代のことを書いた。頭の中の過去を発掘しているといろいろと出てくるものだ。
以前から古い友人たちと話し合いをしていたのだが、このたび、相方がジャズ喫茶・ロック喫茶 MANTOHIHI(マントヒヒ)]のサイトを立ち上げた。わたしは「MANTOHIHI の思い出 」という項目に「人生の夏休み マントヒヒの日々」という原稿を書いた。
そしてまた発掘! 写真箱を探したらマントヒヒで撮った写真が出てきたので「MANTOHIHI 写真集 」に入れてもらった。40年前のわたしが見られます。

もういっこ。さっき、次の「関西翻訳ミステリー読書会」の課題本ジェイムズ・エルロイの「ブラック・ダリア」を探しておこうと、押し入れに積み重ねてあるダンボール箱を発掘したらあった! 続いて友人に貸してあげると約束していたロバート・クレイスが4冊出てきた。そしてまた再読したかったジョゼフ・ハンセンのゲイの私立探偵ブランドステッターが主人公のシリーズが8冊出てきた。わーお!

花田清輝「復興期の精神」のころ

今日ツイッターでフォローし合っているかたが「花田清輝」のbotをリツィートしてくださった。すぐにフォローしてツィートを読むと、これが花田清輝の話し方だったよなとうなづける言葉があった。
きっかけはなんだったのか覚えていないが、60年代はずっと花田清輝のファンだった。「復興期の精神」はバイブルのようなもので、西欧へのあこがれをかき立ててくれた。何度も何度も読んで記憶していたくらいだから、文章の最初がわかれば、いまでも続きを暗唱できるかもしれない。

わたしは孤独な文学少女だったが、和文タイプの教室で知り合った人の彼氏のTがやっている同人雑誌の仲間に入れてもらった。そのT氏や中心になっていた労演事務局の人などと知り合って、タイプ印刷の冊子に原稿を載せてもらった。そういうときに知った花田清輝だった。
あるとき文芸講演会があり5人ほどの講演者の中に花田清輝と野間宏が入っていると聞いた。わりと広い会場だったがどこだったんだろう。
花田清輝はかっこ良かった。ハンカチをポケットから出して両手で持ち替えつつ話していた。内容は忘れたがハンカチを持っていたことだけは覚えている。「だれかくみこにあのハンカチをもらってきてやれや」とからかわれたが、それを言ったK氏が亡くなったと人づてに聞いた。そのときいたWさんとT氏が亡くなったのを最近ネットで知った。

60年代も後半になると「アヴァンギャルド芸術」「近代の超克」「もう一つの修羅」を読んだがそれほどの熱狂はなく、「復興期の精神」で花田さんがふれている作家や、もっと新しい作家の作品を読むようになっていった。
花田さんはその後はけっこう有名になったみたいで、父親が読んでいた文芸雑誌に「ヴィクター・マチュアに似ている」と写真付きで出ていた。たしかに似ていた。ヴィクター・マチュアが「サムソンとデリラ」に出ていたころの話だ。
そうそう、ミステリを書くと言われていたように覚えているが結局書いてないのかな。チェスタートンのことを書いていたのを思い出した。

わたしは運がよくて、探さなくても文学仲間に恵まれたし、山に登ってみようと思う前に登山青年が目の前に現れた。音楽もしかりでいろんな分野のかたと知り合いになっていまにいたる。パソコンとネットでは相方にお世話になっているがこれも運命のなせるわざ(笑)。

なんか最近はツイッターで昔読んだ本や昔見た映画を思い出させてもらうことが多い。思い出したことはぼちぼちと書いていこう。

日本で最初の女子デモは大阪 井上理津子『さいごの色街 飛田』から

デモの帰りに寄ったジュンク堂難波店で気になっていた、井上理津子「さいごの色街 飛田」が見つかったので買った。帰りの電車で読み出したのだが、すごくとっつきやすい。帰ってから着替えもそこそこに読んでいて、ご飯が終わったらすぐに読んでいた。井上さんは大阪在住の女性ライターである。

全部読み終わったらきちんと感想を書くことにして、今日は〈日本で最初の女子デモは大阪〉という記載があったことについて。
「原発いらん!女子デモ!? だれデモ!@大阪」の帰りに買った本で、日本で最初の女子デモが大阪であったことを知るとは!

大阪には江戸時代から続く南地五花街があった。その後にも新設されたところもあり、芸者が中心の「甲部」と娼妓が中心の「乙部」に分けられていた。飛田新地は「乙部」として、近代大阪における、松島遊郭に次ぐ二つ目の遊郭新設になった。
飛田遊郭設置反対同盟会が綴った反対意見の冊子にはレベルの高い女性の人権に立脚した反対意見が見られるそうだ。
1916年10月21日には、矯風会(日本キリスト教婦人矯風会)によって日本最初の女性だけのデモが行われた。
【矢島楫子、林歌子を先頭に、二列縦隊で、百数十人の和服姿の女性が静かに祈りながら、川向こうの江之子島(現西区)の大阪府庁まで歩いたのだ。反対署名と「請願書」を大久保知事に届けようとしたのだが、大阪府庁は大騒ぎとなり、知事は居留守を使った。】
(井上理津子著 筑摩書房 2000円+税)

ウォルター・アイザックソン「スティーブ・ジョブズ」( II )

読み終わってから一週間経った。( I )を読み終わったとき〈マックとわたし〉のことを興奮して一息で書いた。それから( II )を読み出してずっとジョブズ漬けの日々を送っていた。すごい影響を受けてたのをいまさらながら感じている。
内容については書評が山ほどあるはずだ。わたしは一つも読んでないけど新聞などにもう出ていることでしょう。だからわたしの感想は〈マックとわたし〉でよかった。

さて、( II )なんだけど、同時代を生きてきた人の伝記ってはじめて読んだのだが、なんかこういろんなことを考えさせられるものだ。そしてその人がもういないのはいたましいが、本書を読むとジョブズはやりたかったことを全部やり終えて亡くなったと思うので、お疲れさまでしたと見送る心境になっている。

わたしはイヤホンで音楽を聴くのが苦手でiPodに触ったことがなかった。でも若者でいっぱいのアップルストアの賑わいがうれしかった。若いカップルが買ったばかりのiPodを手にしながらMacBookを見て、今度はこれやなと言っているのを見てうれしかった。
iTunesで買い物をしようとまずアップルストアでカードを一枚買って、一曲買いしたのはU2だった。
iPhone3Gを買ってからはイヤホンつけて台所仕事したりしてたが、どうも合わずにやめてしまった。音楽に関してはライブが好き。
あっ、また自分のことを書いている。

さっきも読み返していたのだが、ウォルター・アイザックソンってすごい書き手だ。ジョブズのいやみなところ、抑えの利かないところ、けんかっ早いところ、なんかをしっかり書いてあるけど嫌みにならない。家族と後継者たちへの配慮もある。

ジョブズが日本びいきなのは知っていたが、何度も京都へ来ていて俵屋旅館が定宿だったり、菜食なのに穴子のお寿司が大好きだったのも知った。
2冊ともにジョブズが選んだ写真が載っていて楽しい。パートナーのローリーンさんと笑っている後ろに、著者が〈裕福なホビットの家かという感じ〉と書いていた家が写っていてなるほどだ。
(井口耕二訳 講談社 1900円+税)

ウォルター・アイザックソン「スティーブ・ジョブズ」( I )を読み終えて

本書ウォルター・アイザックソン「スティーブ・ジョブズ」( I )は、ジョブズの生まれたときから結婚式を挙げたところまでなので、あとが早く読みたい。
すごく圧倒されてこの数日は口を開けばジョブズのことをしゃべっていた。しゃべるにつれ妹のモナさんや娘のリサさんが身近になったみたい。作家のモナさんが仕事にかまけておしゃれをしないので、ジョブズはうるさく言うが、結局自分でモナさんに合うイッセイ・ミヤケの服をどばっと送る。そんな話で喜ぶミーハー読者(笑)。
パートナーのローリーンさんが現れてがぜん読むのが楽しくなった。こうして出会ったんだ、こうして結婚したんだとはじめて知って喜んでいる。
結婚してから住んでいる家のことを、著者が裕福なホビットの家かという感じと書いているのに笑った。写真を見てたらほんまにそんな感じの家だ。

続きは11月2日発売とあるからあと2日で手に入る。それまでに用事を片付けて読みかけの本は読み終えておかねば。
(井口耕二訳 講談社 1900円+税)